著者
山路 雄彦 渡邉 純 浅川 康吉 臼田 滋 遠藤 文雄 坂本 雅昭 内山 靖
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0540, 2005

【目的】<BR>2002年度より理学療法における客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination)(以下、理学療法版OSCE)を開発・実施し、その有用性を報告してきた。理学療法版OSCEは評価を中心としたものであるが、運動療法、物理療法、ADL指導など治療を含めた内容でのOSCEも必要である。本研究では、治療場面を含めた理学療法版advanced OSCEの基本的構築および学外評価者の試行の妥当性を検討することを目的とする。<BR>【方法】<BR>課題は大腿骨頸部骨折と左片麻痺を有する対象者の4課題とした。課題1は徒手筋力テストと筋力増強運動、課題2はトランスファーと物理療法、課題3は立位評価と平行棒内歩行練習、課題4はトランスファーと更衣動作(上衣)として、評価と治療を組み合わせて構成した。評価者は学内評価者(本専攻教員)8名と学外評価者(本学以外養成校の教員)3名、模擬患者は4名で実施した。学外評価者3名は、ステーション1、ステーション3、ステーション4に配置し、学内評価者と共に同一学生を評価した。対象は、総合臨床実習直前の本専攻4年生23名とし、平成15年7月24日に実施した。運営はマニュアルを用いて行った。なお、学外評価者とは事前の打ち合わせは行わず、当日にマニュアルを配布して簡単な説明を実施して試験に加わった。平均点、課題別一致率、同一ステーション・同一課題における一致率を算出し比較、検討を行った。<BR>【結果および考察】<BR>総合点の平均は、400点満点中300.7点であり、評価を中心とした前年度の313.7点と有意な差は認めなかった。課題別一致率は、課題1:66.6%、課題2:55.7%、課題3:60.9%、課題4:60.2%であった。同一ステーション・同一課題別一致率では3ステーション4課題で59.0%、52.0%、54.9%、55.6%であった。これは理学療法版advanced OSCEの難易度は従来のものと変わらないものの、評価者個人の治療感の相違から評価が一致しない可能性が高いことによるものと考えられる。今後、評価基準の見直しとともに個々の治療感の相違を緩衝することが必要であると考える。また、同一ステーション・同一課題別一致率では学外評価者の配置された3ステーション中2ステーションで、学内評価者、学外評価者に有意な差を認めなかった。このことは、理学療法版advanced OSCEにおいても準備を整えれば学外の複数の評価者でも学生を客観的に評価することができることを示唆していた。
著者
内田 智也 大久保 吏司 古川 裕之 松本 晋太朗 小松 稔 野田 優希 石田 美弥 佃 美智留 土定 寛幸 藤田 健司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.75-81, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【目的】投球中の肩関節ストレスの軽減には,良好な下肢関節動作が重要となる。そこで,本研究はFoot Contact(以下,FC)以降のステップ脚膝・股関節の力学的仕事量と肩関節トルクの関係について検討した。【方法】中学生の投手31 名の投球動作解析で求められた肩関節内旋トルクについて,その平均から1/2SD を超えて低い群(以下,LG)10 名と1/2 を超えて高い群(HG)10 名の2 群に分け,ステップ脚膝・股関節の力学的仕事量(正・負仕事)を群間比較した。【結果】FC から肩関節最大外旋位(MER)におけるLG の膝関節屈曲-伸展の負仕事量が有意に低値を示した。【結論】ステップ脚膝関節伸展筋力は良好な投球動作獲得に寄与し,FC 以降の膝関節の固定および下肢関節からの力学的エネルギーを向上させることは肩関節ストレスを軽減させると考えられた。
著者
青木 詩子 山崎 裕司 青木 治人
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.77-81, 1998-03-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
1
被引用文献数
1

