著者
脇坂 洋祐 柴田 直樹 北道 淳司 安本 慶一 伊藤 実
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.657-668, 2016-02-15

マルチコアプロセッサを搭載した計算機が広く利用されるようになり,また様々なタスクスケジューリング手法が利用されている.マルチコアプロセッサの処理性能を向上させるため,ターボブーストおよびハイパースレッディングと呼ばれる処理高速化および並列処理技術が開発され,搭載されるようになった.これらはそれぞれ一部のコアが使用されていないときに使用されているコアの動作周波数を向上させる技術と,1つの物理コアを複数の論理プロセッサに見せかける技術である.既存のタスクスケジューリング手法は,これらの最新技術を考慮しておらず,多数のタスクを1つのプロセッサに集中させる傾向がある.本研究では,ターボブーストおよびハイパースレッディングによる実効動作周波数の動的変更とネットワークコンテンションを考慮し,より計算機資源を有効に活用するためのタスクスケジューリングアルゴリズムを提案する.実機実験を通してターボブーストおよびハイパースレッディングによる動作周波数モデルを作成し,タスクの処理時間を正確に推定することで両技術を考慮したタスクのスケジュールを行う.シミュレーションと実機実験による評価の結果,提案手法は全体の処理時間をシミュレーションで最大43%,実機実験では最大で36%短縮できることを確認した.
著者
早川 智一 疋田 輝雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.573-582, 2016-02-15

本論文では,HTML5とJavaScript関連技術とを用いた仮想Webブラウザ(以下,仮想ブラウザ)の提案を行う.仮想ブラウザの目的は,悪意のあるコンテンツを含むWebページ(以下,悪意のあるWebページ)から閲覧者を保護することにある.仮想ブラウザは,閲覧者が要求したWebページを外見が等価な画像に透過的に変換することで,悪意のあるWebページの脅威を低減させる.仮想ブラウザのネットワーク転送量や応答時間の評価結果は,仮想ブラウザが閲覧者の利便性を大幅に低下させることなく悪意のあるWebページの脅威を低減できることを示した.我々は,この評価結果から,仮想ブラウザが悪意のあるWebページから閲覧者を保護する有用な手段たりうるという結論を得た.
著者
立石 孝彰
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.669-669, 2016-02-15
著者
榎原 博之 中山 弘基 飯田 修平 長辻 亮太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.331-342, 2016-01-15

近年,メタヒューリスティクスは組合せ最適化問題を解く手法として多くの研究が行われている.最近の研究では,コンサルタント誘導型探索(CGS)と呼ばれる新しいメタヒューリスティクスが提案されている.本研究では,CGSを用いた巡回セールスマン問題(TSP)に対する並列アルゴリズムを提案する.アルゴリズムの並列化では,CGSにおける仮想人間をそれぞれの計算機の各プロ セッサコアに割り当てることで効率良く解の探索を行う.また,仮想人間の集団を複数のサブ集団に分割し,各サブ集団どうしで仮想人間の移住を行う島モデルをCGSに取り入れる.10台の計算機を用いた性能評価実験を行い,都市数が5,000のTSPLIBのベンチマーク問題例に対して5%未満の誤差率を達成することを示す.
著者
出口 幸子 白井 克彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.642-649, 2001-03-15
被引用文献数
4 4

