著者
沖野 正宗 加藤聰彦 牛島 準一 伊藤秀一 飯作俊一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.12, pp.2557-2565, 2004-12-15
参考文献数
9
被引用文献数
4

近年,その場に集まったノード間が無線インタフェースを用いて簡易にネットワークを構築するアドホックネットワークが注目されている.それにともない,多くのノードが使用されるまたは無線の到達距離が長いなどの理由で,無線伝播範囲に多数のノードが存在する高密度なアドホックネットワークに対する考慮が必要となる.このようなネットワーク環境では,特に経路を発見または伝達するための制御メッセージの転送オーバヘッドが増大するという問題点が生ずる.本稿では,オンデマンド型のAODV ルーチングプロトコルを拡張し,無線伝播範囲の離れたノードのみに経路要求メッセージを中継させる方式を提案する.この方式は,追加のメッセージ交換のオーバヘッドがなく,必要なノードのみにメッセージの中継を行わせ,さらにネットワークの動的な変化にも対応できることを特徴にしている.さらに本稿では,ネットワークシミュレータを用いて提案方式を評価し,AODV に対する優位性を明らかにしている.Recently, ad hoc networks come to be actually used in sensor networks and in network construction in case of disaster. Accordingly, it is required to study the routing in high density ad hoc networks, where multiple nodes exist within radio propagation area. In such a network environment, it is important to decrease the overhead of route request messages flooded into the whole network. In this paper, we propose a modified AODV protocol adapted to high density ad hoc network. Its feature includes that it does not introduce any additional message overhead, that it enables necessary and sufficient nodes to relay route request messages and that it copes with network configuration change. This paper also shows the performance evaluation indicating that our protocol can reduce the total number of route request messages compared with the original AODV.
著者
渡邊 坦 久島伊知郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.756-760, 1992-05-15
参考文献数
6

中間語をテンプレートと構文解析手法でパタン照合し オブジェクトコードに変換する方法は コード生成の有力な一方法である中間語の構文規則は暖昧性が高いので その場合 パタン照合の競合解消が重要課題となる本論文では 還元条件を各生成規則に対して指定できるボトムアップ型構文解析系において 部分パタンを還元してコードに変換する際 そのコードに固有の標識を付け その部分パタンを先頭とするより長いパタンが検出された時 その標識まで遡ってコードを生成し直す方法を示す これはある種のシフト/還元競合を誤りの恐れなく解消する簡易な方法であり 効率の良いオブジェクトの生成に使える
著者
北村 俊明 中田 登志之 柴山 潔 富田 眞治 萩原 宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.445-453, 1986-04-15
被引用文献数
1

算術論理演算装置(ALU)-レジスタ・レベルでの並列処理機能を有するマイクロプログラム制御計算機 QA-2を開発した.QA-2 は 旧型機 QA-1 における各種の応用実験を通じて行った性能評価に基づいて そのハードウェア構成方式を改良したシステムである. QA-2 は そのマイクロプログラムを書き換えることによって 図形処理や信号処理などのリアルタイム処理 および高級言語処理に対する効率の良いシステムを提供できる. QA-2 では 256ビット長の水平型マイクロ命令の相異なるフィールドによって 4個の可変長 ALU演算 4個の主記憶アドレスヘのアクセス 1個の高機能順序制御を同時に指定できる低レベル並列処理方式が採用されており マイクロプログラム制御方式の柔軟性を生かして 多様な応用に対処できるようになっている.また 処理速度や適応能力のほかにマイクロプログラムの生産性を上げることをも考慮して マイクロ・アーキテクチャを一様に構成している.本論文では QA-2 システムの設計思想を明らかにし その最大の特徴である低レベル並列処理機構の実現方式について述べる.また 実際に QA-2 を応用した結果を示し 低レベル並列処理方式の有効性について評価を加える.
著者
室田 一雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.533-535, 1993-03-15
参考文献数
4
被引用文献数
12

