著者
福井 博
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.84-93, 2002-02-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
88
著者
関 寿人 大崎 往夫 春日井 博志 岡 博子 工藤 正俊 大阪肝穿刺生検治療研究会
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.169-182, 2000-03-25
被引用文献数
1

近畿地区を中心に18施設の協力により, 1987年1月1日より1998年3月31日までの期間, 治療が施行された単発肝細胞癌 (単発肝癌) 3489例を対象に治療方針, 治療成績の実態を調査し以下の結果が得られた (観察最終日は1998年7月31日).<BR>(1) 臨床病期I, IIでは腫瘍径に拘らず肝切除が選択されている症例が多い.<BR>(2) 腫瘍径2cm以下, 臨床病期I, IIでは肝切除, PEIT, PMCTで累積生存に差は認められない.<BR>(3) 腫瘍径3cm以下のPEIT症例で10年生存を確認.<BR>(4) 腫瘍径3cm以上では, TAE+PEIT: 3<腫瘍径≦5cm, 臨床病期IおよびTAE: 5cm<腫瘍径, 臨床病期IIの群を除いて, 臨床病期I, IIともに肝切除の成績がもっとも良好であった.<BR>(5) 10年生存者の87%は肝切除例.<BR>(6) 腫瘍径5cm以下症例の死因の約40%は肝癌死以外.<BR>(7) 症例数が100以上, 100未満の施設間で累積生存に差が認められた.
著者
木村 睦海 小関 至 狩野 吉康 荒川 智宏 中島 知明 桑田 靖昭 大村 卓味 佐藤 隆啓 髭 修平 豊田 成司 佐藤 繁樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.607-613, 2013-09-20 (Released:2013-10-22)
参考文献数
22

症例は65歳,女性.1996年にHBV陽性を指摘されIFN治療を受けるも改善無く,その後肝硬変に進展した.2001年よりLamivudineを開始し,その後LamivudineとAdefovirの併用,更にEntecavirとAdefovirの併用へと切り替え,ALTは正常範囲内を維持するに至り,HBV-DNA量も低下した.2009年8月,AFPが26.5 ng/ml,従来法AFP-L3分画が48.0%と上昇を認め,翌9月のMRI検査にて肝S3に径10 mmの典型的な肝細胞癌を認めた.2010年2月に肝外側区切除を施行し,組織診断は高分化型肝細胞癌であった.保存血清を用いて2010年より測定可能となった高感度AFP-L3分画をretrospectiveに再測定したところ,肝細胞癌が臨床診断される3年前,2006年から高感度AFP-L3分画が上昇し続け,切除後に正常化していたことが確認された.高感度AFP-L3分画は,AFPの上昇と肝細胞癌の臨床診断に先行して異常高値となる症例もあり,肝細胞癌のhigh riskグループを抽出する腫瘍マーカーとして有用と考えられた.
著者
西口 修平
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.310-324, 2014-06-20 (Released:2014-07-11)
参考文献数
93
被引用文献数
1 3
著者
与芝 真 半田 宏一 樋口 大介 井上 和明 関山 和彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.460-465, 1999-08-25 (Released:2010-02-22)
参考文献数
16

症例は21歳男性のHBVキャリア. 急性発症し近医入院, 1カ月間肝庇護療法を受けたが改善せず, 劇症化を疑われて当院入院した. HBe抗原陽性でプレコア領域にも YMDD 領域にも変異は認められなかった. インターフェロン (IFN), ラミブジン (3TC), ステロイドパルス療法, サイクロスポリン投与と33回にわたる人工肝補助療法により肝不全を脱した. その後ウイルスの再増殖と共に再燃, PT50%に低下したため再入院, 初回と同様の投薬を受け, 劇症化せずに退院した. しかし, HBe 抗原高値, 血中の HBV 量も大量であり, IFN, 3TC 併用投与に全く反応しなかった. そのため, ファムシクロビルを投与したところ, 3カ月の治療後HBe抗原系のセロコンバージョンと血中ウイルス量の低下が見られ, 治療を脱することができた. HBV キャリアの劇症化例では IFN, 3TC のみならずファムシクロビル投与が必要な症例が存在する事が明らかにされた.
著者
森藤 隆夫 渡辺 進 七宮 実 斉藤 孝一 西間木 友衛 吉田 浩 粕川 禮司
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.422-429, 1981
被引用文献数
3 2 11

