著者
北野 聡 石塚 徹 村上 賢英 澤本 良宏 西川 潮 大高 明史
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2126, (Released:2022-04-15)
参考文献数
34

2011年から 2020年にかけて長野県内の 6水域で特定外来生物シグナルザリガニ Pacifastacus leniusculusが新たに確認された。本種の定着が確認された水域は、標高 670 -1300 mのダム湖やため池、緩勾配河川であった。シグナルザリガニに共生するヒルミミズ類 Branchiobdellidaの種組成およびミトコンドリア DNA配列を分析した結果、 1水域は既往の県内産地からの導入、それ以外の水域については北海道・福島県産地からの導入あるいはこれら県内外の複数起源からの混合導入と推測された。今後、各水域のシグナルザリガニ個体群の個体数低減を図るとともに、これらの定着水域からの違法な持ち出しをしないよう普及啓発を進め、さらなる分布拡大を防ぐことが重要である。
著者
菊池 智子 大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.129-138, 2014-11-19 (Released:2016-05-20)
参考文献数
24
被引用文献数
1

ワカサギ杯頭条虫Proteocephalus tetrastomus (条虫綱変頭目杯頭条虫科)の分布と生活史を明らかにするために,日本各地のワカサギで寄生状況を調査するとともに,青森県小川原湖のワカサギで条虫の寄生率と発育ステージの季節変化を調べた。ワカサギ杯頭条虫は,調査した34の湖沼のうち19湖沼のワカサギで確認された。条虫の分布には地理的な偏りは見られず,湖沼の塩分特性や栄養状態との関連性もなかった。条虫の寄生数とワカサギの肥満度との間には,どの湖沼でも有意な負の関係は見られなかった。 小川原湖のワカサギに見られるワカサギ杯頭条虫は,春から夏に向かって体長が増加するとともに成熟が進行した。感染可能な幼虫を持った成熟個体は夏期を中心にして6月から12月まで見られた。一方,小型の若虫は7月に現れ,その割合は秋から冬に高まった。こうした季節変化から,ワカサギ杯頭条虫の生活史は一年を基本とし,夏から秋に世代交代が起こると推測された。
著者
川勝 正治 西野 麻知子 大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.461-469, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
45
被引用文献数
2 7

日本産の扁形動物門(Plathelminthes)ウズムシ亜目(三岐腸亜目Tricladida)の淡水生三岐腸低亜目(Paludicola),陸生三岐腸低亜目(Terricola),地下水生三岐腸低亜目(Cavernicola),それにテムノケファーラ目(切頭目Temnocephalata)の動物群には,計5科・2亜科・6属・8種の外来種が知られている。これらの種類の分類表を掲げ,原産地・簡単な形態の説明と核型・分布状況を概説した。アメリカナミウズムシ・アメリカツノウズムシ(淡水産),ワタリコウガイビル・オオミスジコウガイビル(陸産)の野外定着個体群は増加しつつある。ニューギニアヤリガタリクウズムシ(陸産)は2006年に外来生物法による特定外来生物の指定を受けて,移動・飼育等が禁止された。
著者
川井 唯史 大高 明史
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.101, pp.31-40, 2009-03-30

The known distributional range of the Japanese crayfish, Cambaroides japonicus( De Haan, 1841()Crustacea,Decapoda, Cambaridae) is restricted to north part of Japan including Hokkaido, Aomori and northern parts of Akitaand Iwate Prefectures. Recently a new population of this species was discovered from natural habitat in Tamozawa,Nikko, Tochigi Prefecture, Centaral Honshu, Japan. Present study examined origin of the Nikko population based on thecomposition of symbiotic crayfish worms( Annelida, Clitellata, Branchiobdellida) as well as the crayfish morphologies(rostrum, telson and annulus ventralis). Three species of crayfish worms, Cirrdrilus cirratus Pierantni, 1905, C. inukaii(Yamaguchi, 1934), and C. ezensis( Yamaguchi, 1934) were detected from the Nikko crayfishes, all of which are knownto endemic to Hokkaido. Morphological characteristics in the crayfishe corresponded to those in Hokkaido population. Some documents and old archives (ca. 1900) in the Archivs and Mausolea Department, Imperial HouseholdAgency, Japan suggest that many individuals of C. japonicus had been transported to the Nikko Tamozawa Imperial Villafrom Hokkaido, and they were used as foods for the royal family. A map in an old archive indicates that there was anaquarium near the kitchen of the Imperial Villa. Consequently, it is highly probable that the present Nikko population ofC. japonicus is derived from introduced individuals for foods from Hokkaido.
著者
大高 明史
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.483-489, 2007 (Released:2008-12-31)
参考文献数
29
被引用文献数
5 6

