著者
田中 惣治 本島 直之 山本 澄子
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11359, (Released:2018-06-07)
参考文献数
23

【目的】片麻痺者の麻痺側膝関節の動きによる歩行パターン分類を基に,歩行パターン別に歩行各相の割合が短縮,もしくは延長するかを調べ,その運動学・運動力学的要因を分析した。【方法】回復期片麻痺者121 名を対象とし,三次元動作分析装置と床反力計を用いて歩行を計測した。【結果】歩行パターンにより違いがみられた時間因子は単脚支持期と前遊脚期時間であった。前遊脚期時間はこの時期に膝関節が十分屈曲するかが重要となり,足底屈モーメントによるPush off の減少が膝屈曲角度の低下に影響している。特に荷重応答期に膝関節が過伸展する歩行パターンは,前遊脚期で膝屈曲モーメントが大きく膝関節が屈曲しにくくなり,前遊脚期時間が延長するのが特徴である。【結論】片麻痺者の歩行パターンにより前遊脚期時間に差がみられ,その運動学・運動力学的要因は歩行パターンで異なることが明らかになった。
著者
田邊 芳恵 安田 和則
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.347-353, 1988-07-10

自家腱を用いた膝前十字靭帯再建術後における早期筋力訓練プログラムを独自の基礎的研究をもとに作製した。大腿四頭筋に対しては70゜以上屈曲位での最大等尺性収縮訓練を, ハムストリングスに対しては任意の膝角度における収縮訓練を行った。また, 膝伸展位近くでは大腿四頭筋とハムストリングスの同時最大等尺性収縮訓練を指導した。新しい筋力訓練で治療した男11, 女8, 合計19人の術後1年時における大腿四頭筋トルクの対健側比は男性83%, 女性67%, ハムストリングストルクの対健側比は男性89%, 女性67%であった。新しい積極的な筋力訓練方法は, 従来の消極的な筋力訓練方法に比べて有意に優れた効果を認めた。
著者
北村 匡大 片岡 浩海
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.D1703, 2008

【はじめに】大動脈瘤破裂に対しては、通常手術を施行し、施行しない場合は生存率が低いことが知られている。今回、胸部大動脈瘤(以下TAA)破裂後、保存的加療を行った症例に対しての理学療法を経験し、ADL向上を認めたので、ここに報告する。<BR>【症例紹介】87歳女性、病前ADL自立、NYHAI度。TAAにて近医に通院中であった。2007年8月9日夜、突然の胸痛後ショック状態となり、近医に救急搬送となり、CTにてTAA(遠位弓部)破裂および左血胸と診断。当院へ搬送入院、ICU管理となる。治療は家族の希望もあり、手術はしない方針で安静、鎮痛・鎮静などによる対症療法にて保存的に様子をみた。入院時JCSクリア、収縮期血圧120mmhg(ニカルピン静注10ml/hr)、HR60台、SpO2 94~97%(02 10L/min)、体動にて喘鳴著明。貧血を認めたため、赤血球濃厚液4単位輸血後バイタルサイン安定。入院5日目左血胸に対し胸腔ドレナージ間歇的に施行。入院6日目に一般病棟へ転棟。入院44日目Dr指示よりADL向上目的、安静度ギャッジアップ60°まで、収縮期血圧100~130mmHg範囲内、SpO2 95%以上にてベッドサイドより理学療法開始となる。<BR>【理学療法開始時所見】JCSクリア、認知症 軽度、Demand 家に帰りたい、GMT 上肢3 体幹2 下肢2、疼痛 腰部周囲筋群・両下肢筋群に伸張痛、ROM 股・膝関節に屈曲制限、足関節に背屈制限、基本動作・ADL動作 全介助FIMは48点であった。臨床所見として、表情良好、O2 2L/min、痰はほぼなし、左呼吸音減弱、食事は経口摂取と高カロリー輸液の併用、末梢冷感有、足背動脈触知可。X線で左肺血胸認め、NYHA IV度であった。<BR>【経過】理学療法開始1日目(入院44日目)ギャッジアップ30°、軽度の筋トレ、ストレッチ施行。翌日O2 off。9日目 ギャッジアップ90°、その後深部静脈血栓症認め立位は保留。22日目 下大静脈フィルター留置後、翌日より座位、車椅子、P-トイレ、機械浴開始。27日目 歩行器歩行開始(10m程度息切れ有)、39日目 本人・家族の希望もあり近院に転院となる。歩行器歩行(100m息切れ無)。ADL動作はFIM 72点であった。<BR>【まとめ】TAA破裂後の予後は厳しい報告が多い中、保存的加療行った症例の理学療法を経験した。病態が十分に安定しているとはいえない中、運動療法施行では、低負荷・頻回のメニュー、運動中の息こらえ、息切れ、旧Borgスケールで11~13程度以下の疲労感に注意しながら行った。結果、理学療法開始39日間にてADLの向上を認めた。この背景としては、再破裂を起こさなかったこと、病前ADLが高かったこと、本人の在宅復帰への要望が強かったことが考えられた。