各種膠原病(SLE 23例,RA 26例,PM-DM 17例,PSS 10例,Sjö-s 7例,Aort-s 4例)87例について,肝機能検査成績と生検肝組織を検討した.その結果,肝腫大17例(19.5%),黄疸8例(9.1%), HBs抗原陽性2例(2.8%), HBs抗体陽性18例(20.7%), Al-p値異常15例(17.2%), ICG異常16例(18.4%)が認められた.一方,経過中,GOT, GPT値に異常が認められた例は61例(70.1%), GOT, GPT値が100Ku以上であった例は,それぞれ36例(41.4%),16例(18.4%)であり,SLE, PM-DMに多くみられた.<BR>生検肝による組織学的検索は40例に行ったが,慢性肝炎様組織群6例,急性肝炎様組織群3例,非特異性肝炎群13例,脂肪変性群11例,正常組織群7例と多彩であり,その中ではSLE, Sjö-sで組織変化が強かった.以上の原因として,薬剤,肥満,ウイルス感染,悪性腫瘍の肝転移例が少数みられたが,多くは原因不明であったことから,膠原病においても何らかの肝障害が生じるものと思われた.
著者
河田 則文 久保井 広志 申 東桓 筒井 ひろ子 溝口 靖紘 小林 絢三 近藤 洋子 森澤 成司 門奈 丈之 山本 祐夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.855-859, 1989-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

マウスKupffer細胞から産生遊離するPGE2量に及ぼすinterleukin 1(以下,IL1)とtumor necrosis factor(以下,TNF)の影響について検討した.マウスKupffer細胞を培養すると,spontaneousにもPGE2の遊離がみられ,培養上清中のPGE2量は培養開始後24時間まで経時的に増加したが,TNFを添加するとTNF1, 10ng/ml添加時にさらに有意に増加した.また,Kupffer細胞をzymosanで刺激するとPGE2産生量は約5倍にも増幅し,TNF存在下ではさらに増強された.さらに,Kupffer細胞をあらかじめTNFで24時間処理したのちzymosanで刺激を加えて産生されるPGE2量もやはり有意に増加した.このように,種々の条件下においてTNFはKupffer細胞からのPGE2産生を増加させることが明らかとなった.しかしながら,IL1にはこのような効果は見られなかった.以上の結果から,Kupffer細胞自身が産生するとされるTNFがKupffer細胞機能を調節する機構が存在する可能性が示唆された.
著者
早川 晶子 阿部 研自 谷川 雅俊 高橋 周美 内田 安彦 奥谷 幸裕
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.721-733, 2012-11-25
被引用文献数
1

Perflubutane(以下,sonazoid<sup>®</sup>)による造影超音波ガイド下にて肝腫瘍にラジオ波焼灼療法(以下,RFA)を施行した症例(以下,SZ群)328例とsonazoid<sup>®</sup>を使用せずRFAを施行した症例(以下,C群)340例の2群の特定使用成績調査を実施し,sonazoid<sup>®</sup>による造影超音波ガイド下におけるRFA時の安全性,有効性を検討した.有害事象はSZ群67.1%,C群69.3%であり,その種類および頻度に差は認められなかった.副作用はSZ群に1例(悪心,嘔吐)認められた(0.3%).SZ群のRFAガイドとしての総合評価(有効率)は90.9%,造影前後の病変視認性向上率は75.0%であり,Bモードの病変視認性が明瞭でない症例のRFA成功率は,SZ群でC群より有意に高かった(<i>P</i><0.001).sonazoid<sup>®</sup>は,肝腫瘍のRFAガイドとして安全かつ有効に使用可能であり,造影による病変視認性向上はRFA成功率にも寄与することが示唆された.<br>
著者
中田 哲也 河合 文平 永山 和男 田中 照二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.233-238, 1996-04-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
2 7

