著者
新妻 宏文 石井 元康 小島 敏明 菊池 公美子 鈴木 千晶 小林 智夫 五十嵐 勇彦 真野 浩 上野 義之 小林 光樹 下瀬川 徹 豊田 隆謙
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.346-349, 1999-06-25
被引用文献数
8 6

献血時 (32歳時) にHBVキャリアではないと確認されている症例 (33歳) がHBVの急性感染後にキャリア化した. この症例のウイルスをシークエンスし分子系統樹解析したところgenotype Aであった. 最近, 成人感染後にキャリア化した本邦の1例の検討でgenotypeがAであったと報告された. さらに当科外来で唯一の夫婦ともHBVキャリアの症例では, 夫婦ともにgenotype Aが検出された. 当科外来患者 (宮城県が中心, n=222) のgenotypeの検討ではgenotype Aは3.6%しか存在しなかった. 以上より, genotype Aが急性感染すると成人でもキャリア化することがあると考えられた. 欧米では成人感染後のキャリア化が多く, 本邦では成人感染後のキャリア化は少ないとされている. Genotype Aが欧米で多く本邦で少ないことが, その原因であると考えられた.
著者
国枝 武美 山本 晋一郎
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.537-540, 1999-10-25

C型肝炎ウイルスが原因と考えられる劇症肝炎の1例を経験したので報告する. 症例は73歳, 男性. 平成10年6月26日頃より, 全身倦怠感, 食思不振を自覚し軽度の肝機能異常を指摘された. しかし症状は改善せず肝機能の悪化も認めたため, 7月11日近医に入院した. 重症急性肝炎と診断され, グルカゴンーインスリン (GI) 療法などの治療を受けたが肝機能の改善はみられず, 意識レベルの低下も認めたため7月13日当科へ紹介され入院した. 入院時, 肝性昏睡II度, PT35.2%から劇症肝炎 (亜急性型) と診断した. 直ちに血漿交換, ステロイド療法などを施行し意識レベルおよび肝機能は回復した. 本例はHAV, HBV, CMV, EBVに加え自己免疫および薬剤などの関与は否定された. 血液汚染歴はなく感染経路は不明であるが, 入院時よりHCV-RNAが検出され, さらに少し遅れてHCV抗体価の出現がみられ, 経過よりHCVによる劇症肝炎と考えられた. C型肝炎ウイルスによる劇症肝炎の発症は比較的まれと考えられたので報告した.
著者
樋上 義伸 友杉 直久 西邨 啓吾 加登 康洋 小林 健一 福田 繁 岡田 保典
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.734-738, 1981
被引用文献数
2

われわれは劇症肝炎様転帰をとった悪性リンパ腫の1剖検例を経験したので報告する.症例は60歳男性で昭和54年4月20日より全身倦怠と黄疸が出現したため4月24日に当科に入院した.入院時黄疸が著明で肝は剣状突起下7横指触知されたが,表在リンパ節腫脹は認められなかった.検査成績では直接ビリルビンの増加と胆道系酵素の上昇が著明で閉塞性黄疸のパターンを示していたが,腹部超音波検査では肝内・肝外胆管の拡張は認められなかった.入院後発熱,出血傾向,腹水,無尿,意識障害が出現し,4月28日死亡した.剖検では全身リンパ節,肝,脾,副腎,皮膚,顎下腺に腫瘍細胞の浸潤があり悪性リンパ腫と診断された.肝臓は広範性肝細胞壊死の状態で,腫瘍細胞は門脈域でび漫性浸潤を示し,腫瘍結節形成も認められた.広範性肝細胞壊死の機序としては,死亡直前にエンドトキシンショックの臨床像を呈していたことより臓器Shwartzman反応の関与が考えられた.
著者
齊藤 奈津子 土山 寿志 大森 俊明 山田 真也 島崎 英樹
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.268-273, 2004-05-25
被引用文献数
5 7

