著者
柏木 孝幸 廣津 直樹 円 由香 大川 泰一郎 石丸 健
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-9, 2007 (Released:2007-02-28)
参考文献数
70
被引用文献数
11 16

イネにおいて倒伏は収量や品質を低下させ,生産者の作業効率を低下させる栽培上最も重要な障害である.倒伏は倒れ方から湾曲型,挫折型,転び型の3つに分類され,その中で湾曲型倒伏がコシヒカリ等の栽培で最も多く生じる.湾曲型倒伏は穂を含む植物体上位部の重さや風雨等の外部の力により稈が湾曲することにより発生する.「短稈化」,「強稈化」及び「下位部の支持力強化」が湾曲型倒伏に対する抵抗性のターゲットである.これまでの倒伏抵抗性の育種では主に短稈化がターゲットとされてきた.一方で短稈化のみで倒伏抵抗性を向上させていくにはいくつか問題がある.収量性の観点から考えると,草丈を下げる短稈化には限界が生じる.さらに抵抗性を向上させるには短稈化以外に強稈化及び下位部の支持力強化をターゲットとして育種を進めて行くことが必要である.本総説では,近年の分子・遺伝生理学的な研究の成果を中心に湾曲型倒伏に対する抵抗性に関する研究成果をまとめ,倒伏抵抗性向上に向けた研究の方向性を論じる.
著者
杉本 秀樹 佐藤 亨
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.39-44, 1999-03-05
参考文献数
16
被引用文献数
7

夏季における新ソバ供給と水田の高度利用を目的にした, 西南暖地における夏ソバ栽培技術の確立に関する研究の一環として, 播種期の違いが夏ソバの生育ならびに収量に及ぼす影響について調査した. 普通ソバ品種キタワセソバの種子を, 愛媛大学農学部内の雨よけビニルハウスに設置したポットに3月中旬から6月初旬まで10日ごとに播種した. 播種期が遅くなるほど開花数は増加したが, 結実率の著しい低下により粒数が減少し, さらに千粒重も低下して子実重は減少した. 特に, 開花始〜成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えると結実率は顕著に低下した. したがって, 西南暖地における夏ソバの播種は, 遅霜の心配がなければできるだけ早く, かつ開花始〜成熟期における日最低気温の平均値が17.5℃を越えない時期までに終える必要があることが明らかになった. さらに, 瀬戸内地域においては遅霜と梅雨入り時期ならびに上記臨界温度を考慮すると, 播種期は3月下旬から4月中旬に限定されること, 4月中旬までに播種すれば収穫は6月初旬となり, 初夏には新ソバの供給ができるばかりでなく, その後作に水稲はもちろんダイズ, 飼料作物などの栽培も可能となり, ソバを水田における輪作体系に組み込むことができることも明らかになった.
著者
ウデイン S. M. モスレム 村山 盛一 石嶺 行男 続 栄治 原田 二郎
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.747-753, 1995-12-01
参考文献数
19
被引用文献数
2

木酢液・木炭混合物(サンネカE)が夏植サトウキビの乾物生産および根の生育に及ぼす影響を明らかにするために, サトウキビ品種NCo310を供試し, サンネッカE施用量を0(対照区), 200, 400および800kg/10aの4水準設定して5反復で実験を実施した. その結果, サンネッカE施肥により茎重, 茎長, 茎径, 糖含量等のサトウキビの収量構成要素が増大した. サンネッカE施用区におけるCGR, NARおよびLAIは対照区より高い値を示し, CGRとNARおよびLAIの相関は有意であった. 原料茎収量, 葉糖収量および全乾物重もサンネッカE区が対照区よりそれぞれ13-24%, 19-31%および14-20%増加した. また, 原料茎収量, 蔗糖収量および全乾物重の最高値は400kg/10aサンネッカE区で得られた. サンネッカE区の根系の分布は水平方向, 垂直方向とも各分布域における根重密度はサンネッカE区が高かった.
著者
島崎 由美 渡邊 好昭 関 昌子 松山 宏美 平沢 正
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.294-301, 2016-07-05 (Released:2016-07-26)
参考文献数
24
被引用文献数
3