柴苓湯による薬物性肝障害の1例を報告する.症例は57歳女性.慢性滲出性中耳炎の治療のため近医から柴苓湯を処方され服用していたところ,10ヵ月後に皮膚黄染が出現したため他病院を受診,血清GOT 931, GPT 1,077,総ビリルビン8.5と肝障害が認められ,同病院に入院となった.その後肝障害は順調に改善し,第24病日精査のため当院に転院した.各virusmarkerはいずれも陰性で輸血歴,飲酒歴はなかった.入院中好酸球増多を認めたが,柴苓湯によるリンパ球刺激試験は疑陽性であり,確定診断には至らなかった.退院後3年間の経過観察中,慢性中耳炎に対し近医から2回柴苓湯を再処方され,その度に肝障害を繰り返したことから,同剤による薬物性肝障害と診断した.近年漢方薬による薬物性肝障害の報告が散見されるが,本症例のように長期服用後に発症したり,典型的なアレルギー症状を呈さない例が少なくなく,診断の際に留意すべきである.
著者
細沼 賢一 湯浅 圭一朗 山田 昇司 高木 均 森 昌朋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.32-36, 2003-01-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は42歳, 女性. 3種類の異なる漢方薬, 柴胡桂枝乾姜湯, 喜谷実母散, 女神散をそれぞれ異なる時期に内服し, その都度肝障害がみられた. これら3剤の構成成分は類似しており, 3剤共通は3種類であったが, 特に喜谷実母散と女神散では9種類が合致していた. この3剤の内服によりその都度肝障害を起こしたことは, チャレンジテストによる肝障害発現に相当すると考えられ, これらの漢方薬による薬物性肝障害が強く疑われた. 漢方薬の投与時にも肝障害の発現には充分注意し, 肝障害出現時には, 合剤としてだけでなくその構成成分も考慮して対処する必要があると思われた.
著者
岩室 雅也 川口 光彦 寺田 亮 大澤 俊哉 山本 和秀 糸島 達也 高橋 和明
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.512-515, 2005
被引用文献数
6 7

症例は71歳, 女性. 2004年12月21日に近医で行った血液検査でAST 593 IU/<i>l</i>, ALT 661 IU/<i>l</i> と肝機能障害を認め, 12月22日に当院紹介となった. 発症の約4週間前に漢方薬の内服を開始しており, またリンパ球幼弱化試験 (lymphocyte stimulation test : LST) が陽性を示したことから, 当初は漢方薬による薬物性肝障害が疑われた. しかし血中E型肝炎ウイルス (hepatitis E virus : HEV) RNAが陽性で, HEV IgM抗体価が有意に上昇していることが明らかとなり, 最終的にE型急性肝炎と診断した. 問診により10月頃に市販のブタ肝臓を摂食していたことが判明し, 感染源として疑われた. 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴はなかった. 本例はE型急性肝炎の症例であるが, 薬物性肝障害の診断基準を満たしたため, その鑑別が問題となった. 漢方薬はLSTで偽陽性を示すことが多く, LSTの結果を以て漢方薬を肝障害の原因薬物と断定することはできない. またE型急性肝炎の診断においては, 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴とともに, 市販のブタ肝臓の摂食歴を聴取することが重要である.
著者
吉田 道弘 奥村 文浩 板野 哲 物江 孝司 松波 加代子 稲垣 佑祐 藤田 恭明 望月 寿人 小川 観人 高田 博樹 祖父江 聡 妹尾 恭司 伊藤 和幸
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.512-519, 2008-11-25
参考文献数
17

