著者
金子 真弓 桐田 泰江 望月 利昭 佐藤 重仁
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.7-14, 2009

学生advanced cardiac life support (ACLS) ワークショップ (WS)は医学生が自主開催する救急救命処置講習会である。東海地区では現在までに15回開催し,総受講者数は315名である。我々は浜松医科大学にて第14回東海地区WSを開催した。また,約1ヶ月後にメーリングリスト (ML)を介してアンケート調査を行った。<br> アンケート実施対象MLの参加者は東海WS ML 306名,関西WS ML 525名,第8回金沢WS外部連絡ML 95名,および鳥取WSスタッフML 241名だった。各地のMLに重複加入している医学生が多いため,アンケート実施対象者の総人数は正確には把握できなかった。17大学から28名の回答者があった。インストラクター参加した動機としては,繰り返し教えることによる知識と技能定着のためが最も多く,主要な問題点として,費用と時間の問題があげられた。WSに参加する動機付けを強化するために,先輩医師,大学教官による内容の監修や統一したWSコンセンサスを作成することで,間違ったことを教えているのではないかという不安や事前準備の負担を軽減することが望まれる。
著者
宇野 彰 春原 則子 金子 真人 粟屋 徳子 片野 晶子 狐塚 順子 後藤 多可志 蔦森 英史 三盃 亜美
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.245-251, 2010 (Released:2010-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

本研究の目的は, 発達性ディスレクシア (DD) と後天性の大脳損傷によって生じる失読失書例との共通点と相違点について要素的認知機能の発達や局在化に関して検討することである. DD群は10名の右手利き例である. 失読失書例は右利きの男児2名である. 失読失書症例KYは8歳にてモヤモヤ病術後, 脳梗塞にて軽度失語症を発症し, その後軽微な失語症とともに失読, 失書症状が認められた発症半年後から追跡している症例である. 症例MSは, 8歳時の脳梗塞により健忘失語が観察された10年以上追跡してきている現在21歳の症例である. いずれも, 失語症状は軽微で失読失書症状が中心となる症状であった. SLTAではDD群, 失読失書例ともに読み書きに関連する項目以外は定型発達児群と差がなく音声言語にかかわる項目は正常域であった. DD群における局所血流低下部位は左下頭頂小葉を含む, 側頭頭頂葉結合領域であった. また, 機能的MRIを用いた実験により, 左下頭頂小葉にある縁上回の賦活量に関して典型発達群と比較して異なる部位であった. 一方, 失読失書2例における共通の大脳の損傷部位は左下頭頂小葉であった. DD群ではROCFT (Rey-Osterrieth Complex Figure Test) において遅延再生得点が平均の-1SDよりも得点が少なかったが, 失読失書2例においてはともに得点低下はなかった. 一方, 発達性ディスレクシアと後天性失読の大脳機能低下部位は類似していたが, 非言語的図形の処理能力は, 発達性ディスレクシア群で低く, 後天性失読例では保たれていた. 後天性言語的図形である文字と非言語的図形の処理は, 少なくとも8歳までの発達途上で機能が分離されてきているように思われた.
著者
宇野 彰 加我 牧子 稲垣 真澄 金子 真人 春原 則子 松田 博史
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.418-423, 1996-09-01 (Released:2011-08-10)
参考文献数
5
被引用文献数
9

漢字書字に特異的な障害を示す学習障害児としては2例目の報告である. 本男児は13歳でWISC-RにてVIQ 1o1, PIQ84と全般的な知能は正常であったが漢字書字は小学校1, 2年生レベルの単語の約20%しか書けなかった. 認知心理学的には既報告例とは異なり視覚的認知機能の異常を認めた. 電気生理学的には視覚性事象関連電位の異常も伴った.本症例は漢字や図形の弁別は可能で再生が困難であったことや漢字音読が可能であったことから, 視覚的認知障害に形態想起障害が加わった可能性が高いと思われた.
著者
金子 真司 後藤 義明 田淵 隆一 赤間 亮夫 池田 重人 篠宮 佳樹 今村 直広
出版者
国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所
雑誌
森林総合研究所研究報告 (ISSN:09164405)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.259-264, 2018

