著者
伊藤 大輔 中澤 佳奈子 加茂 登志子 氏家 由里 鈴木 伸一 金 吉晴
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.19-29, 2015-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、PTSD症状と生活支障度の関連を検討し、認知行動的要因がそれぞれに及ぼす影響を明らかにすることであった。主にDVをきっかけに医療機関を受診した女性のPTSD患者41名を対象に、出来事チェックリスト(ECL)、PTSD症状(IES-R)、生活支障度(SDISS)、認知的評価(CARS)、PTSD症状に対する否定的解釈(NAP)、対処方略(TAC)を実施した。IES-RとSDISSに弱い相関が見られたため、階層的重回帰分析を行った結果、PTSD症状には、トラウマの脅威性の認知、症状に対する否定的予測と意味づけ、回避的思考の有意な正の影響性が見られた。一方、生活支障度には、トラウマの脅威性の認知、放棄・諦めの有意な正の影響がみられ、肯定的解釈、責任転嫁の有意な負の影響が見られた。これらのことから、DVに起因したPTSD患者には、生活支障度の改善に焦点を当てた介入を積極的に行う必要性が示唆された。
著者
長 知樹 鈴木 伸一 南 智行 益田 宗孝
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.18, no.6, pp.631-634, 2009-10-25 (Released:2009-11-06)
参考文献数
6

症例は75歳男性.6 年前にリウマチ性多発筋痛症と診断され,ステロイドが開始された.1 カ月後に突然の胸背部痛で来院しStanford B型急性大動脈解離と診断し,厳重な降圧治療を開始した.発熱,炎症反応の高度上昇,CT所見から感染性大動脈解離を疑い抗菌薬治療を同時に開始した.血液培養からSalmonellaが検出された.5 週間後,突然の腰背部痛が出現し,CTで再解離,右下肢虚血を認めたため,緊急右腋窩動脈-右大腿動脈バイパス術を行った.その後も抗菌薬治療を継続し独歩退院となった.感染性大動脈解離は比較的稀であるが,急激な経過をたどることがある.感染性B型解離に対しては,降圧保存治療と抗菌薬投与による感染の沈静化が重要である.しかし治療の急性期に大動脈の急速な拡大や再解離発生の危険は高く,厳重に経過観察し,合併症発生時には迅速に外科治療を施行する必要がある.
著者
藤目 文子 尾形 明子 在原 理沙 宮河 真一郎 神野 和彦 小林 正夫 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.167-175, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
1

本研究の目的は、1型糖尿病患児を対象としたキャンプが、病気の自己管理行動に及ぼす影響を検討することであった。キャンプの前後に1型糖尿病患児28名に対して、自己管理行動に対するセルフエフィカシー、糖尿病に関する知識、ストレス反応、HbAlcを測定した。キャンプにおいて、ストレス反応が減少し、自己の症状把握に対するセルフエフィカシーの上昇が認められた。さらに自己注射や、糖分摂取、インスリン調節に対するセルフエフィカシーがストレス反応やHbAlc値を改善させる要因として示唆された。1型糖尿病患児を対象としたキャンプは、症状コントロールのための自己管理行動へのセルフエフィカシーや知識の向上に効果的であることが示唆された。
著者
鈴木 伸洋 柵瀬 信夫 杉原 拓郎
出版者
Japanese Society for Aquaculture Science
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.277-289, 1989-03-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
12
被引用文献数
3