水田で栽培されたコムギ (水田のコムギ) は,畑で栽培されたコムギ (畑のコムギ) に比べ製パン性が劣ることが知られている.その主な要因は,小麦粉のタンパク質含有率が畑のコムギに比べ水田のコムギで低いことにあると考えられている.小麦粉のタンパク質含有率は,開花期に窒素を追肥することで高められる.そこで本研究では,開花期窒素追肥により水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を高めることが,製パン性に及ぼす影響を調査した.その結果,開花期に窒素を8 g m-2追肥することで,水田のコムギの小麦粉タンパク質含有率を畑と同程度の13%にまで高めることができた.しかし,製パン性を評価するバロリメーターバリュー (VV) は,畑のコムギでは75以上あったのに対して水田のコムギでは60程度と低かった.水田のコムギは畑のコムギに比べて吸水率が高く,小麦粉タンパク質含有率が13%と高いときは,生地形成時間 (DT) が短かった.パンの柔らかさを示すコンプレッションは水田のコムギの方が畑より小さく,パンは柔らかかった.小麦粉タンパク質中のSDS可溶性モノマー画分 (EMP) に対するSDS不溶性ポリマー画分 (UPP) の比は,水田のコムギで畑より有意に小さかった.なお,水田のコムギは,開花期に窒素8 g m-2を追肥して子実タンパク質含有率を高めても,原粒灰分が高く,容積重が小さいために,ランク区分はBやCだった.一方,畑のコムギは開花期に窒素を追肥しなくてもランク区分はAであった.
著者
伊藤 亮一 玖村 敦彦
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.109-114, 1987

ポット栽培したダイズ(品種農林2号)を用いて, 葉の生長を葉の"伸長性"(葉片に錘りをかけたときの, 葉片の単位時間あたりの伸び量, Ex)と, 圧ポテンシャル(P)との両面から検討した. 得られた結果の大要は, 以下の通りである. 1) 給水を停止すると, 土壌水分含量は低下し, それに伴ない葉の生長速度は低下して, 土壌水分レベルが45%(対圃場容水量)に達したとき, 葉の生長は完全に停止した. その後, 土壌水分レベルを45%に保ったところ, 葉は再び生長を始めた. このことから, 葉の生長において乾燥への馴化がおこると考えられた. しかし, 生長再開後の葉の生長速度は十分に給水した対照区(土壌水分レベル80%)の葉と比べて, 小さかった. 2) 給水停止後, 葉の生長速度が低下したときには, PとExの両者が共に減少した. その後Pは, 対照区のレベルにまで回復し, このことが葉の生長の再開を可能にしたと考えられた. Pの回復は, 浸透ポテンシャルの低下, すなわち浸透調節によりもたらされた. いっぽう, Exは, 低い値にとどまり, 回復しなかった. 低水分状態が維持されたときに, Pが完全に回復するにもかかわらず, 生長の回復が不完全な程度にとどまるのは, Exが低い値にとどまることによると考えられた. 3) 植物体を低水分下に置いた後, 十分給水すると葉の生長は回復するが, 対照区にはおよばなかった. 乾燥処理後の再給水により, Pは十分回復したが, Exの回復は不十分であり, このことが, 生長回復の不十分さの基礎となっていると考えられた. またこのことから, Pはその時々の条件に応じすみやかに変化しうるが, Exは低水分条件により, かなり不可逆的な減少をきたすようであった. 4) 本実験の結果の全体をみると, 葉の生長速度は, P, Exの両者と正の相関を示したが, 後者との間の相関のほうがより密接であった.
著者
山根 正博 国分 牧衛
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.198-203, 2016
被引用文献数
1