福島県十万山(浪江町・双葉町)の森林火災(2017年4月29日~ 5月10日)の延焼地において、火災直後に山頂部のアカマツ林と谷部のスギ林で樹木と土壌の試料を採取して放射性セシウム(RCs: <sup>134</sup>Cs+<sup>137</sup>Cs)濃度を測定して火災の影響を調べた。樹木については、同一木の幹の燃焼側と非燃焼側から樹皮を採取した。土壌は燃焼地と隣接する非燃焼地から堆積有機物層と表層土壌を採取した。アカマツでは燃焼樹皮が非燃焼樹皮に比べて現存量とRCs 濃度とRCs 蓄積量が小さかった個体が存在した。また、アカマツ林、スギ林で調査したすべての堆積有機物層のRCs 濃度が燃焼箇所に比べて非燃焼箇所で高かった。
著者
宮崎 安将 金子 真也
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

きのこの子実体形成には光が必要である。シイタケの光受容体遺伝子 Le.cry は、担子菌初のクリプトクロム型光受容体をコードしていた。その産物Le.CRY の解析 の結果、青色光領域を吸収し子実体形成に関わることが示唆された。プロテオーム解析の結果、 リン酸化や糖鎖付加などの翻訳後修飾を介して、子実体形成に関わる代謝経路やシグナル伝達 経路が存在することが分かった。トランスクリプトーム解析の結果、光応答遺伝子群を網羅・ 同定した。
著者
宮崎 安将 金子 真也 坂本 裕一
出版者
国立研究開発法人 森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

シイタケの子実体形成には光が必要である。現在までに光受容体をコードする遺伝子phrA, phrB, Le.cryを単離・同定しているが、光受容体は光を一番最初に受け取る分子であるため、これらの発現は分化ステージによらず、構成的であることが多い。そこで、きのこ類に存在する光応答メカニズムを含めた関連因子(タンパク質)を網羅するため、シイタケにおける子実体形成過程を①栄養増殖菌糸、②子実体原基、③成熟子実体に分け、各々の試料から細胞内タンパク質を抽出し、二次元電気泳動に供した。3種の蛍光染色(全タンパク質染色、リン酸化タンパク質染色、糖鎖付加タンパク質染色)を行い、モレキュラーイメージャーにて解析した。検出されたタンパク質は、各々の分化ステージにおいて約6000種類、リン酸化タンパク質は約300種類、糖鎖付加タンパク質は約30種類存在することが明らかとなった。発現に差異のあるスポットをゲルから切り出した後プロテアーゼ処理を行い、目的タンパク質の分解産物(ペプチド)画分を得た。サンプルはLC-MS/MSにてアミノ酸配列解析を行った後、タンパク質質量分析器データベース(マスコット・サーバー)に対し相同性検索を行い、目的産物タンパク質を同定・機能推定を行った。その結果、子実体形成期に特異的に発現するタンパク質は、その発現が上昇するもの(脂肪酸分解酵素、ATP合成タンパク質、G-タンパク質ファミリー、細胞骨格タンパク質、シグナル伝達関連因子等)と、一方減少するもの(カタラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、オキシドレダクターゼ等)が同定された。これらタンパク質は、現在までのトランスクリプトーム解析によるデータと照らし合わせ、きのこの子実体形成期間に細胞内で起こっている代謝やシグナル伝達経路を如実に反映しているものと示唆された。
著者
田中 良幸 辻 敏夫 金子 真
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.119, no.4, pp.425-431, 1999-04-01 (Released:2008-12-19)
参考文献数
13

This paper proposes a new method for dynamic control of redundant manipulators via artificial potential field approach (APFA). The proposed method is based on the APFA with a combination of a time scale transformation and a time base generator which works as a time scale compressor. The dynamic behavior of the manipulator can be controlled by using the proposed method without any change of the form of the designed controller itself. The effectiveness of the proposed method is verified by computer simulations for redundant manipulators.
著者
金子 真
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.617-619, 1998-07-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
1 2
著者
今村 信昭 吉成 聡志 金子 真
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 C編 (ISSN:03875024)
巻号頁・発行日
vol.59, no.564, pp.2395-2400, 1993-08-25 (Released:2008-02-26)
参考文献数
14

