著者
澤田 雄 秋山 浩利 松山 隆生 和田 朋子 遠藤 格
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.1027-1031, 2012-09-30 (Released:2013-01-08)
参考文献数
25
被引用文献数
1

急性虫垂炎術後のSSIは最も頻度の高い合併症であり,患者QOLの低下や入院期間延長などの医療経済的な側面にも影響を与える。本稿では,急性虫垂炎術後のSSI予防に関する文献について概説し,あわせて当教室および関連病院で行われた急性虫垂炎手術症例のSSIについて報告する。これまでに虫垂切除後のSSI予防に関して,予防的抗菌薬,創縁保護器,吸収糸の使用,腹腔鏡の使用,二期的創閉鎖などが報告されている。われわれの検討では,切開部SSIのリスク因子は,切開法,腹腔内ドレーンの留置,虫垂の炎症所見の3因子であり,臓器/体腔SSIのリスク因子は,出血量,腹腔内ドレーンの留置の2因子であった。壊疽性虫垂炎はSSI発生頻度が高率であったが,創縁保護器の使用によりSSI発生は減少する傾向を認めた。SSI発生高危険群である壊疽性虫垂炎に対して,今後SSI予防策のさらなる研究が必要である。
著者
谷水 長丸 里見 昭 米川 浩伸 高橋 浩司 酒井 正人 池田 理恵 檜 顕成
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.51-56, 2005-01-31 (Released:2010-09-24)
参考文献数
7

小児の消化管出血はほとんどが下血として現れる。とくに食道静脈瘤に対して予防的処置を行うようになってからは, 吐血をほとんど経験していない。一方下血症例は年々増加傾向にある。とくに重要なのは緊急処置を要し, 生命予後不良な下血疾患を速やかに鑑別し対処することである。1974年から現在までの30年間に当科に入院した下血疾患症例605例を検討し, それぞれの疾患の特徴, 下血の頻度, 性差, 好発年齢, 診断法, 処置について検討する。6o5例を検討したところ, 年齢は生後0日から15歳まで平均3.55歳で男女比は1.7: 1.0だった。このうち緊急処置を要したのは腸重積, 腸回転異常症, 絞扼性イレウス, 消化管穿孔, NEC, Meckel憩室, UC, AGML, 急性虫垂炎に合併した腹膜炎DIC, 胃ポリペクトミー後出血だった。腸回転異常症の中腸軸捻転とNECで死亡例を認めた。
著者
貝瀬 満 大森 順 鈴木 将大 藤森 俊二 岩切 勝彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.807-812, 2018-07-31 (Released:2020-01-09)
参考文献数
21

2017年12月日本消化管学会が主幹となり関連学会と共同で大腸憩室症ガイドライン(憩室出血,憩室炎)を発表した。大腸憩室出血のkey statementを概括した。本邦では大腸憩室の保有率が上昇し,大腸憩室出血は増加している。大腸憩室出血は70~90%で自然止血し,再出血率も20~40%と高率である。大腸憩室出血の診断には止血術も可能な大腸内視鏡が推奨される。クリップ止血法では,出血点を直接把持する直達法に比べ,憩室口をふさぐ縫縮法で再出血率が高い傾向にある。出血憩室を機械的に結紮する憩室結紮法は,クリップ法に比して動脈塞栓術や外科手術への移行率が低い。憩室結紮法では少数例だが遅発性腸管穿孔も報告されている。再出血の予防にはNSAIDsと一次予防アスピリン内服中止を検討する。
著者
箕輪 啓太 清水 義博
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.593-597, 2016-03-31 (Released:2016-10-01)
参考文献数
16

クラッシュ症候群以外の外傷性横紋筋融解症で出血性ショック,呼吸不全を契機に発症した急性腎不全に対して早期から腎代替療法を施行することで救命できた1例を経験したので報告する。症例は35歳男性,125ccバイク走行中に大型トラックと衝突し,当院へ救急搬送された。画像検査にて外傷性横隔膜ヘルニア,血気胸,外傷性脾損傷,骨盤骨折を認めた。呼吸不全,出血性ショックの状態を呈しており,緊急手術にて横隔膜縫縮術,脾臓摘出術を施行した。術後経過良好だったが,腎機能障害,横紋筋融解症が増悪した。輸液療法にて様子をみていたが,尿量減少を認め,外傷性横紋筋融解症による急性腎不全と判断し,第4病日に腎代替療法を導入した。3週間程度の乏尿期が続いたが,第31病日に透析離脱できた。第52病日にリハビリ目的に転科となった。横紋筋融解症による急性腎不全に対して,早期からの腎代替療法は有効な治療法であると思われる。
著者
権田 紘丈 青葉 太郎 平松 和洋 有元 淳記
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.99-102, 2021-01-31 (Released:2021-08-20)
参考文献数
10

