著者
長滝 祥司 三浦 俊彦 浅野 樹里 柴田 正良 金野 武司 柏端 達也 大平 英樹 橋本 敬
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

人間は己の存在形態を正当化するために神話や宗教などを創造してきた。道徳において先鋭化するこれらは、人間を取り巻く自然条件によって偶然に枠組みが定められたものであり、条件が変容すればその内容は根底的に変わりうる。現在、様々な技術が人間の心理的身体的能力を拡張し始めると伴に、人間を凌駕する知的ロボットが創造されつつある。我々はこうした事態を自然条件の大きな変容の始まりと捉え、未来に向けた提言が必要と考える。そこで本研究は、ロボット工学や心理学などの経験的手法を取り入れつつ、ロボットのような新たな存在を道徳的行為者として受容できる社会にむけた新たな道徳理論の主要テーゼを導出することを目的とする。
著者
橋本 敬 稲邑 哲也 柴田 智広 瀬名 秀明
出版者
日本ロボット学会
雑誌
ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.407-412, 2010-05-15

社会的生物であるヒトが持つ社会的知能とはどのようなものか,それはいかにしてできたかという問いは,人間や生命の謎に挑む新しい総合科学である「ロボティック・サイエンス」の中でも最重要な問いの一つである.すでに,この問いを追求する科学として社会的知能発生学(sociointelligenesis)の研究が進められている.社会的知能発生学の目標は,社会的知能を理解したい,社会的知能をそれ自体だけではなくその発生から理解し,究極的には社会的知能発生学の理論を作るということである.また,社会的知能を持った人工物のデザインと実装は,目標の一つでもあり,理解へ至る手段としても用いられる.すなわち,社会的知能発生学では,構成を通した理解である構成論的アプローチが重要な位置を占める.この構成論的な社会的知能理解を推し進めるため,近年,SIGVerseという新たなシミュレーション・プラットフォームを開発する動きがある.本稿では,このSIGVerse を科学の方法に位置づけるための議論を行う.以下では,社会的知能発生学を,ひいては,ロボティック・サイエンスを「科学」として確立するため,科学の考え方について知識進化プロセスの視点からまとめる.その上で,リアリスティック・シミュレーションと構成論的シミュレーションという2 タイプのシミュレーションを対比させることを通して,構成論的アプローチを科学的知識進化の中に位置づける.続いて,社会的知能発生シミュレータSIGVerse を紹介し,SIGVerse が社会的知能発生学という「科学」の進展にどのような役割を担うのかを論ずる.
著者
瀬尾 育弐 宮島 泰夫 橋本 敬介 神田 良一 手塚 智 岩間 信行 橋本 新一 小笠原 洋一 阿部 康彦 本郷 宏信
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.109-117, 2005
参考文献数
11

生体の複雑な構造把握や術中応用のために超音波による3次元イメージングのニーズが高まっている。電子スキャンとメカスキャンを融合した装置はすでに製品化されているが, リアルタイム性, プローブサイズなどの問題がある。ここでは, 2次元アレイトランスジューサを使ったリアルタイム3次元超音波(以下RT-3D)を開発した。振動子は64×64=4, 096からなり, バッキング材を通して振動子面に対し垂直に信号線を引き出し, S/N向上のためインピーダンス変換器ICをプローブ内蔵した。振動子配列はスパースアレイとし, 送受おのおの1, 000chの信号線を取り出し, ビームフォーミングされた受信信号はリアルタイムボリュームレンダリング処理を行い, 15 volume/sで3次元表示した。
著者
小林 重人 吉田 昌幸 橋本 敬
出版者
日本シミュレーション&ゲーミング学会
雑誌
シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.1-11, 2013-12