外国産のザリガニ類やエビ類の移入に付随して,共生生物であるヒルミミズ類の非意図的移入が起こっている。日本からはこれまで4種の外来ヒルミミズ類が記録され,このうち,シグナルザリガニに付随した2種(Sathodrilus attenuatus Holt, 1981, Xironogiton victoriensis Gelder and Hall, 1990)とカワリヌマエビ属に付随した1種(Holtodrilus truncatus (Liang, 1963))が現在定着している。日本で記録された外来ヒルミミズ類のそれぞれについて,形態的特徴を示すとともに,移入の経緯と分布の状況を概説した。
著者
西野 麻知子 大高 明史 池田 実 大和 茂之 川勝 正治 丹羽 信彰 遠山 裕子 WANG Hong-Zhu CUI Yong-De WANG Zhi-Young CHEN Rong-Bin CHEN Rung-Tsung WU Shi-Kuei PONCE Leonrodrigo VOLONTERIO Odile
出版者
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本に侵入したと推測されるカワリヌマエビ属を遺伝解析した結果、2つのクレードに分かれた。クレードIは日本在来亜種ミナミヌマエビと分布域が重なったが、クレードIIは日本と中国の両方にみられた。雄の外部形態からも、前者は在来、後者は外来種と判断された。日本の4地点では両クレードが混在し、外来種との交雑による遺伝子撹乱の可能性が示された。聞き取り結果と合わせると、日本のカワリヌマエビ属は中国の華中・華北地域、近年、兵庫県で発見された共生種ヒルミミズは華中地域から導入された可能性が高い。
著者
川勝 正治 西野 麻知子 大高 明史
出版者
The Japanese Society of Limnology
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.461-469, 2007
被引用文献数
7

日本産の扁形動物門(Plathelminthes)ウズムシ亜目(三岐腸亜目Tricladida)の淡水生三岐腸低亜目(Paludicola),陸生三岐腸低亜目(Terricola),地下水生三岐腸低亜目(Cavernicola),それにテムノケファーラ目(切頭目Temnocephalata)の動物群には,計5科・2亜科・6属・8種の外来種が知られている。これらの種類の分類表を掲げ,原産地・簡単な形態の説明と核型・分布状況を概説した。アメリカナミウズムシ・アメリカツノウズムシ(淡水産),ワタリコウガイビル・オオミスジコウガイビル(陸産)の野外定着個体群は増加しつつある。ニューギニアヤリガタリクウズムシ(陸産)は2006年に外来生物法による特定外来生物の指定を受けて,移動・飼育等が禁止された。
著者
大高 明史
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.12-34, 2018-08-31 (Released:2018-10-12)
参考文献数
144
被引用文献数
1 1

The faunal composition and ecology of aquatic oligochaetes (Annelida, Clitellata) in Japanese lakes have been summarized based on a literature survey. Since Annandale’s initial benthological research in Lake Biwa in 1915, aquatic oligochaetes in Japanese lakes were studied, mainly in terms of lake typology, until the 1970s. Subsequent taxonomic and faunal studies have recorded 40 oligochaete species belonging to five families in the profundal bottom of freshwater lakes on Japanese islands. The profundal forms are generally widely-distributed species, with parallel replacement with European species. A variant form of Branchiura sowerbyi, which is almost devoid of posterior gill filaments, is restricted to the profundal bottom in the North basin of Lake Biwa, and is the only unique representative of lake profundal oligochaetes in Japan. Lim­nodrilus hoffmeisteri and Tubifex tubifex were the most common oligochaete species in profundal bottoms, both occurring irrespective of the trophic status of the lake. Unique oligochaete compositions were found in the bottom of several deep and oligotrophic lakes in northern Japan, and often comprised subterranean species. The taxonomic position of Tubifex (Peloscolex) nomurai, which was described from deep profundal bottoms in Lake Tazawa, and became extinct in the 1940s has been discussed. The composition and abundance of oligochaete communities in Japanese dam-lakes are comparable to meso- and eutrophic natural lakes in Japan. Azoic zones occurred in four lakes owing to the acceleration of artificial eutrophication and global warming recently. Oligochaete diversity in Japanese lakes is poorly understood in littoral zones and brackish lakes, and taxonomic studies will reveal many additional species.
著者
谷地 俊二 大高 明史 金子 信博
出版者
日本土壌動物学会
雑誌
Edaphologia (ISSN:03891445)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.13-24, 2012
参考文献数
45