東北地方における1993年から2008年までの16年間のダイズ収量の年次変動と地域変動の特徴,ならびにこれらの変動と気象要因との関係を県単位および市町村単位で解析した.気象要因は降水量,日平均気温,日最高気温,日最低気温および日照時間とし,生育期間(6~10月)における月平均値を解析に用いた.解析の対象地域としてダイズ作付面積が100 haを超える市町村41点を選んだ.県平均収量の年次変動を解析した結果,収量水準は日本海側が太平洋側を上回り,日本海側では南部ほど,太平洋側では北部ほど高い傾向を示した.県平均収量は青森,岩手,秋田および山形の4つの県間にはすべて相関が認められたのに対し,宮城と福島は南北に位置する隣県とのみ相関が認められた.16年間における県平均収量とその年次間変動係数との間には正の相関が認められた.41市町村における16年間の収量変動と気象要因との関係を解析した結果,いずれの気象要因も7月の数値が収量と有意な相関を示す市町村が多く認められた.さらに市町村単位に収量と気象要因との関係を重回帰分析したところ,降水量,気温および日照時間の3つの説明変数で市町村の収量変動を説明できる場合が多く認められたが,これらの気象要因の相対的な寄与度と影響を与える時期は市町村により異なった.
著者
山本 晴彦 岩谷 潔 鈴木 賢士 早川 誠而 鈴木 義則
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.424-430, 2000
被引用文献数
3

1999年9月24日早朝, 九州西岸に上陸した台風18号は, 九州を縦断し周防灘から山口県に再上陸し西中国地方を通過した後, 日本海に抜けた.台風の経路上および経路の東側に位置した気象官署では最大瞬間風速40m/s以上の強風が吹き, 最大風速も九州中南部を中心に20m/s以上を観測した.九州や西中国地方では台風の通過と満潮が重なり, 有明海沿岸や周防灘では高潮により堤防が決壊し, 農作物に塩害が発生した.台風に伴う九州7県の農作物および農業用施設の被害総額は914億円, 被害面積20万haにも及んだ.また, 山口県の小野田市や宇部市の消防本部では最大瞬間風速が52.0m/s, 58.9m/sの強風を観測した.宇部港では最高潮位が560cmを観測し, 推算満潮位351cmを209cmも上回る著しい高潮であった.このため, 周防灘に面した山口県内の市町では高潮災害が相次いで発生し, 農林水産被害は高潮に伴う農耕地の冠水と塩害, 強風に伴う農作物の倒伏, ビニールハウスや畜舎の損壊, 林地の倒木など約100億円に及んだ.山口市秋穂二島でも堤防の決壊により収穫直前の水稲や移植直後の野菜苗に約100haにわたり塩害が発生し, 収量が皆無となった.
著者
徐 会連 王 効挙 王 紀華 梅村 弘
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.335-336, 1997-10-18

EM希釈液を吸わせたスイートコーンの切断葉を用い, 葉水分の損失と蒸散速度の低下特徴から気孔が葉失水に対する感受性を検討した。EM液を吸わせた葉身には気孔が開く時大きく開いて, 閉じる時ちゃんと閉まることがわかった。
著者
浅野 紘臣 平野 文俊 磯部 勝孝 櫻井 英敏
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.320-323, 2000-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
15
被引用文献数
6 7

前報において, アイガモ栽培では収穫時期を成熟期より10日間程度遅らせることにより, 青米の減少とともに収量が増加すること, また玄米中のタンパク質含有率が減少することにより, 米の食味が向上する可能性を指摘した.ここでは前報で用いた材料のタンパク質およびその組成(グルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミン)とアミロース含有率について調査した.玄米および白米の全タンパク質含有率は, 収穫時期が-10日, ±0日, +10日(早刈り, 成熟期刈り, 遅刈り)と遅くなるに従って品種(キヌヒカリ, コシヒカリ)や栽培法(慣行, アイガモ)を問わず減少する傾向があった.収穫時期の差によって玄米のタンパク質の組成含有率はグルテリンは66.0-67.7%, アルブミン+グロブリンは18.8-20.8%, プロラミンは12.5-14.5%と変動し, 品種や栽培法の別による若干の差は見られたが, 収穫時期によると考えられる差は見られなかった.白米においてもグルテリン, アルブミン+グロブリン, プロラミンの含有率は玄米と同様に収穫時期による一定の傾向は見られなかった.このことからアイガモ農法でも成熟期から10日程度遅刈りしてもタンパク質の組成には大きく影響しないと考えられた.アミロース含有率は品種や栽培法を問わず白米では, 早刈り, 成熟期刈り, 遅刈りの順に減少する傾向が見られた.以上のことから, 前報で報告したアイガモ農法によって生産された米の遅刈りによる食味の向上には, 青米, タンパク質含有率そしてアミロース含有率の減少による影響があったと考えられた.
著者
齊藤 邦行 速水 敏史 石部 友弘 松江 勇次 尾形 武文 黒田 俊郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.169-173, 2002-06-05
被引用文献数
1

