著者
迎山 和司 川又 康平 小林 真幸 川嶋 稔夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1787-1794, 2014-08-15

プロジェクションマッピング(PJM)とは立体構造物の形に沿って,コンピュータで処理された映像をプロジェクタで投影する表現手法である.近年フェスティバルなどでPJMはさかんに行われており,対象を直接改変しないので歴史的文化財などに有用である.本論文では,函館市内の歴史建造物に対して実施されたPJMを事例としてあげて,これから実施する人が参考にできる事項をまとめた.加えて,集客効果の高いイベントを実施して得られた公立大学の地域貢献についての知見を述べる.
著者
加藤 利康 石川 孝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1918-1930, 2014-08-15

本論文は,オンライン環境のある教室でのプログラミング演習のためのWebベースの授業支援システムにおいて,机間巡回では把握が困難なクラス全体と問題のある学生の学習状況を教員が随時に把握できるようにする学習状況把握機能の実現を目的とする.この実現の方法は,演習課題の配布,解答プログラムの作成,コンパイル,実行,および解答の提出を行える授業支援システムを基礎として,プログラミング演習における学習状況把握に対する要求分析と先行研究の調査に基づいて,機能の設計と評価を行う.クラス全体に対する機能は,教員があらかじめ用意した模範解答プログラムに基づく正解判定による解答開始から解答提出までの作業進度集計と,模範解答プログラムを基準としたコンパイルエラー行の同定によるエラー分類集計である.これらの機能は,コンソール出力を行うJavaプログラミングの課題に対して,十分な精度で適用が可能である.問題のある学生に対する機能は,作業進度の外れ値分析による作業が遅れている学生の検出と,該当学生の作業履歴の提示である.検出機能は,外れ値の基準値を教員が適切に設定することによって,対処可能な程度に問題のある学生を絞り込むことが可能である.これら2種類の学習状況把握機能を付加した授業支援システムは,実際の演習授業において,システムが提示する情報に基づく学習指導が全指導件数の約半数観察されたことから,プログラミング演習における学習状況把握に有効である.本論文で実現した学習状況把握機能は,教員が模範解答プログラムを用意することで,クラス全体の作業進度とエラー分類を提示し,また,作業が遅れている学生を検出してその作業履歴を提示することによって,机間巡回では把握が困難な学習状況を教員が随時に把握することを可能にする.
著者
神山 剛 稲村 浩 太田 賢
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1866-1875, 2014-08-15

Androidアプリケーションの実利用環境において利用可能なアプリ消費電力の評価手法を提案する.本手法は,スマートフォンを構成する各ハードウェアコンポーネントの特性と消費電力の関係から生成した端末の消費電力モデルを用いることで,アプリ消費電力の推定を可能にする.本論文では,近年の端末の消費電力を妥当な精度で推定できること,推定に必要なログ収集の負荷が低いことを要件とした評価手法を実現するため,マルチコアCPUやモバイル無線インタフェースとその特徴を考慮したモデル拡張を行う.提案本手法において,一般的なアプリ利用のシナリオを対象に10%前後の誤差で電力推定できること,3.8%程度の低いオーバヘッドでログ収集が実現できることを確認した.
著者
長友 健太郎 西村 竜一 小松 久美子 黒田 由香 李晃伸 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
電子情報通信学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.2884-2893, 2002-09-15
参考文献数
15
被引用文献数
23