2次元のLaplace方程式4u=0のDirichlet問題に対する代用電荷法においてはIN u(N)(X)=-2 t _: Qj j=1log ll x - y j ll の形の近似式(ここで yjeR2 (j=1 ・・・ N) は電荷点の座標)を用いるのが普通であるが、これは座標のスケーリングや境界条件の原点移動に対して不変でない。そこで,IN u(N)(x)=Q0~2lr _: Qjloglix-yjll j=1 の形の近似式を考え、その係数Qj(j=0 1 ?N) をj=1 _ NQj=O という制約下で定めることを提案する。これにより、物理的に自然で、かつ、数学的にもよい性質をもった近似方式が得られる。
著者
千葉 直子 関 良明 堀川 裕介 橋元 良明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.311-324, 2014-01-15

スマートフォンの急速な普及にともない,ネットワークサービスの利用環境はいっそう進展し,青少年の安全なインターネット利用は喫緊の課題となっている.本稿では,青少年にインターネット接続端末を利用させる保護者と家庭の状況に焦点をあて,子どものインターネット利用によるリスクに影響を与える要素を定性的調査によって整理し,家庭における対策レベルの向上施策を議論するためのフレームを与える仮説モデルを構築する.さらにスマートフォンを利用する中高生とその母親300組に対する定量的調査によって仮説モデルを検証する.その結果,子どものインターネット利用における主要なリスクである「プライバシー情報の露呈」「有害情報閲覧」「ネットでの出会い」それぞれのリスクに対する家庭内要素の相関モデルを示した.「プライバシー情報の露呈」「有害情報閲覧」に影響を与える家庭の要素として,規範意識や育児観に代表される保護者の考え方,家族関係,家庭内のルールや対策が存在することを明らかにし,「ネットでの出会い」については,家庭でのルールや対策との相関がなく,家族関係が寄与していることを明らかにした.また家庭内のルールや対策は,保護者の考え方に加えて,保護者のリスク学習経験および家族関係と相関関係があることを明らかにした.With the spread of smartphones, the degree of Internet usage has increased even more, and Internet safety is an urgent problem facing young people. Our research focuses on parents and the home situation of young Internet users. We construct a hypothetical model that provides a framework for discussing how to lessen the risk for young people using the Internet at home based on our qualitative analysis. Furthermore, we tested the hypothetical model based on a quantitative investigation of 300 smartphone-using junior and senior high school students and their mothers. The investigation results clarify the correlation model considering such factors as parenting concepts, family relations, in-home rules and measures as domestic elements that control the risk when children use the Internet. In addition, we clarify that home measures are related to family relations, the parents' learning experience regarding the risk of Internet use, and the implemented parenting concepts.
著者
嶋田 光佑 廣井 慧 梶 克彦 河口 信夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.150-167, 2018-01-15

モバイル端末を用いて歩行者にルートガイダンスを行うサービスは広く普及しているものの,このようなサービスを利用しながらも道に迷う人が存在する.これは方向感覚や距離感覚,地図の読み解きなどの空間認識能力の個人差による,案内理解の程度の差が一因としてあげられる.本論文では,将来的に個人の空間認識能力を考慮したルートガイダンスを提示するナビゲーションシステムの実現を目指し,空間認識能力として移動中の行動,移動軌跡から個人ごとの特徴を定量的に計測する手法を提案する.はじめに,仮想空間上に都市環境を再現し,ルートガイダンスなど様々な提示情報,および情報提示手法を設定できる計測システムを開発する.次に,計測システムを利用し,道に迷う人と迷わない人の特徴の差を検討したうえで,計測手法を設計する.本論文では,(1)地図上での自己位置把握,(2)目的地の方向把握,(3)音声案内の記憶の定着の3つの計測手法について設計し,計測実験を行った.実験データを取得,分析したところ,(1)と(2)については,把握の正確さや早さ,(3)については,音声案内を聞き直す回数や聞き直すまでの時間を評価基準として,被験者ごとの行動に特徴的な差が確認できた.最後に,本計測手法の有用性を分析する目的で,自己評定との違い,実空間との違い,再現性のための再実験の3つの項目について,計測システムを用いた実験を行い,それぞれ75%,60%,71%の被験者が,本システムでの計測と自己評定,実空間での計測,再実験での計測に大きな差はみられないことを確認した.
著者
大竹八洲孝 但馬康宏 寺田松昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.813-823, 2004-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

