著者
藤井 義博 Yoshihiro FUJII 藤女子大学人間生活学部食物栄養学科・藤女子大学大学院人間生活学研究科食物栄養学専攻 Department of Food Science and Human Nutrition Faculty of Human Life Science and Division of Food Science and Human Nutrition Graduate School of Human Life Science Fuji Women's University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.35-46, 2016-03-31

本研究は、西洋近代医学の草創期に活躍したドイツの医師クリストフ・ヴィルヘルム・フーフェラント(1762-1836)の長生法におけるcultureの特徴を明らかにする試みであった。人間中心の近代社会の発展過程においてフーフェラントは、古代ギリシアのヒポクラテス派の医師による生活法の原則であった母なる自然(Nature)を生命力(the vital power)と等価とみなし、近代的な人間中心の思念であるcultureすなわち人為的働きかけによって生命力を可能な限り完全な発展を獲得することを目指す長生法(Makrobiotik、マクロビオティク)を樹立した。生命力は、動物機械と結合することにより中庸状態が必須の有機生命体すなわち身体を構築するものであった。cultureの欠如と同様にその過剰は、身体に対して有害であるため、長生法は中庸のcultureによって生命体である人間の完成を目指すものであり、その実現には理性力、結婚および子どもと若者のモラル教育による支援を得るものであった。理性は、この世とは別の世界に由来する存在であり、人間の中枢神経系によって受容されて啓示ないしはインスピレーションとして働くことで中庸のcultureを指南するものであり、また中庸のcultureによりその働きが実現されるものであった。結婚は、人間の最も本質的な運命の部分をなすものであり、完成に向かう人間がその利己性を脱するように働くものであった。モラル教育は、成人では中庸のcultureの諸原則により獲得される向上精神がしなやかな子どもと若者においては信念として生得になることを目的とするものであった。最先端の生物医学をもってしても対処しきれない諸病が蔓延する現代のストレス社会は、18世紀末にフーフェラントが指摘した近代社会に特徴的な社会現象の延長線上にあることから、現代の健康長寿を目指す健康教育の課題は、中庸のcultureの集成よりなる長生法を適用することにある。なぜならヒポクラテスの生活法の意義を示すプルタルコスの言葉「健康であるならば、多くの人間愛的行為に身を捧げるのにまさることはない」に示されている人間の完成の理念は、現代においてもその意義を失っていないからである。自己の健康長寿の達成だけでなく、どのように健康長寿を通じて多くの人間愛的行為に身を捧げることができるかを真剣に問うならば、現代の生物医学や健康教育に欠如する部分を中庸のcultureの集成である長生法の諸原則によって補うことは子どもや若者による主体的な健康教育を実現するための喫緊の課題である。
著者
アーナンディ S
出版者
ジェンダー史学会
雑誌
ジェンダー史学 (ISSN:18804357)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.5-16, 2008

近代的自己を定義するに際して、インド人男性の手による自伝は、公的な自己を特権化するのみならず、合理的で啓蒙されたものとしてマスキュリンな自己を分節化することによって公的・政治的なるものの境界を画定してきた。マスキュリンな自己とは、欲望、情愛、身体の偶発性を超越するものである。一方、女性の自己は、モダニティの文脈においては特に、私的・ドメスティックな情感的領域に属する、身体化され非-近代的他者とされてきた。<BR>他方、女たちの自伝はオルターナティブな近代的自己を想像することによって、対抗的な公的言説を提示する。同言説は、女たちの主体性を、近代的な公共領域における政治的主体として再構成することによって、マスキュリニティとモダニティを同視することに挑戦する。モダニティのジェンダー化された経験を叙述するに際して、女たちの自伝は、「自伝的マニフェスト」として知られる形式を採用してきた。マニフェストという形式は、女たちが抑圧と公共領域からの排除という自らの経験を叙述することを可能とし、新たな政治的集団性への呼びかけを行い、近代的自己への未来の可能性を想像した。<BR>本論考は、イギリス植民地期タミルナードゥ(南インド)に生まれたミドル・クラス出身のフェミニスト、S.ムットゥラクシュミ・レッディ(1886-1968)による自伝的マニフェストの分析を試みるものである。ムットゥラクシュミ・レッディは、マドラス管区では女性としては最初の医大卒業生(1912年)であり、英領インドの立法議会における初めての女性議員(1926年)となり、女性運動の活動家・指導者として活躍した。また彼女は、熱心なガンディー主義者でもあり、デーヴァダーシー制度と幼児婚に対して精力的に反対運動を推進し、女性たちに対する多岐にわたる福祉政策を実現させた。<BR>本論考は自伝的マニフェストという形式と、ラディカルな政治においてモダニティが内包する限界を批判的に論ずる。
著者
BENZER S.
雑誌
J. Amer. Med. Assc
巻号頁・発行日
vol.218, pp.1015-1022, 1971
被引用文献数
1 20
著者
シバラム V. ストランクス S. D. スネイス H.J.
出版者
日経サイエンス ; 1990-
雑誌
日経サイエンス (ISSN:0917009X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.82-88, 2015-10