当院は精神科病床を有しておらず,外科的疾患を有する統合失調症患者に関しては他院から紹介となる場合が多い。今回われわれは,2014月1月から2020年1月までに統合失調症で他院精神科入院中に当院一般外科へ紹介となった急性虫垂炎8例の検討を行った。年齢の中央値は56歳で,全例で同日緊急手術となった。開腹手術が6例,腹腔鏡手術が2例であった。7例は壊疽性虫垂炎で,5例に虫垂穿孔を認めた。術後合併症は4例に生じた。統合失調症の症状で当院での入院継続困難となった症例は1例であった。在院日数の中央値は8日で,退院後は全例で紹介元病院へ転院となった。統合失調症を合併した急性虫垂炎症例では虫垂穿孔および術後合併症の頻度が高く,それらのリスクを考慮したうえで周術期管理に臨む必要があると考えられた。
著者
吉田 充彦 当間 雄之 大塚 将之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.593-596, 2020-05-31 (Released:2020-11-30)
参考文献数
16

症例は57歳男性。心房細動に対してワルファリン内服中であった。以前より自慰目的に肛門から直腸内へ約30cmの棒を挿入していた。翌日から下腹部痛を認めたが様子を見ていた。自慰行為2日後の未明に腹痛が増悪したため救急要請し当院救急搬送された。血圧40mmHgとショック状態であったが急速補液で循環の安定を得た。腹部CTを撮影したところ直腸間膜内に血管外漏出像を伴う巨大血腫と多量の血性腹水を認めた。明らかな腹腔内遊離ガスは認めなかったが,問診情報を踏まえ,異物による直腸・直腸間膜損傷および腹腔内出血と診断し,緊急手術を行った。開腹すると直腸間膜に形成された血腫から活動性の出血が確認された。縫合止血は断念し損傷部を含めて直腸・直腸間膜を切除し,人工肛門を造設した。直腸異物によりショックに至る腹腔内出血を起こしうるため,可能性がある場合は適切な問診により診断・治療を進めることが望ましいと考えられた。
著者
高清水 清治 佐藤 勤 菊地 功 提嶋 眞人
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.413-416, 2017-03-31 (Released:2017-07-22)
参考文献数
16

症例は統合失調症で治療中の50歳代,男性。磁石が自分を守ってくれるという妄想があり,1ヵ月にわたり事務用磁石を連日のように摂取していた。腹痛が出現し当院を受診した。腹部全体に圧痛,反跳痛があり,腹部単純X線写真で小腸ガスと磁石の集塊,CTで磁石,腹水貯留,遊離ガスを認めた。小腸穿孔による急性汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した。開腹所見ではTreitz靭帯より40cmの空腸内に計55個の磁石が2群に分かれて存在し3ヵ所に穿孔を認めた。穿孔部を含む小腸を切除した。術後敗血症性ショック,播種性血管内凝固症候群をきたしたが,術後5週間目に軽快し退院した。複数の磁石の異食後にはそれぞれが引き合うために内瘻形成,イレウス,穿孔など多彩な病状を呈する。複数個の磁石が消化管内に滞留していると判明した場合,症状が軽微でも重症化する可能性があるため,早期に手術を行う必要があると考えられた。
著者
山中 崇弘 新木 健一郎 石井 範洋 塚越 真梨子 五十嵐 隆通 渡辺 亮 久保 憲生 大嶋 清宏 桑野 博行 調 憲
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.931-934, 2017-09-30 (Released:2018-02-27)
参考文献数
14
被引用文献数
1