神奈川県鎌倉市にある冬期湛水型の有機農法水田における水生ミミズ類の種組成,個体数密度,バイオマスを,冬季を除いた2010年6月から2011年5月まで調べた.水生ミミズ類の種構成は8種類からなり,他の水田や富栄養湖に優占するL.hoffmeiteriとB.sowerbyiが優占していた.鎌倉水田における水生ミミズ類の個体数密度は2,822m^<-2>であり,似た種構成を記録した北日本(50,000m^<-2>)やフィリピン(8,200m^<-2>)の水田と比べ低かった.また,渓流性のE.yamaguchiiが生息していた.
著者
梅野 健 行田 悦資 寺井 秀明 高 明慧
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構 一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.39-43, 2007

一般の著作物・コンテンツをインターネットで流通するためには、その著作物・コンテンツの著作権者とユーザー双方に満足する仕組みが不可欠であるが、現在著作権があるコンテンツの流通を促す完全な仕組み(ソフトインフラ)が無い状況である。本発表は、日本では独立行政法人情報通信研究機構が提供する標準時を用いた新しいタイムスタンプの仕組みと、2次元バーコードを用いたPKIであるcipheron.netを用いて、絶対的な厳密性を持つコンテンツ配信をする仕組みを提案する。この仕組みにより、決められた時間までは、視聴(復号化)できるが、その時間を過ぎるとコンテンツは暗号化された状態であり、更にその時点で視聴(復号化)しようとすると、コンテンツが自動消滅することにより、コンテンツ著作権管理ができる。この基準となる時刻を標準時とすることにより、そのコンテンツ管理が絶対性(厳密)に行われることになる。更に、コンテンツの2次流通を促す、カオス理論に基づく2次流通価格決定理論を提案する。
著者
大高 明史 山崎 千恵子 野原 精一 尾瀬アカシボ研究グループ
出版者
日本陸水学会
雑誌
陸水学雑誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.107-119, 2008 (Released:2009-09-10)
参考文献数
23

赤雪の一種であるアカシボ現象が知られている青森県の水田や山間休耕田,および高層湿原で,雪中に出現する無脊椎動物の群集構造や雪中での分布を調べた。雪に出現した動物は,表層や上層でわずかに見られる陸上動物と下層で優占する水生動物から構成されていた。冬期間の継続調査によると,水生動物の密度は雪がざらめ状になる積雪後期に水分含量の多い下層で高まり,特にアカシボ層では900 L-1を超える高密度での出現が観察された。雪中に見られる無脊椎動物群集は,カイアシ類や貧毛類,ユスリカ類やヌカカ類の幼虫が優占し,尾瀬ヶ原で知られている構成と類似していた。これらの動物はいずれも調査地の土壌中でも確認されることから,土壌動物に由来すると推測された。水を多量に含んだざらめ状の雪に出現する無脊椎動物には小型で細長い体型の水生種が多く,海浜や地下水などの間隙性動物との生態的な類似性が指摘される。弘前市の休耕田での継続観察から,融雪期に積雪下層あるいは土壌表面で起こるアカシボの生成に伴って,高密度の水生無脊椎動物群集が形成されることが推測された。
著者
飯塚 重善 西井 正造 谷本 英理子 中沢 大 小高 明日香 武部 貴則
出版者
一般社団法人 人間生活工学研究センター
雑誌
人間生活工学 (ISSN:13458051)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.46-53, 2020-09-30 (Released:2022-07-13)
参考文献数
32