1 0 0 0 OA 電気刺激療法

著者
江崎 重昭 川村 次郎 本多 知行
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.404-406, 1995-11-30 (Released:2018-09-25)
参考文献数
18
著者
伴 信太郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.165-169, 2006-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
7
被引用文献数
2
著者
由留木 裕子 鈴木 俊明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.96-100, 2013-04-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
14

【目的】ラベンダーの刺激が筋緊張にどのような影響を及ぼすのか,筋緊張の評価の指標といわれているF波を用いて,上肢脊髄神経の興奮性に与える影響をあきらかにすることである。【方法】嗅覚に障害がなく,アロマの経験のない健常者10名(男性7名,女性3名),平均年齢25.9±6.0歳。コントロール群9名(男性6名,女性3名),平均年齢29.1±8.8歳。被験者を背臥位にし匂いのない状態とラベンダーの匂いのある状態でF波を測定した。実験後,香りの好き,嫌いについてのアンケート調査を行った。【結果】出現頻度においては,吸入終了後5分と10分の出現頻度は,安静時と比較して有意に低下した。ラベンダー吸入開始時,吸入1分後の振幅F/M比は安静時と比較して有意に増加した。アンケート調査の結果,対象者全員好きな香りであると答えた。【結論】アロマ未経験者において,ラベンダー刺激終了後に上肢脊髄神経の興奮性が低下する。そのため,筋緊張の抑制を目的とする場合はラベンダー刺激終了後に筋緊張を抑制するアプローチを行えば筋緊張をより低下させる効果が得られる可能性があると考える。
著者
牛山 直子 田中 美和 百瀬 公人 若田 真実
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0539, 2008