A simple torque sensor for a tendon-driven manipulator is proposed. The finger joint torque around a drive pulley is proportional to the tension difference on both ends of the pulley. With a coupling mechanism between tendons, this tension difference can be measured directly without detecting individual tendon tensions. The tension differential-type torque (T.D.T.) sensor is based on this idea and is useful for compensating for friction existing in the transmission system of the manipulator. However, so far, the T.D.T. sensor needs at least one tension pulley to support a driving tendon. This paper shows that it is possible to design a T.D.T. sensor without any tension pulley maintaing its basic principle. A torque sensor installation on the movable link makes it possible to eliminate the tension pulley and downsize it.
著者
金子 真 和田 充雄 前川 仁 谷江 和雄
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.437-444, 1991-08-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
14
被引用文献数
1

This paper discusses transmission characteristics of tendon-sheath driving system typically used to actuate robotic finger joints, and also their effects on force control system. For a simple tendonsheath model, we first formulate the transmission characteristics with the newly introduced two physical parameters apparent tendon-stiffness and equivalent backlash. An interesting aspect is that apparent tendon-stiffness changes when the tendon is pulled or loosened, while tendon-stiffness itself keeps constant. This unexpected behavior is confirmed by simulations as well as experiments. We also consider the effect of apparent tendon-stiffness on force control precisely and show that the direction-dependent behavior ofapparent tendon-stiffness eventually brings about a direction-dependent response in the force control system.
著者
中村 好德 福間 康文 金子 真 小林 良次
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.51-55, 2017 (Released:2017-07-01)
参考文献数
19

ホルスタイン種去勢雄牛16 頭の半腱様筋を用いて,熟成処理の違いが肉質に及ぼす影響を調査し た.熟成処理は無処理(NA),冷蔵熟成(2˚C で38 日間;WA),氷温熟成[ − 1˚C で54 日間(HA-S)と108 日 間(HA-L)] ならびに乾燥熟成(2˚C で38 日間;DA)に区分した.NA に比べてWA とHA-S でドリップロスが 有意に増加した.HA-L とDA で破断強度が有意に低下し,DA で過酸化物価が有意に上昇した.WA で一般生菌 数が有意に増加したが,大腸菌群数は全ての検体で陰性だった.遊離アミノ酸総量は有意に増加し,特にHA-L で 顕著であった.また,脂肪融点,タウリンとカルノシン含量,遊離アミノ酸組成は変化しなかった.と畜後の熟成 処理により肉質は変化し,熟成方法によりその変化は異なることが示唆された.
著者
白井 達也 金子 真 辻 敏夫
出版者
日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.567-576, 1999-05-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
29
被引用文献数
2

This paper discusses the scale-dependent grasp. Suppose that an object is initially placed on a table without touching by human hand and, then he (or she) finally achieves an enveloping grasp after an appropriate approach phase. Under such initial and final conditions, human unconsciously changes the grasp strategy according to the size of object, even though they have similar geometry. We call the grasp planning the scale-dependent grasp. Focusing on column objects, we first classified the grasp patterns into a couple of grasps and extracted the essential motions so that we can apply the scale-dependent grasp to multi-fingered robot hands. We found that the grasp patterns should be also changed according to the surface friction and the geometry of cross section of object in addition to the scale. The basic strategies were verified by experiments. Finally, we considered how each strategy should be switched from one to another.
著者
樋田 大二郎 岩木 秀夫 耳塚 寛明 大多和 直樹 金子 真理子 堀 健志 岡部 悟志
出版者
青山学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

実証研究の結果、日本の高校では確かにゆとりから学力回帰の流れが起きており、学力向上のためには、かつてのメリトクラシーとトラッキングの組み合わせによる構造に起因する動機付けでは無く、また内発的動機付けに期待する多様化の制度改革も一段落して、今日では学校生活の楽しさと個別的面倒見主義による動機付けが強調され、あるいはそれを支える新自由主義的競争原理の導入などが進行していた。しかし、そうした動向は主体性や創造性などの従来からの教育的価値を損なう危険を秘めていた。研究グループは、シンガポールとの国際比較研究から、代案として複線型教育体系もしくはその要素の一部を日本に導入することを検討した。
著者
春原 則子 宇野 彰 朝日 美奈子 金子 真人 粟屋 徳子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.263-270, 2011 (Released:2011-10-06)
参考文献数
21
被引用文献数
11 7

