著者
安岡 譽 橋本 忠行
出版者
札幌学院大学総合研究所
雑誌
札幌学院大学人文学会紀要 = Journal of the Society of Humanities (ISSN:09163166)
巻号頁・発行日
no.98, pp.83-113, 2015-10-01

2012年度のノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授らが開発したiPS細胞(人工多機能性幹細胞)の出現は,従来の人間の性や性愛の概念について根本的な再考を余儀なくされることを予測させた点で,私たちに大きな衝撃を与えている。そこで筆者らは,まずこれまでの人間の性と性愛について,精神医学と臨床心理学の立場からの理解のレビューを試みた。そのうえで次に,将来に予測される人間の性と性愛に関する概念に大きな変更を余儀なくされる可能性について検討した。そして,iPS細胞の技術の今後の発展がもたらすと予測される事態と課題は,1)同性配偶による子の誕生と「処女生殖」(単為生殖)の可能性,2)男性と女性という2性の概念そのものの変化の可能性,3)性の精神病理を新たな視点から理解することと,性的障害の診断と治療に関して慎重な判断と対応がせまられること,4)当面は,家族・家庭の再生と再建がより重要な課題となること,と考えられた。最後に,筆者らの現時点での人類の未来予測を述べ,若干の考察と私見についてふれた。
著者
小早川 知子 松尾 和吉 橋本 忠明 築山 良一
出版者
日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.336-345, 2010-08-15
被引用文献数
2 2

淡口醤油パラドックスともいえる淡口醤油の調理特性をあきらかにするため,淡口醤油と濃口醤油での「塩味」「かつおだし風味」「煮干だし風味」「昆布だし風味」の閾値を2点識別試験片側検定にて比較した.さらに,醤油とかつおだしを組み合わせた時の減塩効果についてプロビット解析により検討を行い,以下の知見を得た.<BR>(1) 「塩味」の閾値は喫食時を想定して設定した3種類(0.92%,1.28%,2.75%)すべての食塩濃度範囲で濃口醤油より淡口醤油の方が低いことが明らかとなった.<BR>(2) 「かつおだし風味」「昆布だし風味」の閾値は,食塩水,濃口醤油よりも淡口醤油が低い結果となった.<BR>(3) 「煮干だし風味」の閾値は,醤油使用量が多い5.6%濃口が最も低い結果となった.5%淡口醤油,5%濃口醤油の閾値に差は見られなかった.<BR>(4) 0.90%食塩水と同等の塩味の強さと感じる等価食塩濃度は2%,3%,6%のかつおだし溶液それぞれ0.903%,0.894%,0.843%となり,だし濃度が高くなるほど塩味を強く感じる傾向を示したが,95%の信頼限界域から判断して,濃厚な6%かつおだしにのみ減塩効果が認められ,通常のだし濃度3%以下では減塩効果はなかった.<BR>(5) 4%淡口醤油,4%濃口醤油そのものには減塩効果はなかった.<BR>(6) 3%かつおだしと4%醤油を併用した場合の0.90%食塩水との等価食塩濃度は,淡口醤油の場合0.872%,濃口醤油の場合0.891%と共に減塩の傾向を示したが,95%信頼限界域から判断して淡口醤油の場合のみ有意な減塩効果が認められた.<BR>以上より,調理に淡口醤油を使うことは,目的とする塩味に調節し易く,且つ,だし風味を効かせた低塩料理につながることが強く示唆される結果となった.
著者
歌川 貴昭 湯野 哲司 橋本 忠司 山口 浩貴 増田 恵太 喜多野 章夫 生野 公貴 庄本 康治
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.347-354, 2020 (Released:2020-06-20)
参考文献数
27

〔目的〕訪問リハビリテーション利用者に対して,神経筋電気刺激(NMES)を用いたホームエクササイズが継続的に実施可能であるか,身体への影響も含めて調査することとした.〔対象と方法〕訪問リハビリテーション(訪問リハ)利用者9名に対して,NMESを両側大腿四頭筋に8週間実施した.実施率,膝伸展最大随意収縮(MVC)トルク,大腿前面筋厚,下肢筋肉量,歩行速度について評価した.〔結果〕実施率は85.3 ± 16.4%であった.8週間の介入実施前後で,障害側の膝伸展MVCトルクのみ有意に改善を示した(0.9 ± 0.4から1.1 ± 0.5 Nm/kg,p<0.05).〔結語〕NMESを用いたホームエクササイズは訪問リハ利用者のホームエクササイズとして継続的に実施可能であり,障害側の膝伸展MVCトルクを改善する可能性を示したが,一般化にはさらなる検討が必要である.
著者
橋本 忠和
出版者
美術科教育学会
雑誌
美術教育学 : 美術科教育学会誌 (ISSN:0917771X)
巻号頁・発行日
no.28, pp.307-320, 2007-03-31