従来本邦では, E型肝炎の発生は稀であると考えられてきたが, 近年海外渡航歴のない国内発症例が報告されている. 今回, 北陸では初の報告となるE型急性肝炎の国内感染, 発症例を経験した. 症例は50歳男性. 海外渡航歴, 輸血歴, 動物の飼育歴, 薬剤服用歴及び, 不特定な人との性的接触はなかった. 2002年3月下旬より全身倦怠感, 褐色尿が出現し4月4日当科受診. 血液検査, 画像所見より急性肝炎と診断され入院となった. 対症療法にてトランスアミナーゼは速やかに改善したが, 黄疸は遷延化した. ビリルビン吸着療法計7回の後, 黄疸も改善傾向を示し, 第56病日目に退院となった. 入院時血清よりIgM型抗HEV抗体, HEV-RNA陽性が判明し, 本症例はE型急性肝炎と診断された. HEVは genotype IIIで, その塩基配列は既報のJRA 1株と最も高い一致率 (94.9%) を示した. HEVは日本国内に広く定着していると考えられた.
著者
高田 弘一 堀田 彰一 目黒 高志 平山 眞章 丸谷 真守美 茎津 武大 河野 豊 高梨 訓博 加藤 淳二 新津 洋司郎
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.603-608, 2004-11-25
被引用文献数
2 4

症例は57歳, 男性. 平成7年11月25日全身倦怠感および食欲不振を主訴に近医を受診. 腹部CTにてHCCが疑われ, 精査加療目的に平成8年1月8日当院紹介入院となった. 精査の結果, 門脈腫瘍栓を伴ったHCC stage IVAと診断した. 同年1月16日と2月21日に, 主腫瘍であると考えられた肝S8, S4のHCCに対してTAEを施行した. 同時期より右骨盤部の痛みと歩行障害が出現した. 原因検索を目的にCTおよび血管造影を施行したところ右腸骨に hypervascular な腫瘍が描出された. 骨シンチグラフィーでも同腫瘍に一致してTcの取り込みを認めた. 臨床経過および画像所見よりHCCの骨転移と診断し, 同腫瘍に対してTAEおよび放射線治療を施行した. その結果, 疼痛は消失し歩行障害も改善した. 画像上も骨転移巣は消失した. その後肝内にHCCが再発し, TAEを計9回とRFAを1回施行した. 平成12年12月頃より肝不全が徐々に進行し, 骨転移が出現してから約6年後の平成14年1月31日永眠された. これまで, HCCの骨転移は予後不良であると考えられていたが, 本症例では長期生存が得られ貴重な症例と考え報告した.
著者
岡本 英三 有井 滋樹 内野 純一 遠藤 康夫 神代 正道 谷川 久一 幕内 雅敏 水本 龍二 水戸 廸郎 山田 龍作 有井 滋樹 大西 美佳 平石 保子
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.317-330, 1997-05-25
被引用文献数
30 27

全国649施設の協力により, 1992年1月1日より1993年12月31日までの2年間の原発性肝癌症例15, 782例 (臨床診断/組織診断の判明13, 991例) が日本肝癌研究会に登録された. 約96%は肝細胞癌, 約3%が胆管細胞癌であった. 追跡症例は9, 854例であった. 本報告においては, これら新規症例を170項目に及ぶ疫学, 臨床病理学的事項, 診断, 治療について解析し, その主たる点について述べた. 特別集計としては, 追跡症例を含めて, 肝細胞癌, 胆管細胞癌, 混合型肝癌の治療法別生存率, 及びlogistic modelによる肝細胞癌切除後の3年, 5年生存の予知因子の解析を行った.
著者
平岡 淳 道堯 浩二郎 重松 秀一郎 眞柴 寿枝 熊木 天児 徳本 良雄 長谷部 昌 日浅 陽一 堀池 典生 恩地 森一
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.609-613, 2004-11-25
被引用文献数
5 5