【目的】平成18年4月の診療報酬改正により運動器疾患の治療期間は150日に制限された。Diercksらは凍結肩の回復は2年後でも63%と報告している。しかし、治療内容や治療期間、可動域制限の影響は十分に述べられていない。他の研究報告も治療期間、内容などの検討は不十分である。今回の研究の目的は肩関節周囲炎患者の治療期間と初期評価時屈曲角度との関係を明らかにすることである。<BR>【方法】<BR>対象は平成14年4月から平成18年3月までに当院整形外科を受診し、肩関節周囲炎と診断され理学療法開始し、平成19年11月までに終了となった患者51名。障害肩は右26肩、左25肩で、両側の診断を受けた2名は、可動域制限の重度な肩をデータとした。性別は男性19名、女性32名、平均年齢は61.5±13.1歳であった。理学療法は、リラクゼーションを目的にしたマッサージと痛みを出さない範囲での肩関節可動域訓練、姿勢調整などを行い、症状改善と患者の同意をもって終了とした。調査項目はカルテより後方視的に、治療期間(理学療法開始~終了の日数)と初期評価時屈曲角度(角度)とした。患者を角度別に0~80度の重度拘縮群(重度群)、81~120度の中等度拘縮群(中等度群)、121~150度の軽度拘縮群(軽度群)、151度以上の拘縮無し群(無し群)の4群に分け治療期間について比較した。統計は群間の比較として分散分析を用い、全データの治療日数と角度との関係について相関係数を求めた。有意水準は危険率0.05とした。<BR>【結果】<BR>4群の内訳は、重度群3例、中等度群15例、軽度群が21例、無し群が12例であった。平均治療期間は重度群291±180日、中等度群382±129日、軽度群243±193日、無し群173±212日であり、4群間に有意差は無かった。治療期間と角度との関係は、相関係数-0.274、危険率は0.052で有意な相関が認められなかった。群別に治療期間をまとめると5ヵ月以内に終了した割合は、重度群0%、中等度群20%、軽度群43%、無し群73%であった。6ヵ月から12ヵ月以内に終了した割合は重度群67%、中等度群40%、軽度群38%、無し群9%であった。1年以上の割合は重度群33%、中等度群40%、軽度群19%、無し群18%であった。2年以内に99%が終了した。<BR>【考察】<BR>初期評価時の屈曲角度と治療期間には有意な相関が無く、4群間にも有意差が無かった。しかし可動域制限が重度だと治療期間が長い傾向にあることがわかった。可動域制限が軽度でも治療期間が1年以上だった割合が約2割あり、屈曲角度の他にも治療期間に影響を与える因子があると示唆される。したがって治療が長期化する要因を追求する研究が今後必要だと考えられる。<BR>【まとめ】<BR>51名の肩関節周囲炎患者の治療期間と初期評価時屈曲角度との関係を重症度別に調査した。治療期間と角度の関係には統計的に有意な差が認められなかった。可動域制限が治療期間に影響を与えることが示唆されたが、他の要因についても検討が必要である。
著者
貴志 将紀 日野 斗史和 石本 泰星 田村 公之 赤澤 直紀
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11978, (Released:2021-03-18)
参考文献数
52

【目的】本研究の目的は,高齢肺炎患者における嚥下能力と大腿四頭筋の筋内非収縮組織量との関連を調査することである。【方法】対象は入院高齢肺炎患者47 名とした。嚥下能力はFood Intake Level Scale(以下,FILS)を用い,大腿四頭筋の筋内非収縮組織量は超音波画像の筋輝度から評価した。大腿四頭筋の筋輝度は左右の大腿直筋と中間広筋の平均値とした。筋輝度は筋内非収縮組織が多いほど高値を示す。FILS を従属変数,筋輝度,筋厚,皮下脂肪厚,年齢,性別,発症からの期間,GNRI,CRP,UCCI,投薬数を独立変数とした重回帰分析を実施した。【結果】重回帰分析の結果,筋輝度(β:–0.386),GNRI(β:0.529),皮下脂肪厚(β:–0.339)が独立し有意な変数として選択された(R2:0.484)。【結論】高齢肺炎患者の嚥下能力には,大腿四頭筋の筋量よりも,筋内非収縮組織量が関連することが明らかとなった。
著者
石井 瞬 夏迫 歩美 福島 卓矢 神津 玲 宮田 倫明 中野 治郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11958, (Released:2021-03-17)
参考文献数
16

【目的】本研究の目的は,リンパ浮腫外来における圧迫下の運動療法の実施状況と,その実施が抱える問題点を把握することである。【方法】リンパ浮腫外来を実施している全国のがん診療連携拠点病院を対象に,リンパ浮腫ケアの実践内容,運動療法の実施内容,リハビリテーション(以下,リハビリ)スタッフとの連携の有無,運動療法の実施が抱える問題点についてアンケート調査を行った。【結果】リンパ浮腫外来で運動療法を実施している施設は14.2% であった。運動療法を実施できない問題点として「知識・技術のあるスタッフの不足」,「診療時間の不足」,「連携不足」などが挙げられ,運動療法を実施している施設はリハビリスタッフ数が多かった。【結論】今回の調査結果から,リンパ浮腫外来で運動療法を実施するためには専門的な知識をもったリハビリスタッフを育成,増員する必要があることが示唆された。
著者
横田 純一 髙橋 蓮 松川 祐子 松島 圭亮
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11902, (Released:2020-11-16)
参考文献数
30

