著者
岡田 文雄 古谷 弘三
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.12, no.7, pp.267-273, 1965-07-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

多重段浸出法で抽出液を得る場合,濃度の増加に伴って抽剤の圧力が増し,流れは低下する。これの原因のひとつに粘度の影響が考えられることから,茶種別抽出液の粘度を調査したが,その結果を要約するとつぎのごとくである。(1) 茶種別抽出液の粘度は煎茶が高く,ついで紅茶,ほうじ茶の傾向で,また濃度との関係は,高粘度における差は大きいが,希釈することによって,粘度の低下は緩慢となる。(2) 温度が粘度に及ぼす影響は,他の液体の場合と同様,低温で高く,温度が上昇するにつれて低くなり,したがって流動率は大きくなって液の流れは容易となる。また,茶種別の粘度の差異と,濃度の違いによる粘度のひらきは,温度が高くなるにつれて僅少となった。(3) 抽出時の抽剤温度の違いを,60℃と70℃で比較したが,一定の傾向はみられなかった。(4) 沈殿物は茶種によってその形態が異なり,煎茶のものが真綿状に連なったのに比べ,紅茶は同じ形でも短くきれ,ほうじ茶は断片的な形態を示した。(5) ペクチンおよび沈殿物の含有量は,ほうじ茶に多く紅茶に少なく,また両者の間にはr=0.929と1%の水準で正の相関関係が認められた。(6) 沈殿物の粘度について,抽出液を対照にその溶液を比較した。その結果,各茶種とも両者の値に差が認められず,抽出液の粘度には,この沈殿物の影響がかなり大きいものと思われた。沈殿物と粘度との関係は,沈殿物の量より茶種別によって異なる沈殿物の形態が,粘度に作用するもののようで,この点についてはさらに検討する必要がある。(7) 気泡が粘度に及ぼす影響は,気泡の混入が多くなるにつれて抽出液の粘度も急増し,流動率は低下する。また濃度は同じでも液温の低いものが気泡の影響は顕著で,粘度の増加も著しい。
著者
瓜谷 郁三 竹内 若子
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.306-310, 1990-04-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
4
被引用文献数
1 2

石川早生の子いもには時折いわゆる水晶芋が見いだされ,親いもとの接触部位(下部)が半透明の状態を示す.その部位の細胞は高張溶液下で原形質分離を誘起し,上部の細胞と同様に生きているが,デンプン粒を持たず,反対に水分を多量に含み,そのため半透明に見えることを知った.蒸煮後には下部は上部にくらべ余りにも軟らかくなり,水晶芋は栄養・食品上,品質が落ちることがわかった.水晶芋では,デンプン粒の有無から下部と上部の比重差を生じ,水に浸漬すると下部を上にして垂直の姿勢をとるが,健全芋は水中で水平の姿勢をとることを見いだし,これを基にして組織を破壊することなく水晶芋と健全芋を識別する簡便法を提示した.サトイモ畑での生育状況とそこから収穫した子いもの観察から,地上部の生育のわるい畑からの子いもに水晶芋が多く発生することを知った.
著者
近藤 義和
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.430-435, 1971-09-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11

主として温州みかん果実を材料として,プロリンの定量性を確かめたのちその含量を調査し,次の結果を得た。(1) Chinard比色法によってプロリンを測定した。その発色は果汁の酸によって阻害され,糖によって増強される。これらの影響は果汁を25倍以上に希釈すると消失した。(2) プロリンは柑橘果実に一般に多く含まれ,オレンジ類に多く,酸味の強いレモンに少なく,温州みかんは中程度に含んでいた。(3) 温州みかんのプロリン含量は早生種(10月収穫)に少なく,普通種(12月収穫)に多く,また冬期貯蔵中次第に増えた。この場合果皮にプロリンが多く,その増加速度も果肉部分に比べて大きかった。しかし果皮と果肉の蛋白質とアミノ態窒素は変化しなかった。(4) 一樹について調べた場合,日照のよい着生位置のものに多く,小型果実にむしろ多い傾向であった。また品種による含量の差が認められた。さらにかなり大きい個体差が存在した。(5) 果汁の貯蔵と加熱によってプロリン量はほとんど変化しなかった。
著者
矢野 昌充 長谷川 美典
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.514-518, 1992-06-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
7
被引用文献数
1