来院者の病院での体験価値向上に向けて,患者が病院での待ち時間あるいは待つこと,待たされることに対してどのような捉え方をしているかに注目した.待ち時間に対する捉え方により,待ち時間を過ごす際の感情的反応は変化すると考えられ,このような関係を明確にできれば,待ち時間を過ごす際に生じる否定的な感情を軽減し,待つ側の患者の捉え方を良い方向に向けていく方策に結びつく可能性があると考えた.本研究はこの視点に立ち,来院者の院内での過ごし方を詳細に把握することを目的に,大学医学部卒業者の協力を得て参与観察的に行った調査を基にジャーニーマップとメンタルモデルを作成し,「感覚的な待ち時間」の短縮に向けた検討を行った.
著者
大高 明史 井上 忍 宮崎 葉子
出版者
日本陸水學會
雑誌
陸水學雜誌 (ISSN:00215104)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.241-254, 2010-12-25
参考文献数
31
被引用文献数
1

青森県・津軽十二湖湖沼群の越口の池水系は,湧水から始まり湖沼と河川が連続する短い水系で,水温の年間変動幅は流程に沿って顕著に増幅する。この水系の河川で,水温がヤマトヨコエビ(アゴナガヨコエビ科サワヨコエビ属)の分布や生活史に与える影響を調べた。ヤマトヨコエビは,水温が通年約10℃に保たれている源頭部の2湖沼とそれに流出入する2河川では通年繁殖が見られ,一方,水系の中ほどに位置する3河川では繁殖が冬季に限定されていた。さらに,下流側の2河川には分布しないことが分かった。現地調査と室内実験から,ヤマトヨコエビの生息や繁殖期間の違いには,生存と繁殖に関わる,いずれも高温で抑制される2種類の温度条件が関係していると推測された。ヤマトヨコエビは水温が約25 ℃以上にならず,かつ約12 ℃以下になる水域に生息可能で,このうち,夏期の水温が約12 ℃を越える場所では低水温期に繁殖が同調し,常に約12℃を下回る場所では繁殖が通年起こると考えられる。国内3種のサワヨコエビ属はいずれも湧水域を中心に分布するが,早期の繁殖と高い高温耐性を伴った柔軟な生活史変異を持つヤマトヨコエビは,この中で最も分散能力の高い種類だと考えられる。
著者
日高 明
出版者
西田哲学会
雑誌
西田哲学会年報 (ISSN:21881995)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.138-153, 2011 (Released:2020-03-23)

Dans l’ouvrage De l’agissant au voyant(1927), Kitarô Nishida écrit que les mots ne sont que des signes, mais apprécie aussi positivement le langage comme corps de la pensée. Cet article se propose de lire ensemble ces deux affirmations en examinant les positions de ce livre. Nishida parle, à cette époque, de la réalité intuitive comme d’un hypokeimenon qu’il définit, en référence à Aristote, comme ≪Ce qui est sujet mais jamais prédicat≫. Cependant l’hypokeimenon n’est pas le sujet grammatical d’une proposition, car il est ≪un concept extrême qui n’est même pas sujet≫. En fait, sujet et prédicat sont tous deux des abstractions de cet hypokeimenon, des choses simplement dites ou écrites. Selon Nishida, la définition de l’hypokeimenon s’interprète donc comme ≪ce qui n’est jamais exprimé par le langage≫. Or si l’hypokeimenon transcende le langage, les jugements n’entretiendront plus aucun rapport avec lui, et ils ne pourront plus constituer de connaissances logiques. Nishida établit alors, d’une part, le jugement comme auto-détermination de l’hypokeimenon et, d’autre part, considère celui-ci comme la limite des déterminations de notions universelles formant des séries subsomptives. Nishida renouvelle ainsi le modèle traditionnel de définition par le genre et la différence spécifique.
著者
高 明均
出版者
関西大学外国語学部
雑誌
関西大学外国語学部紀要 (ISSN:18839355)
巻号頁・発行日
no.23, pp.1-20, 2020-10

本研究の目的は、『洪吉童傳』(昭和9年.京城)に現れた漢字語526個を抽出し、ハングル表記と類型について考察したものである。漢字語のハングル表記では、初聲・中聲・終聲の使い方を分析し、大部分は音読であるが一部は訓読表記の例もあった。一方、漢文(漢字語)を理解し、利便性を勘案した文法的な關係を示す格助詞と連体形語尾が追加的に挿入されるめずらしい形も現れた。漢字語の類型の特徴を調べた結果、2音節(全體の47.5%)の漢字語の構造を見ると竝列關係(同意〈対等〉、反意、疊語)などの多樣な構造の漢字語を確認することができた。また、接頭・接尾漢字語を示した派生語が多數發見でき、さらに漢字語の意味場による類型別分類も可能になった。