本論文は,SIP(Session Initiation Protocol)を呼制御プロトコルとした音声通話に対して,ファイアウォール/NAT(Network Address Translator)とSIPサーバを統合することにより,プライベートネットワーク内外の音声通話を可能にする手法を提案している.提案方式の特徴は,(1)従来のNATではできなかったパケット内部のアドレス変換や,外部から内部へのNAT通過をファイアウォール/NATとSIPサーバの統合により可能にし,(2)SIPメッセージの中継機能,音声パケットのNAT通過機能,マッピングテーブルによる動的ファイアウォールのポリシー変更機能をアプリケーションレベルゲートウェイとして,SIPサーバに持たせたことである.提案方式に基づき,上記機能をPC上に実装し,実験ネットワークにおいて実測により評価を行った.この結果,最大ホスト数254台とする小規模ネットワークに対応できる見通しを得た.In this paper, we propose a technique which makes voice communication realize a NAT (Network Address Translation) Traversal using SIP (Session Initiation Protocol) as a signaling protocol by integrating a Firewall/NAT and SIP server. The advantageous characteristics of this system are the introduction of integrating Firewall/NAT and SIP server that translates addresses in data packets though existing NATs do not translate them, and that traverses packets from external network to internal network, the SIP server of proposal has proxying function of SIP Messages and voice packets, and function of dynamically changing policy rules of Firewall by mapping tables as a application gateway. Based on this proposal method, we implement these functions on the PC and evaluate the performance of a prototype system by the actual measurement in the experiment network. Consequently, we show that it is applicable to small network into 254 maximum hosts.
著者
安部 武宏 糸山克寿 吉井 和佳 駒谷 和範 尾形 哲也 奥乃 博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1054-1066, 2009-03-15
被引用文献数
1

本稿では,ある音高を持つ楽器音をもとにして,音色の歪みを抑えながら任意の音高を持つ楽器音を合成する手法について述べる.我々は音色の聴感上の差に関する音響心理学的知見に基づき,楽器音のスペクトログラム上で観察される音色特徴量として,(i) 倍音ピーク間の相対強度,(ii) 非調波成分の分布,(iii) 時間方向の振幅エンベロープの3つを定義する.まず,もとになる楽器音の音色特徴量を分析するため,糸山らの調波·非調波統合モデルを用いて楽器音を調波構造と非調波構造に分離する.音高操作時には,特徴量(i),(ii) の音高依存性を考慮しなければならない.そのため,音高に対する特徴量を3次関数で近似し,所望の音高における特徴量の値を予測する.32種類の楽器に対して音高操作を試みたところ,音高依存性を考慮しない場合と比べて合成音と実際の楽器音との距離が,スペクトル距離尺度では64.70%,MFCC距離尺度では32.31%減少し,手法の有効性が確かめられた.This paper presents a synthesis method that can generate musical instrument sounds with arbitrary pitches from a given musical instrument sound while constraining distorting timbral characteristics. Based on the psychoacoustical knowledge on auditory effects of timbre, we define timbral features on the spectrogram of a musical instrument sound as (i) relative amplitudes of harmonic components, (ii) distribution of inharmonic components, and (iii) temporal envelopes of harmonic components. First, to analyze timbral features of a seed, it is separated into harmonic and inharmonic components by using Itoyama's integrated model. In pitch manipulation, it is necessary to take into account the relation of pitch and features (i) and (ii). Therefore, we predict the values of each feature by using a cubic polynomial that approximates the feature distribution over pitches. Experimental results showed the effectiveness of our method; the spectral and MFCC distances between synthesized sounds and real sounds of 32 instruments were reduced by 64.70% and 32.31%, respectively.
著者
板倉 征男 長嶋 登志夫 辻井 重男
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.8, pp.2394-2404, 2002-08-15