Morphological development of the oriental goby, Acanthogobius flavimanus reared from eggs to juveniles in the laboratory at Sagami Bay, Japan is described. During mid February ovarian maturation is successfully induced by injection of the LH-releasing hormone of Gonadotropin. The dose of the hormone was 5IU/g body weight and was injected 4 times at an interval of one day for ovulation at water temperature of 12 to15°C. Artificial fertilization was accomplished on the first of March, 1985. The numberof ripe eggs removed artificially was about 25, 000. The eggs immediately after insemination are spherical in shape, measuring 0.99-1.10 mm in diameter. They have a bundle ofadhesive filaments at their basal end and a cluster of small oil globules. The egg membrane elongates to form a perivitelline space when the inflation ceases about 30 minutes after insemination. The eggs alter ellipsoid shape and measure about 3.93 mm on the long axis. Hatching began about 18 days after insemination at water temperature of 15.0-15.4°C. Soon before hatching, embryos fold down the tail at the basal end region of eggshell. The newly hatched larvae are 4.13-4.86 mm in total length (TL), with 31 (13+18) myomeres. The larvae usually lay on their body on the bottom of the aquarium. Many melanophores and guanophores are distributed on eye cups, gas bladder, intestine and in the caudal region. Complex of pigments form a band in the caudal region, but the band is never connected with the pigments on intestine. This character is not shared with larvae of A. hasta and A. lactipes. Seven days after hatching the yolk was completely absorbed and the larvae attained a total length of 5.73-6.10 mm.The larvae swim actively in the aquarium and start to practice feeding on the rotifer. Twenty days after hatching, the larvae averaged 9.01 mm in TL and the caudal notochord flex at 45°. Rudimental second dorsal, anal, caudal and ventral fins are also formed. The larvae attained 11.00-15.00 mm in TL, thirty five after hatching, are found to transit the bottom-life and first dorsal and ventral fins are completely formed. During the late postlarval stage, the fish is nervously to develop the free neuromast on the skin surface. The larvae reached the juvenile stage at 45-50 days after hatching and attained 13.85-24.90 mm in TL. At this period all scales appeared on the body. A clear black spot on the first dorsal fin is characteristic at the immature stage of the fish. The larvae and juveniles were reared by feeding them with the rotifers, Artemia nauplii, krill meat and lugworm meat for one year. The growth of larvae and juveniles in 1985 is expressed by the following equations.Y1=4.697×1.034x (0≤X≤45)Y2=0.716X-14.123 (46≤X≤170)Y3=160.18lnX-715.90 (171≤X≤330)where Y is the total length (mm) and X is number of days after hatching. The fish grew to 189.55-232.70 mm in TL and became mature in one year. Most of the individuals attained gonadal maturation and died after spawning.
著者
小関 俊祐 伊藤 大輔 杉山 智風 小川 祐子 木下 奈緒子 小野 はるか 栁井 優子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.61-72, 2022-01-31 (Released:2022-04-01)
参考文献数
11

本研究の目的は、栁井他(2018)のコンピテンス評価尺度を用いて、臨床心理士養成大学院の大学院生の自己評価と教員による他者評価を行うことでCBTコンピテンスの実態把握と、2時点調査による教育に伴うコンピテンスの変化について基礎的な知見を得ることであった。臨床心理士養成大学院の臨床心理学コースに在籍中の修士課程2年の大学院生、および同大学院においてCBTに関連する講義・実習などを担当している大学専任教員を対象に、X年7月とX年10月の2回にわたって縦断調査を実施した。1回目の調査では教員29名と大学院生87名、また2回目の調査では教員27名と大学院生67名が分析対象となった。本研究の結果から、日本の大学院生におけるCBTコンピテンスの実態に関する基礎的データが得られた。そして、日本のCBTの質保証に向けた今後の取り組みとその課題について論じられた。

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著者
鈴木伸元著
出版者
幻冬舎
巻号頁・発行日
2010
著者
鈴木 伸生
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.48, pp.115-128, 2019-08-30 (Released:2021-02-26)
参考文献数
41

本稿の目的は,集団のネットワーク構造がLinの社会関係資本の形成に及ぼす影響について,Coleman,Burt,Putnamの理論に依拠したネットワークの閉鎖性/開放性を表す閉鎖的/開放的集団への参加効果に関する仮説を検証することである.日本の代表的な大規模調査JGSS 2012データを用いて,多変量解析(Heckit, ZINB)を行った結果,第1に,開放的集団への参加数が多い個人ほど,豊かな社会関係資本(一般的社会関係資本,拡張性,上方到達可能性,異質性)を形成していた.第2に,閉鎖的集団への参加数が多い個人ほど,アクセス可能な地位の総数(拡張性)を多く形成していた.以上の知見は,豊かな社会関係資本の形成に対するネットワークの開放性の重要性を示唆している.
著者
鈴木 伸生
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.137-166, 2016-05-30 (Released:2021-12-29)
参考文献数
56

