著者
根本 了 高附 巧 佐々木 久美子 米谷 民雄
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.371-376, 2002-12-25
参考文献数
12
被引用文献数
2 60

試料に内標準として <sup>13</sup>C 標識したアクリルアミド-1-<sup>13</sup>Cを添加して水抽出し,酸性条件下臭化カリウム-臭素酸カリウムで臭素化し,生じた2,3-DBPAをトリエチルアミンで脱臭化水素して2-BPAとした後,GC/MS (SIM) で定量する食品中のアクリルアミドの分析法を確立した.ポテトチップス,コーンスナック,プレッツェル及びほうじ茶を用いて添加回収実験を行った結果,回収率 97~105% 及び相対標準偏差 0.8~3.9% の良好な結果が得られた.また,本分析法の検出限界は 9 ng/g であった.市販食品31検体の実態調査を行った結果,アクリルアミドは,ポテトチップスから 466~3,340 ng/g 検出され,その他の食品からは不検出~520 ng/g 検出された.
著者
大久保 祥嗣 向井 健悟
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.239-246, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
13

農作物に含まれる農薬の多成分簡易迅速試験法の検討を行った.本研究では,精製工程の簡素化および使用する溶媒の量と種類を少なくすることを試みた.試験溶液は農作物のQuEChERS法による抽出液を,3層(C18,SAX,PSA)の固相を積層したミニカラムにより精製して調製し,この試験溶液を大量注入装置・胃袋型ガラスインサート搭載GC-MS/MSにより分析した.この試験法により,8種類の農産物を用いて添加回収試験を実施したところ,241~331成分が,真度70~120%,併行精度25%未満の目標基準に適合した.
著者
高畠 令王奈 大西 真理 真野 潤一 岸根 雅宏 曽我 慶介 中村 公亮 近藤 一成 橘田 和美
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.235-238, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

安全性審査済み遺伝子組換え(GM)トウモロコシおよびダイズの粉砕試料中の混入率を,重量混合比として算出するためには,内標比が必要である.内標比は,GMダイズに関しては,リアルタイムPCR新機種QuantStudio5, QuantStudio12K Flex, LightCycler 96およびLightCycler 480において,組換え配列と内在性配列のコピー数比を基に既に測定されているが,GMトウモロコシに関しては未対応であった.本研究では,GMトウモロコシのスクリーニング検査法の対象であるカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター,GA21構造特異的領域,MIR604系統特異的領域,MIR162系統特異的領域において,上記リアルタイムPCR4機種を用いて内標比を算出した.
著者
渡邊 趣衣 八巻 ゆみこ 富澤 早苗 増渕 珠子 上條 恭子 中島 崇行 吉川 聡一 山本 和興 髙田 朋美 小鍛治 好恵 大澤 佳浩 大塚 健治 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.247-253, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
7

LC-MS/MSによる乾燥唐辛子中残留農薬分析法の開発を行い,その妥当性評価を実施した.分析法はマトリクス効果を抑制するため,LC条件,精製カラムおよび試験溶液の希釈倍率を検討した.精製カラムはENVI-CarbIITM/PSA (300/600 mg,6 mL)を使用した.さらにマトリクス効果を抑制するため試験溶液の検討では,マトリクス効果および一律基準値相当の測定感度の観点から,8倍希釈液を採用した.これらを元に107農薬について2濃度(0.01および0.1 μg/g)で2併行5日間の妥当性評価を実施した結果,96農薬で真度70.1~112.6%,併行精度11.5および3.4%以下,室内精度24.3および19.9%以下となり,ガイドラインの基準に適合した.また不適合であった主な原因はマトリクス効果と抽出での低回収であると示唆された.
著者
下島 優香子 西野 由香里 福井 理恵 黒田 寿美 鈴木 淳 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.211-217, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
21
被引用文献数
8

