著者
雪岡 聖 田中 周平 鈴木 裕識 藤井 滋穂 清水 尚登 齋藤 憲光
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.72, no.7, pp.III_87-III_94, 2016 (Released:2017-04-03)
参考文献数
20

本研究では,化粧品中のペルフルオロ化合物類(PFCs)の前駆体の把握を主目的とし,一定条件下で酸化分解を行うことで,種々の前駆体をPFCsに変換し,生成ポテンシャルを評価した.さらに精密質量分析により前駆体の化学構造の探索を行った.30製品中の15種のPFCsの総含有量は146~8,170 ng/g-wetであり,PFCs生成ポテンシャルは75~93,200 ng/g-wetであった.一部のファンデーションと化粧下地にPFCsの11~199倍のPFCs生成ポテンシャルが存在した.化粧品成分として「フルオロ(C9-15)アルコールリン酸」を含むファンデーションを精密質量分析した結果,7種のポリフルオロアルキルリン酸エステル類(PAPs)が検出され,それらはPFCsを生成する前駆体である可能性が示唆された.
著者
鈴木 裕之 中野 実 蓮池 俊和 仲村 佳彦 畠山 淳司 庭前 野菊 清水 尚
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.297-302, 2011-06-15 (Released:2011-08-19)
参考文献数
17
被引用文献数
2 1

症例は70歳の女性。自宅で呼吸苦を自覚し自ら119番通報をした。救急車内収容時に無脈性電気活動(pulseless electrical activity; PEA)となり,救急隊員による約1分間の心肺蘇生術で心拍再開し当院へ搬送された。当院到着時に再びPEAとなり,アドレナリン1mgを投与し,気管挿管,当院スタッフによる約8分間の心肺蘇生術で心拍は再開した。心エコーで著明な右心負荷所見,胸部造影CTで左右の肺動脈に血栓を認め,肺塞栓と診断した。へパリン3,000単位静注後,肺動脈造影を施行したところ,肺動脈主幹部の血栓は既に溶解しており,造影欠損像を末梢に認めるのみであった。循環動態,呼吸状態ともに安定したため,抗凝固療法のみ行う方針でICUに入室させた。しかし,ICU入室4時間後から徐々に血圧が下がり始め,入室6時間後にはショック状態となった。心エコーで右心負荷所見は改善傾向にあり,肺塞栓による閉塞性ショックは否定的だった。腹部エコーで大量の腹水を認め,腹部造影CTでは血性腹水と肝裂傷を認め,胸骨圧迫による肝損傷から出血性ショックに至ったと診断した。硫酸プロタミンでへパリンを拮抗し,大量輸血で循環を安定させ塞栓術による止血を試みた。しかし,肝動脈と門脈からの血管外漏出は認められず,塞栓術による止血は不可能であった。静脈性出血の自然止血を期待し腹腔内圧をモニターしながら,腹部コンパートメント症候群に注意しつつ経過観察した。第2病日循環動態は安定し,第9病日抗凝固療法を再開した。第10病日人工呼吸器離脱し,第40病日独歩退院した。心肺蘇生術後の患者では,蘇生術に伴う合併症の発生を常に念頭に置きながら,原疾患の治療にあたることが重要である。
著者
梅崎 重夫 福田 隆文 齋藤 剛 清水 尚憲 木村 哲也 濱島 京子 芳司 俊郎 池田 博康 岡部 康平 山際 謙太 冨田 一 三上 喜貴 平尾 裕司 岡本 満喜子 門脇 敏 阿部 雅二朗 大塚 雄市
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.13-27, 2014 (Released:2015-03-26)
参考文献数
19

