- 著者
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小島 英子
阿部 直也
大迫 政浩
- 出版者
- 社団法人 環境科学会
- 雑誌
- 環境科学会誌 (ISSN:09150048)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.5, pp.343-358, 2015-09-30 (Released:2016-08-01)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
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住民のごみ問題への関心は個人のライフステージの変遷とともに変化するという認識のもと,その関心が何から影響を受け,どのように変化しているのかを明らかにするために,川崎市民を対象にアンケート調査を実施した(回答者数:1,308)。未成年期から現在に至るごみへの関心の変化とその理由を10年刻みの自由記述で尋ね,テキストマイニングと多重コレスポンデンス分析によって解析した。ごみへの関心は年齢が高いほど高く,一人暮らし,結婚,出産,子育て,退職などのライフステージに特徴的なライフイベントの影響を受けて,高まっていた。また,ライフステージの変遷とともに,家庭内でのごみ管理の役割や,時間的な余裕の有無,地域との繋がり,家庭から出るごみ量などが変化し,ごみへの関心に変化を与えていた。他方,ごみ問題の顕在化により世間の意識が喚起されたり,分別制度が始まったりといった,個人のライフステージとは直接関係のない,社会状況や廃棄物管理制度の違いが,個人の関心の高まりに影響している様子も窺えた。また,現在50歳代あたりを境として性差による役割分担の違いが,ごみへの関心に影響している可能性も示された。以上から,ライフイベントなどのライフステージ要因と非ライフステージ要因である社会・制度的背景が,相互に関連して住民のごみへの関心に対して影響を及ぼしていることが示唆された。自治体は,一人暮らしや結婚等の住民がごみとの関わりを変えるライフイベントを捉えて情報提供を行うなど,ライフステージに応じた施策を実施することで,効果的に意識を喚起し,分別の遵守や3R行動を促すことができると考えられる。