岡山大学農学部附属農場の水田において,水稲品種日本晴を供試して有機栽培を1990年に開始し,7〜9年目の3ヵ年に米飯の食味と理化学的特性を比較した.試験区は基肥に完熟堆厩肥と発酵鶏糞を用い,農薬施用の有無により有機・無農薬区(油粕追肥),有機・減農薬区(除草剤,油粕追肥),有機・有農薬区(除草剤+殺虫殺菌剤,化学肥料追肥),さらに化学肥料のみ用いた慣行区(除草剤+殺虫殺菌剤)の4区を設定した.食味官能試験の結果,3ヵ年の平均でみると総合評価と粘りは慣行区に比べ,有機・無農薬区,有機・減農薬区との相違は小さかったが,有機・有農薬区の食味は劣った(粘りのみ有意).有機・無農薬区の総合評価は慣行区に比べ1996年には劣り,1997年には優り,1998年にはほぼ等しかったことから,有機質肥料の施用による食味の向上や,農薬施用の有無が食味に及ぼす影響は明確には認められなかった.1997年に,各試験区の一部について無施肥栽培を行ったところ,いずれの区でも総合評価は向上し,これには精米のアミロース含有率ではなくタンパク質含有率の低下とアミログラム特性の向上により粘りの増加したことが関係すると推察された.さらに1998年には,実肥施用を行わず基肥を増施することにより,有機・無農薬区,有機・有農薬区では精米のタンパク質含有率の低下とともに総合評価が向上した.以上の結果,有機質肥料を用いて良食味米の生産を行うには,穂肥・実肥における肥効発現に留意し,登熟期に窒素吸収を抑制することが重要であると結論された.
著者
花田 毅一 阿久津 郷子 後沢 昭範
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.67-73, 1969-03-10

とうもろこしについて, 品種の分げつ性とオーキシンとの関係を知る目的でこの研究を行なつた. 分げつ性の低いホワイトデント(WD)と分げつ性の高いゴールデンクロスバンタム(GC)を戸外で栽培し, 第5葉抽出完了期に採取して下位節として第3節, 中位節としての第4, 5節および先端部の第6節以上の3部に分け, そのオーキシン含量, IAA酸化酵素活性および酵素阻害物質の量について測定比較した. なお, 分げつの状態は, 材料採取時には, 第2, 3節分げつでは品種間差異が明らか(GC>WD)であり, 第4節以上の分げつ芽では採取当時は差がなく, その後差が現われた(GC>WD). オーキシン含量については, 先端, 中位節, 下位節いずれの部分でもWDの方がGCよりも著しく高い値を示した. また, WDはGCよりも阻害物質を除いた純化IAA酸化酵素の活性が低く, また阻害物質の量が多かつた. そしてこの差は先端部において著しかつた. 従来, 植物の分枝の発育にオーキシンが関係する, すなわち頂芽で生産されて基部に向つて転流するオーキシンが側芽の生長を抑制すると考えられている. 一方, 植物体内のオーキシン濃度を左右するものにIAA酸化酵素と, その阻害物質および促進物質が存在することが知られている. 実際に, IAA酸化酵素の阻害物質あるいは促進物質が, えんどうでの頂芽および節間の生長, さらに棉での落葉に関係することを示す実験結果が報告されており, IAA酸化酵素系がオーキシン濃度を通じてこれらの現象に関与することを暗示している. この実験においても, とうもろこしの分枝性について, 茎中のオーキシン含量の高いWDがその低いGCよりも分げつ性が弱く, 茎中の高濃度のオーキシンが分げつの発育を抑えていること, さらにこのようなオーキシン濃度の差を起こす有力な原因として茎中のIAA酸化酵素活力ならびに阻害物質の量の差があることが考えられる.
著者
小林 和幸 松井 崇晃 重山 博信 石崎 和彦 阿部 聖一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.250-255, 2002-06-05
被引用文献数
2