日本の強みは,現場の優秀な作業者や管理・監督者及び生産技術者が質の高い安全管理と生産技術に基づく改善を実施していることにある.したがって,この“現場力”を基盤に置いた上で,技術に基づく安全の先進国と言われる欧州の機械安全技術や社会制度を適切に活用すれば,日本の現場力と欧州の機械安全技術を高次の次元で融合させた新しい枠組みの安全技術と社会制度を構築できる可能性がある.本稿では,以上の観点から日本で望まれる法規制及び社会制度のあり方を検討した.その結果,今後の日本の社会制度では,安全をコストでなく新たな価値創造のための投資として位置づけること,高い当事者意識と安全な職場を構築しようとする共通の価値観を関係者間で共有すること,及び再発防止から未然防止,件数重視から重篤度重視への戦略転換と想定外の考慮が重要と推察された.また,実際の機械の労働災害防止対策では,特に経営者及び設計者に対して欧州機械安全の基本理念と災害防止原則を普及促進するとともに,①ISO12100に定めるリスク低減戦略,②モジュール方式による適合性評価と適合宣言に関する情報伝達を目的としたマーキング,③マーキングの情報に基づく機械の使用段階での妥当性確認,④機械の設計・製造段階への災害情報のフィードバックが特に重要と考えられた.
著者
小林 憲弘 小坂 浩司 浅見 真理 中川 慎也 木下 輝昭 高木 総吉 中島 孝江 古川 浩司 中村 弘揮 工藤 清惣 粕谷 智浩 土屋 かおり 寺中 郁夫 若月 紀代子 加登 優樹 小関 栄一郎 井上 智 村上 真一 金田 智 関 桂子 北本 靖子 堀池 秀樹 米久保 淳 清水 尚登 髙原 玲華 齊藤 香織 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.223-233, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

水道水中の臭素酸イオン (BrO3-) を既存の告示法よりも高精度かつ迅速・簡便に分析するために, LC/MS/MSによる測定方法を検討し, 臭素酸イオンを高感度に検出でき, さらに水道水中に含まれる他の陰イオンを良好に分離可能な測定条件を確立した。さらに, 本研究で確立した測定条件が全国の水道水に適用できるかどうかを検証するために, 水道事業体等の23機関において水道水に臭素酸イオンを基準値 (0.01 mg L-1) およびその1/10 (0.001 mg L-1) となるように添加した試料を調製し, 各機関で最適化した様々な測定条件で試験を行った。その結果, いずれの機関においても厚生労働省が示している「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たしたことから, 本分析法は水道水中の臭素酸イオンを基準値の1/10 (0.001 mg L-1) まで高精度に分析可能であると評価した。
著者
清水尚彦
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.4, pp.1-6, 2013-03-06

本報告は、RTOSのLinuxへのマイグレーションや、RTOS教育を目的として、POSIXレイヤー上にタスクスイッチャーを構築したRTOS on POSIXの開発について述べる。RTOSレイヤーには、ToppersプロジェクトのToppersATK1を採用し、i386用のタスクスイッチコードおよびPOSIXレイヤーとの接続コードを新たに開発した。OSEKにおいて必須となっているにもかかわらず、ATK1に不足するメッセージ通信については、新たにCOM/CCCAコードを作成し、提供した。POSIXレイヤーとしてLinuxおよびCygwinを用いて実働を確認した。
著者
千原 敏裕 永井 淳 阿久津 功 本行 博 高橋 慶壮 清水 尚子 谷本 一郎 島袋 修 藤田 直子 宮本 学 高柴 正悟 後藤 弘幸 西村 英紀 磯島 修 清水 秀樹 栗原 英見 野村 慶雄 村山 洋二
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.204-212, 1992-03-28