【目的】60 歳以上の高齢心不全患者における自宅退院の予測因子をリハビリテーション(以下,リハ)開始時および退院時のパラメータから明らかにする。【方法】急性期病院に心不全急性増悪で入院した患者305 例を,自宅群242 例と非自宅群63 例に分け,入院時および退院時の身体機能を比較した。また,自宅退院の予測因子およびカットオフ値を検討した。【結果】自宅群では,リハ開始時および退院時の膝伸展筋力,Short Physical Performance Battery(以下,SPPB),Barthel Index(以下,BI)は非自宅群よりも有意に高値であった。自宅退院の予測因子およびカットオフ値は,リハ開始時の膝伸展筋力(≥12.1 kg)とSPPB(3/4 点),退院時BI(≥80 点)であった。【結論】本結果は,自宅退院困難が予測される高齢心不全患者の抽出および自宅退院をめざしたゴール設定に寄与する可能性がある。
著者
宮原 小百合 松本 浩実 三谷 茂
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11931, (Released:2021-03-16)
参考文献数
17

【目的】末期変形性股関節症女性患者の尿失禁および骨盤臓器脱の有症率とそれらの認知度,関心度および指導への期待度を明らかにすること。【方法】人工股関節全置換術術前の末期変形性股関節症女性患者38 名(平均年齢64.9 歳)を対象とした。国際尿失禁会議質問票と骨盤臓器脱困窮度質問票にて有病率を調査した。さらに尿失禁および骨盤臓器脱についての認知度,関心度および指導への期待度を自記式質問紙にて調査した。【結果】有症率は尿失禁が65.8%,骨盤臓器脱が63.2%であった。47.4%の患者がどちらの症状も認めた。尿失禁および骨盤臓器脱について,「知っている」と回答したのはそれぞれ57.9%,28.9%であり,7 割以上が関心を示し,半数程度が指導を期待していた。【結論】末期変形性股関節症女性患者の尿失禁および骨盤臓器脱の有症率は高かった。患者の多くは尿失禁と骨盤臓器脱に関心をもち,指導を期待していることがわかった。
著者
徳田 一貫 長部 太勇 阿南 雅也 木藤 伸宏
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0902, 2008

