著者
巣山 晴菜 大月 友 伊藤 大輔 兼子 唯 中澤 佳奈子 横山 仁史 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.35-45, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、パフォーマンスの解釈バイアス(以下、解釈バイアス)が社交不安に対するビデオフィードバック(以下、VFB)の効果を規定する要因の一つであるかを検討することであった。大学生27名を対象に、VFBを挟んだ2度の3分間スピーチからなる実験を行い、スピーチ前の主観的不安感、スピーチ中の主観的不安感、スピーチの自己評価および他者評価、心拍数を測定した。パフォーマンスの質については解釈バイアスの大小による差は見られなかった。しかし、解釈バイアスの大きい者ほどVFBを受けることで自己評価は改善し、スピーチ前およびスピーチ中の不安感は低下することが明らかにされた。本研究の結果から、解釈バイアスが大きい者の社交不安症状に対してVFBが一層有効である可能性が示唆された。
著者
伊藤 理紗 矢島 涼 佐藤 秀樹 樋上 巧洋 松元 智美 並木 伸賢 国里 愛彦 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.13-22, 2019-01-31 (Released:2019-06-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究では、(1)安全確保行動を恐怖のピークの前でとるか後でとるか、(2)恐怖対象への視覚的な注意の有無が、治療効果に及ぼす影響を検討した。ゴキブリ恐怖の大学生を対象に、四つの条件のいずれか一つに割り当てた:(a)恐怖ピーク後注意あり群、(b)恐怖ピーク後注意なし群、(c)恐怖ピーク前注意あり群、(d)恐怖ピーク前注意なし群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖を従属変数とした分散分析の結果、メインアウトカムである行動評定の恐怖度の変数において、時期の主効果が有意であった。また、セカンダリーアウトカムである想起時の回避度において、交互作用が有意であった。単純主効果の検定の結果、a・b群はフォローアップ時の回避度の改善が認められないのに対し、c・d群は改善が認められた。最後に、治療効果が認められた原因について考察した。
著者
鈴木 伸一 小関 俊祐 伊藤 大輔 小野 はるか 木下 奈緒子 小川 祐子 柳井 優子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.93-100, 2018-05-31 (Released:2019-04-05)
参考文献数
5
被引用文献数
2

本研究の目的は、英国のCBTトレーニングにおける基本構成要素と教育方法を明らかにすることであった。英国認知行動療法学会のLevel 2認証を得ているCBTトレーニングコースのカリキュラム責任者を対象に、CBTトレーニングにおける基本構成要素と教育方法に関する調査を実施した。その結果、英国認知行動療法学会のLevel 2の認証を受けたトレーニングコースにおいては、おおむねガイドラインに沿った包括的な教育がなされていた。特に、治療関係の構築やクライエントの個別性への対応、およびスーパービジョンの有効活用などについては、現場実習における実践的なトレーニングが重視されていることが明らかになった。最後に、本研究の結果を日本のCBTトレーニング・ガイドライン策定にどのように活用していくかについて考察された。
著者
鈴木 伸一 嶋田 洋徳 三浦 正江 片柳 弘司 右馬埜 力也 坂野 雄二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.22-29, 1997 (Released:2014-07-03)
参考文献数
16
被引用文献数
7

本研究の目的は、日常的に経験する心理的ストレス反応を測定することが可能であり、かつ簡便に用いることができる尺度を作成し、その信頼性と妥当性を検討することであった。まず、新しい心理的ストレス反応尺度 (SRS-18) が作成された。調査対象は、3,841名 (高校生1,316名、大学生1,206名、一般成人1,329名) であった。因子分析の結果、3因子が抽出された。それぞれの因子は、「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、「無気力」と命名された。各因子の項目数は、それぞれ6項目であった。尺度の信頼性は、α係数、再検査法、折半法によって検討され、いずれも高い信頼性係数が得られた。次に、SRS-18の妥当性が検討された。内容的妥当性、および、高ストレス群と低ストレス群、健常群と臨床群における弁別的妥当性について検討され、いずれもSRS-18が高い妥当性を備えていることが示された。本研究の結果から、SRS-18は、高い信頼性と妥当性を備えた尺度であることが明らかにされた。最後に、ストレスマネジメントの観点から、臨床場面や日常場面におけるSRS-18の有用性が討議された。