筆者らは箏曲の楽譜データベースを実現するために,箏曲の旋律分析を行っており,その基礎として必要な音律と音階を規定することができたので報告する.箏曲の音律と音階を規定する文書は存在しないが,中国雅楽,中国俗楽,日本雅楽を経て箏曲に至っている.本研究では,箏曲譜から作成した楽譜情報ファイルの分析から箏曲の音律と音階を規定できることを示し,かつ中国雅楽の理論を適用できることを示した.本研究の目的は情報処理における対象領域の構造の規定であるので,明確に定義されている中国雅楽の理論を用いて検討した.音律については,楽譜情報から連続する2音の音程を抽出し,半音と全音が出現する音高が限定していることから,半音が生じる2音間の音程を $x$,生じない音程を $y$,および全音の音程を $xy$ として1オクターブ中の各音間の音程を決定した.これより,1オクターブ中の12音の具体的な周波数比を求めた.また,このように規定した音律が,中国雅楽の音律である十二律の理論に適合することを確認した.音階については,中国雅楽の音階である七音音階,および十二律と七音音階を対応付ける均の概念を用いて,箏曲の音階と均を理論的に定義した.一方,楽譜情報ファイルを調弦の変化する点で分割し,各音高の出現頻度より,均の存在を確認して,調弦と均との対応を考察し,また,七音音階であることを確認した.This paper describes a study on the temperament and the scale of koto music,toward a research of melody analysis and score database.The temperament and the scale of koto music are not described on any document,while they are based on Japanese court music,Chinese traditional music and Chinese court music.This paper shows that they can be defined by analyzing score data files to satisfy the theory of Chinese court music.We extract intervals between two notes sequentially from score data files,and show that semitones and whole tones are used limitedly.We define semitone as ``$x$'',define the interval not used for semitone as ``$y$'',and define whole tone as ``$xy$''.Therefore the intervals between twelve tones in one octave are defined.We also calculate the frequency ratios of tones.Next, the temperament of koto music is certified by the theory of Chinese 12-tone temperament.The scale of koto music is defined by the theory of Chinese 7-tone scale,and the dependency of scale on temperament is also determined.We extract notes from score data files, and verify the scale and the dependency of scale on temperament.
著者
森岡 澄夫 佐藤 証
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.1321-1328, 2003-05-15
被引用文献数
21 8

次期米国標準の128ビット共通鍵ブロック暗号AESにおいて,論理設計の工夫によって回路の消費電力を減らす方法を検討した.今回筆者らが行った調査では,AESの消費電力の大半をS-Boxと呼ばれる非線形変換を行う組合せ回路が占めており,S-Boxの消費電力は回路中を伝播するダイナミックハザードの量で決まる.本稿では,消費電力の少ないS-Boxの論理回路構成法(multi-stage PPRM)を提案する.その方法では,合成体上で演算を行うことによって回路規模を減らすとともに,二段論理を何ステージか直列につなげることによって,各ゲートへの信号到達時間を揃えハザード発生を減らす.この結果,これまで知られているS-Box回路と比べて半分から3分の1以下の消費電力を達成した.本手法は,S-Boxにガロア体の逆元演算を用いたその他多くの共通鍵暗号回路にも有効である.Reducing the power consumption of AES circuits is a critical problem when the circuits are used in low power embedded systems.We found the S-Boxes consume much of the total AES circuit power and the power for an S-Box is mostly determined by the number of dynamic hazards.In this paper,we propose a low-power S-Box circuit architecture: a multi-stage PPRM architecture.In this S-Box, (i) arithmetic operations are peformed over a composite field in order to reduce the total circuit size,and (ii) each arithmetic operation over sub-fields of the composite field is implemented as PPRM logic (AND-XOR logic) in order to reduce the generation and propagation of dynamic hazards.Low power consumptions of 29uW at 10\,MHz using 0.13um 1.5V CMOS technology were achieved,while the consumptions of the conventional S-Boxes are two or more times larger.The proposed method is effective in the other common-key ciphers whose S-Boxes use Galois field inversion.
著者
吉本 明平 下道 高志
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.12, pp.2253-2264, 2015-12-15

プライバシにかかわる情報と個人の関係性を数学の集合論的記法を用いて表記する手法を提案する.これによってプライバシに関する客観的かつ合理的な議論を可能とする.「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」の施行や「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」の公表など,日本国内におけるプライバシの取扱いについての議論が活発化している.そこでは個人に関する情報と個人との関係性や情報の共有範囲の検討が不可欠である.しかし,これらの検討において情報の関連範囲を明確に記述し論理的,具体的な議論を行う方法論が未整備であった.本稿では集合論的記法を応用し,プライバシにかかわる情報と個人の関係性を具体的に表記し,明確に議論する方法論を提案する.さらに,この記法を用いて情報の共有範囲の表記,情報とコンテクストの関係表記,プライバシの状態遷移の表記を行い,この記法の効果を確認した.また,実際に課題としてプライバシに関する議論がなされた実例への適用を行いこの記法の有効性の検証を行った.
著者
桑原教彰 野間 春生 鉄谷信二 萩田 紀博 小暮 潔 伊関 洋
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2638-2648, 2003-11-15
被引用文献数
15 17

