著者
武田 一馬 川西 康友 平山 高嗣 出口 大輔 井手 一郎 村瀬 洋 柏野 邦夫
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.3, pp.58-69, 2023-03-01

本研究の目的は,多数の人物の視行動を分析することで,観衆が注目している複数の注目対象の位置の推定と,それらが注目されている度合(被注目度)を定量化することである.被注目度を推定する典型的な方法として,観衆の視線を推定し,その視線と物体の位置を対応付けることで,被注目度を推定することが考えられる.その場合,機器を設置するコストや手間をふまえると,観衆全体を一度に撮影した映像から視線を推定することが望ましい.しかし,このようにして撮影した映像から切り出した顔画像の解像度は観客ごとに撮影した場合と比べて小さく,視線推定精度は低い.そこで本論文では,低解像度でも比較的推定しやすい顔向きの時系列データを入力とし,これらを時空間的に統合することで,観衆が複数の注目対象を注視する状況下で注目対象の位置と被注目度を同時に推定する手法を提案する.提案手法の有効性を確認するため,アイドルのライブ公演を模したデータセットを構築し,注目対象の位置及び被注目度の推定精度を評価した.実験結果から,提案手法により比較手法と比べて被注目度の推定精度が向上することを確認した.
著者
山田 奨治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.329-336, 1996-02-25
被引用文献数
25

脳波の一種である事象関連電位P300を利用した脳波キーボードの入力速度向上のために, P300を加算平均しない, 単一試行での判別と文字入力速度向上のための手法を検討した. そのために (1) 特徴量としてウェーブレット係数の導入, (2) 誤判別の許容と瞬目による有効なキャンセル方法の検討, (3) 1文字の平均入力時間を最短とする判別エラー率の理論的検討, を行った. 4人の被験者に対してP300の取得実験を行い, 得られたデータに線形判別分析法を行って判別力を試験した. その結果, 特徴量としてのウェーブレット係数の有効性が認められた. 瞬目による誤判別のキャンセルは, 即時性とチャネルやデバイスの追加なしに行える点で有効であることがわかった. また判別エラー率から1文字の平均入力時間を推定する式を示し, 最適な判別エラー率を推定した. その推定値を実証するために脳波キーボードを試作し, 4人の被験者に対して利用実験を行った. その結果, ほぼ推定値どおりの入力速度が得られることを確認した. 得られた入力速度は平均 3.0文字/分, 15.6ビット/分で, これまでの 1.3倍の速度を達成した.
著者
榎田 翼 若槻 尚斗 水谷 孝一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J96-A, no.5, pp.197-204, 2013-05-01

本論文は,金管楽器において吹鳴圧力に加え唇のアパチュアを変化させたときの吹鳴音高を計測することで,吹鳴圧力とアパチュアが吹鳴音の音高に与える影響を明らかにすることを目的とする.具体的にはアンブシュア可変機構を有する人工吹鳴装置を用いて,吹鳴圧力とアパチュアの大きさを制御しながら吹鳴音の計測を行った.結果として吹鳴圧力とアパチュアの相互関係により励起される吹鳴音の周波数が決定されることを確認した.また,アパチュアの大きさを徐々に大きくしていく場合と小さくしていく場合では吹鳴音の周波数が遷移するアパチュアの大きさが異なるという結果が得られた.更に,アパチュアを小さくすれば吹鳴音の周波数が高くなるという奏者の見解とは逆に,人工吹鳴においてアパチュアを大きくしたときに吹鳴音の周波数が高くなるという興味深い結果が得られた.
著者
青木 義満 橋本 周司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.573-582, 1999-04-25
被引用文献数
27

マン・マシンインタフェースにおける擬人化エージェントや, 映像エンターテイメント分野, 医療分野等さまざまな分野において, 人物の顔形状モデルを用いて顔画像を合成する研究がなされている. その中でも顔の物理的なモデリングの手法は, 自然な表情合成が可能なだけでなく, 筋肉の挙動に対する表情変化をシミュレートできるという利点があり, 既にいくつかのモデルが提案されている. 本論文では, 頭部の3次元CTデータから顔表面及び骨格形状データを取得し, 解剖学的な知見を基に皮膚・表情筋のモデリングを行うことで作成した, 正確な形状とリアルな表情生成機構をもった物理モデルを提案する. また, このモデルを用いた表情生成実験を通して, 表情筋の収縮とそれにより生じる顔面変形との対応関係を調べた. また, 解剖学的に精巧であるというモデルの特性を生かし, 医学的な応用を検討する.
著者
菱沼 勲 三好 徹哉 稲葉 直彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1157-1166, 2001-09-01
被引用文献数
5