個人識別IDのために用いるDNA情報としては,全塩基配列のなかでSTR(Short Tandem Repeat)と呼ばれる数塩基の繰返し回数の個人差を用いることが考えられる.筆者らはSTR座位(ローカスという)を複数箇所指定しそこで得られる繰返し回数情報を一定の順序で並べて個人識別子(以下DNA個人IDと呼ぶ)を生成することを提案し,実用化のための数々の基本的考察を行った.本論文ではこのDNA個人IDの原理を用いたバイオメトリックス本人認証およびバイオメトリックス署名について実用的システムを提案する.また,提案の方式を検証するために実証実験を行った.すなわち,500人以上の提供者の協力を得て実際の人体のDNAを採取し,本方式によりバイオメトリックス本人認証が可能であることを検証した.実用化のために,リアルタイムによるDNA分析装置の開発が条件となるが,本装置の実現までの間は2枚のICカードを用いて認証を行う方式を考案した.
著者
小嶋 秀樹 伊藤 昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.482-489, 1997-03-15
参考文献数
14
被引用文献数
7

本論文では,単語間の意味距離を文脈依存的に計算する手法を提案する.各単語は,英語辞書から抽出された多次元ベクトルとして,意味空間と呼ばれるベクトル空間における点に写像される.文脈から独立した意味距離は,このベクトル間の距離として計算すればよい.文脈に依存した意味距離は「意味空間のスケール変換」によって計算する.文脈の手がかりとして単語(キーワードなど)の集合が与えられると,この単語集合が均整のとれた分布を持つように,意味空間の各次元のスケールを拡大・縮小する.このスケール変換によって,意味空間における任意の2単語間の距離は与えられた単語集合の意味的な分布に依存した値となる.先行テキストに基づく後続単語の予測によって本手法を評価した結果,本手法が先行テキストの文脈をよくとらえていることを確かめた.This paper proposes a computationally feasible method for measuring context-sensitive semantic distance between words.The distance is computed by adaptive scaling of a semantic space.In the semantic space,each word in the vocabulary is represented by a multidimensional vector which is extracted from an English dictionary.Given a word set C which specifies a context,each dimension of the semantic space is scaled up or down according to the distribution of C in the semantic space.In the semantic space thus transformed,distance between words becomes dependent on the semantic distribution of C.An evaluation through a word prediction task shows that the proposed measurement successfully extractsthe context of a text.
著者
吉田 健一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.959-967, 2021-03-15

株価予測は学問的にも実務的にも重要な研究テーマであり,伝統的なファイナンスの観点から古くから研究されてきた.また近年では深層学習などデータマイニングの手法を使った研究もさかんである.本報では,日次の終値の変化と標準偏差のみを入力に用いたGradient Boosting Decision Tree法が代表的な株価インデックスであるTOPIXや日経225先物の翌日の値を予測可能であり,代表的な取引手法であるインデックス投資と比較して超過収益が得られることを示す.この結果は月次データに関して報告した代表的な株価インデックスが持つ特徴と同じ特徴(株価の分析における混合分布分析と学習期間調整の重要性)が日次データにも存在することを示している.本報では,学習期間調整の重要性は日次の方が顕著であり,また日経先物の分析結果からは限月という先物特有の要因が有効な学習期間に影響している可能性も指摘する.
著者
大石 亨 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.2597-2610, 1995-11-15
参考文献数
18
被引用文献数
17

動詞がある事象を表すために、論理的に最低限必要な名詞との関係を「格」という。格構造(case frame)は、自然言語処理をはじめとする人工知能分野において、文の意味を表示するために、必要不可欠なものとして取り扱われてきた。特に、意味主導型の言語である日本語文の解析では、動詞とそのとりうる格との意味的関係を表示する深層格(deepcase)が重要な役割を果たしている。しかし、格関係の分析は意味的な問題であるだけに、どうしても個別的かつ主観的にならざるをえない。本論文では、文の表層に現れる格助詞およびそれと置換されうる語旬のバターンに基づいて動詞を細かく分類し、この分類に基づいて、動詞の語彙知識を獲得する手法(格バターン分析法)を提案する。この手法を用いることにより、意味的な情報を客観的にしかも類型化して取り扱うことができる。この手法を解析済みコーパスから得られた共起情報に適用して行った深層格獲得実験の結果と評価、ならびに、実験を通して得られた格バターンの組合せから動詞の意味構造(semantic structure)を抽出する方法について述べる。
著者
春日 遥 池田 宥一郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.1764-1778, 2021-11-15

