- 著者
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渡邉 俊彦
- 出版者
- 拓殖大学海外事情研究所附属台湾研究センター
- 雑誌
- 拓殖大学台湾研究 = Journal of Taiwan studies, Takushoku University (ISSN:24328219)
- 巻号頁・発行日
- vol.5, pp.55-76, 2021-03-25
本稿は,台湾華語の句頭語気助詞「啊」を用いる表現に対して初歩的分析を試みることを目的とする。分析方法は,蘋果日報の記事中でかぎ括弧を用いて記録された「啊」を含む実例から,「啊你」で始まるフレーズ200例を対象として,閩南方言に対する先行研究が指摘する「啊」が有す,尋ねる意味を強調する・突出した感情を表すとの二つの意味を参考として,台湾華語の「啊」が閩南方言から台湾華語へ転移したものなのかを検討し,同時に用法に対して考察を加えた。結果,台湾華語の「啊」が示す意味は,閩南方言の先行研究が指摘の二つのいずれかを意味しており,実例より「啊」は閩南方言から台湾華語へ転移したものだと結論付けた。用法の特徴としては,疑問の表現では,話者は相手に対して今話題となっている事柄に強い関心があることを示し,かつ相手から回答や反応を聞き出したい目的や思惑が込められているものと考えられた。一方,陳述の表現では「啊」の後文に感情面を直接的に描写する語彙が同時に出現する特徴が見られたが,このような語彙はそれら自体だけでも感情面を一定程度表すことができるため,これらが「啊」と同時に使われることで,「啊」がある場合とない場合では,それが突出する感情面の表現に対しどれほどの差異となりえるのか,さらに言えば「啊」の有無による表現上の違いの境界線については,更なる言及が必要であることを指摘した。