極めて簡単な微分方程式において, 一つの系パラメータに例えば10^<-4>のような極めて微小な変化を与えるだけで, 系に生じるlimit cycleの振幅が大きく変化する場合がある.このような現象はlost solutionと呼ばれ, その中間の振幅をもつ解はあひる解と呼ばれている.本論文では, レイリー方程式に生じるあひる解が, 微小周期外力の印加に対してどのような振舞いをするかを数値実験によって調べた.振幅1.0×10^<-4>の正弦波外力の注入によっていとも簡単に周期解が崩壊し, 周期倍分岐によってカオスが発生することが明らかとなった.また, 興味深い3種類の周期アトラクタの発生が確認された.
著者
辻川 剛範 杉山 昭彦 花沢 健 梶川 嘉延
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.2, pp.21-39, 2023-02-01

前後方向マイクロホン配置を用いた車載用高性能マイクロホンアレーシステムを提案する.車室内でマイクロホン配置に課せられる制約を利用して,業界標準の左右方向マイクロホンアレー軸を90度回転して前後方向とすることにより,雑音源方向に投影されたアレー軸に関する話者方向指向性の虚像を,雑音源と異なる方向に向ける.話者方向指向性の虚像が雑音方向と重なることがないので,音声と雑音を方向で区別することが可能となり,少ない音声歪で高い雑音抑圧度を達成できる.最初に,左右方向のアレー軸を有する2マイクロホンアレーで,アレー軸に関して投影された話者方向指向性の虚像に重なる方向の車室内雑音が抑圧できないことを,マイクロホン信号間相対位相の解析を通じて示す.続いて,車室内で録音した信号によるシミュレーション結果を用いて,提案するマイクロホンアレーシステムが従来のマイクロホンアレーシステムより雑音抑圧量を最大7dB,単語正解精度を最大13%改善することを示す.
著者
広林 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.153-161, 2008-01-01

仮想的な市場モデルに基づいて,経済時系列の予測を行う研究は盛んに行われているが,実際の市場には様々な変動要因が存在するため,長期的な予測は難しい.しかし,経済学では景気循環論やエリオット波動に代表されるように,経済時系列の変動には短期的なものから長期的なものまで様々な周期性の存在が仮定されている.そこで,近年筆者が開発している新しい高分解能周波数解析法(NHA)を用いて,経済時系列の周期性の解析を行い,複合的な周期信号の組合せによって長期的な経済時系列の予測を試みた.検証実験では,過去15年間程度の日経平均株価終値のデータにおいて,過去2年間程度の分析窓長でNHAによる解析を行い,その後2年間の価格変動を予測した.また,本手法における予測可能時期を推定するため,この15年間から学習期間のためのはじめ2年間と評価のための終わりの2年間をそれぞれ除いた約11年間の区間において,予測結果の検証を行った.アジア通貨危機とアメリカ同時多発テロ事件など,世界的に大きな事件が発生している時期付近では予測誤差が大きくなるものの,それ以外の期間ではおおむね変動の概略をとらえることができた.
著者
加瀬 嵩人 能勢 隆 千葉 祐弥 伊藤 彰則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J99-A, no.1, pp.25-35, 2016-01-01

近年,非タスク指向型の音声対話システムへの需要が拡大しており,様々な研究がされている.それらほとんどの研究は言語的な観点から適切な応答の生成を目指したものである.一方で人間同士の会話においては,感情表現や発話様式などのパラ言語情報を効果的に利用することにより,対話を円滑に進めることができると考えられる.そこで我々はシステムの応答の内容ではなく,応答の仕方に着目し,感情音声合成を対話システムに用いることを試みる.本研究ではまず,適切な感情付与を人手により与えた場合に実際に対話システムの質が向上するかを複数のシナリオを作成して主観基準により評価する.次に,感情付与を自動化するために,システム発話に応じた付与とユーザ発話に協調した付与の二つの手法について検討を行う.評価結果から,感情を自動付与することで対話におけるユーザの主観評価スコアが向上すること,またユーザ発話に協調した感情付与がより効果的であることを示す.
著者
長田 典子 岩井 大輔 津田 学 和氣 早苗 井口 征士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.1219-1230, 2003-11-01
被引用文献数
13