症例は56歳男性. アルコール性肝硬変. 平成15年8月より全身倦怠感を自覚. 同年10月より体重増加. 11月8日より39度台の発熱が出現し, 近医入院. 同14日当科入院. WBC 7700/μ<i>l</i>, Hb 8.8g/d<i>l</i>, Plt 5.2万/μ<i>l</i>, PT 46.1%, T-Bil 4.8mg/d<i>l</i>, AST 129IU/<i>l</i>, ALT 59IU/<i>l</i>, γ;-GTP 27IU/<i>l</i>, Alb 2.5g/d<i>l</i>, 入院当初より左腰背部痛を軽度自覚. 入院後, 肝不全に対して保存的に加療を行ったが, 貧血が進行した. 下血はなく, 上部消化管内視鏡では明らかな出血はなかった. 第6病日, 腹部造影CTにて左腸腰筋の軽度腫大が描出された. 再検前にショックに陥り第7病日死亡. 剖検にて左腸腰筋血腫と診断された. 肝硬変に合併した特発性腸腰筋血腫は稀であるが, 貧血が進行する肝硬変患者における鑑別として重要である.
著者
佐藤 祐一 市田 隆文 原田 武 伊藤 信市 朝倉 均 加藤 仁 橋倉 泰彦 池上 俊彦 川崎 誠治 松波 英寿 幕内 雅敏
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.684-689, 1997-11-25
被引用文献数
2

症例は52歳の成人女性で, 1984年に皮膚掻痒感で発症し, Scheuer I期の原発性胆汁性肝硬変 (PBC) と診断され, 外来で経過観察されていた. 1992年頃より黄疸が出現し, 1993年3月に当科入院したが, 黄疸の高度進行, 腹水の増加, 肝性脳症の悪化, 肝腎症候群を認め, 血漿交換を含めた内科的治療も奏功しなかった. そこで本人と家族が肝移植を強く希望したため, 正式にインフォームド・コンセントを得て, 1993年10月20日信州大学第1外科へ移送し, 同年11月2日, 長男 (25歳) をドナー (グラフト肝重量402g) とする成人間生体部分肝移植を施行した. その後, 原病の再発とも思われる組織像と, 抗糸粒体抗体, 抗PDH抗体, IgM, ALPの上昇を認めた. 術後約3年半を経た現在, 上述のように血清学的には原疾患の再発が示唆されるが, QOLはよく, 日常生活に支障は生じていない. 一方, ドナーである長男も結婚し, 普通と全く変わらない生活を送っている. 以上PBCに対する治療として, 生体肝移植は我が国で選択されうるべき治療法の一つであり, 今後その推進に力を注ぐ必要があると思われた.
著者
関 孝一 伊藤 芳晴 西 泰雄 猪阪 優子
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.385-391, 1993
被引用文献数
19 3

IFN治療中のC型慢性活動性肝炎症例のなかに,視力低下や飛蚊症などの自覚症状を訴え,眼底出血の存在を指摘される3症例が発現した.このため,IFN治療中20例と,IFN治療終了後14例,34例全例に眼底検査が指示され,IFN治療中の残る17例から,自覚症状を欠く眼底出血例4例があらたに発見された.眼底出血例7例が詳細に検討され,眼底出血がIFNの副反応の1つであることが推測された.乳頭部周囲に位置する表層性出血と軟性白斑が共通する特徴的所見である.出血例7例と非出血例27例が対比検討され,眼底出血発現の背景因子は糖尿病の合併,危険因子はIFN治療開始後の血小板減少,血小板減少率,triglyceride高値,がT検定で有意(p<0.05)と結論された.眼底出血例は視力障害など重篤な眼症状を伴なわず,又IFN治療中に眼底所見が改善する症例が3例あり,IFNは慎重な観察の下に治療継続が可能である.他方,自覚症状を欠く眼底出血例が4例あり,IFN治療例は全例に眼底検査が必要と考えられる.
著者
鈴木 義之 瀬崎 ひとみ 芥田 憲夫 鈴木 文孝 瀬古 裕也 今井 則博 平川 美晴 川村 祐介 保坂 哲也 小林 正宏 斎藤 聡 荒瀬 康司 池田 健次 小林 万利子 熊田 博光
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.147-149, 2011 (Released:2011-03-22)
参考文献数
4