症例は71歳,C型肝硬変の男性.近医にて肝腫瘍を指摘され,平成17年4月当院紹介受診し,肝細胞癌治療目的で入院となった.肝機能は,Liver damage B, Child-Pugh Grade B(7点).肝両葉に多発する肝細胞癌で,進行度はStage III,転位右肝動脈を有する症例であった.4月,7月に計2回chemolipiodolizationを行なったが,肝癌はさらに増大した.そこで,10月17日に大動脈留置型特殊リザーバーシステム(System-I)を留置し,左右肝動脈に1週間毎交互にlow dose FP療法(LFP)を計4クール施行した.退院後は外来でLFPを4クール施行した.その結果,腫瘍マーカーは,AFPは2,479.9 ng/m<i>l</i>から5.6 ng/m<i>l</i>, PIVKA IIは7,979 MAU/m<i>l</i>から25 MAU/m<i>l</i>と著明な改善を認め,画像上多発肝癌は消失し,CRが得られた.<br> 転位肝動脈を有する症例に対する肝動注化学療法を行う際には,血流改変による一本化が必要となる.しかしながら肝細胞癌の場合,血流改変を行うと,肝動注化学療法で治療効果が得られない癌病変に対し,肝動脈化学塞栓術(TACE)が困難となってしまうことも少なくない.System-Iは,血流改変を行わず,既存の血管を温存して肝動注化学療法を行うことができる有用なシステムであると考えられた.<br>
著者
矢田 豊 竝川 昌司 神田 大輔 畑中 健 大山 達也 長島 多聞 久保田 潤 高木 均 吉永 輝夫
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.523-529, 2012 (Released:2012-08-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

症例は56歳,男性.C型肝硬変に腹膜播種を伴う進行肝細胞癌(HCC)を併発し,ペグインターフェロンα併用5FU全身化学療法(PEG-IFN/5FU全身療法)を施行したところ,化学療法開始直後に出血性ショック状態となった.腹部CT検査で腹腔内出血を確認し,化学療法に伴う肝癌破裂と診断した.保存的加療にて軽快し,かつPEG-IFN/5FU全身療法によりHCCは腹膜播種巣を含め著明に縮小した.このため,PEG-IFN/5FU全身療法を計5コース施行したところ,同療法は奏功した.化学療法に伴うHCC破裂は化学療法が有効であるがゆえに生じる可能性があり,循環動態の安定が得られた後に,同療法を繰り返すことで著効が期待できる.腹膜播種を伴う進行HCCにPEG-IFN/5FU全身療法は考慮すべき治療法と考えられた.
著者
福本 陽平 岸本 幸広 前田 直人 西向 栄治 金藤 英二 岡田 克夫 内田 靖 河野 通盛 是永 匡紹 池田 弘 藤岡 真一 西野 謙 河野 友彦 辻 恵二 平松 憲 柴田 憲邦 児玉 隆浩 周防 武昭
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.484-489, 2007-10-25
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

2006年開催の第85回日本消化器病学会中国支部例会では,シンポジウム「急性肝炎の疫学的変遷」が行われ,最近の中国地方における急性肝炎の発生動向が報告された.その結果,最近5∼25年間の総計1,815症例の報告では,ウイルス性急性肝炎が約52%で,薬物性肝炎14%,自己免疫性1%,原因不明33%であった.また,山陰地域ではA型急性肝炎が,山陽地域ではC型急性肝炎や薬物性肝炎がより多く発生した.一方,最近の10年間では,急性肝炎は発生総数として約15%減少し,その要因はA型急性肝炎の減少であった.また,原因不明の急性肝炎が増え,薬物性肝炎も増加する傾向にあった.この間のウイルス性肝炎は,成因別にA型急性肝炎に代わりB型急性肝炎の割合が一位となり,C型急性肝炎の割合は変化なかった.すなわち,最近5年間に発生したウイルス性急性肝炎の割合は,HBVが約45%,HAV 25%,HCV 15%,HEV 1%,EBVとCMVとは併せて15%であった.<br>
著者
春日井 博志 大崎 往夫 岡 博子 工藤 正俊 関 寿人 大阪肝穿刺生検治療研究会
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.12, pp.632-640, 2003-12-25
被引用文献数
15 22