シリコン製が支配する太陽電池の市場で,「ペロブスカイト」と呼ばれる結晶材料でできた新型の太陽電池が注目されている。日本の大学で生まれた成果で,世界中の研究者が実用化を目指し開発競争に参入している。
著者
富本 靖 Yasushi Tomimoto 昭和女子大学 Showa Women's University
出版者
昭和女子大学近代文化研究所
雑誌
學苑 = GAKUEN (ISSN:13480103)
巻号頁・発行日
vol.800, pp.36-49, 2007-06-01

In this paper the author examines the historical background of physical education. Wherefrom it came, whereto it goes and how it should be in the future? Chapter 1 discusses its historical background as well as pointing out the problems it contains from the beginning. Chapter 2 focuses on the historical backgrounds and thoughts on the physical education in the United States of America and China eliciting the typical conditions of both the Western and Asian countries. Conditions in Japan are also compared in this chapter. Chapter 3 explores the ideal way the school physical education should be and our future task is shown.
著者
Yuko S. YOSHIMOTO Ako IMAI Shimako MUTO Junko FUJIKURA Hiromi KATURAGI(IKEDA) Takanori MAESAKO Katsusuke SHIGETA Akiko NAKAZAWA Taiichiro OKUBAYASHI Spence W. ZAORSKI Hideya MATSUKAWA Osamu MORIKAWA Surasak BOONYARITICHAIKIJ
出版者
The Japanese Society of Health and Human Ecology
雑誌
日本健康学会誌 (ISSN:24326712)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.41-53, 2017-03-31 (Released:2017-05-25)
参考文献数
14

本研究は,日本・タイ国児童を対象に「適切な食品・食事の選択・組み合わせ」スキルの向上を目指した,視覚対話システムの超鏡(HyperMirror)活用の食育プログラムの教育効果と超鏡の食育への適用性を検討することであった.超鏡は,遠隔地の相手像と自己の鏡像とを合成し,同一画面上に表示して相手と同室感覚を作りだすことができる.食育プログラムは,前後比較デザインを用いて,2006年(テーマ:食品群から食品を選択する)と2007年(テーマ:食品群から食品選択し,栄養バランスの良い朝食を計画する)に実施した.また,初回の食育の学習内容を対象児童に保持させるために教育支援教材(ニュースレター)を,2回目の食育授業実施前まで定期的に配布した.対象者は,2006年と2007年の両年とも食育授業に参加した日本都市部(70名)とタイ国都市部(21名)の児童(2006年時9歳から10歳の小学生5年生)である.各年の食育授業終了後に学習環境調査を実施した.また,2007年の遠隔食育授業の約3週間後に食育プログラムの“影響評価"(適切な食品・食事選択に関する知識,意識,および行動の変容)と“行動目標評価"(目標1:適切な量と食品の組合せの食事を摂取できる,目標2:外国の食環境・食文化を理解し,興味・関心をもつことができる,目標3:自分の食生活に関心をもつことができる)を実施し,検討をおこなった.超鏡の学習環境については両年平均で日本3.8,タイ国4.4で児童の評価は高値であった.また両国の児童に適切な食品・食事選択に関する知識,意識,および行動の変容が確認された.行動目標1は両国の児童の50%以上が「できる」と回答した.行動目標2と3はタイ児童のほうが日本児童より「できる」の回答率が高く,教育支援教材による効果もみられた.本報告では超鏡による食育の教育効果と適用性が確認できた.
著者
謝 肖男 来生 貴也 米山 香織 野村 崇人 秋山 康紀 内田 健一 横田 孝雄 Christopher S. P. McErlean 米山 弘一
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.58-61, 2017-05-20 (Released:2017-05-20)
参考文献数
10
被引用文献数
41

トウモロコシが生産する根寄生雑草種子発芽刺激物質の1つを単離し,その構造を各種機器分析により,methyl (2E,3E)-4-((RS)-3,3-dimethyl-2-(3-methylbut-2-en-2-yl)-5-oxotetrahydrofuran-2-yl)-2-((((R)-4-methyl-5-oxo-2,5-dihydrofran-2-yl)oxy)methylene)but-3-enoate(1)と決定し,ゼアラトン酸メチルと名付けた.ストリゴラクトンの生合成前駆体であるカーラクトンの13C標識体の投与実験から,1はトウモロコシ体内においてカーラクトンから生合成されることを確認した.1は根寄生雑草Striga hermonthicaおよびPhelipanche ramosaの種子に対して強力な発芽刺激活性を示したが,Orobanche minorの種子に対する活性は100倍弱かった.

