著者
藤澤 隆史 クック ノーマン D.
出版者
関西大学
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.35-51, 2006-07-12

和音(harmony)は,メロディ(melody),リズム(rhythm)とともに音楽を形作る重要な要素である.音楽の物理的な音響的特徴とその心理的な印象や感性との関連性について定量的に評価するために,和音性についての評価モデルを構築した.和音性は,(1)協和度(心地よい-わるい,澄んだ-濁った),(2)緊張度(緊張した-落ちついた),さらに長調か短調かといった性質を決定する,(3)モダリティ(明るい-暗い,うれしい-悲しい)から構成される.本資料では,Cook & Fujisawa (2006)において議論されている和音性知覚モデルの詳細について補足的な説明を行う.具体的には,それぞれの和音性曲線(不協和度,緊張度,モダリティ)を得るための心理数理モデルの詳細と,実際に曲線を描くための計算プログラム(C言語・MATLAB)について解説する.
著者
石盛 真徳 小杉 考司 清水 裕士 藤澤 隆史 渡邊 太 武藤 杏里
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.153-164, 2017 (Released:2017-04-27)
参考文献数
36
被引用文献数
5

高校生以上の子どもを2人もつ223組の中年期の夫婦を対象に調査を行い,夫婦間のコミュニケーション,共行動,夫婦間の葛藤解決方略といった夫婦関係のあり方が夫婦関係満足度,家族の安定性,および主観的幸福感にどのような影響を及ぼしているのかをマルチレベル構造方程式モデリングによって検討した。夫婦関係満足度への影響要因の分析では,夫と妻が別個に夫婦共行動の頻度が高いと認識しているだけでは個人レベルでの夫婦関係満足度の認知にしかつながらず,夫婦のコミュニケーションが充実していると夫と妻の双方がともに認知してはじめて2者関係レベルでの夫婦関係満足度を高める効果をもつことが示された。家族の安定性への影響要因の分析では,個人レベルで葛藤解決において夫婦関係外アプローチに積極的であることは,個人レベルでの家族の安定性を高く認知することにつながるが,2者関係レベルで,夫婦が一致して夫婦関係外アプローチに積極的であることは,家族の安定性を低く認知することにつながるという結果が得られた。主観的幸福感への影響要因の分析では,夫婦関係満足度の高いことは,個人レベルにおいて正の関連性を有していた。また,夫婦間の解決において夫婦関係外アプローチに積極的であることは個人レベルでのみ主観的幸福感を高めることが示された。
著者
藤澤 隆史 松井 淑恵 風井浩志 古屋 晋一 片寄 晴弘
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.764-770, 2009-08-15

本稿では,「ヒトは音楽をどのように感じているのか」という観点から脳機能の計測方法およびその実験デザインついて解説する.まず,脳において音楽がどのように認知されているかについて,「音楽の脳機能局在」の観点からその関連部位について概観する.次に,脳機能の計測において用いられている代表的な装置とその諸特徴を紹介し,有効な計測信号を得るための実験デザインについて解説する.最後に研究例を3つ紹介し,音楽認知研究における脳機能計測の有効性を示す.これらの例が示す脳機能計測の有効性は,ユーザが楽しめる音楽インタフェースを開発する上で,音楽を聴取する脳の働きや脳機能計測法に対する正しい理解を深めることが一層重要となることを示唆している.
著者
藤澤 隆史 細川 豊治 長田 典子 片寄 晴弘
出版者
日本感情心理学会
雑誌
感情心理学研究 (ISSN:18828817)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.73-82, 2010-07-31 (Released:2011-09-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

In this study, we investigated brain activity under social pressure using Solomon Asch's experimental paradigm. We replicated the group situation using the MORI technique and recorded the brain activity using functional near-infrared spectroscopy (fNIRS). Eight Japanese healthy males in groups of four participated in this study. The Asch experiment can be replicated without using confederates using MORI technique. The subject assessed with fNIRS was seated in a fixed position and assigned to answer third. A multichannel fNIRS system was used to measure the changes in the concentrations of oxy-hemoglobin (oxy-Hb) and deoxy-hemoglobin (deoxy-Hb). Nine optodes consisting of 12 channels were placed over the prefrontal cortex (PFC) of each hemisphere. In the behavioral data, the error rate (%) for the judgment tasks increased to 39.7% under the group pressure conditions, while it was 3.2% under the control conditions. Comparing the group pressure and control conditions in the fNIRS data, a difference in the increasing rate of oxy-Hb in the frontal pole (ch02, 05, 13 & 15) was observed. Therefore, we found that the frontal pole was activated when the subject felt social pressure under group situations.
著者
白岩 史 飛谷 謙介 下斗米 貴之 猪目 博也 藤澤 隆史 饗庭 絵里子 長田 典子 北村 泰彦
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1159-1164, 2013-11-05 (Released:2014-01-05)
参考文献数
25

