著者
渡辺 研 岡本 奨
出版者
社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.325-330, 1975
被引用文献数
3

大豆グロブリンの湯葉状皮膜の組織と生成過程を走査型電子顕微鏡観察,呈色反応などで検討した。<BR>(1) 皮膜は水分含量が60~80%であるが,凍結乾燥によって上部に氷結晶の跡が認められない組織化の比較的進んだ層と,下部に組織化の低い層をもち,後者は肥厚しながら約40μまでは経時的に前者に移行する。ミロン試験とキサントプロテイン試験で皮膜表面は鮮明な呈色反応をし,裏面はほとんど反応しなかった。また大豆グロブリンのペーストを加熱して得られるゲルはミロン試験で微紅色にとどまり,湯葉状皮膜と加熱ゲルの組織の相異が示された。<BR>(2) 成膜初期に気液界面に形成される層をモデル固相,たとえばアセチルローズ,セロファン,ニトロセルローズ,フィブロインあるいは羽毛ケラチンなどのフィルムでおきかえても,この固液界面に皮膜を生成することができた。表面での水分蒸発速度が0.049mg/cmcm<SUP>2</SUP>・min以下のフィルム面では成膜しなかった。モデル固液界面で生成した皮膜は従来の製法による湯葉皮膜と同様の組織をもつことが観察された。またこの皮膜は湯葉独特の表面のシワがなく,セロファン面で得られたものでは破断強度が従来の製法のものより大きくなった。<BR>なお,7Sおよび11Sグロブリンは分子構造や皮膜 強度において顕著な差異があるにもかかわらず,皮膜の組織においてはきわだった差異がみられなかった。
著者
川岸 舜朗
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.445-453, 1991-05-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
47
被引用文献数
1
著者
蔡 平里 上田 博夫 辰巳 忠次
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.16, no.8, pp.346-349, 1969-08-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
2

(1) とうがらしの辛味成分であるカプサイシンの酸部分である炭素数10のイソ脂肪酸に類似した酸を,天然に広く存在する鎖状モノテルペンより合成し,これとバニリルアミンからカプサイシン系辛味物質を合成し,天然のカプサイシン辛味成分混合体およびバニリルノナンアミドとその辛味を比較検討した。(2) 辛味についての官能審査の結果,NELSONの報告とはやや異なり,バニリルノナンアミドは,天然のカプサイシン辛味成分混合体に比べて辛く,バニリルジメチルオクタンアミドはさらに辛かった。(3) プラスターに添加した場合の皮ふに対する刺戟性では,バニリルジメチルオクタンアミドは,バニリルノナンアミドの約1/2であった。
著者
久保 田清 栗栖 真悟 鈴木 寛一 松本 俊也 保坂 秀明
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.195-201, 1982-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1 5

油脂を含む食品を調合製造するさい原材料になると考えられる8種の植物油(大豆油,菜種油,トウモロコシ油,落花生油,ゴマ油,ヤシ油,綿実油,オリーブ油)と,これらより調合製造されている市販のサラダ油と天ぷら油について,流動特性と密度の測定を,温度10~60℃において行った。流動特性の測定には,管型粘度計を使用した。いずれもニュートン挙動を示した。本実験結果に対しては,粘度および密度の温度関係式は次のように表わすのがよいという結果になった。K=a exp(b/T3)ρ=a+b Tここで,Kは粘度(g/cm・sec),ρは密度(g/cm3),T温度(0K)である。
著者
小泉 幸道 上原 康浩 柳田 藤治
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.34, no.9, pp.592-597, 1987-09-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
16
被引用文献数
5 18

比較的高価格で販売されている特殊食酢類11点の,一般成分,無機成分,遊離アミノ酸,有機酸について分析を行い,製品間の比較を行うと共に,普通の米酢とも比較を行い品質について検討した.(1) 一般成分については各成分共,製品間の差は多少みられたが,普通の米酢とあまり変わらなかった,しかし,沈でん物が発生している製品が多く,カラメルを添加して黒酢を強調している製品もみられた.(2) 無機成分については,ナトリウムが多く,次いでカリウムやマグネシウムであった.(3) 遊離アミノ酸については,含量の多いアミノ酸はアラモン,ロイシン,リジン,バリン.グリシンであった.全アミノ酸量は,56.9~362.6mg/100mlで普通の米酢よりは多いが,比較的含量は少なかった.原料や製造法による影響は大きいと思われる.全アミノ酸に対する必須アミノ酸の割合は,殆どが45~50%であった.(4) 酢酸を除いた有機酸については,乳酸の含量が一番多く,次いでピログルタミン酸であった.比較的高価格で販売されている特殊食酢類は,品質と価格に問題があると思われる.
著者
塚正 泰之 福本 憲治 一宮 まさみ 杉山 雅昭 峯岸 裕 赤羽 義章 安本 教傳
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.862-869, 1992-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
18
被引用文献数
1

