著者
冨浦洋一 日高達 吉田 将
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.42-49, 1991-01-15
被引用文献数
5

本格的な意味処理を行うためには 単語の意味に関する知識が必要であることは言うまでもないその中で 語彙間の上位-下位関係は 最も基本的な知識の1つである本研究では 動詞間の上位-下位関係を国語辞典から抽出する手法を開発することを目的とする動詞は第一階述語論理ではn項述語に対応するまた 動詞は一般に多義であり 語義が異なれば 上位-下位関係にある動詞も異なるそこで 動詞をその語義ごとに述語に対応させ 動詞間の上位-下位関係を述語間の関係として捉えるしたがって 動詞間の上位-下位関係の抽出では 単に見出し動詞と上位-下位関係にある動詞(定義動詞)を抽出するだけでなく 定義動詞の語義の選択 および 見出し動詞と定義動詞の変数の対応も考慮しなければならない本稿では まず (1)動詞間の上位-下位関係を論理的に定義し (2)見出し動詞とその語義文の論理的関係 および 語義文の統語構造と論理的性質について述べ (3)動詞間の上位-下位関係を示す情報は語義文の統語構造中のどこに現れるかについて述べるさらに (4)定義動詞の語義 および 見出し動詞との変数の対応を適切に選択するための必要条件とヒューりスティックについて述べ 最後に (5)抽出結果について述べる
著者
外村元伸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.861-869, 1990-06-15
被引用文献数
1

コンピュータ・グラフィックスの急激な発展によって ますます 32ないし64ビットの浮動小数点演算が要求されるようになってきた.このように処理桁数が増加してくると 桁上げ伝播による遅延が問題になり これを解決するために桁上げ伝播のない演算器が注目されている.そして{-1,0 +1}で表現する冗長2進加算器の利用は 従来の桁上げ保存加算器などで構成するよりもすぐれた規則性をもち 加減乗除 開平などの高速演算アルゴリズムが導出できることが最近わかってきた.本報告では 特に冗長2進数表現を利用した乗算方式についてわかってきた最近の成果をもとにして多項式計算などのように繰り返して乗算する方式に応用することについて述べる.すなわち 従来の乗算器が主として桁上げ保存加算器を利用していたために せいぜい2次の Booth アルゴリズムにしか適していなかったが 冗長2進加算器を利用すると 4次の Booth アルゴリズム相当のものが実現でき Booth アルゴリズムと相性がよいことに注目する.そして 繰返し乗算においても 演算の途中で桁上げ伝播の発生する通常の2進数に変換することなく冗長2進数体系で一貫高速に演算できるようにするため 新たに冗長2進数のままリコードする冗長2進数リコータとその諭理回路化方式を提案する.性能評価の結果 本提案方式によれば従来よりも 15?34% 程度改善できる見通しが得られた.
著者
浦本 直彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.12, pp.2182-2189, 1996-12-15
被引用文献数
11

本論文では コーパスに基づくシソーラスを構築するための基礎として 既存の中規模のシソーラスとコーパスを用いて シソーラスを拡張する手法について述べる. シソーラス上にない単語に対して その単語がシソーラスのどの部分に配置される可能性が高いかをコーパスから抽出した統計情報を用いて決定する. シソーラスの分類基準(視点)を自動的に獲得することで 効率良く単語の位置を推定することが可能である. これらの知識を用いて 拡張されたシソーラス上での位置 上位語 単語間の類似度などを計算する関数群を提供するためのシステムを作成した.This paper describes development of a corpus-based thesaurus system. For the purpose, a method for positioning unknown words in an existing thesaurus is proposed. A likely area of the thesaurus for an unknown word is estimated by integrating the human intuition buried in the thesaurus and statistical data extracted from the corpus. To overcome the problem of data sparseness, distinguishing featured called "viewpoints" of each node are extracted automatically and used to calculate the similarity between the unknown word and a word in the thesaurus. The results of an experiment confirm the contribution of the viewpoints to the positioning task. By using some functions for accessing the thesaurus with viewpoints, users can get information for words in the thesaurus including unknown words.
著者
大久保英嗣 津田 孝夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.59-65, 1984-01-15

本論文では 各次元でキーを有する多次元データを 1次元のアドレス空間へ写像する順序保存関数を提案する.提案する関数は 線形なハッシュ関数を基本としており 分布依存ハッシュ関数のクラスに属している.本論文では まず 提案するハッシュ関数の諸性質について議論する.次に 関係データベースにおける代表的な関係代数演算であるジョイン操作へ適用する場合の方法について述べる.最後に 実験結果を示し 本ハッシュ関数の有効性について考察する.
著者
安達 栄輔 堀口 進
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1501-1511, 2005-06-15

