- 著者
-
出口 幸子
白井 克彦
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.3, pp.642-649, 2001-03-15
筆者らは箏曲の楽譜データベースを実現するために,箏曲の旋律分析を行っており,その基礎として必要な音律と音階を規定することができたので報告する.箏曲の音律と音階を規定する文書は存在しないが,中国雅楽,中国俗楽,日本雅楽を経て箏曲に至っている.本研究では,箏曲譜から作成した楽譜情報ファイルの分析から箏曲の音律と音階を規定できることを示し,かつ中国雅楽の理論を適用できることを示した.本研究の目的は情報処理における対象領域の構造の規定であるので,明確に定義されている中国雅楽の理論を用いて検討した.音律については,楽譜情報から連続する2音の音程を抽出し,半音と全音が出現する音高が限定していることから,半音が生じる2音間の音程を $x$,生じない音程を $y$,および全音の音程を $xy$ として1オクターブ中の各音間の音程を決定した.これより,1オクターブ中の12音の具体的な周波数比を求めた.また,このように規定した音律が,中国雅楽の音律である十二律の理論に適合することを確認した.音階については,中国雅楽の音階である七音音階,および十二律と七音音階を対応付ける均の概念を用いて,箏曲の音階と均を理論的に定義した.一方,楽譜情報ファイルを調弦の変化する点で分割し,各音高の出現頻度より,均の存在を確認して,調弦と均との対応を考察し,また,七音音階であることを確認した.