早期発症型歯周炎を発症している家族(母親とその娘2人)の歯周病病態を宿主防御細胞機能に重点を置いて解析した。母親(40歳)は急速進行性歯周炎,娘A (14歳)は限局性若年性歯周炎,そして娘B (13歳)は単純性歯肉炎と臨床診断した。好中球機能は,母親が遊走能において低かった。CD4陽性細胞検出率およびT4/T8は母娘全員が高い値を示した。CD3抗体で刺激したときのTリンパ球増殖活性は,娘Bが低かった。HLAフェノタイプは,母娘で共通してDQw1とw3およびDRw10とw12を検出した。Actinobacillus actinomycetemcomitansに対し母親,娘Aおよび娘Bが,Porphyromonas gingivalisに対し母親と娘Bが,Fusobacterium nucleatumに対し母親が高いIgG抗体価を示した。本家族の歯周病発症機序は,本研究において調べた生体防御機能の諸機能所見だけから,明確にできるものではなかった。歯周病の病態解析には,さらに幅広い生体防御機構のネットワークを念頭に置く必要がある。
著者
清水 尚憲 梅崎 重夫
出版者
日本信頼性学会
雑誌
日本信頼性学会誌 : 信頼性 (ISSN:09192697)
巻号頁・発行日
vol.32, no.8, pp.546-553, 2010-12-01

クレーン等による死亡労働災害は,昭和48年のピーク時に約400件であったのと比較すれば,年間約100件と大幅に減少している.しかし,現在でも,クレーンからのつり荷の落下,つり荷による挟まれ,クレーンからの墜落,機体等の折損・倒壊・転倒,つり荷の激突などが依然として多発しており,これらの災害に対する適切な災害防止対策が必要とされている.このため,日本クレーン協会では,これらの多発する災害を未然に防止するための危険性または有害性の事前評価手法として,「クレーン等のリスクアセスメント実施要領(日本クレーン協会規格JCAS0001-2008)」を公表している.本稿では,前記規格を小型移動式クレーンに適用する際の基本的考え方とリスクアセスメントの具体的実施事例を概説する.
著者
清水尚彦
雑誌
研究報告組込みシステム(EMB)
巻号頁・発行日
vol.2013-EMB-28, no.4, pp.1-6, 2013-03-06

本報告は、RTOSのLinuxへのマイグレーションや、RTOS教育を目的として、POSIXレイヤー上にタスクスイッチャーを構築したRTOS on POSIXの開発について述べる。RTOSレイヤーには、ToppersプロジェクトのToppersATK1を採用し、i386用のタスクスイッチコードおよびPOSIXレイヤーとの接続コードを新たに開発した。OSEKにおいて必須となっているにもかかわらず、ATK1に不足するメッセージ通信については、新たにCOM/CCCAコードを作成し、提供した。POSIXレイヤーとしてLinuxおよびCygwinを用いて実働を確認した。
著者
木下 修平 並木 滋 清水 尚彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RECONF, リコンフィギャラブルシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.247, pp.49-54, 2006-09-08

本稿では1チップのFPGA上で実現したIBMPC互換システムの開発について述べる。本開発はコンピュータシステム開発の実践教育の一環として行い、2006年がIBM PCの25周年にあたるため、IBM PC互換システムを教育の題材とした。開発は高位のHDL(Hardware Discription Language)であるSFL(Structured Function description Language)を用いてすべてのハードウェアの論理設計を行った。実装ボードはALTERA社のCyclone FPGAを搭載するUP3ボードである。必要なサブシステムをFPGAにすべて実装したため、外部バスは存在しない。周辺回路を全て含んだロジックセルは9894であった。また論理合成結果より、CPUは49.09MHz、SDRAMは128.78MHzで動作可能であり、それぞれ48MHz、100MHzで動作させた。OSはFreeDOSを用いており、IBM PC互換のBIOSは我々が開発した。
著者
神山 智章 清水 尚彦
雑誌
情報処理学会研究報告システム評価(EVA)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.55(2002-EVA-003), pp.7-12, 2002-06-07