To further improve therapeutic effect on chronic hepatitis C, we have administered NS3 inhibitor and NS5A inhibitor together, and examined effects of early antiviral agent therapy. The subjects were five cases where interferon is ineffective (null responders). The NS5A and NS3 inhibitors are oral drugs and were daily administered for 24 weeks. Figure 1 shows time-dependent change of the number of viruses after the therapy started, and rapid decrease of viruses is recognized. Within 12 hours, HCV-RNA decreased by more than 2 log IU/ml in every patient. Two patients became negative for the virus by the 15th day after the therapy started. Furthermore, 80% of cases by the 28th day and all the cases by the 56th day became negative. The new therapy has manifested excellent early antiviral effect.
著者
横川 順子 大平 弘正 宍戸 昌一郎 阿部 和道 雷 毅 滝口 純子 小原 勝敏 佐藤 由紀夫
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.401-406, 2003-08-25
被引用文献数
2 2

症例は57歳の女性. 両手指の皮膚硬化, Raynaud 症状, 毛細血管拡張を認め, 血液検査で抗核抗体, 抗セントロメア抗体陽性から不完全型CREST症候群と診断された. また, 軽度の肝機能異常も指摘され, ウルソデオキシコール酸の投与で改善が得られていた. 平成14年5月上旬から顕性黄疸が出現し, 当科へ紹介となった. トランスアミナーゼ, 胆道系酵素および総ビリルビン値15.8mg/d<i>l</i>と高度の上昇を認めた. 肝生検組織像では, 門脈域の線維性拡大と著明なリンパ球浸潤がみられ, 肝細胞のロゼット形成も認められた. AIHの国際診断基準ではAIH確診例と判断され, 不全型CREST (RST) 症候群に合併したAIH例と診断した. 入院時PTが50.3%と劇症化も危惧されたため, 入院当日より副腎皮質ホルモンの投与を開始し著明な改善がみられた. AIHとCREST症候群の合併例は極めて稀であり, 貴重な症例と考え報告した.
著者
静間 徹 長谷川 潔 橋本 悦子 唐澤 英偉 山内 克巳 林 直諒 高崎 健
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.125-131, 2000-02-25
参考文献数
30
被引用文献数
10 2

症例はC型慢性肝炎の62歳女性. 超音波検査にて, 肝S4に15×10mm大の低エコー腫瘤を指摘され当科入院. 造影CT検査では, 動脈優位相で辺縁が濃染し, 後期相では腫瘤の内部に造影効果が認められた. MRI検査では, T1強調画像で低信号, T2強調画像で高信号であり, 血管造影検査では腫瘍濃染像は認められなかった. 血清学的所見や画像所見からは, 肝腫瘤の診断が確定できず, 手術後に肝原発non-Hodgkin lymphoma (diffuse large B cell type) と診断された. 近年, C型慢性肝疾患に合併した肝原発悪性リンパ腫の報告例が増えているが, 径20mm以下の単発性の肝腫瘤として発見されることは稀であるため, 文献的考察を加えて報告した.
著者
柿木 嘉平太 橘 良哉 米島 博嗣 荻野 英朗 里村 吉威 鵜浦 雅志 三輪 淳夫 平松 活志 中沼 安二
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.546-550, 1999-10-25
被引用文献数
3

症例は45歳の男性. 1995年2月1日に慢性骨髄性白血病に対して同種骨髄移植を行い, 急性移植片対宿主病合併のため免疫抑制療法を受けていた. 症状は軽快し, 一時退院となったが, 6月22日 (移植後141日目) 肺炎を発症し再入院となった. 7月30日より前額部に水疱性皮疹 (皮膚生検で単純ヘルペス感染 (HSV) と診断) が出現した. このときALT2394IU/<I>l</I>, AST21031U/<I>l</I>とトランスアミナーゼの急上昇を示す肝障害を認め, 血小板数2.4万/μ<I>l</I>, FDP61.3μg/d<I>l</I>とDICの合併も認めた. 8月5日, 肺炎の増悪による呼吸不全により死亡した. 剖検では, 肝小葉中心性に出血性凝固壊死を認め, HSV-2のポリクローナル抗体を用いた免疫染色からもHSV-2感染による肝障害と推察された. 免疫能の低下した宿主においては, HSV感染により重症肝炎を呈する場合があり留意すべきと考えられた.
著者
山村 義治 上田 茂信 伊谷 賢次 粉川 隆文 杉野 成 近藤 元治 浜田 春樹 園山 輝久 弘中 武 蒲田 洋二 芦原 司
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.956-962, 1988
被引用文献数
7 2