切り餅の食味官能試験方法を確立するため,新潟県作物研究センターの生産力検定試験供試材料を用いて検討した結果を報告する.試料米の調製:供試玄米を粒厚1.85mm以上の整粒に調製した.調製した玄米を搗精歩合89%に搗精し,精白米を10℃で1週間以上貯蔵して,米粒水分の均一化を図った.切り餅製造:家庭用製餅器(SD-3603,ナショナル)を使用し,以下のように行った.規定量の白米を洗米し,15時間吸水させた.脱水後,餅つき機に規定量の蒸し水を注入,うすにもち米を移してセットし,以降,自動操作で餅をついた.ビニールを敷いた型枠に餅を移し,上からさらにビニールをかけて,のし棒で1.5cmの厚さに圧延した.一昼夜放冷後4×6cmに裁断し,切り餅を作成した.官能試験方法:供試点数は基準のわたぼうしを含めて4点とし,熟練した15名以上のパネルで実施した.水温75℃で10分間ゆでた餅を皿に盛り,外観・白さ・コシ・粘り・のび・味・舌触り・総合評価について,11段階で評価した.平均値の有意差検定により,,基準との差で判定を行った.生産年が異なる育成材料および比較に供試したこがねもちの食味評価から,本法による切り餅の食味官能試験方法は有効であると判断された.
著者
本間 香貴 中川 博視 堀江 武 大西 宏明 金 漢龍 大西 政夫
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.137-145, 1999-03-05
参考文献数
27
被引用文献数
4

地球環境変化に対する作物応答を明らかにするために, 高温・高CO_2濃度環境がイネ群落の蒸散とガス拡散抵抗に与える影響を調査した. CO_2濃度をそれぞれ365と700μL L^<-1>に設定した2棟の温度傾斜型CO_2濃度制御チャンバー(TGC)の各々に3温度区(実験期間内平均気温29.8, 30.4, 32.5℃)を設け, 水稲品種アキヒカリとIR36を栽培し, 実験に供試した. 各温度・CO_2濃度処理区で8月2日(幼穂形成期)から8月22日(出穂期)まで, 乾湿球温度, 群落表面温度(T_c)と純放射量を測定し, また, ミクロライシメータ法を利用して蒸発散量(E)も測定した. Eの測定値と微気象データをもとに得られた水蒸気と熱輸送に対する空気力学的拡散抵抗(r_a)は, 全処理区, 全計測期間を通じてほぼ一定値の11.7sm^<-1>で推移した. このr_a値とT_cおよび微気象データを熱収支式に代入し, Eおよび群落拡散抵抗(r_c)を求めたところ, Eの推定値とライシメータ法による実測値は, 両品種とも非常によく一致した. 両品種のr_cは全ての温度・CO_2濃度処理区において, 全天日射量が500W m^<-2>以上で最小値(r_<c,min>)に達した. 最も低い温度区では, 高CO_2濃度によって, 自然CO_2濃度環境下よりもr_<c,min>が40〜49%, T_cが1.4〜1.6℃増加し, Eが14〜16%減少した. しかし, この高CO_2濃度の影響は生育温度の上昇につれて減少した. このようなr_<c,min>の温度とCO_2濃度に対する反応は, イネのこれらの環境に対する長期の適応現象によるものと思われた。以上より, 地球の温暖化は, CO_2濃度の上昇によるイネの水利用効率の向上効果を減少させることが示唆された.
著者
坂田 雅正 鈴木 かおり 山本 由徳 宮崎 彰
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.189-196, 2004-06-05
被引用文献数
1

1998年の異常高温年に発生した極早生水稲品種とさぴかの異常(不時)出穂の発生要因を明らかにするため,夏至前後(長日)および秋分以降(短日)の自然日長下で,25℃および20℃(恒温)区を設け,株まきポットで養成した苗の幼穂分化,発育を検討した.播種からの積算温度でみた苗の幼穂分化時期は,長日区,短日区ともにとさぴかとその交配母本である高育27号が早かった.また,苗の幼穂分化後における幼穂伸長速度の日長,温度区間差は,播種からの積算温度で比較した場合より,基準温度を10℃とした有効積算温度でより小さかった.そして,とさぴかでは苗の幼穂分化,発育への日長の影響は小さく,播種からの有効積算温度が301〜348℃日で幼穂形成期(平均幼穂長1mm)に達することが判明し,この時の苗の葉齢は5.3〜5.7で,25℃条件では主稈出穂の20日前であった.さらに,とさぴかは北海道育成品種に比べ,最終主稗葉数が少ないため,早晩性を示す播種から止葉展開までの有効積算温度が低く,感光性,感温性および基本栄養生長性程度も比較的小さいことが明らかとなった.また,これらの特性は高育27号と類似することが判明した.
著者
斎藤 邦行 菊入 誠 石原 邦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.259-265, 1995-06-05