本論文では,時系列画像の多重解像度解析によるオプティカルフロー推定法について議論する.多重解像度解析は,勾配法において発生する時間的エイリアシングの影響を除去するために用いられる.まず,各解像度画像におけるオプティカルフロー推定において,オプティカルフローの拘束式をフィッティングさせる局所領域の大きさをどのように設定すべきかの指針を与える.次に,各解像度間のオプティカルフロー統合法についても議論する.オプティカルフロー統合法は,画像歪曲型と解像度選択型に分類される.画像歪曲型と解像度選択型を比較したところ,画像歪曲型が速度の大きい場所特に動きの境界において解像度選択型よりも有利であることが分かった.また,解像度選択型において,多重解像度処理を各解像度ごとの処理に並列化し,その有効性を示した.This paper discusses optical flow estimation method using multiresolution analysis of image sequence. The multiresolution analysis is used to eliminate the time aliasing in gradient based method. This paper presents a guideline how to ajust a size of local region that constraint equation of optical flow is fit in optical flow estimation of each resolution image. We also discuss two optical flow unification methods; Image Warping type and Resolution Selection type. It is found that Image Warping type is more accurate than Resolution Selection type where speed is large particularly on motion boundary. In Resolution selection type, multiresolution processes are parallelized to different resolution processes to reduce computation times. It is shown that the parallelization can effectively reduce the computation times.
著者
藤井 巧朗 濱上 知樹
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.1668-1677, 2023-12-15

機械学習システムは訓練データとテストデータが同一の分布に従うものと仮定した状況下で動作する場合が多い.しかし,それらの分布は異なることが多く,ドメインシフトにより実用時に性能が低下してしまうという問題がある.本論文では,自然言語処理分野におけるドメインシフトの課題を解決するために,事前学習済み言語モデル(PLM)のFine-Tuningプロセスに着目した教師なしドメイン適応(UDA)に取り組んだ.本論文はPLMのFine-Tuningプロセスにおいて,正規分布に従う低次元の特徴量を獲得すると同時にノイズを付与するGaussian Layerを提案し,タスクヘッドに適用することでドメインシフトを軽減する.実験結果より,Gaussian Layerは特にソース・ターゲットドメイン距離が遠いより困難な設定で優位であることが確認された.また,分布整合分析より,Gaussian Layerは従来のUDA手法と比較してソース・ターゲットドメイン分布を整合することが確認でき,ドメイン不変な表現を獲得できることを示した.
著者
松村 幸輝
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.457-475, 2008-01-15

本論文は,株式取引において適切な投資判断を行うトレーダモデルの構築を目指して,投資判断のための戦略木をテクニカル分析に基づいて設計し,進化計算手法で最適化する方法を提案した.そして,トレーダモデルが自律システムとして進化する過程を詳細に調べるとともにその有用性について検討した.その効果的な実現方法として,クラスタリングによる分類手法を用いて指標を系統的に整理し,そのセグメント化した指標の階層構造にヒューリスティックな手法である進化計算を適用した新しい戦略木生成方法を考案した.クラスタリングとしてはエントロピーおよび利得比基準によって指標を分類する2 種類の方法を用い,進化計算には遺伝的アルゴリズム(GA)と遺伝的プログラミング(GP)を用いた.これにより,本手法は,クラスタリングで指標を統計処理的に分類することによって戦略決定木を秩序立てて整然と構成することができ,また進化計算によって膨大な組合せの中から最適な終端子の組合せを見出すことを可能にするというハイブリッド型の性質を有することを特徴とする.これを用いて取引シミュレーションを実行した結果,GA 個体の次元数が多いにもかかわらず,比較的良好な運用成績を収めることができるなどの結果を得た.このことから,本提案手法は,クラスタリング手法によって探索空間を限定しロスを少なくしてシステマティックに,しかも進化計算手法による学習機能の高い生成過程を実現するという,両方の利点をあわせ持った優れた戦略木作成方法であると期待できた.また,戦略木の有効性を考察した結果,学習過程の株価トレンドなどの市場動向に敏感に影響を受けつつも,市場環境に応じた取引戦略を自律的に獲得する学習メカニズムを有することが分かった.
著者
長島 紀子 中山 泰一 野下浩平
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.1581-1586, 1998-06-15