医療事故に結び付く可能性のある看護業務の作業環境を改善していくことが求められている.医療事故の原因分析には,事故に関係した医療従事者の行動履歴の情報が重要である.本論文は,看護行為を妨げないウエアラブルセンサにより,看護師の1日の行動を自動計測して,看護履歴を作成するために必要なデータを自動的に収集する手法を提案する.まず看護行動の自動計測方法の基本方針を述べる.次にこの方針に基づいて,音声入力,歩数,姿勢の傾斜角,に着目したウエアラブルセンサを試作し,実際の医療現場で本手法の有効性を示す.具体的には,歩数,上半身の傾斜角だけから日常的に頻繁に実施される看護業務がいくつかに大きく分類できることを示し,その結果と音声認識を組み合わせることで,実際の医療現場で収集したサンプルデータに対して,音声認識単独の場合より高い識別率で看護業務を識別できたこと,および,記録されたデータを看護師の実際の看護記録と比較して,この自動計測法では従来の看護記録には記録されない予定外の行動を含む履歴が残されたことを示す.In order to improve the quality of medical service, we propose a method for auto-event-recording of nursing operations with little disturbance of their moves. We've developed the wearable sensors to allow recording the type of job units by recognizing their voices, the number of foot steps and their physical postures. Several experiments are made by using these sensors at a hospital. Experimental results show that we can categorize the nursing jobs most frequently operated by the nurses, by analyzing data of their foot steps and physical postures. Then, by utilizing this result with the speech recognition, the nursing record is reconstructed, better than that by using only the speech recognition. Finally, by comparing the reconstructed nursing records with the actual ones, we show that our sensors can record the nurse's jobs that are missed on the actual nursing records.
著者
野崎 昭弘 杉本 俊彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.164-166, 1980-03-15

「内部ソートのおそらく最も有用な汎用技法」(クヌース)といわれるクイックソートの長所は平均所要時間が短いことであり 短所は最悪の場合の所要時間がひじょうに長い(項目数nに対してΟ(n^2))ことである.本論文ではクイックソートを改良して 最悪の場合の所要時間を項目数nに対してΟ(n log n)におさえ しかも平均所要時間をほとんど損なわないようにできることを示した.
著者
渡邊 純一郎 藤田 真理奈 矢野 和男 金坂 秀雄 長谷川 智之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1470-1479, 2013-04-15

組織の生産性をいかにして向上させるかということは,リーダやマネージャにとって大きな関心事である.しかしながら,生産性向上に向けたこれまでの施策は,マネージャの経験や勘など定性的な評価に基づくものが主であった.我々は,ウェアラブルセンサを用いて物理的な人間行動を長期的に計測し,身体的な動きの度合いである活発度や対面コミュニケーションと生産性との関係を定量的に評価した.アウトバウンド型コールセンタにおいて受注率に影響を与える要因を調べた結果,休憩中の職場の活発度と受注率が相関することが分かった.両者の因果関係を明らかにするために少人数のチームごとに休憩時間を合わせる施策を行った結果,休憩中の対面コミュニケーションに起因するチームの活発度が生産性に影響することが分かった.本研究の結果は,センサにより職場の活発度を定量的に計測しマネジメントすることにより,生産性を向上させられる可能性を示唆する.Improving team performance has been a great concern of leaders and managers. They try to understand the factors affecting performance and reorganize their team on the basis of their experience and intuition. Recent progress in wearable sensor technologies has opened up new ways of measuring our physical behaviors. Particularly attractive is the ability of such sensors to capture data quantifying body movement and face-to-face communication. In this study, we explored possible factors affecting performance in call centers by using a wearable sensor, a "sociometric badge." We found that the activity level, i.e., liveliness, while working does not correlate with team performance whereas that while resting does. We also found that improving face-to-face communication leads to increased activity levels and to better team performance. Our results demonstrate that team performance can be improved by managing workplace activity levels.
著者
小杉 尚子 櫻井 保志 山室 雅司 串間 和彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.333-345, 2004-01-15
被引用文献数
6 7

