著者
前島 英雄 桂 晃洋 安田 元 木原 利昌
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.16-24, 1982-01-15
被引用文献数
1

本論文では 高集積マイクロコンピュータに適した新しいマイクロプログラム制御方式について述べる.マイクロコンピュータの性能・柔軟性・信頼性を向上するためのマイクロプログラム制御方式として2つの主要な手法を提案する.まず 高い性能及び柔軟性を得るため マクロ命令解読機能をマイクロプログラム・メモリ(μ-ROM)と一体化する構成をとる.このような構成に伴い マクロ命令の解読は命令デコーダといった付加機構を介することなく 直接 μ-ROMのアドレス・デコーダ上で実現する.すなわち マクロ命令からマイクロ命令実行までの応答時間を縮めることで高速性を得る.また 柔軟性に関してはマクロ命令にページ情報を持たせることでμ-ROMを論理的なページに分割し ページ間でのアドレス・パターンに独立性を与える方法で実現できることを示す.次に 高信頼性を得るため マイクロ命令の実行シーケンスの合理性をチェックする.すなわち マイクロ命令中に実行可能な位相を指す位相指示ビットを与え これを基準クロックの位相と比較することで実現する.以上の手法により マクロ命令の解読時間が省略されるとともに 複数の命令セットがμ-ROM の内容だけを変更することで柔軟に対処できる.さらに マイクロ命令の実行レベルでマイクロプログラムの暴走を効果的に検出し得る.
著者
橘 達弘 村田 佳洋 柴田 直樹 安本 慶一 伊藤 実
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.381-392, 2008-01-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

多目的遺伝的アルゴリズム(Multi-Objective Genetic Algorithms,MOGA)は,多目的最適化問題を解くために単一目的遺伝的アルゴリズムを拡張した最適化手法である.MOGA では複数の個体群の多様性を維持するための手法であるニッチ法やランク戦略がよく用いられるため,単一目的GA よりさらに計算量が大きくなる傾向がある.本論文では,多目的最適化問題を高速に解くことを目的とし,ハードウェア化のためのMOGA のアーキテクチャを提案する.提案方式では,世代交代モデルとしてハードウェア化に適したMinimal Generation Gap モデルを採用する.既存のニッチ法やランク戦略をパイプライン処理で実装することは困難なため,パイプライン処理に適した多様性を維持する手法を設計,採用した.また,解探索能力の向上のために,島モデル型GA の各島の目的関数を改変した並列GA モデルに即した並列実行方式を設計し,提案アーキテクチャに採用した.実験の結果,提案アーキテクチャによるMOGA 回路はNSGA-II より優れた探索能力を持つことを確認した.Multi-Objective Genetic Algorithms (MOGAs) are enhancement of Single-Objective Genetic Algorithms (SOGAs) to solve multi-objective optimization problems. Since MOGAs require a special selection mechanism such as ranking strategy and niching method to preserve diversity of individuals, MOGAs require larger computation power than SOGAs. In order to improve calculation speed of MOGAs, we propose a new method to easily implement MOGAs as high performance hardware circuits. In the proposed method, we adopt a simple minimal generation gap model as the generation model, which is easy to be pipelined. Since it is difficult to implement niching method and ranking strategy as pipelined circuits, we developed a new selection mechanism which is suitable for hardware implementation. In order to improve search efficiency, our method also includes a parallel execution architecture based on island GA. In this architecture, we use different objective function for each island. Through experiments, we confirmed that our method has higher search efficiency than NSGA-II.
著者
石原 進 太田 雅敏 行方エリキ 水野 忠則
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.2997-3007, 2005-12-15
参考文献数
11
被引用文献数
12

携帯端末向けの手軽な個人認証手法として,携帯端末の動きを用いた個人認証手法「3D 動作認証」を提案し,その有用性について基礎的評価を行う.3D 動作認証では,動作計測用のセンサを搭載した小型端末でユーザの動きをとらえ,その個人特徴を認証に利用する.小型の加速度センサは腕時計や携帯電話に内蔵することができ,ユーザは特別な入力装置を用いずに,端末を動かすだけで手軽に認証操作を行うことができる.3 次元空間での動きは筆跡という目に見える形で残ることがなく,手首のひねりなどを利用した動作を肉眼でとらえることは難しいため,他人に動作をコピーされ悪用される危険性が低い.本手法では加速度センサで得られる加速度のDP マッチングにより認証判定を行う.加速度センサを搭載した実験用端末を用い,11 人の動作登録者および27 人の成りすまし被験者による実験の結果を行った.この結果より,本手法に適した認証用動作の特性を確かめた.また,ユーザ自身のサインを動作パターンとして用いた場合,上記の特性に従って登録する動作の選別を行えば,本人拒否率を1.5%未満,動作パターンを図示された条件下での成りすまし成功率を1%未満とできることが確かめられた.We propose an individual authentication scheme using motions of a portable device 3D motion authentication. In this paper, we evaluated the fundamental properties of the scheme. The 3D motion authentication scheme measures motions with a small device equipped with an acceleration sensor for the authentication. The risk of misuse by others is low in the method, because the motion of a device in the air doesn't remain as handwriting and it is difficult to recognize the motion with the naked eye. The scheme uses DP matching to judge motions. We developed a prototype device like a mobile phone for the authentication scheme and tested it with 11 registered users and 27 attackers. We obtained a guideline for suitable motion patterns for this scheme from the results. We also obtained false rejection rate less than 1.5% and the false acceptance rate for vicious attackers who know the motion pattern show in the figure less than 1% with the user's own signature satisfying the guideline.
著者
加藤 直孝 中條雅庸 國藤 進
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.2629-2639, 1997-12-15