近年発達性dyslexiaにおいて注目されている音読の流暢性に関して, 音読所要時間を評価尺度として, 872名の小学1年から6年生の典型発達児を対象に, その発達と背景にある認知機能を検討した. 刺激として, ひらがな, カタカナの単語と非語, および文章を使用した. 単語の音読速度は小学3年生までに急速に発達し, その後も緩やかに発達すること, 非語と文章の音読速度は高学年になっても発達する可能性のあることが示された. 日常生活上の必要性を鑑みて, 音読速度も文章での評価が重要と考えられた. 重回帰分析の結果, 音読速度に影響する要因として自動化能力と音韻認識力が示されたが, それぞれの寄与率は学年によって変化し, 単語の音読速度に対する音韻情報処理能力の影響は学年が上がるにつれて小さくなり, 自動化能力の影響が大きくなった. また, 単語と文章については語彙力の寄与も示唆された.
著者
明石 法子 宇野 彰 春原 則子 金子 真人 Taeko N. Wydell 粟屋 徳子 狐塚 順子 後藤 多可志
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-7, 2013 (Released:2013-04-03)
参考文献数
10
被引用文献数
2 1

発達性読み書き障害児における漢字単語音読の特徴を明らかにすることを目的とし,小学校2年生から6年生の発達性読み書き障害児37名と典型発達児991名を対象に,「小学生の読み書きスクリーニング検査(STRAW)」漢字単語音読課題における誤反応の分析および単語属性効果の検討を行った.誤反応分析の結果,発達性読み書き障害児は典型発達児に比べ,課題語を他の実在語に読み誤る語性錯読および無回答が多く,文字と音の対応は正しいが語単位では誤っている読み方である類音性錯読の出現率が低いという特徴が認められた.単語属性効果に関しては,親密度の高低にかかわらず,心像性の低い語,すなわちイメージが思い浮かべにくい語で誤りやすいことが明らかになった.こうした特徴には,音韻情報処理過程と視覚情報処理過程双方の障害という発達性読み書き障害児の認知能力が背景となっている可能性があり,診断の補助的指標や有効な学習法の開発に役立つと考えられた.
著者
中村 好徳 金子 真 林 義朗 莟 博行 山田 明央
出版者
日本暖地畜産学会
雑誌
日本暖地畜産学会報 (ISSN:2185081X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.181-194, 2012-09-28 (Released:2012-12-29)
参考文献数
36
被引用文献数
1

褐毛和種去勢雄牛(4頭,8~9ヵ月齢)を用いて,配合飼料無給与で暖地型牧草(バヒアグラスなど)放牧地と寒地型牧草(イタリアンライグラス)放牧地で周年放牧育成(草地育成期間:293日)後,放牧を続けながら自家産のサイレージ(トウモロコシと大豆の混植)を併給する肥育方法により飼養(草地肥育期間:248日)し産肉性と肉質を調査した.放牧期間中の1日増体量は,草地育成期間で0.35 ±0.03 kg/日,草地肥育期間で1.02 ±0.10 kg/日であった.供試牛の血液性状は飼料成分(特に生草)の変化に顕著な影響を受け,季節変動が激しかったが正常値範囲内の変化に留まった.供試牛は26.8 ±1.0ヵ月齢で体重676 ±50 kgで出荷され牛枝肉格付評価はB-2であった.また,屠畜後の内臓廃棄率は0%であった.本研究で調査された食肉科学および栄養学的データを他の慣行肥育牛のデータと比較検討することにより,褐毛和種去勢雄牛の草地肥育牛は,1)産肉性として,‘まえばら’と‘そともも’の発育が良好であること,2)肉質として,ほとんどの部分肉の脂質含量が和牛肉と乳用肥育牛肉の間に位置すること,β-カロテン含量が高くコレステロール含量と脂肪酸組成のn-6系多価不飽和/n-3系多価不飽和比率が低いことが明らかになった.これらのことから褐毛和種去勢雄牛の草地肥育における産肉性や肉質の特徴が明らかになった.