本論文では,我々が研究開発しているハミングを用いた音楽検索システム"SoundCompass"を,カラオケの選曲システムとして実用化するために考案した技術について述べ,それらの有効性を定量的に評価する.このシステムを実用化するにあたって,一般ユーザの使用により,様々なハミングに柔軟に対応することが必要となった.データベース・サイズの増大に対応できるように,蓄積コストや検索速度の改善も必要となった.本論文では様々なハミングに対応するために,これまでの手法では検索できなかったハミングについてその原因を明らかにし,それらを解決するために部分特徴ベクトルの導入,部分ハミング片間OR検索方式の導入,半テンポ曲/倍テンポ曲の重複登録の導入を提案する.一方,検索対象曲数の増加にともなう音楽データベースの大規模化に対して,曲内での繰返しによる特徴ベクトルの冗長性を手がかりにしたデータベース・サイズの縮小を提案する.これらの技術を導入することで,新しいSoundCompassは実用範囲内の検索速度を保ちつつ,20 000曲を超えるデータベースに対して84.2%の検索精度を達成し,従来の我々のシステムと比較して,約20%の向上が可能となった.This paper describes techniques incorporated into SoundCompass, a query-by-humming system, to enable it to be put to practical use as a karaoke song selection system. Quantitative evaluations of the techniques are also provided. Solutions for variations in hummed tunes by general users are required to make the system practical. Moreover, improvements in both the cost of storing a large number of songs in a database and retrieval speed efficiency are also required to deal with database size expansion. In this paper, we analyze hummed tunes which cannot be retrieved by traditional techniques. According to the analysis, a partial feature vector, an OR retrieval among query keys, and double registration of songs whose tempo is doubled/halved are proposed to deal with the diversity among hummed tunes. We also propose a method to reduce database size based on the repetitive structure of songs to solve the problem of increasing database size as the number of songs stored in the database becomes larger. The new SoundCompass system achieves 84.2% retrieval accuracy, which is about 20% more than that of the previous system, for a database that stores over 20,000 songs, while maintaining the applicable retrieval time required for practical use.
著者
鈴木 惠美子 武田 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.11, pp.1402-1412, 1989-11-15
被引用文献数
17

ワードプロセッサが大量に普及し 日本語文書を電子的に作成 配布 印刷することが日常的になってきた.しかし 計算機上でできあがった文書の校正・推敲を行うといった高度のテキスト処理は 最近になってやっと研究が盛んに行われはじめたところで まだ実用化の段階には至っていない.我々従来より 機械可読な日本語文書を対象として入吾中の誤りや用語の不統一 言い替えた方がよい表現などを検出し 文書の校正支援を行うシステムについて研究してきたが 構造化された文書表現(構造化文書)とその上でのルール形式の校正知識表現を用いることが有効であるという結果を得た.すなわち 1)文書前処理段階でモデル化することにより 日本語文書のための応用プログラフ実行時には字句解析を行うことなく 単語や文節 段落や文書全体といった単位を扱うことができる 2)校正知識は構造化文書上の高レベルの述語として記述できる 3)文書校正知識を複数の段階(入力時と作成時)で利用できるように 対話的文書校正とパッチ的校正が提供できる といった特長を実現できた.本報告では 我々の開発したシステムとその校正知識 ワードプロセッサを使用した実験により得られた誤りの分類およびその検出可能性について述べる.また 構造化文書の応用として重要語を検出する機能についても検討している.
著者
松澤 芳昭 保井 元 杉浦 学 酒井 三四郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.57-71, 2014-01-15