従来の感性情報処理では,メディアを構成するパラメータとイメージとの対応関係を,感性語を介して表現していた.これに対し感性語を介さないメディア間の直接的・感性的な対応付けをノンバーバルマッピングと呼ぶ.そして「色聴現象」(音を聴くと色が見える)に着目し,音楽における調・音高・音色のパラメータを変化させた際に色聴保持者が感じる色の対応付け(マッピング)の規則性を,色相・明度・彩度のパラメータを用いて明示的に表現した.次にこのマッピングが色聴をもたない一般人にも受容可能かどうかの検証を行った.まず一対比較法による感覚尺度化を行い,音高と音色に関するマッピングについては一般群に受容されることを明らかにした.次に調同定トレーニングを実施し,調に関するマッピングを利用する試みを行ったところ,一般群にも色聴に似た現象が観察された.この結果,一般群においても音と色のマッピングが潜在的に保有される可能性を示した.
著者
石原 茂和 石原 恵子 長町 三生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.179-189, 1999-01-25
被引用文献数
6

感性工学では評価対象について質問紙を用いて, 被験者による評価実験を行う. この評価実験で得られるのは数十の言葉による多次元データである. 重回帰ベースの多変量解析では大量のサンプル数が必要となり, 現実の実験・分析ともに難しい点があった. 本論文では, 次元数に対して比較的少数しか現実には得ることのできない感性評価データを解析することを目的として, 自己組織化ニューラルネットワークの学習則を改良し, これを組み合わせることによって階層的クラスタ分析を行う方法であるarboARTを考案した. この方法では一般的な階層的クラスタリング手法に比べると, より少ない計算量で評価対象を感性評定値に従って階層的に分類することができる. また同時に, クラスタのプロトタイプがら, 感性と評価対象との関係を得ることができる. 実際の感性評価実験データを分析した結果, その分類能力は一般的な階層的クラスタリング法と同等であり, 他の多変量解析手法の結果とも共通性があった. 手法の汎用性を検討するために, 標準テストデータを用いて誤分類数と誤差を計測した結果, 良好な結果が得られた.
著者
宮野 尚哉 辰巳 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1226-1235, 2004-09-01

日経平均株価及び日経ジャスダック平均の日終値からなる日次株価指数について,土日休祭日の欠測値を線形補間法により合成し,日次リターン時系列を作成した.リターン変動の複雑さを,埋込空間における近接軌道群の平行性及びKolmogorov-Sinaiエントロピーによって評価した.リターンが月曜日に特有の変動を示す現象,すなわち,月曜日効果は存在する可能性が高い.
著者
市川 淳 大倉 光輝 秋吉 政徳
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.7, pp.208-213, 2023-07-01

相手の振る舞いへの同調は,自身にポジティブな印象を抱かせる.本研究では,エージェントの汎用的な非言語同調機能を提案する.実験の結果,付属するLEDランプが発話の基本周波数に同調して点滅することで,傾聴の印象評価が高まる傾向が見られた.
著者
嵯峨山 茂樹 板倉 文忠
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J83-A, no.11, pp.1244-1255, 2000-11-25

線形予測符号化(LPC)分析と複合正弦波モデル化(CSM)分析の間にあるエレガントな関係(ここではこれを対称性と呼ぶ)について述べる.目的は,LPC,PARCOR,CSM,線スペクトル対(LSP)などの音声スペクトルモデル化の理論に統合的な視点を与えることにある.これらの分析法はいずれもモデルの自由度に等しい個数の低次の自己相関関数を与えられたとき,モデルのパラメータを求める問題となっているが,LPCもCSMも,直交多項式の理論の観点から見ると,音声のパワースペクトル密度関数を重み関数として定義される単位円周上の直交多項式の理論(LPCの場合)及び実軸上の直交多項式の理論(CSMの場合)であり,定式化,各種のパラメータの定義,解法アルゴリズムなどに関して美しい対称性が成り立つ.また,直交多項式の観点からLSPに対して新しい解釈を与える.
著者
木下 英明 木村 真一 福田 盛介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.6, pp.197-200, 2023-06-01

天体着陸を目的とする宇宙機では,LiDARにより地表モデルを作成し,安全な着陸を図る例が存在する.本報告では,電力リソースの限られる宇宙機における,SNN(Spiking Neural Network)を活用した低電力なLiDAR信号処理の可能性を検証した結果を示す.
著者
鵜沼 亘 間邊 哲也 相原 弘一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.2, pp.40-56, 2023-02-01

本論文では,Wi-Fi RTT (Round Trip Time)を用いた測距ベースの位置特定手法であるLaterationにおいて,測距性能がどのようにして位置特定性能に影響を与えるかを調査し,調査により得られた結果を踏まえて策定したアクセスポイント選択方法に基づき,屋内廊下を対象とした位置特定性能評価を行っている.その結果,適切なアクセスポイントの選択により,今回の評価環境では,高品質な位置情報サービスに利用可能な性能が得られることを示している.また,アクセスポイントの数が減っても,位置特定性能を維持し,なおかつ,Wi-Fi RSSI (Received Signal Strength Indicator)を用いたScene Analysisと同程度若しくはそれ以上の性能が得られることを示している.更に,その他の条件においてもアクセスポイントの選択によって位置特定性能を改善できるという結果を得ている.このことから,アクセスポイント数が減ることによるコストの削減,データベースの構築・更新に要する労力の削減が期待できる.
著者
上野 浩太 林 正博 竹内 凌也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J106-A, no.4, pp.158-170, 2023-04-01