サルモネラ汚染実態把握を目的として,2009~17年に東京都内に流通した食肉からのサルモネラの分離,血清型別,薬剤感受性試験を行った.サルモネラは鶏正肉353/849検体(41.6%),豚正肉9/657検体(1.4%),牛正肉1/517検体(0.2%),鶏内臓肉6/8検体(75.0%),豚内臓肉43/142検体(30.3%),牛内臓肉4/198検体(2.0%)から検出された.血清型は,国産鶏肉はS. Infantis,S. Schwarzengrundの順に多く,年次推移としてはS. Infantisの減少とS. Schwarzengrundの増加が認められた.輸入鶏肉はS. Heidelberg,豚肉はS. Typhimurium,O4:i:-,牛肉はS. Derbyが多かった.薬剤感受性は,全種類の食肉でTC耐性率が高く,カルバペネム系およびフルオロキノロン系薬剤には耐性は認められなかった.セフォタキシム耐性菌は14株,ESBL,AmpC産生菌はそれぞれ7株および23株,いずれも鶏肉から検出された.食肉の種類によりサルモネラの血清型,薬剤感受性が異なることが示された.
著者
林 真輝 田村 康宏 大谷 陽範 森岡 みほ子 笹本 剛生 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.223-228, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
20

魚介類中のトリブチルスズ化合物(TBT)およびトリフェニルスズ化合物(TPT)の高速溶媒抽出装置(ASE)およびLC-MS/MSを用いた分析法を開発した.LC分離は,コアシェル性オクタデシル化シリカゲルカラムを用いて0.1%ギ酸70%メタノール溶液によるアイソクラティック移動相条件で行った.試料を抽出温度125℃,抽出溶媒n-ヘキサンの条件でASE抽出し,フロリジルカートリッジカラムを用いて精製した.これらにより,脂質が多い魚介類に対しても適用可能となった.定量は重水素標識したTBTおよびTPTを用いたサロゲート法により行い,検量線は0.2~250 ng/mLの範囲で直線性が得られた.本法による定量下限値はTBT,TPTともに0.8 ng/gであった.本法を用いて,TBTおよびTPTの認証値が付与されたホタテ貝柱の環境標準物質の分析を行ったところ,分析値は認証値と有意差がない結果が得られた.スズキ,ボラ,アナゴ,カレイ,アサリを対象に2併行,5日間の添加回収試験を行った結果,真度89.3~105.3%,併行精度(RSDr) 1.0~4.5%,室内精度(RSDwr) 1.3~7.6%の良好な結果が得られた.
著者
佐々木 隆宏 田原 正一 豊原 律子 森川 麻里 坂牧 成恵 貞升 友紀 牛山 慶子 山嶋 裕季子 小林 千種
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.229-234, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
8
被引用文献数
2

第2版食品中の食品添加物分析法の方法(2版法)において,チーズでは抽出液が懸濁する場合,固形物が浮遊して定容が困難な場合,夾雑成分によりHPLC-UV分析が困難な場合がある.清酒では,共沈操作が不要と考えた.そこで,チーズについては抽出液の懸濁の原因となる水酸化ナトリウム溶液の添加量を減らし,固形物を除くため吸引ろ過後に定容する方法を確立した.清酒については,希釈後,遠心分離する方法とした.また,カーボンモレキュラーシーブが充てんされたカートリッジによる固相抽出法も開発した.添加回収試験(n=5)では,91.3~99.6%(CV 0.9~4.5%)と平均回収率および併行精度が良好であり,チーズで0.010~0.20 g/kg,乳で0.010~0.20 g/L,清酒で0.010~0.10 g/kgの範囲に適用可能であった.本法は2版法の問題を解消し,操作が効率的である点で有用な分析法と考えられた.
著者
吉田 精作 渡邊 美咲 橋本 多美子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.218-222, 2020-12-25 (Released:2020-12-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