近年,SqueakやScratchをはじめとするビジュアルプログラミング言語による入門教育の実践が広く行われている.しかしながら,既存の環境はCやJavaなどのテキスト型言語への移行が考慮されていないため,学習の発展性に課題がある.本研究では,OpenBlocksフレームワークを利用して,ブロック型ビジュアル言語とテキスト型言語(Java)の相互変換ができるプログラミング教育環境「BlockEditor」を開発した.文科系大学生向けプログラミング入門授業の学生約100名に対して実証実験を行った.15週の授業で課した36題の課題解答過程において,学習者に2つの言語を任意に選択できる環境を与え,言語選択率を測定した.その結果,プログラミング学習の進行に沿ってブロック言語からJavaへ緩やかに移行していくこと,およびそのタイミングには個人差があることが定量的に示された.プログラミングに苦手意識を持つ学生ほどブロック型言語の選択率が高く,言語の相互変換環境が言語の交ぜ書きを促進し,Javaプログラム構築能力習得の足場かけとなることが示された.In the past decade, improvements to the environment of introductory programming education by visual programming language have been made by Squeak, Scratch, etc. However, there is still a problem for migration to text-based programming languages such as C and Java. Hence, using the OpenBlocks framework proposed by MIT, we developed a system named BlockEditor, which has functions to translate block language and Java both ways. We conducted an empirical study of this system in an introductory programming course for approximately one hundred university students. When students were given opportunities to select the language to solve their programming assignments, we traced their selection by tracking working time with BlockEditor or Java for each individual student. As a result, we succeeded in illustrating the nature of the seamless migration from block language to Java, and found there is great diversity for timing and speed of the migration by each individual. Additionally, we found the selection rate of the block language by students with low self-evaluation for their skills was significantly higher than students with high self-evaluation. The BlockEditor could scaffold them by promoting mixed writing with block language and Java in their migration phase.
著者
迎山 和司 川又 康平 小林 真幸 川嶋 稔夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.1787-1794, 2014-08-15

プロジェクションマッピング(PJM)とは立体構造物の形に沿って,コンピュータで処理された映像をプロジェクタで投影する表現手法である.近年フェスティバルなどでPJMはさかんに行われており,対象を直接改変しないので歴史的文化財などに有用である.本論文では,函館市内の歴史建造物に対して実施されたPJMを事例としてあげて,これから実施する人が参考にできる事項をまとめた.加えて,集客効果の高いイベントを実施して得られた公立大学の地域貢献についての知見を述べる.Projection Mapping (PJM) is a technique for displaying visuals such as computer graphics onto buildings or walls using projectors. Recently, PJM is often used in events such as festivals. Since it requires no physical changes of the projection surfaces it is particularly suited in heritage environments. This paper describes useful information for realising a PJM event, using an actual case study carried out at a historic building in Hakodate. Also, it explains the essence of how a municipal university can make community contributions through contributing to popular spectacles.
著者
松浦 佐江子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.8, pp.2578-2595, 2007-08-15
参考文献数
16
被引用文献数
13