高精度な言語モデルの融合手法として,相補的バックオフアルゴリズムに基づく融合アルゴリズムを提案するとともに,それを用いた言語モデルの融合ツールを構築した.N-gram言語モデルは,学習元のコーパスの話題や知識,語調や発話様式などの特徴を反映する.そのため,タスクごとの特徴を反映した複数の言語モデルを融合することで,より多様な入力に対処できるモデルを構築できる.この言語モデルの融合において,既存の融合手法では,モデルの持つ特性が損なわれるためタスクに対する特徴がぼやけてしまう.また,従来手法である学習元コーパスの単純な結合および再学習による融合を行うためには,学習元のコーパス自体が必要になる.これに対して,他方のモデルには現れない未観測N-gramの生起確率を他方のモデルから相互に推定する高精度な相補的バックオフアルゴリズムを提案する.さらに本手法を用いて,学習元コーパスが不要で利便性の高い言語モデル融合ツールを構築した.実際に医療相談,グルメ・レシピ検索および新聞記事の各タスクの言語モデルを融合し,それらを評価した結果,各モデルの特性をなるべく保存しながら,コーパス結合モデルと比較しても精度が劣化しないモデルを得ることができた.A new complemental back-off algorithm for merging two N-gram languagemodels is proposed. By merging several topic-dependent orstyle-dependent models, we can construct a general model that coverswider range of topics easily. However, a conventional method thatsimply concatenates the training corpora or interpolating eachprobabilities often levels off the task-dependent characteristics in each languagemodels, and weaken the linguistic constraint in total. We propose anew back-off scheme that assigns the unseen N-gram probabilitiesaccording to the probabilities of the another model. It can assignmore reliable probabilities to the unseen N-grams, and no originalcorpora is needed for the merging. We implemented a command tool thatrealizes this method, and evaluated it on three recognition tasks(medical consulting, food recipe query and newspaper article). The results reveal that our merged model can keep the same accuracy of each original one.
著者
洲崎 誠一 松本 勉
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.2381-2393, 2002-08-15
参考文献数
18
被引用文献数
17

インターネットのビジネス利用が進むなかで,電子署名技術の重要性が高まっている.電子署名技術は,あるエンティティの電子署名を生成できるのが署名生成鍵を知っている本人だけであるという仮定に基づいている.しかし,署名生成鍵の物理的な盗難や暗号解読技術の進展などといったさまざまな要因によってこのような仮定が成り立たなくなる恐れもある(我々はこれを暗号ブレイクと呼ぶ).そのような環境下では,不正者は他エンティティの電子署名を容易に偽造することが可能となるため,電子署名技術に期待される相手確認機能や改ざん検知機能が適正に働かなくなってしまう.このような課題に対し,従来よりいくつかの対策技術が提案されているが,それらは我々が想定する暗号ブレイクのすべてをカバーするものではない.そこで,我々は,暗号ブレイクに対処可能な「電子署名アリバイ実現機構」を提案する.本電子署名アリバイ実現機構を利用することにより,各エンティティは,自分が生成した覚えのない電子署名付きメッセージを提示された場合においても,当該電子署名付きメッセージを生成していないこと,すなわち「電子署名アリバイ」を調停者などに証明することができる.本稿では,電子署名アリバイ実現機構の基本的な考え方を示すとともに,その証拠性を高めるために我々が採用した「ヒステリシス署名」と「履歴交差」と呼ぶ2つのコンセプト,ならびにその具体的な実現例について述べる.Recently, there is a remarkable tendency oriented toward using electronic signature technology for business. In the electronic signature technology, it is assumed that only the person in question can use a private key of each entity. However, such assumption might not consist of various factors such as the theft of a private key and the progress of various technologies. In such a situation, the attacker can easily forge an electronic signature of another entity. Then, we propose ``Alibi establishment mechanism for electronic signatures''. We can distinguish valid signature and forged one with the signature log file, which is stored safely in a tamper resistant module. We also propose two technologies, ``Hysteresis signature'' and ``Signature history intercrossing'' to be strengthened the evidence of the signature log file.
著者
松田 秀雄 宮腰 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.560-569, 1992-04-15
被引用文献数
1

