著者
大谷 陽範 田村 康宏 佐藤 菜緒 林 真輝 森岡 みほ子 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.186-191, 2020-10-25 (Released:2020-10-30)
参考文献数
9

高速溶媒抽出装置(ASE)およびGC-MS/MSを用いた魚類中PCBs分析法の対象食品拡大を検討したところ,特定の食品において低塩素化PCBs(一部の3~4塩素化PCBs)の回収率が低値を示すことが判明したため,分析法の改良を試みた.スズキ・牛乳において,ASE抽出前の凍結乾燥を実施しても十分な改善は認められなかったが,固相抽出カラムをシリカゲル/硫酸シリカゲル積層カラムに変更することにより低塩素化PCBsの回収率が著しく向上した.本法を他の食品においても評価するため,魚類,肉類,卵類,乳および乳製品中のPCBs分析を行った.測定対象は3~7塩素化PCBsとし,試料を抽出温度125 ℃,抽出溶媒n-ヘキサンでASEにて抽出の後,シリカゲル/硫酸シリカゲル積層カラムで精製し,GC-MS/MSで測定した.3~7塩素化PCBsの定量下限は0.03~0.16μg/kgであった.各食品で5併行の添加回収試験を行った結果,3~7塩素化PCBsの回収率は84~112%,変動係数は1~9%であった.
著者
中川 一夫 池内 真理 次田 陽子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.425-427, 1986
被引用文献数
2 6

植物性食品材料54種中のグルタチオン含有量を酵素サイクリング法を用いて定量したところ, 0.07~28.7mg/100gの範囲にあった. これらの食品材料のなかでは, ホウレンソウ, キャベツ, シロナ, パセリ, キュウリ, カボチャ, トマト, サヤエンドウ, ソラマメ, エノキタケには相対的に高いグルタチオン含有量が認められたが, 動物肝グルタチオン量に比べると低く, およそ10分の1以下にすぎない.
著者
早川 亮太 小林 直樹 加藤 登 工藤 由起子 荒木 惠美子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.402-409, 2013-12-25 (Released:2013-12-28)
参考文献数
20
被引用文献数
2

日本で流通する日本産海産魚におけるヒスタミン生成を明らかにするために,市販の73魚種について筋肉および腸管を混合したヒスタミン生成モデル試料を作製した.25℃で12時間保存した結果,35魚種において50 mg/kg以上のヒスタミン生成が認められ,これらの魚種がヒスタミン食中毒の原因となる可能性が示唆された.また,1か月の-45℃凍結によるヒスタミン生成の低減の検討では,一部魚種についてヒスタミンが生成され,ヒスタミン生成菌としてPhotobacterium damselaeおよびPhotobacterium iliopiscariumが分離されたが,全魚種について,ヒスタミン生成が低減したことから,この方法が有効なヒスタミン生成の制御方法であることが明らかになった.
著者
シャヒーム エラヒ 藤川 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.138-142, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
20

黄色ブドウ球菌食中毒は食品中で産生されたブドウ球菌エンテロトキシン(SE)によって起こる.本食中毒はSE型の中で多くの場合,エンテロトキシンA (SEA)が原因物質である.各種食品中での本菌の増殖とSEA産生に関する研究は多いが,パンに関する研究はほとんどない.そこで本研究では通常のパン製造工程において,パン生地発酵中のブドウ球菌増殖とSEA産生性,さらに焼成中のSEA失活について検討した.25または35℃で4時間の発酵中,パン生地(全重量約470 g)中での本菌増殖およびSEA産生は認められず,このような条件の発酵中,生地におけるSEA産生リスクは無視できるほど小さいと推察された.一方,生地に接種したSEA (6.0および0.56 ng/g)は200℃の焼成中それぞれ20および10分後には検出できなかった.この結果は生地の焼成時間(25分)でこれらの濃度のSEAを十分に失活させることを示した.本研究で得られた製造過程における生地中のSEA産生および失活の結果はパン製造における微生物学的な食品安全のための有用な情報となるであろう.
著者
石﨑 直人 鎌田 洋一 古畑 勝則 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.132-137, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
34