Java やUML をはじめとするオブジェクト指向によるソフトウェア開発技術は多くのIT 企業から注目され,ソフトウェア開発技術者の育成が大学に求められている.産業界の求めるソフトウェア開発技術者を育成するためには,講義や簡単な演習のみではなく,ソフトウェア工学の知識を活用して様々な場面における問題解決能力を養うための実践的なソフトウェア開発を経験する必要がある.このようなPBL(Project Based Learning)は学生が講義で得た知識を活用しながら主体的に問題解決を行う力を養う効果があることから,近年注目されている.しかし,大学学部教育において実践的なソフトウェア工学教育を行うためには,前提知識となる科目の教育,適切な課題設定,評価方法も含めた学生自身が遂行可能な授業設計とその支援環境の構築といった問題を解決する必要がある.我々は2002 年度より,学部3 年生を対象に後期の授業として,オブジェクト指向開発を用いたグループワークによるソフトウェア開発実習を実施している.本実習は半期をかけてある程度複雑なシステムを8 人から10 人程度のグループで開発するソフトウェア開発の全工程を体験するPBL である.本稿では,我々の実践的なソフトウェア工学教育を行ううえでの問題に対する取り組みを紹介し,5 年間の適用結果に基づいてその有効性について議論する.Software development technology, especially both Java and UML started to attract wide interest of many IT companies. Moreover, it has been widely acknowledged that classes designed by utilizing PBL (Project-Based Learning) are effective in enhancing the problem-solving ability of university students. In PBL-based classes, students try to apply their knowledge to solve the problems by themselves; therefore, such classes are effective in improving problemsolving and communication abilities of students in software development. To conduct practical software engineering experiments, a plan of the experiment needs to be devised on four perspectives (education of prerequisite knowledge, selection of appropriate topics, a class design including assessment methods for grading students and computer supported environments). Since 2002, we have been planning and conducting group-work-based software development experiments as an approach to PBL. The aim of this class is to master software development and project management technologies based on Object Oriented Development. With a group of 8 or 10 students, a moderately complicated software system can be developed over half a semester. This experiment aims at educating undergraduate students to develop the faculty to become able software engineers. This paper describes the design of our practical software engineering education based on the experiment.
著者
柴原 一友 但馬 康宏 小谷 善行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3328-3342, 2006-12-15

本論文では将棋を解く研究への布石として,引き分けを効率的に証明するためのGHI 問題回避法を提案し,3x4 の将棋の解を求めた.オセロや囲碁に比べ,将棋は小さな盤面に対する解を求める研究は少ない.将棋は局面がループするため,引き分けを含めた解を得ることが困難である.そこで,詰将棋で効果をあげたPDS 探索を用いて,効率的に引き分けを証明する方法を提案する.実験の結果,3x4 将棋のすべての解を得た.
著者
大久保雅且 杉崎 正之 井上 孝史 田中 一男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.7, pp.2250-2258, 1998-07-15
被引用文献数
25

WWW (World Wide Web)検索サービスで使用された検索語から情報ニーズを抽出できれば,より効果的な情報収集や情報提供が可能になる.しかし,同じ概念を表す情報を求める際でも,それぞれの利用者の持つ固有の視点から様々な検索語が用いられる.このため,使用された検索語を単純に集計するのではなく,その時期に「同義語として用いられた」検索語を判定して集約しなければ,情報ニーズの本当の強さや傾向を求めることはできない.本論文では,使用された検索語の間に関連度を定義し,その値によって関連する検索語をグループ化する手法を提案する.関連度は,(1)検索要求の時間間隔から同一情報への要求かどうかを判定する方法と,(2)各検索語の使用頻度の時系列を求めそれらの間の相関関係を用いる方法,の2つの観点から定義する.また,一定の期間ごとにこれらの関連度を求めることによって,「その期間における同義語」をタイムリーにグループ化する.さらに,本手法を実際のWWW検索サービスのアクセスログに適用し,各情報ニーズの真の強さや傾向を把握できるだけでなく,関連語の提示によって要求解釈の支援が可能となることを示した.This paper proposes a method for detecting the information demands of a large group of people by analyzing the keywords used on a WWW (World Wide Web) search service.In general,a variety of keywords are used to retrieve information on the same topic.These keywords differ according to each user's viewpoint.Therefore,they,that is related words in a sense,must be gathered and summed up to extract information needs accurately.In this paper,relationships between two keywords are measured by time interval between them,and by the correlation coefficient of the number of uses per day.By calculating these relationships once in a certain period of time,for example one week,and by combining them effectively,keywords for the same topic can be grouped together.We applied the proposed method to the access log for an actual WWW search service,and found that it was useful for interpreting each request as well as for understanding the true strength and trends of information demands.
著者
清 雄一 大須賀 昭彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.1377-1387, 2015-05-15