冷凍豚肉を解凍した時に遊離するドリップの一般性状と利用方法について検討した.(1) ドリップの主体は筋細胞内液で一部細胞外液が含まれている.一般組成は水分とタンパク質で全体の99%を構成し,タンパク質の含有量は,ももドリップの8.8%からロースドリップの12.0%までの範囲である.(2) ドリップの一般性状は筋肉部位によって異なり,ばら肉のそれはロース肉ともも肉のドリップの中間的な性状を示す.核酸関連物質,有機酸などは肉の部位毎の特徴をそのまま示している.(3) ドリップ自体を塩せきすると経時的に遊離アミノ酸が増加し,食味が向上することが確認された.(4) ソーセージに解凍ドリップを復元添加するとドリップ自体の塩せきの有無に関わらず食味および色調が顕著に向上することが判明した.
著者
上田 成子 天野 恵里子 門田 ちはる 藤間 基朱 槇野 瑞枝 吉沢 美和子 桑原 祥浩
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.453-455, 1980-09-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

小麦粉及びその製品の微生物汚染状態を検討すると共に,汚染菌叢のうちBacillus属の同定を行なった。(1) 小麦粉の汚染菌数は一般細菌及びカビ・酵母とも全検体104/g以下であった。しかし,パン粉(乾燥及び生製品)については小麦粉と比較して汚染度が高い傾向にあり,とくに生パン粉の汚染度が高かった。(2) 小麦粉,乾燥パン粉及び調味加工小麦粉製品間には菌叢に差異がみられ,とくに調味加工小麦粉製品ではbacilliが多く,生パン粉ではグラム陽性球菌が多く検出された。(3) 各製品から分離されたBacillus spp.の同定を行なった結果, B. licheniformis, B. subtilisが最も普遍的に検出され,その他, B. cereus, B. pumilusも多くの材料から検出されたが,各製品ごとのspeciesの分布にはほとんど差がみられなかった。
著者
福家 洋子 大石 芳江 岩下 恵子 小野 晴寛 篠原 和毅
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.709-711, 1994-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
3 7

沢わさびの水抽出画分は,胃がん細胞MKN-28の細胞増殖を著しく抑制することを見いだした.活性成分は,限外ろ過による分子量分別の結果,分子量5000以下の成分であり,わさび中に存在する酵素および辛味前駆物質(シニグリン)辛味成分ではないことが確認された.また活性は90℃, 10minの加熱条件によってもほとんど影響を受けず安定な成分であることが確認された.
著者
野並 慶宣 斉藤 信 佐々木 康弘 鈴木 敦士
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.698-703, 1983-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
14

新鮮殼付鶏卵およびあひる卵を70℃あるいは100℃に30分間加熱した後凍結,解凍した場合の卵白の微細構造を透過型電顕で観察し,解凍卵白中に分離している液の組成を分析し,またオボムチンを希釈あるいはpHを5.50とすることにより沈でん,除去した卵白を同様に加熱,凍結,解凍し,その微細構造を観察し,次の結果をえた。(1)新鮮生卵白の微細構造は鶏とあひるとでは明らかに異なるが,いずれの場合も電子密度の極めて高い線維状構造が認められ,オボムチンを除去した卵白ではこの構造は認められない。(2)電顕図において,卵白蛋白質は加熱により電子密度の高い塊状となり,加熱温度が高くなるとこの塊の周辺部の電子密度は増大して塊の輪郭は明らかとなる。オボムチンを除いた場合は,加熱により生じた塊は互に接続するものが多くなり,酸によりオボムチンを除いた場合は,蛋白質は大部分電子密度の高い大きい塊となるが,酸によるこの変化はあひる卵より鶏卵において著しい。(3)分離液の重量の卵重に対する割合はいずれの加熱条件下においても鶏卵とあひる卵で差はないが, 70℃,30分間加熱のあひる卵の分離液中の固形物含量は他の場合より著しく少ない。(4)分離液中の窒素は, 100℃, 30分間加熱の鶏卵,あひる卵および70℃, 30分間加熱の鶏卵の場合は蛋白態のものが多いが, 70℃, 30分間加熱のあひる卵の場合は大部分が非蛋白態である。また分離液中のヘキソサミン,ウロン酸は鶏卵よりあひる卵に多い。(5)鶏卵およびあひる卵の分離液中の遊離の糖のペーパークロマトグラフィーによる分析結果は,新鮮鶏卵卵白の透析性糖のそれとは異なる。
著者
松本 伊左尾 今井 誠一
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.112-117, 1980-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