精白米の調理過程における有機リン系難燃剤(PFRs)の消長を検討した.精白米にPFRsを添加(500 ng/g)した後,水洗および炊飯を行い,PFRsの減少を観察した.3回の水洗において,観察した7種類のPFRsでは添加量の68~86%が除去された.最初の水洗において,添加量の約50~70%のPFRsが除去されていた.水洗および炊飯後の飯中PFRsの除去率は,電気炊飯器では74~94%,電子レンジ炊飯器では78~96%であった.水洗なしの無洗米(500 ng/g)での除去率は水洗および加熱をした場合より低く,電気炊飯器では10~50%,電子レンジ炊飯器では10~70%であった.精白米からのPFRs摂取量の低減には,炊飯前の水洗が効果的である.
著者
桑原 克義 福島 成彦 田中 凉一 宮田 秀明 樫本 隆
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.354-361_1, 1986
被引用文献数
2

ムラサキイガイに残留する低極性有機蛍光物質濃度の数値化の試みとして, 蛍光分析と蛍光検出器付きHPLC分析を行った. 蛍光分析では, 大阪港, 京都舞鶴, 北海道各海域でよく類似したスペクトル (Ex λmax=ca.310; Em λmax=ca.350nm) を与えた. HPLC分析では, 共通する残留性のピークとその他のピークに別れた. 試料間で, 蛍光分析で約10倍, HPLC分析で約100倍以上の差が得られ, 本方法が上記化合物による海産食品汚染監視の一指標になるものと考えられた.
著者
福田 照夫 宮河 君江 呂 清美
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.508-513_1, 1966-12-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
8
被引用文献数
3 3

アスコルビン酸およびそのナトリウム塩のビタミン剤としてまた水溶性抗酸化剤としての効果の持続化の試みとして, 食品添加物のこれら水溶液の安定性に及ぼす影響を検討したところ, アルギン酸ナトリウムがその濃度32mg%付近に優秀な安定能を示したので, この安定能に及ぼす他の食品添加物および食品成分共存の影響を検討した. クエン酸の共存はきわめてよい結果を与えたが, 他の成分の共存は悪影響を及ぼすものが多かった.
著者
林 智子 上野 英二 伊藤 裕子 岡 尚男 尾関 尚子 板倉 裕子 山田 貞二 加賀美 忠明 梶田 厚生 藤田 次郎 小野 正男
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.356-362, 1999-10-05
参考文献数
18
被引用文献数
8

食品中のβ-カロテン及びトウガラシ色素の逆相TLC/スキャニグデンシトメトリーによる分析法を検討した. 食品から抽出後,β-カロテンはそのまま, トウガラシ色素はけん化して, C18カートリッジを用いて精製し, TLC (プレートは逆相C18, 展開溶媒はアセトニトリル-アセトン-<i>n</i>-ヘキサン=11:7:2) を実施した. 両色素ともに良好な分離と安定した<i>Rf</i>値が得られた. TLC上のスポットにスキャニングデンシトメータを用いたところ, 良好な可視部吸収スペクトルが得られ, 本法はβ-カロテン及びトウガラシ色素の分析に有効であることが明らかとなった.
著者
石川 精一 苗床 江理 川村 誠二 山口 理香 樋口 雅之 小嶋 勉 大和 康博 高橋 正規
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.87-94, 2004-04-25
参考文献数
14
被引用文献数
1 5

北九州市域に流通している食品116種類715検体について,160種類の農薬の残留実態調査を行った.食品55種類204検体から0.002~22 mg/kgの濃度範囲で60種類の農薬が検出された.食品衛生法による残留基準値が設定されていない農薬の検出割合は,国産品が27.8%,輸入品が33.0%であった.検出率が高かった農薬は,国産品ではイプロジオン>ジコホール>ジエトフェンカルブ>プロシミドン>クロルフェナピルなどで,輸入品では総臭素およびベノミルをはじめ,クロルピリホス>ジコホール>フェンバレレート>シペルメトリン>ジメトエートなどであった.輸入果実類や輸入冷凍食品類,輸入加工食品類から農薬が検出されやすい傾向にあった.
著者
ガン エン 松藤 寛 千野 誠 合田 幸広 豊田 正武 武田 明治
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.298-303, 2001-10-25 (Released:2009-03-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2 4