地域経済とコミュニティ活性化のための手段として地域通貨が再注目されているが,地域通貨が特定の箇所に滞留して広く流通せず,当初の目的を達せないまま終わる事例が多い.我々は,地域通貨が有する言語的機能から,地域を重視する価値観や地域通貨の使用習慣といった地域住民の内部ルールに着目してきた.本論文では,内部ルールの影響も含めた地域通貨の流通メカニズムを,ゲーミングとマルチエージェントシミュレーションの2つの手法を組み合わせることで明らかにする.ゲーミングの結果から,地域通貨導入によってゲーム参加者の売買行動および地域に対する愛着や助け合いの高まりといった価値観の変容が確認された.こうした変容を実装したマルチエージェントシミュレーションの実施により,地域重視の価値観,有償ボランティア,地域通貨残高の間にフィードバックループが形成され,地域内での購入割合が上昇するという地域通貨の流通メカニズムを示した.
著者
津田 一郎 西浦 廉政 大森 隆司 水原 啓暁 相原 威 乾 敏郎 金子 邦彦 山口 陽子 奥田 次郎 中村 克樹 橋本 敬 阪口 豊
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

領域の事後評価はAであり、その成果を冊子体の形で集約し、広く社会・国民に情報提供することには大きな意義がある。取りまとめ研究成果は以下のとおりである。1.成果報告書の冊子体での編集と製本を行った。計画班11、公募班44の全ての計画研究・公募研究の班員が、計画班各8ページ、公募班各4ページで執筆し、研究の狙いとその成果を文書と図でわかりやすくまとめた。これらを冊子として製本し、領域に参加する研究者と関係者に配布した。2.成果報告書のCDを作成し、冊子体に添付する形で配布した。3.本成果をWeb上のデータベースDynamic Brain Platformとして成果公開するための準備を完成させた。これまで当領域の成果報告の場として作成公開して来たホームページは、領域終了後に管理できなくなる。そこで、この領域ホームページをINCF 日本ノードDynamic Bain Platform (DB-PF)に移管した。また、成果報告書の電子版をDB-PFにアップロードするための準備を行った。本公開は、広範な分野の人々から永続的な閲覧を可能にするもので、成果を社会・国民に発信する方法として有効であると期待できる。
著者
田村 香織 橋本 敬
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

その場にない対象について表現し伝え理解できるという超越的コミュニケーションについて、描画コミュニケーション実験で調べた。この実験では、送り手が目の前にない対象を描画し、受け手は描画から対象が何かを返答する。これを繰り返すことで、両者は「自分に関する仮説を持った相手」に関する仮説という入れ子を深めていく。この過程の分析から、コミュニケーションにおける自己他者モデルの形成と超越性との関係を議論する。
著者
吉田 和男 井堀 利宏 石黒 馨 竹内 俊隆 鈴木 基史 依田 高典 江頭 進 橋本 敬 瀬島 誠 藤本 茂 遊喜 一洋 秋山 英三 八横 博史 山本 和也 中川 真太郎
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2005

テロや紛争、環境破壊、通商摩擦、金融危機といった今日の世界の秩序を脅かす諸問題は、相互に複雑に関連しあっているため、その解決には従来の個別対応的な方法では不十分である。本研究は、これら諸問題を総合的に分析し処方箋を提示するため、グローバル公共財(GPG)概念に依拠したシミュレータ(GPGSiM)を構築し、世界規模での秩序形成に必要なメカニズムを理論的・実験的に解明して、政策提言に役立てることを目指した。
著者
小鮒 幸洋 橋本 敬
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.86, pp.37-40, 2007-09-03