1 0 0 0 Physics

著者
Robert Resnick David Halliday Kenneth S. Krane
出版者
Wiley
巻号頁・発行日
1992

1 0 0 0 OA 船の防鼠

著者
S.A.
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
造船協会雑纂 (ISSN:03861597)
巻号頁・発行日
no.215, pp.83-92, 1940-02-15
著者
N. Watanabe S. Matsusawa Y. Miyato H. Itozaki
出版者
(公社)日本磁気学会
雑誌
Journal of the Magnetics Society of Japan (ISSN:18822924)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3-2, pp.235-238, 2013-05-01 (Released:2013-05-23)
参考文献数
7
被引用文献数
2 6

We measured the high-resolution magnetic images using an STM-SQUID microscope that combines a high-Tc superconducting quantum interference device (SQUID) with a scanning tunneling microscope (STM). In the STM-SQUID microscope, the STM probe plays the important role of a flux guide and is responsible for tunneling current detection. Therefore, it is essential to investigate the probe itself in order to improve the magnetic image resolution. We optimized the electrochemical polishing condition to realize the fine probe with a tip radius of 50 nm or less. We fabricated the various shaped probes by controlling the voltage during sharpening. The tip radius of 50 nm or less was achieved when the probe tip was sharpened at the applied voltage of 30 V. We then measured the magnetic images of typical magnetic materials, such as a steel sample and nickel thin films, using the probe with a tip radius of 50 nm or less. The magnetic domain structures were observed clearly.

1 0 0 0 IR あい風の正体

著者
前野 紀一 Norikazu MAENO 北海道大学名誉教授・藤女子大学非常勤講師 Professor Emeritus Hokkaido University and part-time lecturer Fuji Women's University
出版者
藤女子大学QOL研究所
雑誌
藤女子大学QOL研究所紀要 (ISSN:18816274)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.5-16, 2011-03

あい風という風が、日本海沿岸の各地で知られている。あい風はそれぞれの地の地形や気象で決まる局地的な風であり、風向も同じではない。しかし、各地のあい風には、A)海から幸せを運ぶ好ましい風、および、B)北前船のノボリの順風、という二つの共通な特徴がある。あい風の風向が、北海道から、東北、北陸、山陰と南下するにつれて、北寄りから東寄りの風にかわる事実は、特徴AとBによって説明される。あい風の典型例として、石狩のあい風が調べられた。石狩のあい風は、江戸時代初期、おそらく300年以上前から始まった物資の輸送や人々の交流、移住の歴史の中で、特徴AとBに沿うように生まれ、育まれてきた。石狩のあい風は、春、夏、秋に吹くさわやかな北寄りの風であるが、気象学的には、典型的な海風であることが、気象データの解析とドップラーライダーの観測から明らかにされた。
著者
Mahbubur S.M. Rahman 山田 昌彦 吉田 雅夫
出版者
日本育種学会
雑誌
Breeding science (ISSN:13447610)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.335-339, 1997-12-01
被引用文献数
1

バンレイシ科アノナ属に属するチェリモヤ(A. cherimola),バンレイシ(A. squamosa),ギュウシンリ(A. reticulata),トゲバンレイシ (A. muricata),ポンドアップル(A. glabra), ヤマトゲバンレイシ(A. montana)と A. cherimola×A. squamosaの種間雑種,計14系統を供試して,PCR-RFLP法により類縁関係を検討した。葉緑体DNAフラグメント,rbcL-ORF106を増幅させるため一組の塩基配列標識部位(STS)のプライマーを用いた。増幅したフラグメントを6種類の制限酵素で消化したところ,2-6のDNA断片が得られた.RsaIで消化した時,7つの異なったパターンが観察されたが,他の酵素では4-6のパターンしかみられなかった。対になった距離の平均値は,O.017-O.607の範囲で,最小値はA. squamosaとA. cherimola×A. squamosaとの間でみられ,最大値は,A. glabraとA. cherimola×A. squamosaとの間で見られた。Swofford parsimony法により,8つの系統樹図が得られ,それより50% majority-rule consensus treeが得られた。栽培種と野生種は別のグループを形成し,チェリモヤとバンレイシの雑種であるアテモヤは栽培種の両親の中間に位置した。ポンドアップルはデンドログラムでは単独のクラスターを形成し,他の種とは大変異なっているとみなされた。これらの結果は,多くのアノナ属を使い,系統分類学において基礎的な情報を与えるものと思われる。
著者
KITAMURA S.
雑誌
Mem. Coll. Sci. Univ. Kyoto B
巻号頁・発行日
vol.24, pp.1-79, 1957
被引用文献数
2