市販食用緑色3号(主色素:HSBA-(m-EBASA) (m-EBASA), m,m-G-3)に含まれる付随色素について,高速液体クロマトグラフを用いて分析したところ,8つの付随色素の存在が確認された.それらの中で,4つの付随色素(付随色素 C, F, G, H)を精製単離し,質量分析計並びに核磁気共鳴分光計を用いて構造決定した.付随色素Cはm,p-G-3, 付随色素FはHSBA-(ethylaniline: EA)(m-EBASA), 付随色素Gは HSBA-(di-EA) (m-EBASA), 付随色素Hは HSBA-(ethylbenzylaniline: EBA)(m-EBASA)であった.付随色素Gは,これまでに報告例のない新規な付随色素であった.
著者
大西 貴弘 古屋 晶美 新井 沙倉 吉成 知也 後藤 慶一 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.183-185, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
7

360の化学薬品をスクリーニングし,71の薬品が抗クドアセプテンプクタタ効果を有していることを明らかにした.71薬品のうち,19薬品が抗生物質,7薬品が抗菌剤・消毒剤であった.他の45薬品は農薬,自然毒,産業薬品および感染症以外に対する薬剤であった.抗クドア効果を有していた19の抗生物質はテトラサイクリン系,ステロイド系,マクロライド系,アミノグリコシド系,β-ラクタム系,キノロン系,リファマイシン系,ポリエン系,ノボビオシン系,スルファ剤,ニトロイミダゾール系に分類された.これらの薬品をクドア感染の予防に使用するためには,効果的な濃度を決定するための研究がさらに必要である.
著者
下島 優香子 神門 幸大 添田 加奈 小池 裕 神田 真軌 林 洋 西野 由香里 福井 理恵 黒田 寿美代 平井 昭彦 鈴木 淳 貞升 健志
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.178-182, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
14
被引用文献数
6

パスチャライズド牛乳によるBacillus cereus食中毒のリスクを把握する目的で,汚染実態および分離菌株のセレウリド産生性を調査した.国産パスチャライズド牛乳14製品101検体中66検体(65.3%)からB. cereusが分離された.分離されたB. cereus90株についてces遺伝子を調査した結果,3検体(1製品)由来3株が陽性であった.分離されたces遺伝子陽性株,標準菌株および食中毒事例由来株の計3株を牛乳に接種して32℃で培養後,近年開発されたLC-MS/MS法を用いて測定を行った結果,いずれもセレウリドの産生を確認した.LC-MS/MS測定は,牛乳中でB. cereusが産生したセレウリドの検出にも有用であった.今回,国産パスチャライズド牛乳におけるB. cereus汚染実態およびセレウリド産生性B. cereus株の存在を明らかにし,牛乳中のLC-MS/MS法によるセレウリド検出法の妥当性を確認した.
著者
後藤 慶一 廣瀬 昭博 折笠 旦継 佐藤 瑛吏 尾入 且基 久保田 かおり 井上 瑠奈 中山 素一
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.200-205, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
13

開栓したペットボトル入り清涼飲料水中における微生物の増殖挙動を評価するため,各種微生物の標準菌株を用いて接種試験を行った.約1.0×104cfuの微生物を250mLの各種清涼飲料を入れた500mLのペットボトルに接種し,4 °C・静置,25 °C・静置,35 °C・静置および35 °C・振とうの条件で1週間培養した.経時的に菌数測定を行い,先行研究「清涼飲料水中の汚染原因物質に関する研究」2)~4)の結果と比較した.その結果,トマトジュースとLactobacillus fermentum,スポーツドリンクとCandida albicans,およびミネラルウォーターとKlebsiella pneumoniaeの組み合わせは,分離株を用いて評価した先行研究と類似した増殖性が観察された.しかしながら,緑茶,混合茶,オレンジジュースおよびミルク入りコーヒーでは,標準菌株の増殖性は弱い傾向で,これは,清涼飲料水中に含まれている成分によって微生物の増殖が阻害されたと推察された.以上の結果から,標準菌株と腐敗物からの分離株では増殖性が異なることがあり,安全性評価をするうえでは注意を要することが明らかとなった.
著者
坂井 隆敏 菊地 博之 縄田 裕美 根本 了 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.171-177, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