論理式を分離加法形式で表現すると 一般の加法形式に比べ項の数が増えるが 式に含まれる最小項の数が算出できるので トートロジィや論理式同士の包含関係の判定が容易となり また 文理値表濃度対関数の諸性質を調べるのに好都合であるほかにも 項の分離性を使ったPLAの検査容易化設計法への応用なども考えられ 重要な表現形式である本論文では分離加法形式を求める一手法(MA法と略)を提案し はじめに他の木形アルゴリズムであるCHANの方法(DT法)および笹尾の方法(SAS法)と比較している最小項で生成した二値入カニ値関数(12変数)の場合 DT法によって求めた分離加法形式の項数を基準にして SAS法で求めた結果では18%も増加し MA法では12%も項数の少ない分離加法形式が得られるMA法ではこのように精度が良い反面 SAS法 DT法に比べ数倍計算時間がかかるしかし これは関数の項数が多いからであって 数百個以下に限定するなら 多変数で MA法のほうがDT法より早くなるこの点に注目すると DT法 SAS法とMA法とを組み合わせて 計算速度をあまり落とさずに 精度を高める手法が考えられる次にこれらのDT-MA法 SAS-MA法の検討結果が与えられるさらに 四値入力二値関数のいくつかの計算例で 特に DT-MA法が多変数のとき 精度 計算時間両面からみて 優れていることを示す相当多変数の関数の真理値表濃度も計算できることが併せて示してある
著者
下平 丕作士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.2046-2053, 1994-10-15
被引用文献数
5

誤差逆伝播法は、多層前向きニューラルネットワークの学習に広く用いられている。しかし、誤差逆伝播法については、解が収束するのに要する時間が長く、解が収束しない場合があるという学習性能上の問題点がある。誤差逆伝播法の学習性能は重みの初期値に敏感であり、適切な重みの初期値を設定することにより、学習性能を向上させることができる。本諭文では、ノードにおける惰報伝達機溝を表す式に基づいて、適切な大きさの重みの初期値を設定する薪しい方法(OIVS法:Optimal Initial Value Setting Method)を提案している。数値実験によると、OIVS法は従来法にくらべて、解が安定して得られ、収束するのに要する反復回数が少なく、学習性能が著しく優れていることが分かった。たとえば、ランダム写像問題については、それぞれの方法で最も良い学習性能が得られた場含を比較すると、OIVS法は従来法に比べて、解が収束するのに要した反復回数の平均値は0.26借、標準偏差は0.039倍となっている。OIVS法の特徴は、問題(入力次元数)に応じて適切な大きさの重みの初期値を設定できること、アルゴリズムがきわめて簡単であること、ノードごとに局所的な計算で設定できることである。
著者
黒住 祥祐
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.12, pp.2482-2488, 1993-12-15
被引用文献数
2

多数の点が与えられるとき、それらを曲線で近似する方法にミニマックス近似がある。ミニマックス近似は点から曲線までの距離の最大値を最小にする近似である。距離にはY軸方向の距離と点から曲線までの垂線長(ユークリッド距離)がある。任意の関数が与えられたとき、多項式によりY軸方向の距離のミニマックス近似を行う方法に最良近似がある。まず、最良近似の定義と解法について説明する。次に与えられた点と任意の曲線とのユークリッド距離によるミニマックス曲線近似を定義する。線分と円のミニマックス近似では、すでに解法があり、それらの成果からミニマックス近似の幾つかの性質について説明する。ミニマックス近似を任意の曲線に拡張するために、特性点と特性曲線を導入し特性法とよぷアルゴリズムを提案する。特性法は7個のパラメータをもつ曲線に対し、距離の大きい順にr+1個の特性点を選び、特性点からの距離を小さくかつ等しくする数値計算法である。さらに、本方式の収束条件や処理時間について検討し、実際の計算例を示す。最後に、問題点や改良点を述べ、本方式の有用性について言及する。
著者
城塚音也 桑田 喜隆 安地亮一 小泉 宣夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1240-1247, 1998-05-15
参考文献数
7
被引用文献数
6