ダイズ29品種を供試し, 圃場条件下における日中の頂小葉傾斜角度(β)の品種間差異を検討した. 各品種のβは8月8日には10〜65度(平均39.8度), 9月4日には25〜80度(平均50.6度)と大きな品種間差が認められた. 8月8日にβの大きい品種が9月4日に大きいβを示すとは限らなかったが, 両日ともに三重大豆のβは最も小さかった. 三重大豆とβの大きい品種に属するエンレイを用いて, 牛育に伴うβの日変化の推移を調査した. 早朝小さかったエンレイのβは日射量の増加とともに急速に大きくなり, 9〜11時に最大となった後, タ刻になるに従い徐々に小さくなる日変化が認められた. 三重大豆のβはエンレイに比べて1日中小さく, 日変化する程度も小さかった. βの日変化で認められた最大値は, エンレイに比べ三重大豆は30〜40度小さく, 両品種ともに栄養生長期に比べ生殖生長期に大きくなった. 個体群上層部の相対光強度には日変化が認められ, 早朝小さく9〜11時に大さくなったが, その程度はエンレイに比べ三重大豆で小さかった. 木部水ポテンシャルの日変化を調査した結果, 三重大豆の木部水ポテンシャルは日中エンレイより約0.1MPa低く推移した. 以上の結果, エンレイに比べ小葉のβの変化する程度の小さい三重大豆では, 個体群内への光の透入が悪いとともに, 個体群上層の小葉は水分ス卜レスの程度が大きいことが明らかとなった.
著者
平井 儀彦 山田 稔 津田 誠
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.436-442, 2003-12-05
参考文献数
40
被引用文献数
3

登熟期の気温の違いがポット栽培したイネ個体の暗呼吸量と穂の乾物成長に及ぼす影響を定量的に検討するため,4月,5月,6月の3時期に播種することで登熟期の気温を変え,気温の差が登熟;期の暗呼吸速度と乾物生産に及ぼす影響を調査した.出穂日は4月播種では8月4日で,5月と6月播種ではそれぞれ4月播種より14日と28日遅かった.4月播種における出穂後6日目〜19日目の平均気温は,5月と6月播種より約4℃高かった.回帰法により成長呼吸と維持呼吸を推定すると,穂の暗呼吸速度は主に穂の成長に関わっており,穂の維持呼吸は4月播種と5月播種では高く,6月播種で低かった.茎葉部の暗呼吸速度は主に穂への炭水化物の転流に関わっており,茎葉部の維持呼吸は4月播種と5月播種で高く,6月播種で低いと推定された.つまり,出穂期の違いによる平均気温の上昇は必ずしも維持呼吸を増大させないことが示唆され,維持呼吸は登熟期の気温に直接影響されるだけでなく,それまでの生育前歴によっても変わると考えられた.また,穂の乾物成長は維持呼吸の増加にともなう暗呼吸量の増大によって低下することが定量的に示された.
著者
MIAH Mohammad Noor Hossain 吉田 徹志 山本 由徳 新田 洋司
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.672-685, 1996-12-05
参考文献数
31
被引用文献数
5