キウイフルーツの流通方法改善の資料とするため,市販果実のエチレン生成と追熟の状況を調べた.(1) 国内産のばら売り,パック売りとも,購入後10日を経過してもエチレンを生成して正常に追熟した果実はほとんどなく,大部分はエチレンを生成しないか生成しても軟腐病によるものであった.(2) 軟腐病が極めて少なかったニュージーランド産果実では14%の果実がエチレン生成を伴う正常な追熟をしたが,大部分は追熟しなかった.卸売市場から直接購入した果実では購入後35日経過後も数%の果実しか追熟しなかった.(3) パック包装内部には50ppmを上回るエチレンが検出される例があった. 8.6~57.6μl/kg/hのエチレン生成量を持つ果実を1個を非密封パック内に入れただけでも0.5~5ppmのエチレンが蓄積することが観察された.(4) 購入10日後,食べ頃の硬さ,酸含量となったのは全購入果実の約40%に過ぎず,しかも大半が軟腐病罹病果であった.
著者
大和田 隆夫 飯野 久栄 石間 紀男 吉川 誠次
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.147-152, 1978-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
5 5

温州ミカン果汁の主要成分である糖と酸の含量と嗜好との関係を明らかにするため,官能検査を行ない,次のような結果を得た。(1) 消費者に受け入れられる範囲は糖酸比からみると最低は12.5であった。より正確には,適正糖酸比は酸度によって変化し,糖酸比だけでは果汁の嗜好性を説明しきれなかった。(2) 最高嗜好度は糖と酸の相互作用によって変り,両者の関係式6X+8≧Y≧6X+6を満たす糖度(Y)と酸含量(X)のとき最高値が得られた。(3) 100%果汁の大部分は,これらの範囲外に分布するものと推定され,果汁の酸度に応じて糖を加えることにより,より消費者の嗜好に適したものにすることができることを認めた。(4) 天然ジュースに対して砂糖を加えることにより,消費者の嗜好性を高めることができるのは,甘味を適当な強さに上げると同時に,砂糖により酸味をやわらげる効果のあるためであることが明らかになった。(5) 消費者のジュースに対する反応は,酸味の強いものに対しては厳しく,甘味の強いものに対しては寛大であることが明らかであった。
著者
福田 靖子 大澤 俊彦 川岸 舜朗 並木 満夫
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.28-32, 1988-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
13
被引用文献数
5 11

ゴマサラダ油と焙煎ゴマ油の保存酸化安定性およびフ ライに使用した場合のフライ食品(クルトン)の保存安定性について,他の食用油と比較検討した.その結果,(1)ゴマサラダ油,焙煎ゴマ油,サフラワー油,コーンサラダ油,サラダ油(ナタネ油と大豆油の調合油)を10gずつシャーレに入れ60℃で保存した結果,重量法による抗酸化試験では,焙煎ゴマ油>ゴマサラダ油≫サラダ油>コーン油>サフラワー油の順であった.(2) 上記, 5種類の油を175℃, 2時間加温後に,同じく60℃で保存した場合にも同様に酸化されにくいことが示された.(3) ゴマサラダ油,焙煎ゴマ油,コーン油で,パン切片を掲げ,クルトンとし, 60℃に保存し,経日的にクルトンから油を抽出しPV(meq/kg)を測定した結果,30日目で,コーン油613.0に対しゴマサラダ油80.0,焙煎ゴマ油6.0であった.(4) (3)のクルトンから抽出した油の中のトコフェロール,セサモール,セサミノール量を定量した結果,コーン油では1ヵ月後にトコフェロールは,全く消失していたが,ゴマサラダ油では,約66%残存し,焙煎ゴマ油では,ほとんど分解されていなかった.
著者
川嶋 浩二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.52-61, 1981-01-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
39
被引用文献数
2 3
著者
真部 正敏 猶原 順 佐藤 禎 岡田 純也
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.497-501, 1988-07-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
10
被引用文献数
2 8