計算機が人間同士の音声対話を理解し,リアルタイムに対話の支援を行う,知的なComputer Mediated Communication (CMC)を提案する.提案するCMCは,人間同士のコミュニケーションと人間?計算機のインタラクションをシームレスに連結することにより,人間の知的活動を促進する.その実現例として,金融相談端末上の相談業務における音声対話を知的に支援する実験システムを構築した.システムは対話中のキーフレーズを音声認識することにより対話の内容を推定し,支援ルールによって支援計画を立案し,支援内容の作成を行う.作成された支援情報は相談員に提示され,相談業務の円滑化を促進する.システムの自律的な対話支援のコンセプトの評価実験および,対話モニタリングによる対話支援性能の評価実験について報告し,実験結果について考察する.An Intelligent Computer Mediated Communication(CMC) is proposed which enables computers to provide support information to people who are in conversation by monitoring their spoken dialogue.An experimental system for the support of pension consulting service was built in order to investigate proposed CMC system.The system estimates the topic of the dialogue from detected key phrases by speech recognition technology and designs support information with assist rules.The efficiency of the consulting service can be improved by the support information which is presented automatically by the system.The concept of Intelligent CMC was evaluated by the reference indication to human-human dialogue andhe performance of the generating support information function was measured by several experimental conditions.The experimental results are discussed.
著者
大和 正武 門田暁人 高田 義広 松本 健一 鳥居 宏次
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.613-622, 1999-02-15
被引用文献数
19

本稿では 視線によるテキストウィンドウの自動スクロール方式を提案し 提案方式による自動スクロールが可能なテキストブラウザを用いた評価実験の結果について述べる. 従来の視線を入力とするインタフェースでは 視線情報をポインティングデバイスの代替として利用しており メニューやアイコンの選択のために一時的にではあるが作業対象から視線を外す必要があった. これに対して提案する方式では ウィンドウ内での視線の移動に着目する. 作業者はウィンドウ内で視線を移動させるだけで 表示したいテキスト部分をウィンドウ中央部に移動させ 表示させた状態でスクロールを停止させることができる. 評価実験の結果から テキストのスクロールにより文字列を検索するという作業(タスク)においては 視線による自動スクロールはキーボード操作によるスクロールと比較して同程度かそれ以上に有効であることが分かった. この場合 ウィンドウ中央から注視点までの垂直方向の距離をスクロール速度に比例させる制御方式が 他の方式に比べ優れていることが確認できた.This paper proposes a method and implementation for a system to automatically scroll a text window by tracking where a user is looking at. A user of the system can access a portion of the displayed document without using keyboard or mouse. Existing eye-tracking methods, which use eye-gaze as a substitute for pointing devices, require a user to "look at" menus and icons to manipulate a window display. In contrast, our proposed method uses eye movement within a window to control its display. A position of a user's gaze within a text window determines how to scroll the window, what portion of the text to display, and where to stop. Our user study demonstrates that the effectives of scrolling using this method is as good as one with convetional keyboard control as respects string search by scrolling. In particular, we have found that a controlling mechanism to determine the speed of scrolling in terms of the distance of the gaze point from the center of the window was both qualitatively and quantitatively superior to other control mechanisms in the string search by scrolling.
著者
菅沼 拓夫 藤田 茂 菅原 研次 木下 哲男 白鳥 則郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.1214-1224, 1997-06-15
参考文献数
8
被引用文献数
50