ゲーム木を探索する場合,異なる枝に同一局面が発生することが頻繁に起きる.この探索の重複を避けるため,局面表(ハッシュ表)に局面を登録し,計算結果を再利用するという手法がよく用いられる.ゲーム木の並列探索するときにも,上記のハッシュ表をプロセッサ間で共有できれば,異なるプロセッサ上で計算した結果が利用でき,計算時間の短縮が期待できる.本研究では,まず,分散メモリ型並列計算機(NEC Cenju?3)上に分散共有ハッシュ機構を設計・実現した.続いて,具体的なゲーム木探索問題としてオセロゲームの先手必勝後手必勝の決定問題を取り上げ,分散共有ハッシュ機構の評価実験を行った.実験の結果,たとえば7×5盤のオセロゲームでは,分散共有ハッシュ機構の導入により約30%計算時間が短縮されることが示された.
著者
荻野 慎太郎 原 章 長尾 智晴
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.1516-1526, 2005-06-15

本研究では長期記憶性の面から,よりリアルな人工市場の構築について考察する.投資エージェントによって構成される人工株式市場が現実の市場に似た変動をするとき,市場を構成する投資戦略とその構成比がどのようなものになっているかを検証し,現実の市場における株価変動メカニズムを解析することを目的としている.市場を構成するエージェント群のとる戦略を木構造プログラムで表し,それらのエージェント取引によって生じる株価変動の統計量が実際の市場変動に類似するようにエージェント群の効率的な最適化と解析を行うため,先に筆者らが提案した進化の過程でエージェントのグループ分けと各グループのプログラム最適化を同時に行う手法である自動グループ構成手法ADGを用いた.現実市場の複雑でカオティックな動態が,提案された人工市場において現れているかを,より確からしい市場構築をするという観点から実験的に示し,その解析結果を基にカオス成分を加味してより現実に即した人工市場構築を行った.
著者
今関 雄人 高田 眞吾 土居 範久
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.2328-2337, 2008-07-15

ラウンドトリップエンジニアリングは,モデリング段階とコーディング段階を往復しながらソフトウェア開発を行う手法である.ラウンドトリップエンジニアリングを支援するために,クラス図の変更をソースコードに自動的に反映させ,またソースコードの変更をクラス図に自動的に反映させるツールがある.しかし,従来のツールでは,クラス図などの静的側面のモデルを扱うのみで,動的側面のモデル,すなわちシーケンス図やステートチャートとソースコード間のラウンドトリップエンジニアリングを扱うことはできない.そこで,本研究では動的モデルとソースコード間のラウンドトリップエンジニアリングを支援するツールを提案する.本ツールはMVCパターンに基づいたアプリケーションを対象とし,シーケンス図,ステートチャートとソースコード間のラウンドトリップエンジニアリングを支援する.本ツールを使用することにより,動的モデルとソースコード間の効率的なラウンドトリップエンジニアリングが可能となる.
著者
Takanori Isobe Ryoma Ito Kazuhiko Minematsu
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.9, 2023-09-15

This paper summarizes our cryptanalysis results on real-world End-to-End Encryption (E2EE) schemes published in recent years. Our targets are LINE (a major messaging application), SFrame (an E2EE protocol adopted by major video/audio applications), and Zoom (a major video communication application). For LINE, we show several attacks against the message integrity of Letter Sealing, the E2EE protocol of LINE, that allow forgery and impersonation. For SFrame, we reveal a critical issue that leads to an impersonation (forgery) attack by a malicious group member with a practical complexity. For Zoom, we discover several attacks more powerful than those expected by Zoom according to their whitepaper. Specifically, if insiders collude with meeting participants, they can impersonate any Zoom user in target meetings, whereas Zoom indicates that they can impersonate only the current meeting participants. We also describe several important works in the area of E2EE security research.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.31(2023) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.31.523------------------------------
著者
中村 嘉志 西村 拓一 伊藤 日出男 中島 秀之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2670-2680, 2003-11-15

本論文では,赤外線タグを無電源で駆動する情報端末CHOBIT(Card type Hyper Optical Battery-less Information Terminal)と,そのタグ検出器について述べる.我々は,位置に基づいてユーザを支援するCoBIT(Compact Battery-less Information Terminal)システムの研究開発を行っている.CoBITは,環境やユーザが提供するエネルギーのみで情報の送受信を実現するインタラクティブな情報端末であり,CoBITシステムは,CoBITを利用した情報支援システムである.これまでのCoBITには数mの到達距離を持つユーザ属性の発信器が装着されていなかったため,その属性に基づいた個人対応の情報支援をCoBITシステムで実現することが困難であった.そこで,本論文では,CoBITの無電源性を損なわずに赤外線タグを駆動する手法を提案する.さらに,プロトタイプの実装および評価からこの手法の有効性について述べる.
著者
永井 保夫 長谷川 隆三
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.808-821, 1995-04-15