みその熟成中において,乳酸生成におよぼす対水食塩濃度や酵母添加量などの影響につき検討を行い,つぎの結果を得た。(1) 乳酸発酵はみその対水食塩濃度により大きく影響を受け, 22%を越えるとPc. halophilusを106/gレベル添加しても乳酸はほとんど生成されなかった。(2) 仕込時にエチルアルコールが1%以上存在すると,乳酸発酵は著しく抑制された。(3) 熟成中の乳酸発酵はS. rouxiiの作用により影響を受け,確実に乳酸生成を期待するにはPc. halophilusをS.rouxiiよりも1オーダー以上多く添加しなければならないことが知られた。
著者
杉田 浩一 白井 邦郎 和田 敬三 川村 亮
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.311-315, 1977-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
3
被引用文献数
3 1

食品中コラーゲンの加熱による変化を解明するため,豚皮より調製した不溶性コラーゲンを水中で加熱し,ゼラチン化の進行状態を観察した。溶出窒素量よりみたゼラチン化は,加熱の温度,時間の増加により促進されるが,温度により限界がある。 pHが低下するとこの限界は除かれ,溶出量が著しく増大する。塩類は酸性側でゼラチン化を抑制し,中性側で促進する。加熱時の溶出物中には,ディスク電気泳動および,ゲルクロマトグラフィーにより,コラーゲンのα, β, γ鎖に相当する成分が検出されたが,ゼラチン化の進行にともない,そのパターンにはペプチド鎖の解裂による低分子化とみられる変化が起こった。
著者
中林 敏郎 政野 光秋
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.10, pp.725-728, 1986-10-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

先に考案したトリゴネリン(T)とカフェイン(C)の簡易同時定量法を用いて,コーヒー豆焙煎中の両者の含量の変化,および各種の生豆や焙煎豆,ならびにコーヒー製品の両者の含量比(T/C)を検討した.(1) 室温から240℃まで21分間の焙煎中,カフェイン含量は豆の重量減に応じて相対的にわずか増加するが,トリゴネリン含量はメディアムロースト以後急激に分解減少した.(2) コーヒー生豆や焙煎度の異なる豆を分析した結果,そのT/Cの平均値は生豆で0.86,メディアムローストで0.73,フレンチローストで0.55,イタリアンローストで0.15となり,T/C値から豆の焙煎度を推定できることが示唆された.(3) インスタントコーヒーのT/C値にはかなりの幅があるが,それらの平均値は0.43で,原料豆の平均的な焙煎度はフレンチローストよりやや強いと推定さた.(4) 缶詰コーヒー飲料のT/Cの平均値は0.42であるが,個々の値にはかなりの幅がある.しかし大部分のものの原料豆の焙煎度はフレンチロースト付近と推定された.
著者
ジョセフィン アグレバンテ 松井 年行 北川 博敏
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.235-238, 1990
被引用文献数
4

6lの容器当り5mlの40%か60%のエタノールを噴霧すると, 20℃で貯蔵したカーベンディッシュバナナの追熟が1~3日間早められた.処理した果実の追熟が早ければ早い程,コントロールと比較してより低いデンプン含量と,より高い全糖,ショ糖,還元糖含量となった. α-アミラーゼ活性は, 40%と60%エタノール処理の果実で一般に高かった.酵素活性の増大は,デンプンの加水分解の開始より明らかに遅かった.
著者
野村 孝一 受田 浩之 松本 清 筬島 豊
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.32, no.12, pp.916-919, 1985
被引用文献数
1 2

電導度検出型糖含量測定用フローインジェクション分析(FIA)装置の汎用化の一環として,リンゴ果汁およびビート汁中の糖含量測定,並びに牛乳の全固形分(TS)含量の測定を試みた。本FIA装置を用いた場合,各試料ごとに専用の算出式を用いることにより全く同一のFIA運転条件下で糖含量あるいはTS含量の測定が可能であった。本法により算出した糖含量は平均0.24%の偏差でフェノール硫酸法により求めた値と一致した。一方,TS含量の測定においてはAOAC法と平均0.19%の偏差で一致する値を与えた。
著者
稲垣 長典 西尾 正子 服部 マリ子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.282-287, 1965-07-15 (Released:2009-04-21)