本論文では,やわらかいネットワークの概念に基づくやわらかいビデオ会議システムの機能を提案し,その試作を通して,提案した機能を評価する.やわらかいビデオ会議システムは,家庭やオフィス等で用いられる小形コンピュータやインターネット/LAN等の,必ずしも資源が十分でない環境下において,一般利用者によるビデオ会議の利用時の負担を軽減することを目的としている.そこで,やわらかいビデオ会議システムは,1)利用者要求および計算機資源の状況に応じたシステムの自律的構成,2)会議中のQoSの自律的調整,および,3)システムの自律的再構成の機能を持つ.これらの機能を評価するために,マルチエージェント指向アーキテクチャを採用したやわらかいビデオ会議システムのプロトタイプを試作し,実験を行った.その結果,エージェント間の協調動作により,やわらかい機能が実現可能であることが確認され,提案した機能の有効性が検証された.In this paper,we propose the functions of a flexible videoconference system based on the concept of flexible network and evaluate the proposed functions by implementing a prototype of the flexible videoconference system.The flexible videoconference system aims to reduce the burden of the users under the operational environment with insufficient computational resources such as an internet/LAN environment with the small-scale computers at home and offices. To do so,the flexible videoconference system has the following three functions.i,e.,1)autonomous system generation based on both the users' requirements and the resource conditions,2)autonomous control of the QoS,and 3)autonomous system reconfiguration.To evaluate the proposed functions,we design and implement a prototype of the flexible videoconference system based on an agent-based architecture.According to an experiment on this prototype,we show that the proposed fuctions can be realized by the cooperation of various agents of the prototype,and the proposed functions can help the users effectively.
著者
岸田 崇志 前田 香織 河野英太郎 近堂徹 相原玲ニ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.517-225, 2004-02-15
被引用文献数
5

広帯域ネットワークやQoS保証のあるネットワークなど多様なネットワークが利用できるようになり,狭帯域ネットワークでは難しかったリアルタイム性の高い,また信頼性の高い音声伝送の実現が可能になってきた.そして,より品質の高い音声伝送への要求も高まっている.こうした変化にあわせ,音声伝送の利用場面も多岐にわたり,各場面で音声伝送システムに要求される条件も様々に異なる.本論文では,広帯域ネットワークで利用される様々な音声伝送場面をリアルタイム性,ロバスト性などの観点から分類した.これに基づき,各場面で要求度の高いパラメータを調整することにより,あらゆる利用場面に対応できる多目的な音声伝送システム``MRAT(Multipurpose RAT)''の設計と開発を行った.MRATは音声会議システムの1つであるRAT(Robust Audio Tool)を広帯域ネットワーク上で使用することを想定して拡張し,低遅延音声伝送機能やReed-Solomon符号を用いたFECによるエラー回復機構などを実装している.MRATの評価としてはエンド--エンド間の低遅延化とロバスト性向上の検証を行い,その有用性を示す.また,MRATの実証実験として1年間にわたって行った多地点での遠隔合唱や遠隔講義などについて記述し,多様な場面での実用性を示す.It is becoming easy to use various networks such as broadband networks and QoS guaranteed networks.Also, it is possible to realize high robustness and high real-time audio transmission.Moreover, high quality audio transmission is required.The most required condition for audio transmission differs depending on various scenes.In our study, we classify conditions of audio communications required in various situations from the viewpoints like real-time and robustness and design a multipurpose audio transmission system called as ``MRAT (Multipurpose RAT)''.We enhance RAT (Robust Audio Tool) that is one of audio communication tools, and add two new options. One is to keep shorter delays between end-nodes.Another is an error recovery using a Forward Error Correction with Reed-Solomon code to recover packet losses.By using these options, MRAT has three modes; a Chorus mode, a Conversation mode, and a Broadcast mode.Therefore, MRAT can correspond to various scenes.We show some evaluations of MRAT like measurements of end-to-end delays and effects of an error recovery.We also show practicality of MRAT by practical experiments such as distance chorus at multi-locations and distance lectures.
著者
古山 恒夫 菊地 奈穂美 安田 守 鶴保征城
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2608-2619, 2007-08-15

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC)では,国内のソフトウェアベンダのエンタプライズ系ソフトウェア開発に関するプロジェクトデータを収集している.このデータに含まれる,コスト・納期・品質それぞれに関するプロジェクト遂行の成否を示すデータに着目し,それらと規模や工数などの量的データやさまざまなプロジェクト特性を示す質的データとの関係を分析することにより,次のようなプロジェクトを計画どおりに遂行できなかった要因,すなわちコスト超過・納期遅延・品質低下を起こす要因を明らかにした.(1) プロジェクト規模そのものが大きく,特に工期あたりの規模が大きいプロジェクトはコスト超過を起こす割合が高く,(2) 要求仕様があいまいなプロジェクトは納期遅延や品質低下を起こす割合が高い.一方,(3) 事前に工期の妥当性を評価したプロジェクトでは納期遅延を起こす割合が低く,(4) 業務分野の経験者を揃えたプロジェクトでは納期遅延や品質低下を起こす割合が低く,(5) テスト体制を整備したプロジェクトでは,コスト超過・納期遅延・品質低下を起こす割合が低い.
著者
硴崎賢一 上原 邦昭 豊田 順一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.347-356, 1989-03-15