【はじめに】侵襲性クレブシエラ感染症は,Klebsiella pneumoniaeを原因菌とし,肝膿瘍から眼内炎や中枢神経感染症などの転移性感染巣を引き起こす。当科での1例を報告する。【症例】73歳男性。主訴は腰痛,視力低下。精査の結果,肝膿瘍,眼内炎,敗血症の診断で抗菌薬治療を開始,第3病日に肝ドレナージを施行した。培養からKlebsiella pneumoniaeが検出された。転移性感染巣検索では,腰部に椎体炎,硬膜外膿瘍を認めた。転移巣は保存的に軽快し,第52病日に転院となった。【考察】本邦での肝膿瘍を伴う侵襲性クレブシエラ感染症の報告10例では,眼内炎を7例(70%),死亡2例(20%)と危険な病態と考えられた。肝膿瘍,眼内炎という特徴的な所見を認めた際は,侵襲性クレブシエラ感染症を疑い,転移性感染巣を考慮した抗菌薬治療と,外科的治療を含めた集学的治療を行うことが重要である。
著者
田中 健士郎 横山 裕之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.683-686, 2019-05-31 (Released:2020-05-27)
参考文献数
14

高マグネシウム(以下,Mg)血症は,多くが腎機能障害患者へのMg含有製剤の過剰投与が原因とされている。今回,クエン酸Mg(マグコロールP®)服用後に高Mg血症と糞便性腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する。症例は66歳女性。肛門痛と便秘症の精査で注腸検査予定となった。前処置としてクエン酸Mgを内服したところ,意識障害をきたし当院の救急外来へ搬送された。精査で高Mg血症および糞便性の腸閉塞を認め,緊急透析となった。翌日もMg値の再上昇,腸閉塞の悪化を認め,緊急S状結腸人工肛門造設術を施行した。術後,すみやかに血清Mg濃度は正常化した。腎機能障害を有さない患者でもクエン酸Mg製剤投与により重篤な高Mg血症を発症したとの報告がある。重度の高Mg血症は致死的な経過をたどることもあり,その投与に際しては十分な配慮と患者指導を行うとともに,発症時には迅速な対応が重要であると思われた。
著者
山田 岳史 菅 隼人 松本 智司 小泉 岐博 進士 誠一 松田 明久 山岸 杏彌 横山 康行 高橋 吾郎 岩井 琢磨 青木 悠人 町田 幹 内田 英二
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.403-407, 2015-05-31 (Released:2015-09-08)
参考文献数
11

【背景】絞扼性イレウスの本態は消化管の虚血であるため,診断には造影CTが重要であるが,どのような所見が有用であるか明らかではない。【方法】術前に造影CTが施行された壊死性絞扼性イレウス15例と非壊死性絞扼性イレウス25例を対象に造影CT所見を検討した。【結果】70%以上の頻度で認められたものは腸間膜血管の拡張(70.0%),腸管壁の肥厚(72.5%),腸間膜浮腫(80.0%)であった。腹水,腸管壁の造影欠損,Kerckringの不明瞭化,腸間膜混濁は壊死群で有意に高率に認めた。【考察】絞扼性イレウスを造影CTで早期に診断するには,壊死性絞扼性イレウスで多く認められる,腹水や造影欠損よりも腸間膜血管の拡張,腸管壁の肥厚,腸間膜浮腫等の変化を見逃さないことが重要である。
著者
二村 直樹 松友 将純 安村 幹央 立山 健一郎 多羅 尾信 阪本 研一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.73-77, 2004

餅による食餌性イレウスの2例を経験したので報告する. 症例1: 66歳の女性. 主訴は腹痛, 嘔吐で, 腹部に腹膜刺激症状を認めた. 血圧は74/36mmHgと低下していた. CT検査で小腸の拡張と小腸内にhighdensity tumorを認めた. ショックを伴ったイレウスの診断で緊急手術を行った2. 回腸末端より口側30cmの回腸内に白色調の硬い異物を認め, 同部より口側の小腸が拡張していた. 腸切開を行い餅を摘出した. 症例2: 76歳の女性. 主訴は右季肋部痛で腸閉塞の診断で入院した. 入院日に腹部CT検査で胃内と小腸内にhigh density tumorを認め, 上部消化管内視鏡検査で胃内に餅を認めたため, 餅による食餌性イレウスと診断した. 入院翌日の腹部CT検査で胃内の餅は十二指腸へ移動し, 小腸の餅も移動がみられた. 保存的に治療を行い, 軽快した. 餅はCT検査でhigh density tumorとして腸管内に認められ, 餅による食餌性イレウスの診断に有用であると考えられた.
著者
辻本 広紀 平木 修一 木下 学 愛甲 聡 小野 聡 山本 順司 長谷 和生
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.711-715, 2009-07-30 (Released:2009-09-08)
参考文献数
19