MP3デコーダのIMDCT処理を設計するに当たり、この処理において必要とされる精度について評価を行った。この結果に基づき、高速かつコンパクトなIMDCT回路を実現できた。
著者
齋藤 剛 濱島 京子 芳司 俊郎 木村 哲也 清水 尚憲
出版者
独立行政法人 労働安全衛生総合研究所
雑誌
労働安全衛生研究 (ISSN:18826822)
巻号頁・発行日
pp.JNIOSH-2015-0024-CHO, (Released:2016-07-19)
参考文献数
24

機械災害防止に関わる行政施策でリスクアセスメントの普及が強く推進されているが,リスクを評価・判断するうえで公に受け入れられ統一された基準はまだ確立されていない.このため,リスクアセスメントの結果導かれる対策は,リスクアセスメントを実施する者の主観に依存し,その妥当性については必ずしも担保されない.本研究では,この問題を考察し,一事業場内の自主的労働安全衛生活動の範囲で回避するには限界があり,よって,最新の機械安全国際規格や他事業場等での成功事例に精通した第三者が機械のリスク低減状態を個別具体的に確認する仕組みが必要であることを示し,これを「妥当性確認」と定義した.そして,リスクアセスメントに基づく機械安全を日本に先行して推進してきた欧州4ヵ国を対象に調査を行い,リスクアセスメント結果の妥当性をいかに担保してきたかについて各国の実態を日本国内での場合と比較した.その結果,現在の国内の社会制度の枠組みで妥当性確認に相当する活動を実施するとすれば,労働基準監督機関が行う指導監督業務での実施が考えられることを示し,そのうえで,①機械安全に関わる法規制と機械安全国際規格との関係を明確にし,両者が強く結びつく方向へ整備すること,②指導監督業務を通じて知り得た災害の未然防止に成功した好事例について情報を収集し,広く一般へ公表・展開を図ることの2点を特に検討すべき課題として抽出し,提言としてまとめた.
著者
梅崎 重夫 濱島 京子 清水 尚憲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSS, 安全性 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.43, pp.13-16, 2009-05-15

人間機械作業システムで発生する労働災害を防止するには,機械の設計・製造者が行う設備的な保護方策(機械安全)と機械の使用者が行なう管理的対策(安全管理)の連携が不可欠である。しかし,本質的安全設計方策や安全防護物の適用などの設備的な保護方策と人の注意力に依存する管理的対策では確定性が異なるために,両者を連携させたリスクの定量的評価手法の確立は困難を伴う。そこで,安全か危険か不確定なものはすべて危険とみなす"安全の原理"にしたがって,人間機械作業システムの災害発生率の確定的上限値をマルコフ解析に基づいて定量的に推定できる評価式を提案した。この式は,設備的な保護方策のパラメータである制御システムの安全関連部の冗長度,不信頼度,危険側故障率,チェック間隔だけでなく,管理的対策のパラメータである人の誤り発生率や回避失敗率なども含むために,人間機械作業システムの汎用的な安全性評価指標として利用できる。
著者
大山 将城 名野 響 近藤 信行 清水 尚彦 星野 民夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. VLD, VLSI設計技術 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.477, pp.49-53, 2004-11-24

昨今のSoC開発においてハードウェア,ソフトウェアの協調エミュレーションは盛んに行われている.しかし,エミュレーション環境はベンダツールへの依存度が高いケースが多く標準的といえるものはまだ無い.したがって,構築したエミュレーショシ環境が使用しているベンダツールに縛られているのが現状である.これに対しaccellera[1]は2003年に標準協調エミュレーションモデリングインターフェースSCE-MIを策定した.SCE-MIは披試験デバイス(以下DUT)に対するテストベンチの設計/使用を容易にすることを目的にハードウェア/ソフトウェア間のインターフェース(以下IF)仕様を定義するものである.IFのソフトウェア側はC++のAPIとして,ハードウェア側はTransactorと呼ばれるモジュールとして定義される,ただし,これらの実装仕様については定められておらず実装者に任されている.そこで標準的エミュレーション環境の実装試行として,SCE-MI仕様にのっとったIF開発とFPGAボードへの実装を行った.