著者
吉野 純 村上 智一 林 雅典 安田 孝志
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1276-1280, 2006
被引用文献数
3

本研究では, 台風0416号によって瀬戸内海に発生した広域高潮の再現実験を行い, 高潮計算精度に及ぼす入力気象場の再現性の影響について検討した. パラメトリックな2次元台風モデルを入力値として海洋モデルを駆動させる従来型の手法と比較して, 近年急速に発展しているメソ気象モデルを入力値とする手法は, 極めて高い精度で潮位変動を予測できることが明らかとなった. 日本に接近・上陸する台風の多くは, 中心から遠く離れた場所であっても発達したアウターレインバンド (外縁部降雨帯) を伴うことがあり, 中心付近の壁雲に匹敵するほどの強風ピークを形成することがある. このような複雑な台風気象場を再現できるメソ気象モデルの適用は, 高精度な高潮予測を行う上で不可欠となる.
著者
藤間 功司 鴫原 良典 富田 孝史 本多 和彦 信岡 尚道 越村 俊一 藤井 裕之 半沢 稔 辰巳 正弘 折下 定夫 大谷 英夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.1381-1385, 2005
被引用文献数
2

2004年12月26日に発生したインド洋津波は, 震源から2, 000km離れたモルディブでも人的・物的に大きな被害をもたらした. そこでモルディブで現地調査を行った結果, モルディブの痕跡高が0.6-3.4m程度であること, リーフが発達している場所でも必ずしも痕跡高が小さくなっているわけでないこと, また南マレ環礁で複雑な流れが観察されており, 環礁内の津波の挙動が複雑であることなどが分かった. モルディブの津波に対する安全性を高めるには強固な構造物や人工地盤などの整備が必要である.
著者
後藤 仁志 原田 英治 高山 知司 水谷 雅裕 不動 雅之 岩本 晃幸
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.781-785, 2005

本稿では, 大波浪の襲来を受ける外洋に直面する防波堤周辺に設置された消波ブロック群の沈下機構の一つとして, 波力によるブロック群の高密度化に関して, 現地計測と数値シミュレーションの両面から検討する. 水面下のブロック群低脚部の時化後のブロック配置をマルチビームソナーにより計測し, 消波ブロック群支持層の沈下の有無を明らかにするとともに, 個別要素法型の3Dブロックモデルを用いた数値シミュレーションによって, ブロック群の高密度化過程を計算力学的に検討する.
著者
野中 浩一 山口 正隆 大福 学 畑田 佳男
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.146-150, 2006

台風の期間別発生特性に着目して作成した4種類の確率的台風モデルに基づく波高の極値推定システムを気圧と海上風・波浪のシミュレーションに適用し, 得られた台風属性の平均値や確率気圧および確率波高の特性を既往台風資料に対応する結果との比較を含めて検討した. その結果, 各モデルは台風属性や確率気圧に識別可能な差をほとんど生じないが, 確率波高に有意な差を生じ, 既往台風資料に対応する結果との類似性からみて, 季節別モデルがより適切であることや, 確率的台風モデルにおける気圧分布モデルや台風の移動・発達モデルの拡張は既往台風資料に基づく確率波高に対する本システムの再現性を向上させることを示した.
著者
上野 成三 高山 百合子 前川 行幸 原条 誠也
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1261-1265, 2003

従来のアマモ移植は多大な労力を要する播種法や株植法により実施されているのに対して, 播種・株植が不要な新しいアマモ移植手法を提案する. 本手法は, 天然のアマモ場に敷設したマット上にアマモ種子を自然発芽・定着させ, このマットを本移植地へ移設するものである. 本手法の実証実験として, 英虞湾立神浦でマットの敷設実験と移設実験を実施した. マット敷設実験ではマット上に1000本/m<SUP>2</SUP>以上の高密度でアマモが定着し, 天然アマモ場からの種子の自然落下によるアマモマットの形成が実証できた. 一方, マット移設実験では天然アマモ場に比べて移設先でのアマモの生長が鈍化した. これはマット移設時の根の損傷が原因と考えられ, 今後の課題となった.
著者
青木 伸一 水野 亮 岡本 光雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1036-1040, 2002-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
4
被引用文献数
3 4

夏期に底層で貧酸素化が著しく進行する猪鼻湖において, 長期間の継続的な観測に加えて, 自動昇降装置を用いて水温, 塩分, DOの鉛直分布の連続観測を行った. 期間中台風の来襲があり, 強風による密度成層の破壊と淡水流入による成層の再形成が交互に生じ, これに伴って底層の貧酸素水塊にも解消・再形成の過程が観測された. 本論文では, この変化過程を示し湖水の貧酸素水塊の消長と密度構造の変化の関係について論じている. 急激な鉛直混合と底層での速い酸素消費により貧酸素水塊がダイナミックに変動していることが示されている.
著者
笹 健児 久保 雅義 永井 紀彦 米山 治男 白石 悟 水井 真治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1291-1295, 2004-10-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
7