階段を前向きに降りること(前方アプローチ)が困難な片麻痺患者に対し,後ろ向きに降りる方法(後方アプローチ)を試み,その有用性について検討した。対象は片麻痺患者13例(年齢58.8 ± 15.8歳)で,前方アプローチによる階段の降りは,13例中5例が不可能であった。これらの症例に対し,前方アプローチと後方アプローチを施行し,それぞれの可否,不安感,所要時間,動作パターンを調査した。後方アプローチは全例が階段の降りが可能となり,階段の降りにおける不安感の比較でも,前方アプローチに比べ後方アプローチにおいて有意に不安感は小さかった。階段降りの所要時間は,後方アプローチと前方アプローチの間に有意な差を認めなかった。以上のことから,階段の降りが困難な片麻痺患者に対しては,後方アプローチを指導することが有効と考えられた。
著者
前田 慶明 加藤 順一 東 祐二 糸谷 圭介 村上 雅仁 嶋田 智明
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.160-166, 2010
参考文献数
31

【目的】本研究の目的は,脳血管障害患者(CVA者)を対象に,非転倒者と転倒者の患者基本情報や入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,Berg Balance Scale(BBS),Mini-Mental State Examination(MMSE)を用いて,転倒予測を判断するための判断基準について検討し,臨床現場に則した実践的な指標を確立することである。【対象】対象はCVA者53例(男性30例,女性23例,平均年齢67.0 ± 11.1歳)とした。【方法】入院時記録から,入院中の転倒有無,年齢,性別,病型,発症から入院までの期間,入院期間,麻痺側,入院時の下肢Br.stage,入院時FIM,MMSEを抽出し,また入院時にBBSを測定し,これらの患者特性と転倒との関連性を検討した。【結果】少なくとも1回転倒を経験したCVA者は19例,転倒者率は36%であった。非転倒群と転倒群の比較において年齢,入院期間,入院時FIM,入院時Br.stage,入院時BBS,MMSEに有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果では,入院時BBSのオッズ比のみが有意であった。ROC曲線において有効なcut-off値は31点であると判断した。【結論】入院時のバランス能力がCVA者の転倒リスクと密接に関係しており,転倒予測を数値化することが可能となり,転倒予測する上でBBSが有用な指標である可能性が示唆された。
著者
菅田 由香里 上内 哲男 矢部 裕一朗
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0908, 2008

【はじめに】<BR>脳卒中片麻痺患者における大腿骨頚部骨折はしばしば発生し、その手術後の理学療法に関しての報告はいくつかある。しかし骨折治療後、再度同側の大腿骨骨折を起こした症例の報告は少なく、さらにステム周辺での骨折例はほとんど見当たらない。今回我々は、脳卒中片麻痺患者の人工骨頭置換術後に、同側のステム中間部での大腿骨粉砕骨折の症例に対する理学療法を経験したので報告する。<BR>【症例紹介】<BR>69歳、男性。診断名:右大腿骨骨折。現病歴:平成19年7月、外出先にて居眠り中椅子から転落し受傷。右大腿骨骨折と診断され、当院入院。保存療法にて経過観察となった。既往歴:44歳で脳梗塞右片麻痺(Brunnstrom Recovery Stage上下肢4)、失語症。61歳で転倒により右大腿骨頚部骨折にて右人工骨頭置換術施行。入院前レベル:屋外T字杖歩行自立。ADLはすべて自立。週5回作業所に通っていた。<BR>【理学療法経過】<BR>受傷後翌日より、ベッドサイドにて開始。骨折部の安静のため、麻痺側股関節周囲の筋収縮と股関節回旋の動きは禁忌であり、麻痺側下肢への積極的なアプローチは困難であった。そのため離床にむけてのアプローチとして、ギャッジアップによる起立性低血圧の予防、脱臼予防に対してのポジショニング、麻痺側の関節拘縮予防、非麻痺側下肢の筋力強化を行った。受傷5週で仮骨形成を認め、全荷重で平行棒内歩行練習を開始し、7週よりT字杖歩行練習開始した。16週で良好な骨癒合が得られ、自宅退院となった。退院時レベル:屋内T字杖自立、屋外T字杖歩行見守りレベル。院内ADLは見守りにてすべて可能。<BR>【考察】<BR>今回、脳卒中片麻痺を合併した人工骨頭置換術後のステム中間部での大腿骨粉砕骨折という症例を経験した。本症例では、保存療法にて長期間の臥床を余儀なくされ、さらに骨折部の安静のため早期リハを積極的に行うことができなかったものの、仮骨形成後スムーズに離床することができ、退院時には受傷前に近い機能を再獲得して自宅退院することができたことは良好な結果であったといえる。臥床期間中では安静のためできることが限られている中で、離床への働きかけができたことはよい結果に繋がったのではないかと考える。また、脳卒中片麻痺患者の骨折では、片麻痺の存在や長期臥床による合併症を予後悪化因子の1つにあげている報告があるが、本症例では保存療法による長期臥床という悪条件の中良好な成績であったことは、麻痺の程度が比較的よかったこと、受傷前の歩行能力が高かったことなども影響したと考える。<BR><BR><BR>
著者
鵜飼 建志 林 典雄 細居 雅敏 田中 幸彦 篠田 光俊 笠井 勉
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C1331, 2007