保有している個人に関する情報データベースを他事業者と共有する場合,プライバシへの配慮が必要である.l-多様性等の一般的な匿名化技術では,データベースから個人を特定できる識別子を除外し,擬似識別子(QID)を一般化することで,攻撃者が各個人の属性値を推定することを防ぐ.通常,匿名化は一度のみ行われ,匿名化されたデータベースが複数のデータ利用者に共有され得る.したがって,あるデータ利用者が特に分析を行いたいQIDが完全に一般化されてしまい,まったく分析ができなくなってしまう可能性がある.本研究では,QIDを一般化せず,センシティブ属性にダミーの要素を追加することで,l-多様性を実現する.したがって各データ利用者は,好きなQIDに基づいて自由に分析を行うことが可能となる.提案手法が,既存のl-多様性に関する手法と比べてプライバシと有効性について高いトレードオフを取れることを,実データを用いたシミュレーションによって示す.
著者
小倉 加奈代 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.98-111, 2006-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
4

日常の対話では,対話参加者全員が単一の話題を一定時間共有し,その話題に関連がある発話を行う必要がある.しかも,基本的に話し手は1 人だけで他は聴き手となることが求められるため,今交わされている話題とは直接に関係ないが,何か興味深い話題やすばらしいアイディアを思いついたとしても,それを思いついたときにすぐ話すことは許されない.その結果,せっかく思いついた内容そのものを忘れてしまうことがしばしば起こる.このように,音声対話は非常に効率が悪い側面を有している.そこで本論文では,リアルタイム・マルチスレッド対話を容易に実現可能とする音声コミュニケーションシステムを提案する.試作システムChaTEL を用いて被験者実験を行ったところ,本システムで採用した相手指定/先行発言対応機能により,これらの機能を持たない単純な音声コミュニケーションシステムよりも1 秒単位でのスレッド数,分岐数,最大同時存在スレッド数,複数スレッド同時存在の継続時間がいずれも多くなることを確認し,本システムにより音声でのマルチスレッド対話が可能となることが明らかとなった.We usually have to share single topic-thread in an everyday conversation for a while and to talk about what is related to the current thread. Moreover, we have to keep a rule of turntaking: there can always be only one speaker and the others should be listeners. Therefore, it is impossible for people who do not have "turn" to talk about what they want to talk even if they think of interesting topics or good ideas. As a result, regrettably, they often forget the topics or ideas. Thus, such a daily conversation has an inefficient aspect. Hence, in this study, we develop a novel communication system to achieve "multi-thread voice communication", named "ChaTEL". We show results of experiments with subjects for evaluating our system. Based on the results, we confirmed that, with using ChaTEL, a number of threads, a number of adjacent pairs, maximum number of concurrent threads and the duration of multithreaded conversations are more or longer than those of a simple voice communication system. Consequently, we can conclude that ChaTEL facilitates the multi-threaded conversations.
著者
大岩元 高嶋 孝明 三井 修
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.772-779, 1983-11-15

日本語入力は 日本のオフィスオートメーションにおける最重要課題の一つであるが タイプライタの使用に慣れないために キーボード入力が必要以上に嫌われている.タッチタイプに関する山田らの研究に基づいて 一般人の使用にもたえると同時に 入力専門家の高速入力にも使える 多ストローク直接入力方式の可能性について検討し 30キー鍵盤を用いた一つの入力コード体系TUTコードを提案する.カナのコードは50音表の「行」と「段」の構造を利用して 体系的に設計してあるので 左手で「行」 右手で「段」を指定することにより 全部で16個のキーだけを用いて 濁音 半濁昔 よう音を含むすべてのカナを入力することができる.したがって 3時間の練習でカナをブラインド・タッチで入力することが可能となり カナ漢字変換の入力を一般人が効率的に行うことができる.漢字は残りのキーを用いて 725字を2ストロークで さらに1 800字を3ストロークで入力する.コードの設計にあたっては 連想は排して 文字の出現頻度と指の動きやすさのみを考慮して行った.とくに2ストローク入力については2字続きの文字組の出現頻度まで考慮したので 熟語が打ちやすいという特長が生まれた.これによって 入力専門家による高速入力が可能になると期待される.