本論文では 研究開発や実用的なシステムの構築に適した 高速で利用しやすいPROLOG処理系の実現方式とその評価について述べる.開発した処理系では インタプリタによって実行される述語とコンパイルされ機械語によって直接実行される述語を混在して実行することができる.また 処理系が稼動している状態で プログラムのコンパイルとリンクを述語単位で順次行うことができるインクリメンタル・コンパイル機能を実現している.これらの機能は 述語間の相互呼び出しを管理するディスパッチャと呼ぶ機構によって実現されている.さらに DEC-10 PROLOGなどで問題となっていた コンパイラとインタプリタの単一化のセマンティックスの相異を解消することができる仮想PROLOGマシンの命令セットを提案している.この命令セットは 従来の最適化方式のほかにリスト処理に対する最適化方式を導入しており 高速なコンパイルドコードを生成できるという特徴を持っている.コンパイルドコードは この命令セットを中間コードとして利用し 最適化を施した後にターゲットマシンの機械語に変換して生成している.本処理系はUNIXワークステーション上に実現されており 同じデータ表現法である構造共有法を採用したPROLOGマシン比較して 約2.5倍の85K LIPSの性能が得られている.
著者
池原 悟 白井 諭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.298-305, 1984-03-15
被引用文献数
15

日本文に含まれる誤字を対象に誤字検出実験と訂正候補抽出実験を行い 誤字の自動検出訂正の可能性を明らかにした.誤字検出実験では 正しい文章の解析のために作成した単語解析プログラムを誤字検出を目的とする日本文チェッカとして使用した結果 68%の誤字検出率を得たが 検出不能の誤字例を分析した結果 文節解析レベルのチェック機構の拡充と構文解析レベルのチェック機構の導入で 誤字検出率はそれぞれ89 93%に向上する見込みを得た.訂正候補の抽出では 誤字検出実験で検出した誤字に対して二次マルコフモデルを適用し 誤字の前後の文字からみて接続確率の高い文字を候捕文字として抽出した.また 誤字検出での検出特性に着目して正解文字の字種を確率的に推定することにより 抽出した候補文字の正解含有率の向上を図った.誤字検出実験では誤りを検出したとき 誤りの位置を正確に知ることは困難で 誤りを含む文字区間とその区間内の文字の誤り確率が与えられる.そこで 訂正候補の抽出では 誤りの検出された区間に対して訂正文字列候補を抽出した.その結果 抽出された訂正文字列候捕は上位15位までで約60%の正解含有率をもつこと 誤りの位置が正確にわかれば 正解含有率は10?25%向上することなどがわかった.これらの結果は 漢字OCRの誤読文字 リジェクト文字の救済等に応用できるものと期待される.
著者
小久保 卓 小山 聡 山田 晃弘 北村 泰彦 石田 亨
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1804-1813, 2002-06-15
被引用文献数
6