2 0 0 0 OA 臍石について

著者
浜田 稔夫 鈴木 伸典 馬場 堯
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association
雑誌
皮膚 (ISSN:00181390)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.112-118, 1975 (Released:2010-06-04)
参考文献数
13

臍石(Omphalith)の3例を報告し, 中2例は剥離摘出して組織学的検討を加えた。いずれも70 歳以上の女性で, 1~数年前に臍窩に黒褐色の疣状小結節のあるのに気付き, 放置していたところ, 漸次増大, 突出するようになった。皮膚面に固く附着するも, 剥離摘出したあとの臍窩皮膚はほぼ正常で, 剥離標本の露出部は黒褐色を呈し, 石のように硬いが, 非露出部では比較的柔らかく, 粥状で, 白色に近い。組織所見はH.E.染色でエオジンに瀰漫性に淡く染まるが, 核成分はみられない。臍窩の比較的深い者に清浄不良が重なって生じたもので, 皮脂, 角質などの蓄積によるものと考えられる。併せて鑑別診断などについても考察を加えた。
著者
平山 裕子 井元 清隆 鈴木 伸一 内田 敬二 小林 健介 伊達 康一郎 郷田 素彦 初音 俊樹 沖山 信 加藤 真
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.60-64, 2008-01-15 (Released:2009-09-11)
参考文献数
27
被引用文献数
2 2

症例は76歳,女性.両下肢浮腫と呼吸困難を主訴に来院した.経胸壁心エコーで右房内に可動性に富む腫瘤を認め,心不全を伴う右房内腫瘤と診断し手術を施行した.術中の経食道心エコーで右房内腫瘤が下大静脈内へ連続していることを確認したが原発巣は不明なため,心腔内腫瘤摘除にとどめ,残存腫瘍断端はクリップでマーキングした.術直後のCTで子宮筋腫から下大静脈内へ連続する構造物の中にクリップを認め,さらに摘出標本の病理所見からintravenous leiomyomatosis(IVL)と診断した.術後半年のCTでクリップは下大静脈から子宮に連続する静脈内に移動しており,腫瘍は退縮傾向であると考えたが,今後も厳重なる経過観察が必要である.
著者
鈴木 伸尚
出版者
国文学研究資料館
雑誌
国文学研究資料館紀要. アーカイブズ研究篇 = The bulletin of the National Institute of Japanese Literature. 人間文化研究機構国文学研究資料館 編 (ISSN:18802249)
巻号頁・発行日
no.13, pp.159-168, 2017-03

本稿では、大学の学生寮に関する記録史料(アーカイブズ)がどのように整理・保存・公開されているかについて、京都大学の学生自治寮を中心的な事例としてとりあげ、さらに、今後の学生寮関係資料の行方について大学のアーカイブズ機関をめぐる状況から考察した。 京都大学の学生寮はすべて寮の管理・運営に学生の自治会が携わる「自治寮」であるが、自治会が作成した記録(レコード)は必ずしも十分な保存管理状況にはない。ただし吉田寮自治会から京都大学文書館への移管や吉田寮生の有志による展示会(「今昔吉田寮展」)など、アーカイブズを志向する試みがないわけではない。 また「国立公文書館等」に指定された大学のアーカイブズ機関は2016 年現在、14 施設を数えるが、これらの機関での学生寮関係資料の収集・保存・公開状況には各大学ごとに差が大きい。機関・収集アーカイブズを十全ともたない大学における記録史料の散逸が危惧される。廃寮後の資料の一部は、同窓会組織が支えている現状である。 今後、大学のアイデンティティ、アカウンタビリティの観点から、つまり学生がどのように学び、感じ、生きたかを示す素材として、学生寮関係資料のアーカイブズ化が望まれる。By focusing on the Autonomous Dormitory belonging to Kyoto University, this paper seeks to consider, first, ways in which archival material relating to university dormitories is organized, preserved, and made public, as well as, second, the methods by which such material may be dealt with from hereon in by university archival centers. All of the dormitories at Kyoto University are governed and operated by the student union. Records produced by the student union, while helpful, are not always complete. Even so, some sincere efforts have been made by students eager to commit their records to longer-lasting archives. For example, the student union in charge of the Yoshida Dormitory had their records transferred to the university archives, while a number of students have produced an exhibition about the history of that same dormitory.Just this year (2016), a total of fourteen national archival centers were duly designated in various universities. Great differences exist, however, in the extent to which material relating to university dormitories is collected, preserved, and made public in each of these newly designated centers. Universities lacking ample resources run the risk of losing a great deal of such materials. As a preventative measure, a number of alumni associations have taken some of the responsibility of preserving materials after their previous dormitories have been torn down.Material relating to university dormitories offers invaluable insights into student life—how students learn, their emotional responses to university life, as well as their daily activities—and is therefore important when discussing the identity and accountability of a given university.
著者
元川 竜平 遠藤 仁 横山 信吾 西辻 祥太郎 矢板 毅 小林 徹 鈴木 伸一
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2015年度日本地球化学会第62回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.190, 2015 (Released:2015-09-03)