ブドウ球菌食中毒(SFP)は黄色ブドウ球菌(SA)が産生する嘔吐毒であるブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)により引き起こされる.SEsには古典型と新型が存在するが,近年食品から両方の型を有するSAが多く検出されている.なかでもブドウ球菌エンテロトキシンQ (SEQ)はSFPにつながる潜在的なリスクが高いと考えられている新型SEsである.そこで,食品中におけるSAの菌数と古典型SEAおよびSEQの産生量との相関性を,スクランブルエッグをモデルとして条件をpH 6.0,7.0および8.0,塩分濃度0.5および1.0%,静置温度25℃に設定し検討した.SAの菌数はすべての条件で24時間後では107/10 g以上,48時間後では109/10 gとなった.SEAの産生はすべての条件で24時間後に確認された.SEQは,NaCl 1.0%加スクランブルエッグではいずれのpHにおいても24時間後に検出されたが,NaCl 0.5%下でのpH7.0と8.0では24時間では検出されなかった.SEQの産生量はSEA量より少なかったが,SEQは比較的低いpHおよび水分活性のスクランブルエッグにおいては産生されやすく,SFPの発症に関与する可能性があることが示唆された.
著者
吉成 知也 渡辺 麻衣子 大西 貴弘 工藤 由起子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.119-125, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
27

フモニシンはフザリウム属菌が生産するカビ毒で,主にトウモロコシやその加工品に検出される.近年,遊離型のフモニシンに加え,そのモディファイド化合物もトウモロコシ加工品に存在することが報告されてきた.モディファイドフモニシンの毒性や汚染実態については明らかになっていないことが多い.本研究では,日本人の健康に対するモディファイドフモニシンのリスクを評価するために,日本に流通するトウモロコシ加工品に含まれるモディファイドフモニシンを解析した.食品検体中の遊離型とモディファイドフモニシンをまとめてアルカリ処理し,加水分解フモニシンへと変換し,LC-MS/MSで定量した値を全フモニシン量とした.コーンフレーク,コーンスナック,コーンフラワーおよびコーンスープにおける全フモニシン量は,遊離型フモニシンに対してそれぞれ4.7,2.8,2.1および1.2倍であった.全フモニシン量を用いて日本人におけるコーンスナックとコーンフレークからのフモニシンの一日平均摂取量を算出した結果,遊離型フモニシンを用いて算出した場合の3倍となった.これらの結果より,フモニシンの真のリスクを評価するためには,モディファイドフモニシンも含める必要があると考えられた.
著者
杉山 広 森嶋 康之 賀川 千里 荒木 潤 巖城 隆 小松 謙之 味口 裕仁 生野 博 川上 泰 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.103-108, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2

回虫は土壌伝播蠕虫の代表となる寄生虫で,ヒトは虫卵に汚染された植物性食品を摂食して感染する.日本では少数の国内感染症例が継続的に報告されているが,症例数の推移や感染源となる植物性食品の汚染状況は不明な点が多い.そこで,近年の回虫症例発生状況および感染源を明らかにするため,日本臨床寄生虫学会誌,PubMedおよび医中誌Webを用いた文献検索,および臨床検査機関・食品検査機関を対象としたアンケートによる聞き取り調査を行った.文献検索の結果では,1990より2018年の29年間に計193例の回虫症例が確認された(年平均6.7例).しかし2002年以降の報告数は激減し,年平均1.3例にとどまった.臨床検体における回虫症例数も,2000から2008年の年平均19.7例が,2009年以降2.8例と激減した.回虫の感染源となる植物性食品は12,304検体が検査されたが,アニサキス類の幼虫が検出された(11例)ものの,回虫は検出されなかった.ただしキムチは,173検体中の1検体から虫卵が検出され,回虫の感染源であることが疑われた.回虫症例は減少傾向が明らかだが,いまだに発生は確認され,このために感染源を特定して予防対策を確立するために,食品の調査を今後も継続する必要があると考えられた.
著者
中島 崇行 大塚 健治 富澤 早苗 増渕 珠子 八巻 ゆみこ 上條 恭子 吉川 聡一 髙田 朋美 小鍛治 好恵 渡邊 趣衣 大澤 佳浩 橋本 常生
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.154-160, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
23
被引用文献数
2

食品中の残留農薬分析において,ある農薬の定量値が正しいかどうかを確認するため,異なる機器を使用して定量値の確認を行うことがしばしばあるが,それぞれの機器の値が完全に一致することは珍しい.本研究では,食品毎にどの程度違いがあるかを比較するため,当研究室の日常検査法を用い,121成分,6種類(グレープフルーツ,ばれいしょ,パプリカ,キャベツ,ほうれんそう,玄米)の食品について,GC-MS/MSおよびLC-MS/MSそれぞれの機器で妥当性評価を実施し,その結果を主に真度に着目して比較した.その結果,GC-MS/MSでは,上述の食品において97,111,110,118,111,63成分が基準に適合した.一方LC-MS/MSでは,50,114,103,112,100,103成分が基準に適合した.これら両機器の結果の差は,主にマトリクス効果によるものだと考えられ,マトリクス効果の補正によりそれぞれの真度は近似した.しかし真度の一致度については食品試料による差が大きく,特に玄米ではマトリクス効果を補正しても両機器の真度の差は20%以上であった.
著者
小野 高明 上田 三都子 辻 正康 川本 千代実 山根 伸久
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.148-153, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
13
被引用文献数
1