いまやインターネットは現代社会の中に急速に浸透しており,そのサービスの中でも特にWWW(World Wide Web)は新しいメディアとしてその情報量を増大させている.しかしながら最も一般的なWWW情報検索手法である検索エンジンは,必要な情報を得るためにある程度の知識や経験が必要とされ,多くの初心者にとって使いこなすのは容易ではない.こうしたWWW情報検索における問題の解決法の1つとして,ドメインを限定した専門検索エンジンの提供があげられている.そこで本論文では専門検索エンジンを構築するための新しい手法として``検索隠し味''を用いた手法を提案する.これはユーザの入力クエリに対しある特定のキーワードを追加すると,汎用検索エンジンの出力のほとんどがドメインに関係するWebページとなるという経験則を利用したものである.そして機械学習の一種である決定木学習アルゴリズムを元にWebページ集合からキーワードのブール式の選言標準形として検索隠し味を抽出するアルゴリズムを開発した.さらに本手法を料理レシピ検索に適用し評価実験を行うことで,その有効性の確認を行った.The WWW technology has come into wide use in our society as an infrastructure that supports our daily life. But gathering information from the WWW is a difficult task for a novice user even if he uses the search engines that are most widely used tool to retrieve information from the WWW. Because the user must have experience and skill to find the relevant pages from the large number of documents returned, which often cover a wide variety of topics. One solution to the problem is to build a domain-specific search engine. So this paper presents a new method that improves search performance by adding the domain-specific keywords, called keyword spices, to the user's input query; the modified query is then forwarded to a general-purpose search engine. We describe a machine learning algorithm, which is a type of decision-tree learning algorithm, that can extract keyword spices as a disjunctive normal form of keywords from Web documents. To demonstrate the value of the keyword spices, we conducted experiments in the cooking domain and the results showed the high performance.
著者
高嶋 和毅 大森慈子 吉本 良治 伊藤雄一 北村 喜文 岸野 文郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.3811-3820, 2008-12-15

キャラクタの瞬目率を制御することによってキャラクタの魅力や心理状態の表現を操作する手法を検討し,キャラクタの瞬目アニメーションに関する設計指針を提案する.本研究では,2つのキャラクタ印象評定実験を行った.実験1では,刺激に中程度のリアリティを持つキャラクタモデル(男女2体ずつ計4体)を用い,瞬目率を9,12,18,24,36 blinks/minと変化させた場合の観察者の印象をSD法により評価した.実験2では,カートゥーンキャラクタモデル(男女,動物,未知の生物を各2体ずつ計4体)を用いて同様の実験を行った.これらの結果,18 blinks/minの瞬目率が最も親近性のあるキャラクタであると判断され,この傾向は人型キャラクタにおいて顕著であった.また,36 blinks/minなどの高頻度の瞬目を行うキャラクタは活発でない印象を与え,9 blinks/minといった低頻度の瞬目では知的な印象を与えることなどが分かった.The purpose of this study is to establish guidelines for managing the attractiveness of a character by changing the rate of the character's blinking. We conducted experiments to investigate the effect of the character's blink rate on a viewer's personal impression. The stimulus characters, humans with generic reality (male and female), cartoon-style humans (male and female), animals, and unidentified life forms, were presented as a 20-second animation with various blink rates: 9, 12, 18, 24 and 36 blinks/min. Subjects rated impressions of the presented stimulus character on a seven-point semantic differential scale. Results showed a significant effect of the character's blinking on viewer's impressions, and it was larger with the human-style character than the others. The results also lead to several implications and guidelines for the design of character representation. The blink animation of 18 blinks/min with a humanstyle character can produce the friendliest impression. The higher blink rates, i.e. 36 blinks/min, give inactive impressions while the lower blink rates, i.e., 9 blinks/min, give intelligent impressions.
著者
井上 倫夫 小林 康浩 加納 尚之 井上 公明
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.645-651, 1992-05-15
被引用文献数
16