(1) 電子レンジによる食品中の微量成分の変化をみるために,まず各種ビタミンの変化と脂肪の酸化状態を調べた。(2) ビタミンAについてはレンジ,オーブン同様でともにAの損失は少ない。B1については濃度1000γ%の場合沸騰に達する時間でレンジにては約5%,オーブンにては約12%の損失があり,レンジのほうが損失は少ない。B2についてはB1ほど損失大でなく,レンジでもオーブンでも大差ない。Cについては高濃度にてはレンジ,オーブンに差はないが低濃度になるに従いレンジのほうが残存率高くなる。すなわち10mg%の液を沸騰させるまでにレンジでは約10%,オーブンでは約30%の損失である。これらの傾向は食品の場合でも同様であった。(3) 脂肪の酸化状態を酸価,過酸化物価,TBA値カルボニル価より検討した結果,加熱により酸化されるがレンジ,オーブンの間には大きな差はなかった。
著者
遠山 良 関村 照吉 関澤 憲夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.299-303, 1994-04-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
20
被引用文献数
2

冷麺製造工程におけるエタノールの残存率及び残存エタノールと冷麺の保存性との関係について検討した.(1) 冷麺は製造時約100℃の加熱糊化工程を経ているにもかかわらず,製造原料に保存料として添加したエタノールの残存率はかなり高く,乾燥工程を経た段階で86.8%であった.(2) 乾燥工程でエタノールの減少率が低い原因を確認するため,冷麺を通風と無風の条件下で乾燥して比較したところ,無風乾燥では水分の減少とともにエタノール濃度も減少した.一方,通風乾燥では水分は急激に減少したが,工タノール濃度は逆に僅かに上昇した.(3) 以上のことから,冷麺製造時の通風乾燥は,エ夕ノールの残存率を高める上で有効であることが分かった.(4) エタノール残存率と保存性の関係を調べた結果,麺に1.94%のエタノールが残存する場合, 30℃, 14日間の保存でも微生物の増殖はほとんど見られなかった.エタノール含量が低下するにつれて保存性は低下するが,エタノール含量が1.26%と低くても保存温度が15℃であれば45日間経過しても微生物は全く検出されなかった.
著者
越後 多嘉志 竹中 哲夫 江沢 真
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.148-153, 1975-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
9
被引用文献数
1

蜂蜜を加熱することによって生じる糖含量,酸度,色および細菌生育阻止力の変化について調べた。(1) 加熱温度,時間の増加に伴い,フラクトースとグルコースの含量比およびシュークロースとフラクトース,グルコース含量との比は小さくなる。総酸度にはほとんど変化ないが,ラクトン酸度と遊離酸度の比は大きくなる。(2) 蜂蜜を加熱するとHMFが増加し,褐変反応によって蜂蜜は着色する。この反応の1経路としてHMFを経由する反応系が考えられ,蜂蜜のような酸性液中ではグルコースよりもフラクトースが反応しやすく,容易にHMFを生成し,しかもこの反応はアミノ酸なしでも進行する。しかしHMFからの反応は進行しにくい。(3) Staphyloccus aureusに対する蜂蜜の生育阻止作用は高糖濃度,酸成分および過酸化水素によると考えられ,特に過酸化水素は蜂蜜中のグルコース・グルコースオキシダーゼ反応系によって生成している。蜂蜜を加熱して阻止作用が失われるのはグルコースオキシダーゼが失活して過酸化水素が生成しなくなるためと考えられる。(4) 上記結果の実際の裏づけとして,工場での加熱工程における蜂蜜の品質変化を調査した。
著者
松田 敏生 矢野 俊博 丸山 晶弘 熊谷 英彦
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.687-701, 1994-10-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
16
被引用文献数
27 36

各種の有機酸の最小発育阻止濃度を,細菌15株,酵母6株,カビ2株に対して, pHを4.0より0.5刻みで, 7.0まで変化させた培地上で測定した.(1) ギ酸,酢酸,プロピオン酸は良く似た作用を示し,pHが低下すると,抗菌作用も増大した.しかし,乳酸菌に対しては,ギ酸の作用が強く,逆に酵母とカビに対してはギ酸は他の二者と比べて劣った.(2) ソルビン酸の作用は脂肪酸系の有機酸では,酵母に対して細菌に対するよりも強い作用を示す点で特徴的であった.(3) 乳酸は,非常に特徴的な作用を示し,乳酸菌に対しては,すでての菌株を3.0%もくしはそれ以下の濃度で発育を阻止した.しかもその作用は, pHの変化の影響を少ししか受けなかった.しかし,カビと酵母に対しては,乳酸は効果がなかった.(4) リンゴ酸,酒石酸,グルコン酸は強い発育阻止作用を示さなかったが,クエン酸のみが特に乳酸菌の一部に対して阻止作用を示した.(5)アジピン酸は, pHが低いと非常に強い作用を示したが, pH 6.0以上では,ほとんど発育阻止作用が認められず,作用に対するpHの影響が最も強かった.また酵母とカビにはほとんど阻止作用が認められなかった.これより有機酸の抗菌作用は,それぞれの酸に固有の作用があり,作用の発現に当って解離定数の値や,疎水性などに影響されるものと考えられた.