福山市内を流通する乳のアフラトキシンM1 (AFM1)汚染と時期および地域による関連性を知るため,2018年6月~2019年1月にかけて夏期および冬期の各1回調査を行った.また,AFM1汚染の知見が少ない乳飲料について,福山市内を流通する同時期の乳飲料のAFM1汚染度を乳と比較した.結果はすべての乳でAFM1の基準値(0.5 μg/kg)未満となった.時期別の比較では夏期の牛乳1検体がEUの基準値(加熱処理乳:0.050 μg/kg)を超える濃度(0.07 μg/kg)を示したが,AFM1汚染度に有意差はなかった(p>0.05).地域別の比較では,乳のAFM1汚染度について冬期は中国地方のほうがその他地方より有意に高く,夏期は有意に低かった.乳のAFM1汚染は,時期または地域による直接的な関連性があるわけではなく,供与する飼料の種類,量,管理方法による影響を受けると考えられた.乳および乳飲料の比較では,乳飲料のAFM1汚染度のほうが有意に低かった(p<0.01).夏期の乳飲料1検体から最も高濃度(0.08 μg/kg)のAFM1を検出した.乳飲料のAFM1汚染は,原材料の汚染の程度,それらの配合割合および加工による影響を受けると考えられ,製品の無脂乳固形分の増加がAFM1汚染の増加要因となると推定された.
著者
吉光 真人 上野 亮 松井 啓史 小阪田 正和 内田 耕太郎 福井 直樹 阿久津 和彦 角谷 直哉
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.143-147, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
11
被引用文献数
1

われわれはLC-MS/MSを用いた迅速簡便な6種類防かび剤分析法を開発した.イマザリル,o-フェニルフェノール,チアベンダゾールに加えて,2011年以降に防かび剤としての利用が認められたフルジオキソニル,アゾキシストロビン,ピリメタニルを測定対象とした.迅速かつ簡単な分析法の確立を目指し,残留農薬分析法と抽出操作を共通化した.また,試料からの抽出液1 mLを充填剤量500 mgのOasis HLBカラムに負荷,アセトニトリル8 mLで溶出する精製法を採用した.次いで,オレンジ,グレープフルーツ,レモンに6種類の防かび剤を添加して添加回収試験を行ったところ,真度は89.7から100.0%,室内精度および併行精度はそれぞれ,1.5から5.0%,0.5から4.9%となり,食品中に残留する農薬等に関する試験法の妥当性評価ガイドラインの目標値を達成した.定量限界は,o-フェニルフェノールでは1 mg/kg,その他の防かび剤では0.2 mg/kgとなり,防かび剤の基準値よりも低い値であった.本分析法の有用性を確認するため,2017~2019年に市販柑橘類の分析を行ったところ,検出された防かび剤は表示との整合性が確認された.また,基準値を超過する濃度の防かび剤が検出された検体はなかった.
著者
佐々木 貴正 岩田 剛敏 上間 匡 朝倉 宏
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.126-131, 2020-08-25 (Released:2020-10-02)
参考文献数
24
被引用文献数
3

カンピロバクターは,食品媒介性感染症における最も重要な原因菌の1つである.カンピロバクター感染症の際に抗菌薬が使用されることは稀であるが,症状が重度である場合や長期間持続する場合には使用されることがある.カンピロバクター感染症の原因の1つは,カンピロバクターに汚染された牛肝臓の喫食である.牛肝臓は,と畜場において胆汁により表面と内部が汚染される可能性がある.以上のことから,われわれは,と畜場において,胆汁のカンピロバクター汚染状況およびその分離株の性状を調査した.カンピロバクターは35.7%(55/154)から分離され,C. jejuniとC. fetusが上位2菌種であった.C. jejuniでは,テトラサイクリン(63.0%)とシプロフロキサシン(44.4%)に高率な耐性が認められた.Multi-locus sequence typingにより,C. jejuniは12型に分類され,ST806が最も多く,37.0%を占めていた.すべてのC. fetusは全身性疾患の原因となることがあるC. fetus subsp. fetusと同定された.C. fetusでは,シプロフロキサシン(66.6%),ストレプトマイシン(58.3%)およびテトラサイクリン(33.3%)に高率な耐性が認められた.すべてのC. fetusは,ST3 (16株)およびST6 (8株)に分類された.16株のST3のうち,15株(93.8%)はストレプトマイシンとシプロフロキサシンの両方に耐性であった.本調査結果は,牛胆汁の高率なカンピロバクター汚染とその分離株の高率な薬剤耐性を示していている.と畜場における牛肝臓の胆汁汚染防止は,カンピロバクター感染のリスク低減策の1つである.
著者
志田(齊藤) 静夏 根本 了 手島 玲子 穐山 浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.72-75, 2016-06-25 (Released:2016-07-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