これまでSiriやAlexaなどのコミュニケーションを主体とするエージェントが家庭に導入されてきた.一方で,家庭においてヒトとより長い間コミュニケーションをとってきた存在として,伴侶動物があげられる.代表的な伴侶動物であるイヌでは,エージェントが会話により飼い主の関心を独占する場合,飼い主の反応の観察から新奇物であるエージェントへの警戒を和らげるというポジティブな反応や,嫉妬行動を誘発するというネガティブな反応が誘発されると考えられる.嫉妬行動は対象の形状にも依存することから,どのような形状のコミュニケーション・エージェントであれば家庭において飼い主ともイヌとも良い関係性を構築できうるか調査する必要がある.本研究ではプリミティブな形状のスマートスピーカ(Google Home),大小の2台のヒト型ロボット(NAOとPepper),イヌ型スマートスピーカの4条件を用意し,飼い主-エージェントの2者間の調査と飼い主がエージェントにポジティブに接するときのイヌの行動観察という3者間の調査を行った.32人のイヌの飼い主の印象評価の結果,ヒト型ロボットが好まれ,イヌ型スピーカはGoogle Homeよりも印象が悪かった.一方で,2名のイヌの訓練士が評価した21匹のイヌの行動分析の結果,飼い主-エージェント間のやりとりの観察後にイヌ型スピーカに対しては臀部の臭いを嗅ぐなど後部の接触を行った個体の割合が他のエージェントよりも有意に高かった.この結果は,イヌの飼い主が好ましいと感じるエージェントとイヌが関心を持つあるいは接触がしやすいエージェントの形状が異なる場合があるということを示唆していた.
著者
安井 一民 中川 覃夫 沢 嘉也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.381-386, 1982-07-15
被引用文献数
3

オンライン・システムに代表されるコンピュータ・システムの利用の高度化に伴い システムに対する高信頼化の要求が急速に高まってきている.オンライン・システムにおいて システム障害時に行わなければならない最も大切なことは 早急かつ確実にシステムを復旧させることであり そのために動作可能なシステムを できるだけ早く再構成することである.ここでは マルチ・プロセッサ・システムで構成されている汎用コンピュータ・システムが オンライン・システムの障害時のバック・アップ要求に応じて 二つの独立なパーテイション・システムとしてシステムを再構成する.そのとき 一方をオンライン・システムのバック・アップ用に 他方を汎用処理用に再始動させ オンライン・システムの回復を早期に実現するようなモデルを設定する.また オンライン・システムからの要求を考慮して汎用コンピュータ・システムの故障を定義し マルコフ再生過程の手法を用いて 定常アベイラビリティ 故障までの平均時間 単位時間当りの平均システム故障回数を求める.さらに この結果を利用して オンライン・システムからの要求を満たす確率や拒否する確率 汎用処理業務が正常に行われている確率なども求める.最後に 数値例を示し種々の議論を行う.
著者
坂崎 尚生
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.1294-1303, 2019-07-15

本稿では,高額医療・高額介護合算療養費制度等における自己負担額の世帯合算および現物給付型サービスの仕組みを電子的に実現する方法について,セキュリティ面からの検討を行う.より具体的には,暗号化状態のまま計算が可能な秘密計算と呼ばれる技術を上記仕組みに適用するための要件を定義し,その要件をすべて満たす秘密計算プロトコルを提案する.
著者
青木 幸聖 穴田 一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.990-995, 2020-04-15

近年,完全情報ゲームであるチェス,オセロ,将棋といったゲームでは人間のトッププレイヤと同等の実力を持つ人工知能(AI)が実現されている.一方,不完全情報ゲームにおいては,ポーカーでは人間のトッププレイヤと同等の実力を持つAIが実現されているが,麻雀では実現されていない.なぜなら,本研究が対象とする「麻雀」は完全情報ゲームであるチェスや将棋と異なり,対戦相手の所持している手が見えないため,相手の状態や状況の予測が難しいうえ,同じ不完全情報ゲームであるポーカーより考えられる戦局が多岐にわたるゲームだからである.そのようななか,近年トッププレイヤに近い強さを持つといわれる水上ら(2013, 2014)による麻雀AIが発表されている.しかしこのAIは役を考慮した鳴きができないという問題点がある.一方,原田らは「Complete Hand Extraction(CHE)」で構築できる可能性の高い役を考慮した着手を実現した.そこで本研究では,役構築を考慮可能な原田らの手法「CHE」を用いて,役構築を考慮した鳴きが可能な麻雀AIを構築し,CHEと対戦させることによりその有効性を確認した.
著者
加藤弘一 勅使河原 可海
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.9, pp.3209-3222, 2008-09-15
被引用文献数
2