sepsisに派生する免疫抑制状態は,時に重篤な多臓器障害を併発するため,それらの病態形成メカニズムの解明やそれに基づいた対策が重要である。そこでsepsisに続発する免疫抑制状態に関して,制御性T細胞(以下,Treg)の役割に着目して,最近の文献および著者らの検討結果を概説した。TregはCD4+CD25+Foxp3+などの特徴を有し,ほかのT細胞の増殖・活性化を強力に抑制すると考えられている。sepsis患者や腹膜炎マウスの末梢血では,Tregの割合が著明に増加しており,この増加がsepsisにおける免疫抑制状態に深く関与しているものと考えられる。抗IL-10抗体や抗TGF-β抗体投与は,腹膜炎マウスで認められるTregの増加を阻害することができ,さらに抗TGF-β抗体投与により予後が改善した。sepsisに派生する重篤な免疫抑制状態に対して免疫学的特徴,特にTregに着目したimmunomodulation therapyは,今後sepsisの救命率向上に向けた新たな治療法となりうるものと考えられる。
著者
山本 澄治 橋本 好平 久保 雅俊 宇高 徹総
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.955-960, 2015-11-30 (Released:2016-03-02)
参考文献数
18

近年,コーラによる胃石の溶解が報告されるようになり治療に応用され始めている。今回,コーラ飲用による溶解が誘因と考えられる,柿胃石による小腸イレウスを2度発症した症例を経験したので報告する。症例は82歳の男性で,3日前より嘔気を自覚し腹痛も認められたため受診した。CTにて食餌性イレウスの診断となり,保存的治療による改善がみられず腸管切除により異物を摘出した。しかし退院20日後に再度食餌性イレウスを発症し,再度腸管切除により異物を摘出した。2回とも先進部に線維性の塊が認められた。胃石の落下を疑いCT画像を再確認したところ,初回時の胃内に2回目の嵌頓物と同様の塊が存在した。胃石を疑った詳細な問診で,5ヵ月前に柿の食事歴があり,悪臭のある口臭が持続するため,初回入院の5日前に初めてコーラを飲用したことが判明した。このことから柿胃石がコーラにより溶解し,腸管内へ異時性に落ち込んだものと考えられた。
著者
柿原 知 佐々木 愼 寺井 恵美 渡辺 俊之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1457-1461, 2014-12-31 (Released:2015-04-02)
参考文献数
14

症例は65歳,男性。間欠的な腹痛と発熱を認め,腹痛が徐々に増悪したため当院救急搬送された。来院時の血液生化学検査で白血球とCRPが上昇しており,腹部造影CT検査でS状結腸に50mm長の緩やかに弯曲する細径の高輝度領域と腸管外ガスを認めた。魚骨によるS状結腸穿孔を疑い,緊急手術を施行した。術中所見ではS状結腸腸間膜側から魚骨が突出しており,後腹膜も一部損傷していた。S状結腸部分切除とS状結腸にて人工肛門造設術(ハルトマン手術)を施行した。摘出した魚骨の長さは57mmであった。誤嚥された異物のほとんどは自然排泄されるため,消化管穿孔や穿通により腹膜炎を発症することや,腹腔内膿瘍を形成する確率はまれであると報告がある。異物の割合は日本人では食生活の影響などから魚骨が50%近くを占める。今回のように50mm超える魚骨が誤嚥の認識なく,穿孔による症状で発見された症例は極めてまれである。
著者
小林 克巳 富沢 直樹 荒川 和久 須納瀬 豊 竹吉 泉
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.631-635, 2013-03-31 (Released:2013-06-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2