GC-MS/MSを用いた加工食品中の殺鼠剤テトラメチレンジスルホテトラミン分析法を開発した.テトラメチレンジスルホテトラミンを試料から無水硫酸ナトリウムで脱水しながら酢酸エチルで抽出し,アセトニトリル/ヘキサン分配およびグラファイトカーボン/PSA積層ミニカラムで精製した後,GC-MS/MSで定量した.加工食品10食品(赤ワイン,インスタントラーメン,うなぎ蒲焼き,餃子,チーズ,白菜キムチ,バター,ハンバーグ,ピザおよびレトルトカレー)を用いて,添加濃度0.1 mg/kgで5併行の添加回収試験を行ったところ,真度85~96%,併行精度(RSD) 7%以下の良好な結果が得られた.いずれの食品においても選択性に問題はなかった.これらの結果から,本法は加工食品中の高濃度のテトラメチレンジスルホテトラミン分析法として適用できるものと考えられた.
著者
山口 昭弘 清水 香織 三嶋 隆 青木 信太郎 服部 秀樹 佐藤 秀隆 上田 信男 渡邉 敬浩 日野 明寛 穐山 浩 米谷 民雄
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.146-150, 2006-08-25 (Released:2008-08-04)
参考文献数
9
被引用文献数
8 11

遺伝子組換え(GM)パパイヤの同定においてわが国の公定法のPCR法を改良し,簡便かつ迅速な検知法を開発した.凍結乾燥処理を省略し,生果肉から直接シリカゲル膜タイプの市販キットを用いてDNAを抽出した.GMパパイヤ特異的遺伝子およびパパイヤ内在性のpapain遺伝子を同時に増幅するduplex PCR法を開発するために,papain遺伝子に対する公定法のPCR増幅産物(211 bp)の内側に,新たなプライマーペア papain 2-5'/3' を設計した.GMパパイヤ検出用のプライマーペアには公定法と同一のものを用いた.これらのプライマーペアを同一チューブ内に共存させて増幅させる duplex PCR 法を行った後,増幅産物をアガロースゲル電気泳動またはマイクロチップ電気泳動により同時検出した.本法により簡便,迅速なGMパパイヤの同定が可能であった.
著者
大門 拓実 立岡 秀 髙橋 邦彦 濱田 佳子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.95-102, 2020-06-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
4

著者らは迅速性,簡便性,汎用性を勘案し,含水アセトンを用いて抽出後,n-ヘキサンによる脱脂精製,分析種のアセトニトリルへの分配,塩析効果による精製を同時に行うことが可能となる三層分離抽出を利用した食肉および水産物中の動物用医薬品迅速一斉分析法の検討を行った.酸の濃度を調整すること,EDTA–2Na・2H2Oを添加することにより,キノロン剤の回収率が良好となった.本法は,固相カラムを用いた精製や溶媒の濃縮,転溶操作をせずに試験溶液を調製可能である.妥当性確認の結果,分析種全65成分のうち,牛筋肉62成分,牛脂肪63成分,うなぎ62成分,さけ65成分が妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,迅速的かつ効果的な動物用医薬品一斉分析法として適用可能であることが考えられる.
著者
戸渡 寛法 宮﨑 悦子 赤木 浩一 中牟田 啓子 片岡 洋平 渡邉 敬浩
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.86-94, 2020-06-25 (Released:2020-07-01)
参考文献数
12

多くの魚に複数の種類の有機ヒ素化合物が含まれているが,化学形態ごとに毒性が異なることから,長期摂取による健康影響のリスクを評価するためには,形態別に濃度を定量する必要がある.本研究では,魚中のモノメチルアルソン酸(MMA),ジメチルアルシン酸(DMA),トリメチルアルシンオキサイド(TMAO),テトラメチルアルソニウム(TeMA),アルセノベタイン(AB),アルセノコリン(AC)を対象としたLC-MS/MSによる分析法を開発し,妥当性を確認した.また,福岡市内に流通する魚10種(計50試料)について総ヒ素濃度および各有機ヒ素化合物濃度を調査した.その結果,総ヒ素はすべての試料から0.53~25 mg/kgの範囲で検出され,カワハギからは8.3~25 mg/kgの範囲で検出された.イワシを除く9種においては,総ヒ素濃度に占める各化合物濃度のうち,AB濃度の割合が最も高かったが,イワシにおいてはAB濃度よりDMA濃度の割合が高く,総ヒ素濃度のうち16~24%を占めていた.養殖マダイにおける総ヒ素,ABおよびACの濃度は天然マダイより低かった.