温州ミカンとリンゴのパルプに0.05N塩酸液など3種の抽出液を加え, Mw (2450MHz, 1030w)を1回につき5分間照射してペクチンを抽出し,抽出の効果,抽出されたペクチンの性状を調べた. (1) Mw加熱による抽出では,湯浴による加熱抽出に比べて,抽出に要する時間は著しく短縮された.また,抽出されるペクチン量は, Mw加熱法の方が高かった. (2) Mw加熱による抽出液をエタノール沈殿して調製したペクチンのガラクツロン酸量,エステル化度および相対粘度は, Mwの照射回数が増すに従って減少した.
著者
南出 隆久 垣生 俊夫 緒方 邦安
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.281-287, 1980-06-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
15
被引用文献数
5 10

キノコ類の収穫後における生理化学的特性と品質保持に関する研究の一環として,本研究では,収穫後の貯蔵温度がキノコ類の鮮度におよぼす影響について調べた。キノコ類として,わが国で生産量の多いシイタケ,エノキタケ,ナメコ,ヒラタケ,ツクリタケを用いた。(1) 収穫あるいは購入後,キノコ類を非密封でポリエチレンフィルム(厚さ0.03mm)に包装し, 1℃, 6℃,20℃に貯蔵し,貯蔵に伴う鮮度変化を調べたところ,大体, 1℃で14~20日, 6℃で10日前後, 20℃で2~3日間で商品性限界となった。(2) 鮮度低下は主に,菌傘の開傘,かっ変退色や菌柄の伸長,かっ変によることがわかった。とくに,ツクリタケ,シイタケはかっ変が顕著に発現し,ポリフェノールオキシダーゼ活性も増大した。(3) キノコ類の呼吸作用は活発で,炭酸ガス排出量は葉菜類と同等か,それ以上であった。(4) 遊離アミノ酸含量ならびにその組成について調べたところ,キノコの種類により組成に相違のあるものの全体として,グルタミン酸,アスパラギン酸とその酸アミドが多くを占めていた。シイタケ,ヒラタケ,ナメコのアミノ酸含量は貯蔵中増加する傾向にあった。
著者
山内 亨 飯田 貢 大武 由之
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.125-133, 1986-02-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
21

豚骨脂を唯一の炭素源とする培地で,振盪培養によってCandida tropicalis WH 4-2, Candida lipolytica No. 6-20, Candida lipolytica IAM 4947, Candida rugosa JF 101, Candida rugosa JF 114, Cryptococcus albidus IAM 4317, Trichosporon sericeum EP 4-3およびTrichosporon sericeum EP 4-8の8株の酵母を培養した.Cr. albidusとC. lipolytica IMA 4947の菌体生産は良くなかったが,他の6株の酵母は豚骨脂培地で良好に成育した.酵母菌体の脂質含量ならびに脂質の脂肪酸組成は,それそれの菌株で異っていたが,それら脂質は基質に用いた豚骨脂の脂肪酸組成を,かなりよく反映しているところがあると思われた.豚骨脂培地の初発pHを違えて,ジャーファメンターを用いてC. tropicalis WH 4-2とTrichosporon sp. EP 4-8を攪拌,通気培養した.C. tropicalisとTrichosporon sp.をそれぞれの初発pHが6.2あるいは6.3では,初発pHが7.2あるいは7.1のときよりも生育が速やかであった.C. tropicalisの場合は培地の初発pHが6.2のときよりも,初発pH 7.2のときのほうが菌体生産量が多かったが,Trichosporon sp.は培地の初発pHの違いによる菌体生産量に差異がなかった.培地の初発pHと関連して,上記の2株の菌体脂質の脂質画分を調べたが,いずれの酵母にあっても,それぞれの脂質画分の脂肪酸組成は,初発pHの違いで多少の差異は見られるが,特に顕著なものとは考えられなかった.骨脂培地で初発pHを異にして生産したC. tropicalisおよびTrichosporon sp. EP 4-8の酵母菌体は,いずれも基本的には類似したアミノ酸組成を有していて,栄養的価値から見て比較的バランスの良いものと考えられた.
著者
原川 守 辻 政雄 小宮山 美弘
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.119-124, 1981-03-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
14