Recently, the number of emergency vehicles equipped with light-emitting diode (LED) warning lights has increased. Unlike traditional beanie lights, LED warning lights can display various flickering patterns because these patterns are controlled by computers. The purpose of this study was to develop flickering patterns that had a high level of visibility. Lighting time (ON time), no-lighting time (OFF time), light intensity and rising time (UP time) were controlled by a microcomputer. Further, the visibility of each LED flickering pattern was evaluated quantitatively. Specifically, the visibility of the flickering patterns using the psychophysical measure of “conspicuity (easy to stand out)” from Bradley-Terry paired comparison model was identified. Results showed that OFF time had a significantly greater influence on visibility than ON time. Moreover, the flickering pattern with 66 msec of OFF time provided optimal visibility, regardless of the ON time, by making the visibility map, which represented the degree of visibility between ON time and OFF time. Therefore, the ideal combination between ON time and OFF time was determined.
著者
藤澤 隆史 ノーマン D クック
出版者
関西大学総合情報学部
雑誌
情報研究 : 関西大学総合情報学部紀要 (ISSN:1341156X)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.35-51, 2006-07-12

和音(harmony) は,メロディ(melody). リズム(rhythm) とともに音楽を形作る重要な要素である.音楽の物理的な音響的特徴とその心理的な印象や感性との関連性について定量的に評価するために,和音性についての評価モデルを構築した.和音性は. (1)協和度(心地よいーわるい,澄んだー濁った).(2)緊張度(緊張したー落ちついた).さらに長調か短調かといった性質を決定する. (3)モダリティ(明るい一暗い,うれしいー悲しい)から構成される.本資料では. Cook & Fujisawa (2006) において議論されている和音性知覚モデルの詳細について補足的な説明を行う.具体的には,それぞれの和音性曲線(不協和度,緊張度,モダリティ)を得るための心理数理モデルの詳細と,実際に曲線を描くための計算プログラム(C言語・MATLAB)について解説する.
著者
上川 峻典 猪目 博也 下斗米 貴之 藤澤 隆史 饗庭 絵里子 長田 典子
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第10回大会
巻号頁・発行日
pp.145, 2012 (Released:2012-07-20)

近年,緊急車両等の警光灯に回転灯ではなくLEDを用いたものが増えてきている.LEDは回転灯と異なり,光の点滅具合すなわち点滅パターンを自由に設計出来る利点がある.そこで接触事故を減らし,出来るだけ早く視認出来る点滅パターンの設計が求められている.本研究では点灯時間,滅灯時間,波形の立ち上がり時間,LEDの輝度を様々に変化させたLEDの点滅パターンを作成し,Bradely-Terryの一対比較モデルによって視認性(誘目性)に対する各条件の影響を評価した.その結果,特定の滅灯時間にピークを持つ視認性の高い領域が存在することが明らかになった.また,視認性に対して滅灯時間の主効果と点灯時間と滅灯時間の交互作用が確認され,点灯時間と滅灯時間に関する視認性マップを作成し,その構造を明らかにした.これは光強度との交互作用が出ていないことから,光強度に依存しない現象であると推測される.
著者
高橋 理宇眞 藤澤 隆史 長田 典子 杉尾 武志 井口征士
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.90(2006-MUS-066), pp.105-108, 2006-08-08

「音を聴くと,色が見える」という現象は 色聴と呼ばれており,共感覚の1つである.こうした現象は 感覚モダリティ間の関係を明らかにする上で重要な手がかりとなることが期待される.本研究は 色聴保持者において音楽聴取時に実際に色知覚に関与している脳内領野で活動が生じているかをfMRIを用いて計測した.実験はブロックデザインで行われ 課題刺激は音楽,レストはbeep音の呈示が行われた.分析はSPM99を用いて行われた.色聴保持者固有の賦活領域として紡錘状回および上前頭回が抽出され,紡錘状回において色知覚に関わるV4/V8付近で有意な活動がみられた.このことは,色聴が聴覚系と視覚系の直接的な相互作用により生じていることを示唆している.また左紡錘状回が右に比べて広く賦活していることより,色聴は左紡錘状回が相対的に重要な役割を担っていると考えられる.
著者
長田 典子 井口 征士 藤澤 隆史
出版者
関西学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