本研究は,「道徳の時間」と「図画工作科」を組み合わせ,道徳教育において絵画表現による絵本づくりを行うことによって,道徳教育の内容を構成する視点の一つである「自己を他の人と関わりの中でとらえ,望ましい人間関係を育成する」ことに効果をもたらすことができるのか,授業実践を通して考察したものである。また,美術教育の面においても,自分と他者との関わりを意識した絵画表現をさせることで,児童に既習の表現技術を応用・発展させたり,文章と絵画を効果的に組み合わせた表現方法を主体的に工夫できる場を提供できるかどうか考察する。道徳の授業では,姫路市の日本赤十字病院内の院内学級に通っていた12歳の少女が(平成10年に病没),同級生の行った数々のいたずらを他者肯定の視線で見つめた文章を元につくられた絵本『ゆきちゃん物語』を資料にするとともに,絵画表現の絵本づくりの参考にもする。
著者
橋本 忠幸 小杉 俊介 金澤 剛志 徳増 一樹 木戸 敏喜
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.157-162, 2022-04-25 (Released:2022-09-07)
参考文献数
15

医学教育者の次世代育成が強調される一方で, 比較的若い世代の医師が, 多忙な臨床業務の合間に日頃から医学教育学の知見を深める場を得ることは難しい. 生涯学習の方略としてジャーナルクラブがあるが, 質の担保されたジャーナルクラブ運営・維持することは困難である. 我々は, 全国の異なる機関に所属する卒後9~12年目の勤務医で医学教育オンラインジャーナルクラブを立ち上げた. 対面でも継続的な実施が難しいと言われる中, 我々はオンラインで1年間に40回以上開催し, 多様なテーマの論文を用い, 継続できた. なぜそのような実践が可能であったのかをsocial congruence theoryと自己決定理論とを引用し考察した.
著者
橋本 忠和
出版者
北海道教育大学
雑誌
北海道教育大学紀要. 教育科学編 (ISSN:13442554)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.321-332, 2020-02

本研究は筆者の「ごっこ遊び」と社会情動的スキルとの関連性に基づく研究を基礎に,幼児教育現場で様々な機会に活用され,幼児の豊かな想像性や言語に関する感覚等を育成する手立てとして位置づけられている「絵本」に着目し,保護者と連携した「絵本」の読み聞かせの実践が5歳児の社会情動的スキルを育む上でどのような可能性を有しているのか考察することを目的としている。研究手法としては,絵本「ないた:中川 ひろたか:作」を教材として使用し,主人公の顔を見て母親が涙を流す理由を幼児と保護者が対話を通して考える場面の幼児の発言及び保護者,保育者の反応等を「社会情動的スキル(目標の達成・他者との協働・情動の抑制)」の分類を観点として分析し,絵本の読み聞かせと社会情動的スキルとの接点を考察した。すると,絵本の読み聞かせが幼児の社会情動的スキルの分類の各要素を育成する可能性を見出すことができた。
著者
草岡 章大 岩壁 茂 橋本 忠行
出版者
金剛出版
雑誌
臨床心理学 (ISSN:13459171)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.840-849, 2017-11

セラピーにおける初回面接の重要性は多様な理論に共通しているが,その初回面接でのクライエントの主観的体験を扱った研究は少ない。そこで,本研究では大学付属カウンセリングセンターに来談したクライエントの主観的体験について初回面接直後にインタビューし,質的研究法による分析を行った。その結果,【次への光が見えた】と【セラピーへの幻滅】という2つの上位カテゴリーが見出された。これらから,クライエントが成功と感じる初回面接の特徴として,素晴らしいセラピストとの出会い,クライエントの主体性や自発性の発揮,セラピーの結果への肯定的な確信,の3点が示された。一方で,失敗だと感じる初回面接では,状態や問題の悪化,セラピーへの失望や疑念の高まり,の2点の特徴がみられた。今後の臨床実践において,初回面接を含むセラピー初期に,クライエントが抱く期待と実際とのギャップを扱うことの重要性が示唆された。
著者
村上 平 榊原 宣 堤 京子 田中 三千雄 丸山 正隆 鈴木 茂 橋本 忠美 金山 和子 長谷川 利弘 吉田 操 山田 明義 鈴木 博孝 遠藤 光夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.623-629_1, 1978

Early-stage cancer located on the upper part of the stomach, especially near the esophagogastric junction, is still difficult to diagnose, and frequently undiscoverd until it is too late. Minute cancers so far discovered, in particular, are few in number, and much remains obscure about their morphology, , including such problems as strophic and metaplastic changes in the mucous membrane over the said area. We looked into diagnosis and morphology of minute cancers of the said region in patients encountered by us. Subjects consisted of 12 patients with early-stage gastric cancer the size of 2 cm or less in maximum diameter, a margin of which was within distance of 2 cm from the junction. Total 13 such lesions were found in them. Our findings were as follows : (1) Straight-view fibescope is more useful in observation snd biopsy of small lesions adjacent to the junction, while lateral-view fiberscope has slight advantages with small lesions off the junction, (2) of small, early-stage gastric cancers near the junction, those adjacent to the junction are frequently protuberant, and those off the junction tend to be concave, (3) the majority of small, early-stage gastric cancers near the junction are histologically highly differentiated.
著者
佐方 易忠 橋本 忠
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
藥學雜誌 (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.878-880, 1959
被引用文献数
3