本論文では,信頼性制約下での通信ネットワーク最適化問題(以下単に「最適化問題」と呼ぶ)について新たな定式化を提案する.まず,通信ネットワークの信頼性研究には二種類のアプローチがあることを指摘する.一つはグラフ理論的アプローチであり,もう一つは通信経路に着目したアプローチである.後者の方が一般的・汎用的と言えるが,最適化問題に関する既存研究は,全て前者のアプローチに基づいている.本研究が,初めて通信経路に着目したアプローチの下での最適化問題を検討する.具体的には,実現可能な通信経路の集合から,一定の信頼性を保証しつつ最もコスト最小となる部分集合を自動的に生成する問題を検討し,その数学的定式化と二つの解法を提示する.解法の一つは総当たりによる方法であり,もう一つは2分木探索に基づく.最後に数値実験結果を示す.
著者
間邊 哲也 鮒谷 知也
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J105-A, no.8, pp.96-105, 2022-08-01

本論文では,スマートウォッチを含む歩行者ナビゲーションシステムにおいて,案内性能と安全性の両観点で比較評価実験を行う.まず,スマートウォッチで提示する案内情報の異なる3種類の評価用システムを構築する.次に,スマートウォッチの有無による歩行者ナビゲーションシステムの評価実験を行い,歩行者ナビゲーションシステムを利用するユーザの多くが必要とする通知,推奨方向,補足情報のみをスマートウォッチで提示することで,案内性能と安全性が両立できる可能性を示す.最後に,画面表示を含むスマートウォッチによる歩行者ナビゲーションシステムの評価実験を行い,スマートウォッチに多くの案内情報を提示すると,安全性だけでなく,案内性能も低下することを示す.以上のことから,スマートウォッチを含む歩行者ナビゲーションシステムにおいて案内性能と安全性を両立するためには,ユーザにとって真に必要な情報(分岐点での通知,推奨方向,補足情報)のみに限定して提示することが重要な要件の一つであることを明らかにする.
著者
清水 大地 児玉 謙太郎 関根 和生
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J104-A, no.2, pp.75-83, 2021-02-01

上演芸術の一つの魅力として,複数名の演者間に生じる複雑な関わり合いが挙げられる.近年では,この関わり合いの特徴を同期・協調の理論を適用し,定量的に検討する試みが営まれつつある.以上の研究は,主に単独の表現チャンネル(頭のリズム運動,歌声,腕の運動等)を対象とし検討を行ってきた.一方で上演芸術では,表情,ジェスチャー,リズム運動等のように複数の表現チャンネルを通して演者達が関わり合う様子が観察されており,その過程に魅力が含まれるとする理論的提案もなされつつある.本研究では,以上の複数の表現チャンネルを通した関わり合いの探索的・定量的検討を試みた.具体的には,近年演者間の同期・協調の検証対象として着目されている競争的場面としてフリースタイルラップバトルを対象とし,熟達したラッパー2名の関わり合いを手,頭,腰の同期・協調の様相に着目して測定・解析した.結果,複数の表現チャンネルにおいて演者間の同期が生起する様子,手では同位相同期,頭・腰では逆位相同期と演者間の同期の様相がチャンネルにより異なる様子,手と頭・腰を異なる役割を担うチャンネルとして利用していた様子,が観察された.
著者
神崎 雄一郎 門田 暁人 中村 匡秀 松本 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.755-767, 2004-06-01
被引用文献数
9

本論文では,プログラムに含まれる多数の命令をカムフラージュ(偽装)することにより,悪意をもったユーザ(攻撃者)によるプログラムの解析を困難にする方法を提案する.提案方法では,プログラム中の任意の命令(ターゲット)を異なる命令で偽装し,プログラムの自己書換え機構を用いて,実行時のある期間においてのみ元来の命令に復元する.攻撃者がカムフラージュされた命令を含む範囲の解析を試みたとしても,ターゲットの書換えを行うルーチン(書換えルーチン)の存在に気づかない限り,プログラムの元来の動作を正しく理解することは不可能である.解析を成功させるためには,書換えルーチンを含む範囲についても解析する必要があり,結果として,攻撃者はより広範囲にわたるプログラムの解析を強いられることとなる.提案方法は自動化が容易であり,要求される保護の強さ,及び,許容される実行効率の低下の度合に応じて,ターゲットの個数を任意に決定できる.