【目的】変形性膝関節症(以下膝OA)の着座動作において、動作時の疼痛や動作困難、動作遂行における後方への不安感などが臨床上よく見られる。そこで本研究では、膝OAの着座動作における運動学的分析を行い、臨床症状・動作困難に繋がる運動戦略の関係を明らかにする事を目的として行った。<BR>【方法】被検者は片側性あるいは両側性内側型膝OAと診断された女性21名(63.6±9.7歳)を膝OA群とし、日常生活で膝関節痛を有しない女性15名(61.6±7.5歳)を比較のために対照群として加えた。本研究はヘルシンキ宣言に基づき実施した。課題動作は立位姿勢から座面高が下腿長の高さの椅子への着座動作とした。運動学的データ計測は被検者の左右肩峰、腸骨稜上端、股関節(大転子中央と上前腸骨棘とを結ぶ線上で大転子から1/3の点)、膝関節(大腿骨遠位部最大左右径の高さで矢状面内の膝蓋骨を除いた幅の中央点)、外果、第5中足骨骨頭にマーカーを貼付し、3次元動作解析システムKinema Tracer(キッセイコムテック社製)を用いて60 flame/sにて画像を記録した。その画像から臨床歩行分析研究会の推奨する推定式にて関節中心点座標と身体重心座標(COG)および身体体節角度を算出した。データ解析は動作開始から足関節最大背屈までのそれぞれのCOG軌跡を比較し、股関節、膝関節、足関節、胸部、骨盤の身体体節角度変化量を算出した。その中で股関節・膝関節角度変化量の割合について比較した。また、股関節および膝関節座標の軌跡量を算出し、その比率を比較・検討した。<BR>【結果】膝OA群における動作開始から足関節最大背屈までのCOG軌跡は、対照群に比べて後方への移動変化量が少なく垂直下降の軌跡がみられた。関節角度変化は対照群に比べて膝OA群は膝関節屈曲・足関節背屈が有意に少なく、骨盤・胸部の前傾角度が有意に大きかった(p<0.05)。また、膝OA群の股関節・膝関節屈曲角度の割合においては膝関節屈曲角度の割合が少なく、股関節および膝関節座標の軌跡量は膝関節座標の移動量が有意な低下がみられた(p<0.05)。<BR>【考察】膝OA群において骨盤・体幹機能低下などにより骨盤・胸部をより前傾させ動作戦略を行うため、COGの滑らかな後方移動が困難となる事が示唆された。そのため、股関節・膝関節の屈曲割合が股関節有意な状態となり、股関節・膝関節を協調的に回転軸とする事が困難となり、下腿前傾が低下し膝関節が回転中心となる動作戦略となるのではないかと推察した。つまり、膝OAの理学療法戦略においては胸部-骨盤での安定性を高める事、足部機能改善による下腿前傾を促す事により、股関節・膝関節を協調的に機能させる事が重要であることが示唆される。
著者
原 毅 佐野 充広 四宮 美穂 野中 悠志 市村 駿介 中野 徹 松澤 克 櫻井 愛子 草野 修輔 久保 晃 久保田 啓介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.184-192, 2013-06-20 (Released:2018-04-12)
参考文献数
37
被引用文献数
11

【目的】消化器がん患者の周術期から自宅復帰後における身体運動機能とQuality of Life(以下,QOL)の経時的変化,各時期間の身体運動機能変化と自宅復帰後QOLの関連性について検討すること。【方法】対象は,周術期消化器がん患者42例(男性23例,女性19例,年齢60.6±11.3歳:平均±標準偏差)とした。本研究では,身体運動機能を等尺性膝伸展筋力,Timed "Up and Go" test,6分間歩行距離の3項目,QOL指標にShort-Form 36-Item Health Survey version 2のアキュート版を使用し,手術前,手術後,退院後の3つの時期に各々評価した。【結果】身体運動機能とQOLは,手術後一時的に有意な低下が認められた。退院後では,身体運動機能が手術前と同程度まで向上する一方で,QOLの身体的健康が手術前より有意に低かった。また,手術前後の身体運動機能変化比と退院後のQOLの間に有意な相関関係が認められた。【結論】消化器がん患者の周術期の身体運動機能変化が自宅復帰後のQOLと関連することがあきらかとなった。
著者
恒屋 昌一 臼井 永男
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.30-37, 2006-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
16
被引用文献数
8

近年,いわゆる足趾が床面に接地していない「浮き趾」の問題が指摘されている。本研究では,近年の成人期における直立時の足趾接地の実態を明らかにすることを目的に,独自に作成した足趾接地に関する定性的な評価法を作成し,地域に在住する健常成人155名を対象に足趾接地の状態を調査した。その結果,開眼安楽での閉足位すなわち開眼自由閉足位では,両足のいずれかの足趾の接地が十分でないものは,男性では66.0%,女性では76.2%にみられ,男性より女性において足趾接地に問題がある傾向がみられた。とくに第5趾において,「浮き趾」は男性では右足46.0%,左足30.0%に,女性では右足38.7%,左足35.8%に確認された。また,足趾が十分接地するよう努力した開眼努力閉足位では,開眼自由閉足位に比べて浮き趾の出現率はかなり減少したが,それでも不完全な接地を呈するものは男性では22.0%,女性では35.2%いることが判明した。これらの結果から,今日の健常成人において,静的立位では足趾が完全に接地しない人が多く存在することが確認された。
著者
竹井 仁 根岸 徹 中俣 修 林 謙司 柳澤 健 齋藤 宏
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.113-118, 2002
参考文献数
18
被引用文献数
5