欺き行動は社会で他個体より有利に立つことで利益を得る方策として,ヒトの社会的知能の進化を説明するマキヤベリ的知性仮説で着目されている.また,欺きの能力は他者の内部状態を推定する能力と関連していることが実験などで示されている.本論文では,欺き能力と内部状態推定能力の進化との関係を研究する基礎として,欺き行動を形式的にモデル化することを試みる.ここでは,欺き行動を,ランナーがキャッチャーから逃れようとする「逃走・捕獲ゲーム」における,ランナーによるフェイント行動としてモデル化する.ここでは,ランナーはキャッチャーの次の行動が読めるとし,その情報を利用してフェイントの仕方を決める.また,キャッチャーはランナーの過去の行動から次の行動を予測する.このモデルの振るまいをエージェントシミュレーションで調べたところ,キャッチャーが予測能力を持つ場合にのみ,フェイントが十分有効であることがわかった.この結果から,相手に誤った情報をわざと与えて誤導することで利益を得るという,欺き行動の本質的部分がモデル化できたと考えられる.Deception is a remarkable human behavior in order to get an advantage over other people in a society. It is paid attention in the Machiavellian intelligence hypothesis as to explain the evolution of social intelligence of humans. Some experimental results show that deception behavior is relevant to the ability to recursively infer others' internal states. In this paper, we try to model deception behavior as a basis of studying the evolution of deception ability and the recursive inference ability of others' internal states. In this model, deception is modeled by feint behavior in "Running-Catching" game, in which a runner tries to escape from a catcher. The runner is thought to be able to "read" the catcher's next behavior, which is catcher's internal state, and decide the way to feint using the information. The catcher can predict runner's next behavior using past behavior of the runner. It is shown by agent simulations that the feint behavior is useful to escape from the catcher only when the catcher has the prediction ability. It is considered that the essence of deception, namely, getting advantage by giving erroneous information to others and misleading them, is modeled by this game and the feint behavior.
著者
橋本 敬造
出版者
関西大学
雑誌
関西大学東西学術研究所紀要 (ISSN:02878151)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.A21-A38, 2007-04

The author discusses the conflict at the introduction of the Western method into the traditional Chinese calendar system in the beginning of the Qing Dynasty. It was not only the question of how to prepare the traditional Chinese calendar, which was the Luni-solar system, according to the Western astronomical system, but also the problem of how to justify to adopt the Western system instead of the traditional Chinese. This is not a new problem. But, here, we should like to discuss the issue from the point of view of the Western learning, Xixue 西学, as well as the Tianxue 天学, which means Christianity. This is because the author's main concern here is in the development of the Rites Controversy in the early Qing period. So far this issue concerning the Qing calendar has been called the Calendar Accusation, Liyu 暦獄. The author regards the prosecution had the nature of the religious one. First of all the discussions begin with the astronomical controversies, raised by the prosecutors, Yang Guangxian 楊光先et al. He carried on his campaign against the missionaries. In 1664, he submitted to the Board of Rites the document in which he charged Johann Adam Schall von Bell, Tang Ruowang 湯若望, with several alleged errors in astronomical calculations and accused the missionaries of plotting against the state and of indoctrinating the people with false ideas. He referred to the view mentioned in the Tianxue chuankai 天學傅概 [History of Christian Church in China], written in 1664 by the convert, Li Zubai李祖白. He developed the ideas that man had originated in Judea and that a branch of the human family migrated to China under the leader, tentatively identified as Fuxi 伏羲. He also asserted that in ancient China God had been worshipped under the name Tian天or Shangdi 上帝, which was known as the Tianxue 天学, which was eventually to be revived by Ricci. This was repugnant to Yang. Including this idea, Yang produced other articles as the evidences for the accusation of the religion and the missionaries with their followers. Finally Yang lodged against Schall the more serious-though in fact erroneous-charge that he had deliberately fixed on the inauspicious day in 1658 for the burial of the infant prince, Rong Qinwang 榮親王, in order to cast spells on the parents (i.e., Emperor Shizu 世祖and Empress Xiaoxian 孝賢). For the critical issues against the New Method, Xinfa 新法, now F. Verbiest, Nan Huairen 南壊仁, following Adam Schall von Bell, successfully defended, because he had so far well prepared astronomically. Immediately after this prosecution, the Western astronomical system, Xifa 西法, became exclusively called the New Method. On the other hand, the religious issues were mainly treated by the senior missionary, L. Buglio (Li Leisi 利類思). Here we discuss the conflict from the aspects of the both sides, religious and astronomical.