組織のネットワークにおいて,ユーザは通常利用できないサービスを一時的に利用したい場合があり,その際には書類などにより申請を行う.管理者は特別利用を実施した場合に発生しうるリスクを考慮して申請を許可するか判断し,できる限りリスクを抑制できるように適切な対策を追加的に施す必要がある.しかし,管理者がすべてのリスクを網羅して妥当な判断をすることは難しい.さらに,追加した対策によりユーザは利用上の新たな制約を受ける可能性もある.本論文では,多層防御の概念から適切な対策制御によりリスクを抑制できることに着目し,フォルトツリー解析を利用して管理者とユーザが交渉を行うことで特別利用のための対策を決定する手法を提案する.そして,本手法の適用実験を行い,管理者の知識・経験に基づく対策決定手法と本手法の比較・評価から,セキュリティと利便性を維持した特別利用が可能な対策組合せを決定できることを示す.In the network of companies or organizations, a user sometimes wants to use special services temporarily which the user cannot use usually. At that time, the user must submit an application by papers. An administrator judges whether the user's request can be allowed considering potential risks by the user's special use. Then, he should implement additional countermeasures properly to reduce risks. However, it is difficult for the administrator to judge appropriately with all risks in mind. On the other hand, the user may be forced by new restrictions because of added countermeasures. This paper proposes a method of selecting optimal countermeasures for the user's request through a negotiation by the administrator and the user, using the Fault Tree Analysis, based on the concept of Defense In Depth to reduce the probability of risks with effective countermeasure control. Under the experimental deployment to a network example, we evaluate our method by comparing it with an experience-based countermeasures selecting method, and it is confirmed that our method can decide optimal countermeasures for a special network use in keeping security and usability level high.
著者
後藤 真孝 日高 伊佐夫 松本 英明 黒田 洋介 村岡 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.1910-1921, 1999-04-15
被引用文献数
12

本論文では すべてのプレーヤーが対等な立場でインタラクションし 即興演奏するジャズセッションシステムについて述べる. 本研究の目的は 人間と計算機とが影響を与え合いながら演奏する新しい統合演奏環境を実現することである. ジャズではプレーヤー間のインタラクションが重要であるが 従来の多くのシステムでは 人間のソロ演奏に対して 計算機が他のプレーヤー全員の演奏を伴奏としてまとめて生成していた. 本論文では 計算機内のプレーヤー同士も 人間同様にお互いの演奏を聞き合ってインタラクションできるシステムを提案する. そして その発展形として 各プレーヤーがお互いの姿を見ることもできる仮想ジャズセッションシステムVirJa Sessionを提案する. 本システムでは 計算機プレーヤーの姿やジェスチャーがコンピュータグラフィックスで視覚化され 計算機プレーヤーが他のプレーヤーのジェスチャーをカメラ等を通いて認識できる. こうして 全プレーヤー間のマルチモーダルインタラクションを実現することで 従来の音だけのセッションシステムに比べ より臨場感のあるセッションが達成できる. 現在の実装では ジャズのピアノトリオを対象とし 人間がピアニスト 計算機がベーシストとドラマーを担当する. 両計算機プレーヤーを独立したプロセスとして複数の計算機上に実装し 実験を行った結果 提案したジャズセッションが実現できたことを確認した.This paper presents a jazz session system in which each player is in dependent and can interplay with all other players. The purpose of this research is to build a new performance environment that facilitates interplay among humans and computers. Although interaction among players is important in jazz, computer accompaniment parts of most of the previous systems were collectively generated as a single task and only reacted to the human soloist's performance. This paper proposes a system that enables computer players to listen to other computer players' performances as well as the human players' performances and to interact with each other. This paper moreover proposes an advanced virtual jazz session system called VirJa Session which also enables all players to see each others' gestures. In our system, the bodies and gestures of computer players are visualized on computer graphics and each computer player can recognize other players' gestures. Thus, we can achieve multimodal interaction among all players. In our current implementation, the system deals with a jazz piano trio consisting of a human pianist, a computer bassist, and a computer drummer. Both computer players have been implemented as separate processes on a distributed environment of multiple workstations. Through our experiments, we verified that our proposed objectives have been achieved.
著者
西村 俊和 古村 隆明 八槇 博史 石田 亨
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1463-1471, 1998-05-15
参考文献数
12
被引用文献数
4