In order to examine chemical properties of <i>p</i>-trimethylsilylphenol (I), reaction of (I) with several kinds of cationoid reagents was carried out. Application of bromine to (I) affords <i>p</i>-bromophenol, while that of benzenediazonium chloride gives 4-hydroxyazobenzene. Nitration of acetate (II) of (I) with acetyl nitrate affords <i>p</i>-nitrophenyl acetate and the Friedel-Crafts reaction of the methyl ether (III) of (I) with anhydrous aluminum chloride and acetic anhydride gives <i>p</i>-methoxyacetophenone. The Fries rearrangement of (II) results in formation of <i>o</i>- and <i>p</i>-hydroxyacetophenone. The Reimer-Tiemann reaction of (I) affords 5-trimethyl-silylsalicylaldehyde. (I) is decomposed by 10% hydrochloric acid to form phenol but remains unchanged with 10% sodium hydroxide. These experimental results indicate that the cationoid reagents that easily undergo substitution at a position <i>para</i> to hydroxyl replaces the trimethylsilyl group in (I) while reagents that undergoes substitution in the <i>ortho</i> position does so in (I) without severance of a bond between silicon and the aromatic ring.
著者
橋本 忠和
出版者
環境芸術学会
雑誌
環境芸術 (ISSN:21854483)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-16, 2009

身近な環境を造形物で異化する美術の授業を行おうとした時、活動に同意しない児童が出てきた。これは、環境を異化する必然性が見いだせなかったことが原因と思われた。そこで、本論では、クリスト&ジャンクロードのザ・ゲーツプロジェクトにおける環境を異化する必然性についての分析を手がかりに、児童が主体的に環境を異化する造形活動について考察する。近年、都市・地方を問わず、生活環境の中で造形活動を行う取り組みが盛んに行われている。そこでは、造形活動が環境を異化することで、身近な環境への気づきをもたらし、人間と環境が関わる意味を増幅して引き出していると思われる。しかしながら、ザ・ゲーツプロジェクトが実現に25年を要したように、環境を異化する造形活動は日常生活に制約や心理的不安を与える場合もあり、その活動を行う必然性について住民に説明して理解を得るのに、多くの時間と労力を必要とする場合がある。それは、児童が行う環境を異化する造形活動においても同様と思われる。すなわち、児童が身近な環境を異化する必然性を見いだすことができなければ、主体的な環境への働きかけは行われないと思われる。そこで、まず、「一貫性」、「分かりやすさ」、「複雑性」、「ミステリー」の4つの観点で、ザ・ゲーツプロジェクトにおける環境を異化する必然性について分析した。そして、その分析を手がかりに児童が主体的に環境を異化するために、どのような要素で造形活動を構成すればよいのかについて考察した。さらに、その要素を生かした授業実践例の開発に取り組んだ。
著者
宮崎 保光 橋本 忠弘 高橋 港一
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌. C, 電子・情報・システム部門誌 = The transactions of the Institute of Electrical Engineers of Japan. C, A publication of Electronics, Information and Systems Society (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.133, no.2, pp.260-267, 2013-02-01
参考文献数
12
被引用文献数
2

In recent years, RFID systems have received much attention in information management and security. For evaluation of RFID systems, study of electromagnetic wave propagation and scattering of UHF wave and microwave transmitted from tag antenna to reader antenna in in-door and out-door is indispensable. In this paper, we describe the characteristics of electromagnetic wave scattering, diffraction and interference by obstacles in propagation channel and show the distribution of received level using FDTD method. In RFID systems, receiving characteristics are strongly influenced by the structure of roads and buildings for out-door environment and rooms, doors and windows for in-door environment. Three-dimensional numerical analysis is studied to evaluate the effects of the earth of roads and building with finite heights for out-door applications and effects of ceil and floor of buildings for in-door applications. Signal processing and control are important to recognize each tag code correctly even if multiple codes from tags are received by a reader simultaneously. In this paper, received characteristics when multiple tags transmit signals modulated by ASK are studied by FDTD method and compared with the analytical results.
著者
野口 友義 榊原 宣 鈴木 博孝 木下 祐宏 川田 彰得 小川 健治 三上 直文 矢川 裕一 菊池 友允 恩田 光憲 橋本 忠美 大谷 洋一 朝戸 末男
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.390-390, 1977-03-25

東京女子医科大学学会第208回例会 昭和51年11月26日 東京女子医科大学本部講堂