中結腸動脈瘤破裂により腹腔内出血をきたした2症例を報告する。症例1は60歳男性。腹痛で救急搬送され,腹部CTで腹腔内出血を認めた。血管造影検査で中結腸動脈瘤からの造影剤漏出があり,緊急手術を行った。腹腔内に多量の血液貯留と横行結腸間膜に巨大な血腫を認めた。中結腸動脈左枝より出血があり,同部を結紮し横行結腸切除術を行った。症例2は55歳女性。上腹部痛で前医を受診中にショックとなり,当院へ緊急搬送された。初期輸液に反応し血圧が上昇したため造影CTを行ったが,その後再びショックとなり,挿管後大動脈遮断バルーンを挿入し,緊急手術となった。出血部位の同定は困難であったが,横行結腸間膜付近が巨大血腫となっており,中結腸動脈根部を結紮し結腸間膜を左半結腸とともに切除した。2症例とも病理組織検査で,中結腸動脈の内弾性板の破壊と解離があり,周囲に血腫を伴っていたため,SAMによる動脈瘤破裂と診断し得た。
著者
篠崎 由賀里 隅 健次 山地 康大郎 田中 聡也 佐藤 清治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1159-1162, 2014

水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
著者
黒田 純 西田 清孝 大城 幸雄 丸山 常彦 島崎 二郎 下田 貢 鈴木 修司
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.71-74, 2021-01-31 (Released:2021-08-20)
参考文献数
7

水上バイクからの転落事故による小腸穿孔の1例を経験したので報告する。症例は28歳男性で,水上バイクの後部座席から転落し近医に救急搬送された。左大腿骨頸部骨折と診断され,前医入院となった。受傷から2日後に腹痛を訴え,消化管穿孔の疑いで当院へ転院搬送された。CT検査で腹腔内遊離ガスを認め,消化管穿孔と診断した。緊急手術施行し,損傷部位を含め小腸部分切除後端々吻合で再建し,腹腔内洗浄した。同日整形外科により大腿骨頭挿入術も行われた。術後は保存的治療を継続し,13日目には整形外科に転科した。水上バイクからの転落は,全身打撲とジェット水流による衝撃のため,高エネルギー外傷として扱う必要がある。とくに,経時的な全身観察を続けることで,遅発性の臓器損傷の早期発見につながり,治療予後の改善にかかわると考え,若干の文献的考察を含め報告した。
著者
加藤 洋介 尾山 佳永子 村杉 桂子 奥田 俊之 太田 尚宏 原 拓央
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 = Journal of abdominal emergency medicine (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.923-926, 2013-07-31
参考文献数
13

要旨:右胃大網動脈を用いた冠状動脈バイパス術既往歴がある急性胆嚢炎を2例経験した。症例1は70歳男性。無石胆嚢炎穿孔による胆汁性腹膜炎と診断。造影CT検査でグラフト血管の走行を確認し,緊急開腹手術を施行した。症例2は72歳男性。急性胆嚢炎(中等症)と診断し,保存療法を行った。血管再構成3D-CT検査でグラフト血管の走行を確認し,待機的に腹腔鏡手術を施行した。いずれも術中にグラフト血管を損傷なく確認し,合併症なく退院した。開腹,腹腔鏡下いずれの術式においても胆嚢摘出術を施行可能であったが,低侵襲性と,安全にグラフト血管を確認し得る点から,腹腔鏡手術の利点は大きいと思われた。右胃大網動脈によるバイパス術既往歴がある急性胆嚢炎に対しては,でき得る限り緊急手術を避け,十分な術前計画のもとに手術を施行することで,より安全性が担保されるものと思われた。
著者
村上 真 森川 充洋 小練 研司 廣野 靖夫 五井 孝憲 飯田 敦 片山 寛次 山口 明夫
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.8, pp.1237-1243, 2013-12-31 (Released:2014-07-02)
参考文献数
20

消化器外科手術において汎発性腹膜炎などの創分類classⅢ以上の症例ではSSIは依然高値である。今回,消化管穿孔による汎発性腹膜炎手術でのincisional SSI(以下,I-SSI)予防に持続吸引皮下ドレーンが有用かをretrospective検討した。2006年4月から2011年12月までの期間で,上部消化管を除く消化管穿孔例97例を対象に,持続吸引タイプ皮下ドレーンの有無でI-SSIの発生率を比較した。全体における皮下ドレーン留置群のI-SSIは12.9%で,非留置群の37.9%と比較し有意(p=0.0097)に低率であった。特に大腸穿孔でI-SSIが54.5%から7.1%まで低下した。皮下ドレーンは,使用症例を創分類Ⅲ以上の汚染手術とし,ドレナージチューブの抜去時期,効果的な留置に留意すれば,I-SSIの予防に有効な手段である。