【目的】<BR> 内側型野球肘における尺骨神経症状があるものは上腕三頭筋内側頭(以下MHTBとする)の圧痛やspasmを有するものが多く、MHTBのrelaxationやtransverse方向への柔軟性改善を主体とした運動療法により、順調な改善を示す例を数多く経験している。本報告の目的は、このような臨床経験から、MHTBが尺骨神経症状に対しどのような影響を及ぼしているのか、その発症メカニズムを考察することである。<BR><BR>【方法】<BR> 平成14年7月から平成18年10月までに当院を受診し、野球肘と診断されたケースの内、尺骨神経症状が主体であった16例を対象とした。<BR> 尺骨神経症状の判断基準は(1)Tinel sign陽性(2)尺骨神経の腫瘤(3)左右差のある尺骨神経の圧痛(4)尺骨神経領域におけるしびれ(5)尺骨神経伸張肢位での症状の再現(6)屈曲角度増大に伴う外反ストレス時痛増強(7)尺骨神経脱臼、の7項目の内3つ以上認めるものとし、その割合を検討した。<BR> またMHTBの尺骨神経症状への直接的な関与を確認する目的で、我々が考案したMHTB shifting test(以下MSTとする)を実施した。これはMHTBを徒手的に後外側へよけた際の外反ストレス時痛の変化をみるものである。<BR><BR>【結果】<BR> 尺骨神経症状判断基準(1)は16例(100%)、(2)は4例(25%)、(3)は16例(100%)、(4)は4例(25%)、(5)は6例(37.5%)、(6)は14例(87.5%)、(7)は9例(56.3%)であった。<BR> MSTでは13例で陰性化し、2例で軽減した。1例は変化がなかった。軽減にとどまった2例は改善に時間を要する傾向にあった。変化のなかった1例は初診時所見でMHTBの圧痛、spasmを認めなかった。<BR><BR>【考察】<BR> 投球時、肘は外反・屈曲強制を受けるが、MHTBはその制動に働くdynamic stabilizerとして重要である。投球動作の繰り返しによりMHTBに負荷がかかり、圧痛やspasmが生じる。その結果、MHTBの過緊張は尺骨神経を深部より押し上げ、浅層を走行するStruthers' arcadeに圧迫を生じさせる。加えて上腕内側を走行する尺骨神経はMHTBにより前方(腹側)に押し上げることで神経自体の緊張が高まり、尺骨神経溝との摩擦力も増大する。また、神経の緊張増大は尺骨神経脱臼の誘因となり、friction stressの増大を招く。また尺骨神経脱臼例では肘部管での尺骨神経過屈曲が生じ、肘部管症候群の引き金となる。以上のように、MHTBのspasmは尺骨神経に対し、圧迫、伸張などといった、神経症状誘発の根底となるrisk factorである可能性が高い。また、我々が考案したMSTは、MHTBによる尺骨神経への押し上げstressを、筋腹全体を後外側へshiftさせることで軽減させるテストである。尺骨神経症状におけるMHTBの関与を知る上で有用なテストであると思われた。
著者
武田 広道 高取 克彦
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12052, (Released:2021-06-09)
参考文献数
35