福島第一原子力発電所の事故により環境中へ放出された放射性セシウムが、福島県を中心に広範な地域に対して環境汚染をもたらした。放射性セシウムは、水を介して拡散し、土壌に吸着しているが、その中でも特に風化黒雲母・バーミキュライトといった特定の粘土鉱物に濃縮され、強くとり込まれることが明らかにされている。そこで我々は、X線小角散乱(SAXS)法を用いて、バーミキュライト・風化黒雲母/セシウム懸濁液の構造解析を行い、セシウムイオンの吸着に伴う粘土鉱物の構造変化を明らかにした。
著者
内田 博 高柳 茂 鈴木 伸 渡辺 孝雄 石松 康幸 田中 功 青山 信 中村 博文 納見 正明 中嶋 英明 桜井 正純
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.131-140, 2007
被引用文献数
3

1994年から2003年にかけて埼玉県中央部の丘陵地帯で,20×20 km,400 km<sup>2</sup>の調査区を設定して,オオタカの生息密度,営巣環境,繁殖成績,繁殖特性などを調査した.調査地での生息密度は1996年から2003年にかけて100 km<sup>2</sup>あたり平均12.8から14.0ペアであった.調査地内の隣接最短巣間距離は平均で1.74±0.59 km(±SD,範囲0.79−3.05 km, <i>N</i>=37)であった.営巣樹木は214例のうち,スギが54%,アカマツ30%,モミ13%と常緑針葉樹が97%を占めた.巣の高さは平均14 m,営巣木の69%の高さにあり,胸高直径は平均41 cmであった.巣は林縁から平均68 m,人家から155 m,道路から100 mの距離にあり,人の生活圏に接近していた.繁殖成功率は平均72%で,年により53~87%まで変動があった.巣立った雛は,産卵以降の全巣を対象にした場合平均1.49羽で,繁殖に成功した巣だけの場合,平均2.06羽であった.巣は前年繁殖に使用して,翌年も再使用したものが61%であった.また,9年間も同じ巣を使っているペアもいた.巣場所の再使用率は繁殖に成功した場合65%で,失敗すると50%だった.繁殖に失敗した67例の理由のほとんどは不明(61%)であったが,判明した原因は,密猟3例,人為的妨害4例,巣の落下4例,カラスなどの捕食5例,卵が孵化しなかったもの4例,枝が折れて巣を覆った1例,片親が死亡4例,近くで工事が行われたもの1例などであった.また,繁殖失敗理由が人為的か,自然由来のものであるかで,翌年の巣が移動した距離には有意差があり,人為的であればより遠くへ巣場所は移動した.
著者
真子 正史 鈴木 伸一 鈴木 誠
出版者
神奈川県農業総合研究所
巻号頁・発行日
no.145, pp.35-41, 2004 (Released:2011-03-05)