健康に対する集団の社会関係資本の効果は、当該集団の「文脈効果」によって生じるのか、それとも「メンバー個人の社会関係資本」によるのか。この問いにこたえるために、本稿では、結束型集団としての大学クラブ・サークルを対象に、集団の構造的・認知的社会関係資本が成員の主観的健康に及ぼす影響について、個人レベルと集団レベルの双方から検討した。 二〇一二年二月~三月にかけて総合大学の学生を対象に実施した調査データを用いて、ロジスティック回帰分析を行った結果、第一に、結束型集団では、集団レベルの構造的社会関係資本のみが主観的健康を促進していた。第二に、結束型集団では、従来健康に対して影響をもつと想定されてきた認知的社会関係資本の文脈効果は、構造的社会関係資本の文脈効果によるものであった。 以上の知見は、先行研究で未検討だった集団の構造的社会関係資本が、主観的健康に対して主要な役割を果たす点を示唆している。ただし、その効果は、一つの結束型集団に所属する個人においてのみ、有効である可能性がある。
著者
鈴木 伸生
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.96, pp.193-220, 2015-07-10 (Released:2022-01-21)
参考文献数
43

本稿では、日本の新規大卒就職において、OBへのアクセスとその効果に格差が存在するのかどうかを検証した。一九八八-二〇〇六年に初職についた大卒者を対象に、代表性のあるJLPSデータを用いて分析を行った。 まず、OBへのアクセスについて検討した。その結果、高ランク大学の社会科学系への所属、サークル・部活動への熱心な参加によって、OBへのアクセスが促された。 次に、大企業・官公庁への入職に対するOB利用の効果を検討した。その結果、OB利用の主効果が見られる一方で、大学ランクとOB利用の交互作用効果は確認されなかった。 このように、OBへのアクセスには、高ランク大学の社会科学系か否かによって大きな格差が存在する一方で、OB利用の効果には、そのような格差は見られなかった。さらに、本稿の知見は、サークル・部活を経由するネットワーキングが、OBへのアクセス機会を増やす可能性を示唆している。
著者
佐藤 秀樹 伊藤 理紗 小野 はるか 畑 琴音 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
pp.210902165, (Released:2022-08-23)
参考文献数
37

The deterioration of workers’ mental health and the resulting decline in their work performance have become significant contemporary problems. This study examined the relationship between reinforcement sensitivity (i.e., the behavioral inhibition/activation systems), rumination, depression, and the decline in work performance among local government employees. All the regular and non-regular employees in a local government aged 20 years or older, working over 29 hours per week, responded to a self-administered, anonymous questionnaire survey. We analyzed the responses of 2,223 employees. The results of structural equation modeling indicated that depression was positively associated with a decline in work performance. Also, the behavioral inhibition system was positively associated with depression, partially mediated by rumination. In contrast, the behavioral activation system was negatively associated with depression, which was not mediated by rumination. These results are meaningful for developing a psychological model of depression related to local government employees’ work performance decline.
著者
在原 理沙 古澤 裕美 堂谷 知香子 田所 健児 尾形 明子 竹内 博行 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.177-188, 2009-05-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
6