畜産物中のフィプロニルおよびその主要代謝物であるフィプロニルスルホンについて,LC-MS/MSを用いた迅速かつ高感度な分析法を開発した.試料からn-ヘキサンおよび無水硫酸ナトリウム存在下,酢酸酸性下アセトニトリルで抽出し,中性アルミナカートリッジカラムを用いて精製した.測定はLC-MS/MSを用い,ESIによるネガティブイオンモードで行った.開発した分析法を用い,畜産物6食品について添加回収試験(各食品n=5)を実施したところ,基準値相当濃度を添加した場合の真度および併行精度はフィプロニルでそれぞれ95~115および0.8~4.1%,フィプロニルスルホンでそれぞれ94~101および0.9~5.1%であった.また,添加濃度0.001mg/kgの場合の真度および併行精度も良好であった.確立した分析法の定量下限値はフィプロニルおよびフィプロニルスルホンともに0.001mg/kgと推定された.本分析法は畜産物中の基準値の適合性の判定に有用な方法と示唆された.
著者
髙本 亜希子 石橋 弘志 福島 聡 友寄 博子 有薗 幸司
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.192-199, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
49
被引用文献数
2

本研究では,日本,ベトナムおよびインドネシアで栽培され,各国で販売されている精米(Oryza sativa L.)63試料を対象として,カドミウム(Cd)およびヒ素(As)濃度の測定を行い,米摂取による成人および小児のCdとAsの推定一日摂取量を算出した.精米中のCdおよびAs濃度は,誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を用いて測定した.日本,ベトナムおよびインドネシア産米中のCd濃度の50%タイル値は0.036,0.035および0.022mg/kg,As濃度の50%タイル値は0.101,0,142および0.038mg/kgであった.また,3か国の米のCdおよびAs濃度を比較したところ,Cd濃度では有意差は認められなかったが,ベトナム産米のAs濃度は日本およびインドネシア産米よりも有意に高かった.3か国の米からのCdあるいはAs摂取による成人と小児への非発がん性へのリスクを評価するため,Target hazard quotient (THQ)を算出した.3か国の米において,CdあるいはAs摂取による小児のTHQの50%タイル値は成人のTHQの50%タイル値よりも高かったが,これらのTHQの50%タイル値は1未満であり,非発がん性への健康リスクが低い可能性が示唆された.
著者
櫻木 大志 鈴木 昌子 大野 浩之
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.206-209, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
1
被引用文献数
1

各種ミネラルウォーター類における全有機炭素(TOC)の測定法を確立し,妥当性が確認できた.ミネラルウォーター類には,炭酸含有の有無,硬度の高低などさまざまな製品がある.炭酸を含有しないミネラルウォーターは硬度の高低にかかわらず,水道水と同様の測定条件で妥当性が確認された.しかし,炭酸を含有し硬度が中硬度,高硬度の2種類のミネラルウォーターは正確な測定ができなかった.そこで,試料から炭酸を効率的に除去する条件を検討した.測定条件の通気時間を長くし,塩酸の添加率を上昇させることで,無機炭素の影響を抑えることによりこの2種類のミネラルウォーターでも測定結果が安定して,妥当性が確認できた.これらの結果により,本法はさまざまな種類の市販ミネラルウォーター中のTOCを正確に測定できる有用な方法であると考える.