症例は29歳女性.上腹部痛を主訴として,昭和59年8月2日入院.血液学的検査で,中等度の貧血と血小板の減少,血清LDHの軽度上昇を認めた.出血時間,プロトロンビン時間共に延長していた.AFPは陰性.腹部血管造影では,肝・脾血管腫と診断され,さらに骨転移巣も認めた為,血管肉腫が強く示唆された.確定診断の目的で腹腔鏡下肝生検を試みたが,出血が激しく断念し,外科的肝切除にて血管肉腫と診断された.本例は,その後肝機能が悪化し,昭和60年3月22日に肝不全で死亡した.剖検では,肝臓,脾臓,骨髄に血管肉腫を認めたが,原発巣は不明であった.肝血管肉腫は生前診断が困難であり,特に肝血管腫や肝嚢胞性病変との鑑別が問題となる.疑いのある症例には,速やかに開腹下肝生検,あるいは肝切除術を行うことが必要と考えられた.
著者
中山 晴夫 小島 敏明 草野 昌男 遠藤 和則 高橋 雅春 須貝 吉樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.550-557, 2006 (Released:2007-03-02)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

IFN治療著効後に血中HCV RNAが再陽性化したC型慢性肝炎の2例を経験した.症例1は54才男性,HCV genotype 2a. 1992年にIFNα2bの26週投与で著効と判定された.以後肝機能は正常であったが,12年後に肝機能の増悪と共にHCV RNAが陽性化した.HCV RNAは1カ月後に陰性化し肝機能も正常化したが,9カ月後に再度HCV RNAが陽転した.症例2は68才男性,HCV genotype 1b. 2003年にIFNβ2週後α2b/Ribavirin併用療法22週治療で著効と判定された.治療終了後2年2カ月目に,肝機能は正常のままHCV RNAが陽性化し持続した.治療前後におけるHCV NS5B領域の塩基配列の検討より,残存したHCVの再燃であると考えられた.以上のようにIFN著効例であってもHCV RNAが再出現する症例があり,注意深い経過観察が必要であると考えられた.
著者
芥田 憲夫 鈴木 文孝 川村 祐介 八辻 寛美 瀬崎 ひとみ 鈴木 義之 保坂 哲也 小林 正宏 小林 万利子 荒瀬 康司 池田 健次 熊田 博光
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.9, pp.450-451, 2006 (Released:2007-01-18)
参考文献数
5
被引用文献数
2 2

We evaluated 130 consecutive Japanese adults of HCV genotype 1b who received treatment with peginterferon (PEG-IFN) plus ribavirin (RBV) for 48 weeks, to investigate the pretreatment predictive factors of early virologic response (EVR) and sustained virological response (SVR). 75% of patients could achieve EVR, and 45% were SVR. Multivariate analysis identified low density lipoprotein cholesterol (LDL-C) (≥86mg/dl) and amino acid (aa) substitutions in HCV core region (Double wild type; arginine at aa 70 and leucine at aa 91) as independent and significant determinants of EVR. Furthermore, multivariate analysis identified LDL-C (≥86mg/dl), aa substitutions in core region (Double wild type), gender (male), ICG R15 (<10%), AST (<60IU/l) as determinants of SVR. In conclusion, LDL-C and aa substitutions in core region are important pretreatment predictors of response to treatment with PEG-IFN plus RBV in Japanese patients infected with genotype 1b.