シアン化合物を含む雑豆(バター豆)を用いて製あん工程を改善し,安全でかつ合理的製造方法を確立することを目的とし,まず現在操業中の新旧の典型的な2工場の工程解析を行った。現在の食品衛生法に準拠して製造した場合,製品に遊離シアンは検出されなかったが,渋切りや煮熟が不十分であると定量値も高く検出されやすかった。一方遊離したシアンの一部は排水中に流出し,特に豆の浸漬温度が高い場合の排水に多かった。浸漬工程でのシアン遊離率(シアン化合物分解率)は新しい工場で30.2%,古い工場で21.3%であった。
著者
米安 実 三浦 芳助
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.41-47, 1981-01-15 (Released:2010-03-08)
参考文献数
21
被引用文献数
2 2

3℃で冷蔵した大豆(新大豆)と,40℃,RH 75%で30日間貯蔵した大豆(古大豆)を試料として,電解還元処理が大豆の豆腐加工適性に及ぼす影響を検討し,つぎの結果を得た。(1) 古大豆のNSIは,新大豆に比べてかなり低いが,攪拌抽出時に電解還元処理を施すことによって,新大豆に近い値まで向上することが認められた。(2) 脱脂した古大豆の水抽出液のSH基は,新大豆に比べて少ないが,同抽出液を電解還元処理することによって,新大豆よりも多くなることが認められた。(3) 脱脂した古大豆の水抽出液の7S成分に対する11S成分の比率は,新大豆に比べて小さいが,同抽出液を電解還元処理することによって,かなり復元されることが認められた。(4) 古大豆で製造した絹ごし豆腐は,新大豆で製造したものに比べて,水分が多く,タンパク質と遊離アミノ酸が少ない,やわらかい豆腐になる傾向があったが,浸漬中に電解還元処理を施した古大豆で製造した絹ごし豆腐は,新大豆で製造したものにほぼ近いことが認められた。(5) 絹ごし豆腐中のタンパク質含量がほぼ等しい場合には,古大豆で製造したものよりも,浸漬中に電解還元処理を施した古大豆で製造したもののほうが,かたいことが認められた。
著者
小菅 貞良 竹内 徳男
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.69-73, 1962-04-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
5
被引用文献数
2

とうがらし果実の辛味成分利用に関連する基礎事項の研究および測定を行なった。すなわちカプサイシノイドの水に対する溶解度,ならびに水および弱アルカリ液による抽出率の測定,防腐,防カビ性および糸状菌による分解消失などの試験を行なった。そしてとうがらし果実よりカプサイシノイドの水による抽出率はきわめて低く,弱アルカリ溶液によりほとんど完全に抽出されるのを認めた。またカプサイシノイドは防腐,防カビ性はまったく無く,逆に糸状菌によりほとんど完全に分解されるのを認めた。
著者
中林 敏郎 鵜飼 暢雄
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.211-216, 1963-06-15 (Released:2009-04-21)
参考文献数
6
被引用文献数
6 3

桃の品種によって果肉のかっ変の程度に差のある原因を検討した結果(1) 白桃3種,黄桃5種のかっ変を測定したところ,新白と罐桃C5号のかっ変がとくに著しい。(2) ポリフェノールオキシダーゼの活性はどの品種にも強く認められる。(3) ポリフェノール成分としてクロロゲン酸,L-エピカテキンおよびロイコシアニジンの存在が認められた。(4) ポリフェノールの含量は品種によって異なり,新白とC5号にとくに多い。(5) したがって品種によるかっ変の差はポリフェノールの含量の多少に起因する。(6) 食塩およびアスコルビン酸は強いかっ変防止効果を有している。
著者
福家 真也 渡辺 勝子 酒井 久視 鴻巣 章二
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.67-70, 1989-01-15 (Released:2011-02-17)
参考文献数
28
被引用文献数
21 20