股関節の屈曲運動には,骨盤に対する大腿骨の動きと骨盤後方傾斜の両方が含まれる。本研究では,健常成人女性10名(平均年齢は20.3歳)を対象に,測定精度が高くかつ人体に侵襲のないMRI(Magnetic Resonance Imaging : 磁気共鳴画像)を用いて,背臥位・膝関節屈曲位での他動的な一側股関節屈曲運動時の骨盤大腿リズム及び仙腸関節の動きを解析した。右股関節屈曲角度に占める骨盤後方傾斜角度の割合は,屈曲角度が増すに従い,約1/28(0.52°/14.8°),1/20(1.5°/29.9°),1/19(2.4°/45.0°),1/16(3.9°/60.7°),1/11(11.4°/127.6°)と変化した。また,45°までは屈曲側と対側の骨盤も同程度の後方傾斜を生じ,60°で屈曲側の後方傾斜量が増し,最大屈曲角度ではさらにその差が拡大した。右股関節の最大屈曲位では,仙骨が右腸骨に対して相対的に前屈位になることから,仙腸関節の動きも関与することが確認できた。
著者
倉田 繁雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.188-191, 2005-06-20 (Released:2018-08-25)
被引用文献数
1

「滑らかな運動や安定した姿勢を再獲得する。」このことは理学療法を実施する重要な目的の一つである。関節可動域制限(以下ROM制限)は, この目的を達成する過程において強力な阻害因子となっている。本稿では整形外科領域での理学療法経験から得たROM制限治療に対する私見を述べる。ROM制限の諸因子 ROM制限因子を「固さ」と「痛み」に大別する。前者を「ROM制限の直接的因子」(以下直接的因子), 後者を「ROM制限の間接的因子」(以下間接的因子)と呼ぶ(図1)。1. 直接的因子(固さ) 直接的因子をさらに「骨性因子」「関節構成体性因子」「筋性因子」「関節周囲軟部組織性因子」に分ける。1)骨性因子 (1)骨の変形 骨同士のぶつかりによるROM制限を指す。(2)副運動の消失 正常関節運動には必ず副運動(accessory movement)を伴う。例えば, 足関節背屈運動ではその最終域で「腓骨〜脛骨間が広がる」という副運動を伴う。この副運動が内固定により消失した場合, この固定が解除されない限り正常な背屈運動は出現しない。(3)異所性仮骨 例えば, 筋性仮骨が出現するとその筋の伸展性が極端に制限される。そのため当該筋が伸長される関節運動は制限を受ける。
著者
河上 淳一 後藤 昌史 松浦 恒明 寄谷 彩 政所 和也 永松 隆 今井 孝樹 烏山 昌起 原田 伸哉 工藤 憂 志波 直人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.587-592, 2020 (Released:2020-12-18)
参考文献数
26

【目的】本研究の目的は,腱板断裂患者に対し患者立脚評価を用いた治療方針の予測をすることである。【方法】対象は腱板断裂患者229 名で,初診1 ヵ月以降の治療方針(手術または保存)を目的変数,患者立脚評価を説明変数とした決定木分析と傾向スコア分析を行い,治療方針のオッズ比を算出した。【結果】決定木分析にてもっとも手術療法が選択される手術療法傾向群と,もっとも保存療法が選択される保存療法傾向群に分け,それ以外を中間群とした。傾向スコア分析を考慮したオッズ比は,保存療法傾向群に対して手術療法傾向群で11.50 倍,中間群に対して手術療法傾向群で3.47 倍の手術療法が選択された。【結論】腱板断裂患者の治療方針の予測には,SST における4 つの質問の重要性が示唆された。