‘湘南ゴールド’は1988年に‘黄金柑’に‘今村温州’を交配して得られた実生の中から選抜・育成した品種である。樹や果実の特性から‘黄金柑’の珠心胚実生と考えられる。2000年に品種登録を申請し、2003年11月18日付けで品種登録(第11469号)された。‘湘南ゴールド’の樹勢は強く、有刺で、樹姿は当初直立性であるが、結実し始めると次第に開張する。若木を放任すると結実までに長年月を要するため、枝の誘引が必要である。樹勢が落ち着くと結実性は安定し、豊産性であるが、隔年結果性は強い。大玉果生産のためには7月摘果が有効である。果実は‘黄金柑’より大きく、平均果重は77gである。果形は球形で、‘黄金柑’に比べて果面が滑らかで、剥皮しやすい。また、果皮は黄色で、果皮厚は薄い。種子は少なく、果肉は柔軟多汁で、風味がよい。適熟期は4月で、4-5月にかけて優れた食味を有している。樹上越冬して4月に収穫するため、海岸沿いの風当たりの少ない、温暖な地域が適地と思われる。
著者
松岡 昭善 鈴木 伸一 池田 周平
出版者
神奈川県農業総合研究所
雑誌
日本養豚学会誌 (ISSN:0913882X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.35-41, 1988
被引用文献数
1

イノブタは同一月令であっても, 生体重に個体差があることが知られており, この生体重の差と肉質の関係を明らかにする目的で, 2腹のイノブタを同一月令肥育し, と殺時の生体重により, 重い区 (平均体重: 88.6kg) と軽い区 (平均体重: 74.9kg) に分け, 枝肉成績および理化学的性状の差異を検討し, 次の結果を得た。<br>枝肉歩留, 背腰長I, IIおよび中躯の割合は, 生体重の重い区が大であり, 後躯の割合は生体重の軽い区が大きい値を示した。後躯の脂肪, 骨, 筋肉の構成割合は, 生体重の重い区で脂肪の割合が高く, 骨と筋肉の割合は低かった。胸最長筋の断面積および脂肪の厚さは, ともに生体重の重い区で大きい値を示した。<br>筋肉の理化学的性状は, 生体重の差による影響は顕著に認あられなかったが, 生体重の重い区は軽い区よりもわずかではあるが, 粗脂肪が高い値を示した。<br>体脂肪の特性は, 生体重の重い区において融点が高く, ヨウ素価, 屈折率は低い値を示した。<br>胸最長筋の色調は, 生体重の相違による差は少ないようであった。<br>筋肉の脂肪酸組成は, 生体重の重い区においてオレイン酸含量が高く, リノール酸含量が低かった。背脂肪については, 生体重の軽い区はリノール酸含量が高く, 腎脂肪では生体重の軽い区はリノール酸含量が高くオレイン酸含量が低かった。<br>以上の結果から, と殺月令が同じであるイノブタにおいて, 生体重の軽い個体は, 体脂肪の特性と脂肪酸組成から判断して, 軟脂の要素を持っていることが示唆された。
著者
鈴木 伸和 熊本 悦明
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1088-1097, 1995-06-20
被引用文献数
6

男性透析患者に性機能障害が起こることはよく知られている.透析患者の性機能障害を詳細に検討するため, われわれは札幌医大式性機能質問紙を用いて性機能調査を行った.対象は外来透析をうけている男性205例であり, 糖尿病症例および重度貧血症例 (ヘモグロビン濃度8g/dl未満の症例) は今回の検討から除外した.質問紙の性機能評価にあたって, 当教室ですでに同質問紙を施行していた, 3462例の健康男性のデータをコントロール群として比較検討した.男性透析症例のうち, 性欲は33.7%が健康男性の下方10%領域に, 勃起能は44.4%が健康男性の下方10%領域に含まれており, いずれも加齢とともに著しい低下を認めた.射精能は自覚的勃起機能と連動した動きをみせており, 加齢とともに低下する傾向を認めた.性交頻度を透析症例と健康男性とで比較したが, 性交渉を有していないものが, 30歳代では透析症例12.9%に対して健康男性3.5%, 同様に40歳代では22.4%に対して3.0%, 50歳代では52.2%に対して7.5%, 60歳代では89.3%に対して18.0%と, 透析症例では, 各年代とも健康男性に比べて性交頻度が低下しており, しかも加齢に伴う低下が著しかった.