かつお節のもつ特有の味の構成成分を解明する目的で,まずエキス成分の詳細な分析を行い,次の結果を得た. (1) 遊離アミノ酸としては,ヒスチジン(かつお節100g中1992mg,以下同様)が多量検出されたが,他のアミノ酸はいずれも50mg以下であった.イミダゾールジペプチドのアンセリン(1250mg)が著量含まれ,カルノシン(107mg)も比較的多量検出された.(ヒスチジンとアンセリンはそれぞれエキス窒素の26%および14%を占めていた.)加水分解により,ほとんどすべてのアミノ酸が著しく増加し,結合アミノ酸の合計量は2657mgに達した.核酸関連物質ではIMP (474mg)およびイノシン(186mg)が主要な成分であった.その他の窒素化合物としてはクレアチニン(1150mg)およびクレアチン(540mg)が著量存在したが,クレアチニンはかつお節製造中にクレアチンから生成したものと推定された.測定された窒素成分の窒素量(2140mg)のエキス窒素(2177mg)に対する回収率は98.3%に達し,エキス中の主要窒素成分の分布はほぼ完全に解明できたものと考えられる. (2) 無窒素成分のうち有機酸としては,多量の乳酸(3415mg)が検出され,その他にコハク酸(96mg),酢酸(52mg)など4種類が認められた.糖としては6成分が検出されたが,いずれも少量であった.無機イオンでは, Cl- (1600mg), K+ (688mg), PO4 3- (545mg)およびNa+ (434mg)が主な成分であった.
著者
中林 敏郎 児島 裕二郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.108-111, 1980-03-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
7
被引用文献数
3

コーヒーの褐色色素の形成機構を解明する一つとして,シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて,コーヒー豆焙煎中のキナ酸含量の変化を検討し,あわせて酒石酸,クロン酸およびリンゴ酸含量の変化も調べた結果,(1) 市販のコーヒー生豆と焙煎豆中の上記4有機酸の含量は表2の通りで,特にキナ酸はフレンチローストで著しく少なかった。(2) 焙煎中,酒石酸,クエン酸,リンゴ酸は豆の重量減に伴い,メディアムローストまで相対的に増加した後,熱分解により減少した。キナ酸もメディアムローストまで相対的に増加した後,熱分解により減少を始めるが,フレンチロース以降に再び増加した。(3) 以上の結果から,コーヒー豆焙煎中,フレンチロースト以降の段階の熱反応で,褐色色素よりキナ酸が遊離するものと推定した。
著者
永田 雅靖 矢野 昌充 西條 了康
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.322-326, 1992-04-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
13
被引用文献数
4 4

貯蔵中のカットキャベツの酵素をアリルイソチオシアネート(AITC)が抑制する機構について検討した.蒸留水で処理した対照サンプルは褐変したが, AITC処理(>2.5mg/100g)したカットキャベツの褐変は抑制された.ポリフェノールオキシダーゼ(PPO)活性と全フェノール物質含有量は貯蔵に伴って上昇したが,AITC処理したカットキャベツの場合には,そのような変化は見られなかった.フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)活性は貯蔵に伴って,著しく上昇したが,これに対してもAITCは阻害効果を示した. PPOとPALの活性に対する直接の阻害は,切断直後に処理した場合に,カットキャベツの褐変がほぼ完全に抑制できる濃度のレベルでは観察されなかった.これらの結果から, AITCによって貯蔵中のカットキャベツの褐変が抑制される機構は,切断傷害によってPALやPPOの活性が上昇する段階をAITCが阻害することによるものと推定された.
著者
加藤 丈雄 土井 梅幸 米山 由紀子 杉本 勝之 中村 良
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.108-115, 1994-02-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
16
被引用文献数
4 4

発酵ソーセージなどの発酵肉製品を安全に製造するために,食肉及び食品加工品から低温発酵能を有する乳酸菌を分離し,スターターとしての適性と有害微生物の生育阻止について検討した.1) 市販牛肉より低温発酵能を有する乳酸菌Lactobacillus sp. SK-1001を分離した.2) Lactobacillus sp. SK-1001は発酵肉製品用スターターとしての基本的適性を有した.実験用のビーカーソーセージを用いて検討した結果, Lactobacillus sp. SK-1001は5℃及び10℃でソーセージを発酵できることが認められた.3) 低温発酵によって,ビーカーソーセージ中のS.aureus, E. coli, P. fluorescensは減少した.また, Lac-tobacillus sp. SK-1001の抗菌活性はその生産する乳酸と微量の酢酸によると推定された.4) 試作試験を行った結果, Lacbacillus sp. SK-1001は発酵ソーセージ及び発酵ハムの低温スターターとして使用できることが認められた.