制約充足は人工知能や画像理解の分野をはじめ、グラフの問題やパズルなどの探索間題、いわゆる組み合わせ問題を対象として研究がおこなわれている。制約充足問題の代表的な解法として、探索法や整合化手法を用いる方法が知られている。われわれは、このような探索主体のアプローチとは対照的な位置付けにある代数的アプローチについて諭じる。本アプローチでは、制約論理型言語の探索機構を利用した制約充足問題に対する研究とは異なり、制約論理型言語におけるブール制約評価系を用いて代数的に制約充足をおこなう。本論文では、ブール代数により制約充足問題を定式化し、得られたブール方程式の求解を制約論理型言語CALにおけるブール制約の評価とみなすことにより、解であるブーリアン・グレブナ基底を求める方法について述べる。さらに、ブール制約評価系を用いた制約充足問題の効率化手法として、1)ブーノレ制約の簡単化方式、2)制約ネットワークの構造情報に基づいた制約の評価順序の決定方式、について提案する。そして、本効率化手法の有効性を確認するために、ブール制約を用いて記述された問題に対して適用実験をおこなう。その結果、制約充足問題の解法として探索法がよく知られているが、それとは異なるあらたなブール代数評価系を用いた代数的な方法ならびに効率化手法が有効であることを示す。
著者
重定 如彦 越塚 登 坂村 健
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.1662-1675, 2001-06-15

本論文では,分散ハイパーメディアOS``Net-BTRON''におけるハイパーメディア資源管理の機構について述べる.近年,World Wide Web(WWW)を基盤とした全世界規模のハイパーメディア環境がインターネット上に構築され,情報発信システムとして大きな成功を収めている.一方,ネットワーク上の他のハイパーメディアコンテンツを参照・引用をしながら,頻繁なデータ編集による試行錯誤を繰り返して,人間の思考を支援することも,ハイパーメディアシステムの当初の用途の1つである.ところが,現在のWWWシステムをこうした用途に用いると,リンクの接続性が脆弱であるために,リンク切れやEditingProblemといった問題が頻繁に発生する.そこで我々は,頑強なリンク接続性を提供する分散型ハイパーメディア資源管理機構を持った新しいオペレーティングシステム,Net-BTRONを構築している.Net-BTRONのハイパーメディア資源管理機構は次の特徴を持つ.まず,ハイパーメディアノードやリンクをファイルシステムで実現する.Net-BTRON以外の他のハイパーメディアとの相互接続性を実現する柔軟なファイルシステム拡張機能を持つ.ハイパーメディアアプリケーションの操作性を標準化するためのツールキットを提供する.我々はNet-BTRONのパイロットシステムをBTRON3仕様OSを拡張して実装し,その上に多くの分散ハイパーメディアアプリケーションを構築することによって,これらの技術的特徴の有効性を確認した.
著者
神岡 太郎 土屋 孝文 安西 祐一郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.457-466, 1989-04-15

本論文では 日本語文において構文的にも意味的二も中心的役割を果たす述語複合体の知識を計算機上でどのように表現すべきかという方法について述べ さらにこの表現方法を用いて述語複合体を計算機によって生成するアルゴリズムについて説明する.述語複合体とは 戸田が膠着言語である.日本語の文法として不自然のないように 日本語文における従来の述部という考え方を再構成したもので これまでの述部に対する日本語文法に 比べて用言における複雑な活用を廃止した等の点で計算機処理に適した考え方となっている.本論文ではこの述語複合体に関する知識を (1)それを構成する語の出現優先順位に関するルール (2)語の意味属性や接続属性等からなる辞書 (3)音便変化や音の崩れ(例えば「食べてしまった」が「食べちゃった「となるような現象)変化に対応したメタルール の3つに分けることにより これを計算機上で素直に表現できることを示す.述語複合体生成システムは 述語複合体生成用のインタプリタと 上で述べた知識表現形式をインタプリタが解釈できる形式(実行形式)に変換するトランスレータから構成されており パス表現によって示される意味格表現に対応する述語複合体をすべて生成する.本論文ではこの述語複合体生成システムを用いることによって 実際に日本語文に用いられるかなり複雑な述語複合体をも生成することができることを実行例を用いて示す.
著者
中野 勝章 渡辺 魁 中沢 実
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.7, pp.1164-1172, 2023-07-15