肝細胞癌に対するラジオ波治療 (RFA) の現状と, RFAに伴う合併症および死亡例の内容と頻度を明らかにすることを目的として, 大阪肝穿刺生検治療研究会の会員を中心に38施設, 43診療科のアンケート結果について解析を行った. 1999年1月より2002年5月までにRFAは, 経皮的に2542例, 腹腔鏡的に23例, 開腹下に49例, 計2614例に対して3891回の治療が施行された. 合併症は, 2614例中207例 (7.9%) に見られ, 3カ月以内の死亡例は9例(0.3%) に見られた. 死亡例は, 肝不全3例, 急性増悪・肉腫化3例, 胆管損傷・消化管出血・急性心筋梗塞が各1例であった. 1カ月あたりの症例数が多い診療科での合併症・死亡が少なかった. RFAの合併症は, 経験を重ねることにより減らすことができる可能性がある.
著者
後藤 貴史 石川 博基 佐伯 哲 猪狩 成彦 福田 麻里子 田浦 直太 西村 大介 市川 辰樹 濱崎 圭輔 中尾 一彦 江口 勝美
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.298-303, 2006 (Released:2006-11-28)
参考文献数
20

肝炎後再生不良性貧血の2例を経験した.症例1は35歳男性,2003年4月中旬より全身倦怠感出現し,4月20日にT-Bil 6.2mg/dl, AST 1900IU/L, ALT 3020IU/Lと肝機能異常を認めPT 68%と低下していた.A∼E型の肝炎ウイルスは陰性で各種自己抗体陰性,薬剤の関与も否定的であった.徐々に肝機能は正常化したが,同年7月14日にWBC 3000/mm3, Plt 7.4万/mm3と2系統の血球減少が出現し,7月25日に再入院となった.骨髄は低形成性を呈しCD4/CD8比は0.207と低下していた.症例2は26歳男性,2003年6月下旬より全身倦怠感出現し,7月1日にT-Bil 13.2mg/dl, AST 1748IU/L, ALT 2924IU/Lと肝機能異常を認めPT 62%と低下していた.各種ウィルスマーカーは陰性で肝炎の原因は不明であった.徐々に肝機能異常は改善したが,7月中旬より血球減少が出現した.骨髄は低形成性でありCD4/CD8比は0.335と低下していた.2症例とも免疫抑制剤等の治療により汎血球減少は改善した.若年者の原因不明の肝炎後に再生不良性貧血を合併する事があり注意が必要と思われた.
著者
渡邉 尚子 岩田 滉一郎 中尾 國明 松本 正廣 松本 裕子 籏原 照昌 太田 裕彦 平林 寧子 高橋 和明 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.80-84, 2003-02-25
被引用文献数
5 5

従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが, 劇症化あるいは遷延・慢性化することもなく, 約20日間で軽快退院となった. 入院時より第29病日まで血清HEV-RNAが持続陽性で, 且つ第57病日の回復期血清中にHEV抗体を認めたことより, E型急性肝炎と診断した. 本患者より分離されたHEV株(JRA 1)のゲノム塩基配列の特徴に鑑みて, 本症例は「日本に土着化したHEV株」に感染して発症した急性肝炎であると考えられた.
著者
芝山 雄老 松本 和基 大井 玄 中田 勝次 筧 紘一 清水 修 茂在 敏司 榊原 茂樹 佐藤 久夫 小林 茂保
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.208-216, 1983

ヒトβ型インターフェロン(HuIFN-β)投与肝細胞癌の一症例を経験した.症例は62歳男,会社役員.入院時すでに肝右葉全域および左葉の一部に肝細胞癌が認められ,手術不可能と判断し,HuIFN-βの大量投与(筋注総量4,671×10<SUP>4</SUP>IU,静注総量2,866×10<SUP>4</SUP>IU,肝動脈内注入250×10<SUP>4</SUP>IU)が行われた.肝動脈内注入直後一過性にα-Fetoprotein値の低下が認められたが,筋注および静注では著効を示さず,癌は徐々に増大した.病理解剖学的には多核巨細胞化した癌細胞および原形質が泡沫化した癌細胞の出現および癌細胞の壊死に陥る傾向の乏しいことが注目された.これらの所見はHuIFN-β非投与肝細胞癌例にも多少認められるので,HuIFN-β投与による特異的変化であるとは言えないが,それらの程度が著しく高度であったことよりHuIFN-β投与と何らかの関係が存在するのではないかと考えられた.本症例では臨床的にも病理解剖学的にも肝細胞癌に対するHuIFN-βの著しい治療効果は認められなかった.