「音を聴くと,色が見える」という現象は「色聴(colored hearing)」と呼ばれており,心理学の分野で共感覚(synesthesia)の1つ,すなわち1つの感覚が本来独立であるはずの別の感覚を喚起する興味深い現象として知られている.本研究では,色聴現象の中でも音楽の調性に対して色を感じる現象に注目し,脳機能イメージングを行った.音楽聴取時の色聴保持者において,色知覚部位であるV4連合領域(V4/V8/V4R)および右下頭頂小葉・補足運動野・小脳の3つの部位から色聴保持者特有の賦活を確認した.これに基づき色聴のメカニズムを提案した.
著者
澤 隆史
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.255-264, 2009
被引用文献数
1 4

本研究では、過去10年ほどの国内外の研究を中心として、聴覚障害児における言語の理解と産出について言語学的観点から考察するとともに、今後の言語獲得研究の方向性について展望した。先行研究を「統語」「意味」「使用」の観点から整理し、各観点について、生成文法理論による統語能力の解明、統語処理における意味情報の利用、発話・作文における語の使用に関する研究の成果と残された課題について述べた。従来の言語獲得研究は、生成文法理論などに基づく統語能力の解明を軸として進展してきた。一方、近年では認知言語学や用法基盤モデルといった新たな理論が発展しつつあり、聴覚障害児の言語研究においてもことばの意味や使用の側面を重視した研究が必要であることを考察した。
著者
藤澤 隆史 松井 淑恵 風井浩志 古屋 晋一 片寄 晴弘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.764-770, 2009-08-15
参考文献数
6

本稿では,「ヒトは音楽をどのように感じているのか」という観点から脳機能の計測方法およびその実験デザインついて解説する.まず,脳において音楽がどのように認知されているかについて,「音楽の脳機能局在」の観点からその関連部位について概観する.次に,脳機能の計測において用いられている代表的な装置とその諸特徴を紹介し,有効な計測信号を得るための実験デザインについて解説する.最後に研究例を3つ紹介し,音楽認知研究における脳機能計測の有効性を示す.これらの例が示す脳機能計測の有効性は,ユーザが楽しめる音楽インタフェースを開発する上で,音楽を聴取する脳の働きや脳機能計測法に対する正しい理解を深めることが一層重要となることを示唆している.
著者
藤澤 隆史 土屋 晋 高島 杏菜 原田 甫 長田 典子
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.667-673, 2007-04-01 (Released:2007-07-01)
参考文献数
16

In this study, we evaluated observers' impressions on different styles of make-up applications. We showed the observers various styles of make-up for 3DCG characters, and they scored their impression of the made-up faces. In experiment 1, to identify the impression dimensions for the made-up faces, we had 38 undergraduate subjects evaluate 4 make-up styles using 23 adjectives. As a result, we extracted 2 factors, "external appearance" and "internal feeling" about the characters. In experiment 2, we had 70 undergraduate subjects evaluate 5 make-up styles using 7 adjectives. We applied the “positioning analysis" method for the SD data, and mapped the loading values for make-up styles (targets) and adjectives (scales) on a 2 dimensional plane. The results showed that the adjectives were different for each make-up styles, suggesting that the impression of CG characters can be controlled by make-up using texture synthesis.
著者
喜屋武 睦 濵田 豊彦 澤 隆史
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.317-325, 2017

<p>本研究では聴覚障害児の韻律情報の活用について発話と聴取の両面から検討を行った.対象児は関東地方の聴覚特別支援学校および難聴通級指導教室に通う聴覚障害児31名(平均聴力レベルの平均86.2 dBHL(SD=23.4))である.各対象児に対し2通りの意味解釈が可能な統語的曖昧文をそれぞれの意味で発話させた.その発話についての聴者による韻律情報の活用の程度に関する聴覚印象評価(韻律明瞭度)に影響を与える音響成分(F<SUB>0</SUB>やポーズなど),韻律明瞭度と聴力レベルとの関係について,そして発話および聴取による韻律活用との関係について検討を行った.その結果,統語的曖昧文の言い分けにはF<SUB>0</SUB>とポーズの変化が関係していること,韻律の言い分けには低周波数帯(250 Hz)の聴力レベルが関係すること,また,平均聴力レベル90 dBHLが境界値となることが示された.聴取可能な音響成分によって聴覚障害児なりにF<SUB>0</SUB>やポーズを駆使して統語境界を発話のなかで明示していることが示された.</p>