現在のモバイルコンピューティングの使われ方は電子メールやFAXの送信という1対1通信が中心である.本論文では,コミュニティ形成の状況を可視化し,コミュニティ全体で共有しうる情報を人々に適切にフィードバックすることを目的とする.コミュニティの構成員間の通信の状況を携帯端末上で可視化するCommunity Viewerを提案する.可視化の枠組みとして,(1)コミュニティの活動の場を仮想的に表すパーティルームメタファと,(2)プライバシーを守りながらも各人の活動を反映して表示するリフレクタアイコンを導入する.人々の静的な関係,あるいは動的な活動がこのパーティルーム上のリフレクタアイコンの動きとして表現される.初めての試みとして,実際にこのシステムを100台の携帯端末に搭載し,国際会議の会場で使用実用実験を行ったので,その結果について報告する.Mobile computing has been mainly utilized for point-to-point communication services,such as E-mail or FAX among people.To advance this field,the challenge is to encourage group communication by providing information that encourages community formation.As the first step towards this goal,we experimentally implemented the Community Viewer,which dynamically visualizes the communication interaction among people in the community.To design the Community Viewer,we introduced (1) the party room metaphor,which provides a virtual place for representing various community activities,and (2) the reflector icon,which reflects the activity of the corresponding individual while protecting his/her privacy.The static relationship among people and their dynamic activities are displayed in the spatial arrangement of reflector icons in the party room.We report our experiments on implementing and testing the community viewer in an international conference using 100 personal assistants.
著者
伊達 仁美 重安 哲也
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.1404-1414, 2014-04-15

センサネットワークの長寿命化に対する希求から,センサノードの省電力駆動が強く求められている.Duty cycleの長い制御プロトコルを設計することによってセンサネットワークの寿命を延長することはできるが,ネットワーク負荷の高い状況下やバースト的にトラフィックが発生する状況下では長いDuty cycleを持つ通信システムではこれらのトラフィックに適応的に対処できない.本論文では,従来のセンサネットワークで広く使用される送信端末主導型MACプロトコルではなく,受信端末主導型MACプロトコルを導入することによる消費電力削減効果について検討を行う.具体的には,すでにセンサネットワーク用受信端末主導型MACプロトコルとしてStrawMANが提案されているが,同プロトコルでは,トラフィック増加にともないパケット衝突が増加するために,新たに,高トラフィック時でもパケット衝突をいっさい発生させない新しい受信端末主導型MACプロトコルを提案する.また,計算機シミュレーションによって,提案方式を導入することによって,(1)パケット衝突を解決することで送信失敗による無駄な消費電力を削減できること,ならびに,(2)送信電力を削減した場合にも,受信端末主導であれば送信の失敗が増加しないために効果的な省電力効果を獲得できることの2点を明らかにする.Due to demand for achieving longer operation life of wireless sensor network, it is needed for sensor node to save electrical energy. Although the system can extend its operation life by developing control protocol employing longer duty cycle, it can not deal with both high traffic load and bursty traffic. This paper discusses about implementation effects of receiver initiated MAC protocol to save electrical power consumption, instead of traditional sender initiated MAC protocol which is widely used in wireless sensor network. In particular, this paper proposes new receiver initiated MAC protocol destined for wireless sensor network, which can completely prevent packet collisions due to the StrawMAN which is existing receiver initiated MAC protocol can not completely prevent packet collisions under high traffic load. By results conducted from computer simulations, we clarify that the newly proposed receiver initiated MAC protocol (1) can achieve lower power operation by reducing packet collisions, and (2) can educe the effects of power saving performance under transmission power controlling, effectively.