近年,カメラ動画像から画像認識技術を用いて道路交通量調査を行う研究が活発になっている.交差点におけるカメラ画像を用いた交通量調査では,単路環境に比べてカメラでとらえるべき範囲が広いため,従来の固定型カメラ(CCTVカメラ)ではなく,可搬性を有する携帯型のカメラを用いることで交差点内の複数位置に設置することができる.複数位置から最適なカメラ設置位置を決めることで計測精度の向上が見込める.しかしながら,実際問題として交差点内に設置した携帯型カメラに対して,現地で最適なカメラ設置位置を評価する基準がなく,人手による経験的または直感的なカメラ配置となっている.そこで,本研究では,短時間のカメラ動画像から交差点における車両の流入口の位置関係に基づき,計測精度に影響を与える指標を算出し,それを利用することで最適なカメラ設置基準の判定を行う手法を提案する.さらに,提案指標とOpenDataCamのカウンターライン機能を用いた計測精度との比較を実地検証を行い,提案した指標の妥当性を評価した.
著者
岡谷 貴之 出口 光一郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.92-100, 2000-01-15

陰影から形状を復元する問題は1階の偏微分方程式として定式化される.解法には古典的な特性方程式による方法のほかに,等高線の発展によって解を計算する方法がある.従来のやり方ではランバート面が仮定されていた.本論文では,ランバート面に限らない一般の拡散反射を考慮する.等高線に基づく形状復元が可能になるために反射率分布図が満たすべき条件を示す.
著者
藤井 勝央 吉原 和明 井口 信和
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.1024-1030, 2023-05-15

ネットワークトラフィックの増加にともない,通信品質の低下やネットワークダウンを引き起こす可能性のある輻輳や遅延の発生が問題となる.この問題を解決する方法の1つにQoS制御がある.ネットワーク技術者はQoS制御の仕組みについて学び,活用することが有用である.しかし,QoS制御はネットワーク機器内部で動作するため,直感的に理解することが難しい.このため,QoS制御の動作の検証や効率的な学習のためには,動作の可視化が有効であると考えられる.本論文では,ルータ内部のQoS制御処理をアニメーションを用いて可視化するシステムを実装した.実験の結果,仮想ルータ15台までのネットワークで動作し,QoS制御を可視化できることを確認した.
著者
松尾 龍平 山本 雄平 姜 文渊 田中 ちひろ 中村 健二 田中 成典 鳴尾 丈司
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.980-991, 2023-05-15

我が国では,競技力向上を目的としたスポーツ情報科学に関する研究支援が求められている.中でも,フィールドスポーツでは,選手の位置情報を取得することで,選手のStats情報の獲得や戦術分析を補助する活動が実施されている.選手の位置情報の取得方法は,映像に対して深層学習を用いた物体検出手法を適用する方策が採用されている.しかし,物体検出手法では,対象物が未学習の場合や,学習時とかけ離れた特徴を有する場合,検出精度が低下する.これに対して,アノテーションシステムによる自動アノテーション機能を用いて学習データを作成することが考えられるが,精度良く検出することができず作業効率化が望めない課題が残存する.そこで,本研究では,フィールドスポーツにおいて,学習データを簡易に作成することができるアノテーションシステムの開発を目指す.システムの開発にあたり,データ分析にかかわる専門家へのヒアリングを通じ,選手を精度良くまた効率良く検出することが重要であると明らかになった.そして,そのニーズに対して,フィールドスポーツに特化した検出モデルを搭載することで,既存システムと比べ,作業時間を2分程度短縮することに成功した.
著者
松井 啓司 中村 聡史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.970-978, 2018-03-15

人は楽しい時間が過ぎるのを早く感じたり,退屈な時間がいつまでも終わらないと感じたりすることがある.これは時間評価を変化させる要因の1つである時間経過に対する注意によって発生する現象であるが,2つ以上の事象に同時に集中することは容易でないため,なにか別の作業をしながら時間感覚を自分の思いどおりに変化させることは困難であるとされてきた.ここで,人間の周辺視野には視覚情報を無意識的に処理する特性があることが明らかになっている.この周辺視野の情報処理能力を活用し,無意識的に時間評価を変化させる要因を操作することで,人の時間感覚の操作が可能であると考えた.そこで,PCでの作業時に周辺視野へ視覚刺激を提示することで,人の時間感覚がどのように変化するのかを調査する.その結果,提示速度の変化量によって時間評価が変化し,視覚刺激の提示速度が加速するほど時間を短く感じ,減速するほど時間を長く感じる傾向が見られた.また,実験協力者の視線情報を分析することで周辺視野への視覚刺激提示が作業を阻害していないことを明らかにした.