多収性の半矮性インド型水稲品種(桂朝2号, IR36; SDI)と日印交雑型水稲品種(アケノホシ, 水原258号; JI)の乾物生産特性と穂重に対する出穂期前後に生産された乾物の分配率などについて, 日本型水稲品種[農林22号, コガネマサリ; 穂重型(JP), 金南風, 中生新千本; 穂数型(JN)]を対照品種として, 作期を2回[移植日1992年5月15日(ET), 6月9日(LT)]設けて圃場試験を行い検討した. 多収性品種(JI, SDI)の穂揃期の葉面積指数(LAI)は両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間での減少割合が大きく, 収穫期には低い値を示した. SDIとJIの穂揃期地上部乾物重は, LTのアケノホシを除いて, 両作期ともJP, JNより高かったが, 登熟期間の乾物重の増加量に有意差はみられなかった. 特にSDIでは登熟期間のLAIの減少割合が大きく, また, 登熟期後半のSPAD値が大きく低下したことと相まって, 登熟期間の個体群生長速度は最も低くなった. SDIおよびJIの収穫期の穂重はJP, JNと比較してETでは20〜30%, LTでは18〜20%高かった. また, 両作期のSDIとJIの収穫期の地上部乾物重に対する穂重の割合は, JP, JNと比較して有意に高く, この差が穂重差に反映されたものと考えられた. 穂重に対する出穂期までに茎葉に蓄積された乾物の分配率をみると, ETではJPとJNの平均値よりSDIとJIが約2倍, LTではSDIが約4倍それぞれ高い値を示した. 穂揃期の穂重(シンク容量)は収穫期の穂重と有意な相関関係を示し, シンク容量の大きい品種は登熟期間の地上部乾物重増加量が少なくなる傾向がみられた. また, 茎葉に蓄積された同化産物の穂重への分配率はシンク容量と関係が深いことが認められた.
著者
坂田 雅正 亀島 雅史 中村 幸生 古味 一洋 山本 由徳
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.446-454, 2002-12-05
被引用文献数
4

要旨 : 高知県で育成された早期栽培用・極早生水稲品種とさぴかの栽培圃場において,1998年に異常(不時)出穂が発生した.現地(県中央部)での聞き取り調査では,乾籾を100〜160g稚苗用育苗箱に播種し,硬化期はいずれも無加温育苗ハウス内で管理した22〜34日苗を3月30日から4月16日にかけて機械移植したところ,5月上旬に異常(不時)出穂の発生が確認され,その発生程度も圃場により異なった.1998年は春先から異常高温で,移植後も高温で経過し,生育が促進されたことから,温度が異常(不時)出穂の発生要因の一つと考えられた.発生時の特徴としては,通常の生育時より最終主稈葉数が4葉程度少なく,いずれも稈長,穂長が短かった.収量については現地圃場間で206〜541gm^<-2>の差がみられ,異常(不時)出穂の発生程度との因果関係が認められた.異常(不時)出穂は2001年においても確認され,その形態として穂首節間が十分に伸長せず葉鞘から穎花が抽出した個体があり,この穂首には伸長した苞葉が着生していた.また止葉が展開し,幼穂の発育・伸長が停止した出穂不能個体も観察された.発生区では播種からの有効積算温度(基準温度:10℃)が469〜543℃日で異常(不時)出穂が確認され,この時の移植まで温度は253〜351℃日で,移植苗の葉齢は3.4〜4.4であった.また発生区では未発生区に比べ正常な穂の出穂期間が長くなった.一方,未発生区については,年次,苗の種類,移植時期を違えても播種後の有効積算温度が800℃日以上に達すれば到穂することが判明した.
著者
今井 勝 COLEMAN D.F. 柳沢 健彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.413-418, 1985-12-05
被引用文献数
13

将来予想される大気の二酸化炭索(CO_2)分圧の上昇が, イネの生産過程に与える影響を知るための一助として本研究を行なった. 自然光ファイトトロンを用いて, 1/2,000aワクネルポットに土耕した材料(品種:日本晴)を長期間(39, 99, 110日)350μbarCO_2(標準)及び700μbarCO_2下におき, 生育・収量を比較した. 栄養生長期の処理では, 高CO_2により, 分げつ数, 葉面積及び全乾物重が標準区の各々60, 75, 94%増加したが, 根重の著しい増加(149%)により稲体のT-R率が低した. 成熟期まで処理を行なった試験区では, 高CO_2により早生化(主稈葉が1枚減じ, 出穂が6日以上促進された)と多収がもたらされた. 個体当り穂重は, 23〜72%増加したが,主稈の穂の調査により, 粒重よりも粒数の方が1穂重の増大には重要であることが知られた. また, 高CO_2によるイネの反応は, 昼/夜温が28/21℃よりも33/26℃の方が大であった.