本研究の目的は、小学生児童を対象とした学級における集団社会的スキル訓練の効果を検討することであった。対象者は小学生児童42名(男子18名、女子24名:9〜10歳)であった。児童は先行群と待機群に分けられ、両群の児童は4週間、学級を対象とした集団社会的スキル訓練(以下集団SST)に参加した。訓練効果は、自己評価による社会的スキル得点、対人的自己効力感得点、学校生活満足度得点によって評定された。結果、集団SSTは、児童の社会的スキル、対人的自己効力感、および被侵害感を改善させることが示唆された。次に、訓練前の社会的スキルの自己評価得点の高さによって3群に分けられた(低群・中群・高群)。各得点において群の違いを分析した結果、集団SSTは、社会的スキルの自己評価が中程度の児童の社会的スキルの改善において、特に効果的であったことが示唆された。
著者
尾形 明子 宮谷 真人 中尾 敬 島津 明人 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.33-42, 2008-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究は、不安と自己関連処理との関連について検討することを目的とした。60人の実験参加者は不安条件、ノイズ条件、負荷なし条件に割り当てられ、呈示された中性語に対して、自己関連づけ課題、他者関連づけ課題、意味課題の3つの方向づけ課題を行い、その後自由再生課題を行った。実験中、不安条件では不安を喚起させ、ノイズ条件では80dBのホワイトノイズを呈示した。その結果、不安条件では他の条件に比べて自己関連づけ課題の再生率が低くなっており、不安は自己関連づけ課題の再生成績にのみ影響を及ぼしている可能性が示された。
著者
伊藤 理紗 兼子 唯 巣山 晴菜 佐藤 秀樹 横山 仁史 国里 愛彦 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.237-246, 2016-05-31 (Released:2019-04-27)
参考文献数
15
被引用文献数
1

本研究では、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動(以下、SB)が治療効果に及ぼす影響性の差異について検討した。ゴキブリ恐怖の大学生(N=30)を対象に、対象者を三つの介入条件のいずれか一つに割り当てた:(a)SBなし群、(b)恐怖ピーク前SB群、(c)恐怖ピーク後SB群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖に関する変数を従属変数とした分散分析の結果、すべてのゴキブリ恐怖の変数において時期の主効果が有意であった。単純主効果の検定の結果、すべての群においてエクスポージャー直後とフォローアップ時のゴキブリ恐怖は、エクスポージャー前と比較して、有意に低かった。最後に、各群のエクスポージャー中の恐怖の推移もふまえて、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動が治療効果に及ぼす影響について、考察した。
著者
岡島 純子 佐藤 容子 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.1-11, 2011-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、幼児を持つ母親の自動思考を測定する育児自動思考尺度(ATQ-CR)を開発し、ストレス反応との関連について検討することであった。予備調査1にて、育児ストレス場面を抽出し、予備調査2にて、四つの育児ストレス場面、78の自動思考項目を抽出した。本調査では、探索的因子分析、高次因子分析を行い、ネガティブ思考29項目、ポジティブ思考14項目が抽出された。ATQ-CRの内的整合性は高く(ネガティブ思考因子α=.90、ポジティブ思考因子α=.76)、妥当性は、内容妥当性と基準関連妥当性の観点から確認された。SOMモデルに基づき、自動思考のバランスとストレス反応の関連性について検討した結果、ネガティブ寄り群、中立群のほうがポジティブ寄り群よりもストレス反応が有意に高かった。本研究の結果から、育児中の母親に対して自動思考に焦点を当てたストレスマネジメント介入の必要性が示唆された。
著者
伊藤 理紗 巣山 晴菜 島田 真衣 兼子 唯 伊藤 大輔 横山 仁史 貝谷 久宣 鈴木 伸一
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.63-71, 2015-03-31 (Released:2015-05-29)
参考文献数
17

本研究は,SAD患者の曖昧な場面の中性的・否定的解釈の関連の検討,および曖昧な場面の肯定的・中性的・否定的解釈がSAD症状の重症度に及ぼす影響について検討を行った。SAD患者50名を対象に,(1)Liebowitz Social Anxiety Scale(朝倉ら,2002),(2)曖昧な場面の解釈の質問紙について回答を求めた。相関分析の結果,曖昧な社会的場面の中性的解釈と否定的解釈の間に相関は認められず,曖昧な社会的場面の肯定的解釈と否定的解釈の間のみに負の相関が認められた(r=-.48, p<.001)。重回帰分析の結果,曖昧な社会的場面の否定的解釈(β=.34, p<.05)のSAD症状の重症度への影響が有意であった。本研究の結果から,曖昧な場面の否定的解釈の低減にあたり,肯定的解釈の活性化の有効性が示唆された。