【目的】要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシーの関連を明らかにすること。【方法】要支援・要介護高齢者65 名に対して,Physical activity scale for the elderly(以下,PASE),アパシー,Health locus of control(以下,HLC),主観的健康感,Short physical performance battery(以下,SPPB)の評価を行った。統計解析ではPASE を三分位し低・中等度・高身体活動群として,各変数の3 群間比較を行った。またPASE と各評価項目の関連について重回帰分析を行った。【結果】高身体活動群と比較し,低身体活動群でアパシースコア,HLC 尺度,SPPB の4 m 歩行時間実測値で有意に悪い値となっていた。また,重回帰分析では,アパシースコアと4 m 歩行時間が抽出された。【結論】要支援・要介護高齢者の身体活動量には,アパシーと歩行速度で関連が認められた。
著者
大村 和也 高石 恵美子 川村 真
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.121-127, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
16

【緒言】体外式膜型人工肺(以下,ECMO)中のリハビリテーションは確固たるエビデンスはなく,当施設では症例ごとに模索しながら行っている。重症呼吸不全に対してECMO 導入後早期から積極的に理学療法を開始し,良好な転帰に寄与したと考えられた2 症例を報告する。【症例1】76 歳男性,心不全と肺炎の診断でVV-ECMO 導入となった。31 日間のECMO 管理中,四肢体幹の筋力トレーニングを集中的に行った結果,身体機能を落とさずECMO 離脱翌日には端座位が可能となった。【症例2】73 歳男性,肺炎の診断でVV-ECMO 導入となった。10 日間のECMO 管理中,筋力トレーニングに加え,端座位まで行った。離脱翌日には,立位・歩行が可能となった。【結論】ECMO 管理下であっても早期から理学療法を行うことで,身体機能の維持につながったと考える。ECMO 下理学療法は安全に行える可能性はあるが,適応や方法などさらなる検討が必要である。
著者
内田 茂博 玉利 光太郎 横山 茂樹 川上 照彦 加藤 浩 山田 英司 有馬 信男 山本 哲司
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.442-448, 2011-10-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
26
被引用文献数
2

【目的】本研究では,術前の身体・精神的機能が人工膝関節置換術後2週の運動機能にどう影響しているかを明らかにすることを目的として縦断的に調査を行った。【方法】変形性膝関節症と診断され人工膝関節置換術が施行された38名(平均年齢75.0 ± 6.1歳)を対象とし,術前の身体・精神的機能および術後2週のTimed Up and Go test(TUG)を計測した。交絡因子の影響を取り除くため,得られたデータは重回帰モデルを用いて分析した。【結果】術後2週の運動機能であるTUGを予測する因子として,術前の安静時痛,自己効力感,交絡因子である非術側膝伸展可動域が抽出された。【結論】術前の自己効力感,安静時痛および非術側膝伸展可動域は,術後早期の運動機能指標であるTUGの予測因子であることが示唆された。

1 0 0 0 OA 関節の評価

著者
山内 正雄
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.299-301, 2011-06-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
4
著者
櫻井 瑞紀 新田 收 松田 雅弘 妹尾 淳史
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11312, (Released:2018-04-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1

【目的】非特異的腰痛(以下,NLBP)では深部筋機能不全やサイドブリッジ持久力テスト(以下,SBET)保持時間低下が報告されているが,その際の深部筋疲労についての報告はない。本研究の目的は,NLBP 者におけるSBET 実施時の体幹深部筋疲労を,T2 値を指標として明らかにすることである。【方法】対象は腰痛のない対照群とNLBP 群の2 群とした。測定項目はSBET 保持時間と,SBET 前後の深部筋T2 値とした。統計解析はSBET 前後と腰痛の有無を独立変数,深部筋T2 値を従属変数とした2 元配置分散分析および単純主効果の検定を実施した。【結果】SBET 保持時間はNLBP 群が有意に低値を示した。深部筋T2 値においてSBET 前後・腰痛経験の主効果および交互作用が示された。単純主効果の検定ではNLBP 群のPost でT2 値は有意に高値を示した。【結論】NLBP 者では体幹筋等尺性持久力低下とSBET における体幹深部筋易疲労性を認めた。