外洋性港湾に船舶が入出港するときの安全性について, 前報では大型フェリーが着離岸するときにRollによって作業困難となる状況を定量化した. 本研究では, 港外から港内に至る入出港の全局面で発生する船体動揺を連続的に再現できる数値解析手法の構築を行った結果, 沖合観測波形, 港湾・船型データ, 操船データをもとに着離岸局面を含めた入出港時の船体動揺を実用上十分な精度で再現できることを検証した. さらに着離岸時の作業困難度を定量的に評価できる「着離岸困難度関数」を新たに定義しその有効性を検討した. さらに海域, 港湾, 船型が異なるケースにおいても船体動揺の現地観測を実施し, 入出港の困難さを支配する諸要因について考察した.
著者
藤原 建紀 肥後 竹彦 高杉 由夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.209-213, 1989-11-07 (Released:2010-03-17)
参考文献数
5
被引用文献数
11 4
著者
岩崎 峯夫 永井 紀彦 清水 勝義 安立 重昭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.1416-1420, 2006-10-10 (Released:2010-06-04)
参考文献数
4

検潮井戸がローパスフィルターとして機能するため, 周期数分から数十分程度の津波に対しては, その周波数応答特性を把握しないと津波高を過小評価することがある. しかし, 周波数応答特性を算定する実務的手法は, 確立されていない. また, 検潮井戸の導水管は, 土砂の堆積等によって目詰まりが進むため, 定期的な清掃を行い, 副標観測によって清掃の効果を検証をする. しかし, 副標観測は, 長時間を必要とする問題がある. このため, 検潮井戸を線形2次のローパスフィルターと仮定し, 模型実験でその線形性を確認し, ステップ応答測定により, 短時間で検潮井戸の周波数応答特性を計測するシステムを開発した.
著者
高山 知司 雨森 洋司 金 泰民 間瀬 肇 姜 閏求 河合 弘泰
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1371-1375, 2004-10-08 (Released:2010-06-04)
参考文献数
3

台風0314号は, 2003年9月12日の夕方に中心気圧950h Paで馬山の西側に上陸し, 朝鮮半島を横切って, 13日の未明に日本海側に抜けた. 当初, 釜山が大きな高潮災害に見舞われたとの報道があった. 外洋に面している釜山に大きな高潮が発生したことに疑問があり, 10月22日から2日間にわたって釜山の台風災害について現地調査をした. 本報告は, 釜山における現地調査の結果を示すとともに, 釜山の災害は高潮災害ではなく, 高波災害であることを明らかにしたものである.
著者
橋本 典明 川口 浩二 河合 弘泰 松浦 邦明 市川 雅史
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.176-180, 2003-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
5
被引用文献数
1

1951~2000年の50年間に日本付近に来襲した台風データに基づいて確率台風モデルを改良した. 本研究では, 台風位置 (緯度, 経度) の時間変化量の偏差を2次元ARモデルにより季節別にモデル化した. 一方, 台風中心気圧・最大風速半径に関しては, 1次元ARモデルにより季節別にモデル化した. このモデルを用いて, モンテカルロシミュレーションを行った結果, 台風経路の再現性が改善され, 台風中心気圧の平面分布は概ね実データのそれと一致した. また, 過去50年間に伊勢湾に接近した台風の最大気圧降下量も, 実データは概ねシミュレーションの標偏差内に入っていることから, 本研究で改良・構築した確率台風モデルは妥当なモデルであると考えられる.
著者
川上 佐知 羽原 浩史 篠崎 孝 鳥井 英三 古林 純一 菊池 泰二
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.1231-1235, 2003-10-10 (Released:2010-03-17)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

自然再生を目的として人工干潟が各地で造成されているが, 造成後の人工干潟がどの程度干潟本来の機能を発揮しているかを評価する技術は未だ確立されたものがない. 本研究では, 干潟生態系の中核をなす底生生物に着目し, 環境条件の類似する自然干潟と比較することにより人工干潟の成熟性を評価する方法について提案した. その結果, 底生生物の生態的特徴により分類することで,(1) 生息状況の類似性,(2) 新たに提案したPW図による底生生物の大型化,(3) 干潟への依存性の高い注目種の生活サイクルの確認が可能となり, 概ね人工干潟の成熟性の評価が可能であることが明らかとなった.
著者
諸星 一信 難波 喬司 磯部 雅彦 大下 英治 杉浦 幸彦 木俣 順
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
no.50, pp.346-350, 2003
被引用文献数
1

津波浸水ハザードマップの作成に際して設定される諸条件には不確実なものが数多く, これらの考慮なしには有効性の高いハザードマップとはなり得ない. 本研究では, 津波浸水区域を予測する際の不確実性要素が津波浸水区域の予測に及ぼす影響度について検討した. その結果, モデル地区では, 地震断層モデル, 地盤変位, 計算格子間隔, 地盤高および潮位の条件設定が浸水予測結果に大きな影響を及ぼすことを明らかにした.また, 人命被害の最小化に資する津波ハザードマップ作成を念頭に置き, 不確実性要素の合理的な取扱い方法についても考察した.