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は 知覚 感覚は保たれているものの 運動神経が次々に麻痺していく難病である患者の意識は明瞭であるにもかかわらず 末期においては自らの意志を第三者に伝えることがほとんど不可脂な状態となるそこで 患者の要望事項を医師や看護婦 看護人に伝達できるようなツールを開発することが切望されている本報告は このようなALS愚者向けのコミュニケーション・エイド(CA)に関するものである開発の主眼は 患者の貧弱な運動能力でも簡単な操作で文章作成ができるようにすることであるこのCAでは 患者が2文字を入力すれば それを「見出し」とする9例の文節が画面の右側に提示され 患者はその中から所望の文節を選択する仕組みになっている各文節を漢字仮名混じりで登録しておけば これらの文節の選択によって結果的に"かな"-漢字変換を行ったことになる作成された文章は 漢字仮名混じり文となり第3者にとっても読みやすいものとなるまた 全文を"ひらがな"で入力する必要がなく スイッチ操作回数と文章作成時間の双方とも減少させることができ 患者の労力負担を軽減することができる
著者
大槻知史 齋藤 直樹 中井 満 下平 博 嵯峨山 茂樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.245-255, 2002-02-15
被引用文献数
12

本稿では,隠れマルコフモデル(HMM)を用いて,人間が鍵盤入力した演奏情報(標準MIDIファイル)の発音時刻の間隔から,意図された音価列を復元推定する手法を提案し,実験によりその効果を実証する.人間が音楽演奏する際の物理的音長は,音価に対応する正規の長さから意識的・無意識的に揺らぐため,楽譜入力や自動採譜などでは,楽譜として意図された各音符の音価を正しく推定するのは容易ではない.そこで,連続音声認識の定式化にならって,音楽的な演奏を学習・認識する原理をHMMの手法を用いてモデル化する.さらに,同様の原理により小節線・拍子推定,テンポ変化推定も可能となることを示す.This paper proposes the use of Hidden Markov Model (HMM) for rhythmrecognition from musical performance recorded in the standard MIDIfile format. Intentionally or unintentionally, physical durations ofmusical notes in human performances often fluctuate from nominallengths of the intended notes. Estimating intended note sequences is,therefore, not trivial for computers. In this paper, we formulate theprocess of understanding and recognizing musical rhythm patterns usingHMM similarly to continuous speech recognition (CSR). It is shownthat the same principle enables bar line allocation, beat recognition,and tempo estimation.
著者
王 卉歓 中谷 直司 小池 竜一 厚井 裕司 朴 美娘
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.3125-3136, 2007-09-15
参考文献数
24

近年スパムによる被害に対抗するため,ベイズ学習アルゴリズムを用いたスパムフィルタが注目されている.また,同様にメールを媒介として多くの被害をもたらすコンピュータウイルスにおいても,既存の手法では対応困難な未知ウイルスに対し,ベイズ学習アルゴリズムを用いたウイルスフィルタの研究が行われている.しかし,ベイズ理論に基づくウイルスフィルタに関する研究は,十分な検討が行われたとはいえない状況である.そこで本論文では,現在スパムフィルタとして広く用いられているPaul Graham 方式,Gary Robinson 方式,naive 方式の3 種類のベイズ方式を用いたスパムおよびウイルスフィルタとしての性能に関する考察と,メールに対しスパム検出と同時にウイルス検出を行ううえで実装コストの面で有利になる,スパムとウイルス両方のフィルタで高い性能を示す新しいベイズ方式の提案を行う.実験により提案方式は従来方式によるベイジアンフィルタよりも,同等あるいはより低い誤検出率を維持したまま,より高い検出率をスパムとウイルス両方において実現可能であることが示された.The spam filter that used Bayes learning algorithm was paid attention in recent years as the countermeasure for damages of spam. In computer virus that causes a lot of damage through the medium of mail, the existing technique is difficult to take the countermeasure against the unknown virus. Some researches including us have studied and developed the virus filter that use the Bayes learning algorithm. But it seems that the enough research has been not done until now. In this paper, we compare the performance of spam filters and virus filters that use Paul Graham method, Gary Robinson method, naive method which have previously shown a good performance and widely have been used as spam filter. We also propose the new Bayes method that shows best performance of both spam filter and virus filter. It has advantage that we can detect a number of virus and spam mails at the same time in respect of the mounting cost. As the result, it is possible that the proposed method outperforms three original methods in exterminating both spam and virus with the same or lower false detection rate.