本システムは,主観的評価に基づく代替案選沢問題の解決を対象としたグループ意思決定支援システムである.グループの合意形成プロセスの支援を重視しており,以下の特徴を持つ.(1)グループを構成する意思決定者に意思決定に有益な情報をマルチウインドウ形式で随時表示する対話型システムである.(2)意思決定者個人の価値観に基づく視点を共有することで調整すべきコンフリクト部分の抽出が容易である.(3)感度分析の手法によるトレードオフ分析を用いてコンフリクトの解消に向けた交渉プロセスを支援し,合意への収束度を高める.(4)意思決定者にグループの合意度および各参加者の妥協の度合を提示し意思決定プロセスの変遷を明確に把握できる.本論文では,まず合意形成プロセスを重視したグループ意思決定支援の方針と手順について述べ,次に実際に開発したシステムの機能について説明する.また例題を用いて本システムの利用方法を示し,さらに評価実験に基づいて本システムの有効性を評価する.実験結果からは,本システムとの対話操作を繰り返すことでグループの合意形成の支援に有効であることが確認された.
著者
長井 超慧 大竹 豊 鈴木 宏正
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.7, pp.2308-2317, 2011-07-15

コンピュータグラフィクスやCADを代表とする多くの分野で,表面メッシュは,実在する3次元物体(実物体)の形状を表現する目的で多用され重要な役割を果たしている.実物体から表面メッシュを得る手法の1つに,物体表面のスキャンなどで得られる点群データを入力として,その形状を等値面として持つスカラー場を構築し,その等値面を近似するポリゴンメッシュを生成するものがある.この手法はスキャンデータに一般的に含まれるノイズに比較的頑健であるものの,異常値や大きいノイズを含むデータに対し適用すると過剰な面を含むなど,元の物体形状とまったく異なる表面メッシュが生成されることがある.本稿では,等値面による近似手法の代表的な方法であるPartition of Unity(PU)に大域的手法であるグラフカットを組み合わせることで,異常値を含むデータに対する頑健性を高めた表面メッシュ生成法を提案する.
著者
秋葉 翔太 崔 明根 坂本 大介 小野 哲雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.689-700, 2021-02-15

本研究ではスマートフォンの片手操作時においてグループ化された複数のターゲットをユーザがタッチした際に,グループ内のターゲットを半円状に再配置した場合のターゲット選択手法を3つ提案する.提案手法では選択ターゲットを明示的に示すために,タッチされた点を中心として,選択候補となるターゲットすべてが指に被らないように指の周りに半円状に再配置する.本研究では,再配置した目標ターゲットを選択する手法として,目標ターゲットの方向へ直接指を傾けて選択するOne Half-Pie,2段に配置されたターゲットを押し込み動作によって切り替えながら選択するTwo Half-Pie,タッチした地点からドラッグした量に応じてターゲットの選択が行われるRailDraggerの3つの選択方法を実装し評価する.実験では3つの選択手法を用いてそれぞれポインティングタスクを行い,選択終了までの時間と選択精度の観点から選択手法の評価を行った.その結果,提案する3手法において選択時間に関してはRailDraggerが,選択精度に関してはTwo Half-Pieが最も優れていることが分かった.
著者
中嶋 正之 安居院 猛 中内 健二 柳川 和雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.748-755, 1985-07-15

現在撮影ミスのなかで最も多い部類にあると考えられる手ブレに関し そのディジタル信号による自動検出アルゴリズムの提案を行う.本論文では プレの判定基準をシャッタが開放時間中 50μm以上の移動が生じたと判断することにより行い 一方向に並べた複数の画素の濃度変化の割合を検出する方式について示す.濃度検出部の画素数Nを2から16まで変化させ さらに 画像の階調レベル値を6?12ビットまで変化させてプレ検出のシミュレーションを行った結果を示す.本実験により N=4 階調レベル6ビットの構成でも94%以上のプレが検出可能であることが明らかとなった.また 本検出器を用いてプレ検出装置を構成する方式について述べている.
著者
大野 直紀 土屋 駿貴 中村 聡史 山本 岳洋
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.929-940, 2018-03-15

音楽動画の印象に基づく検索や推薦,音楽動画の類似判定のためには,音楽動画の印象推定に関する技術が必須となる.しかし,音楽に対する印象評価や映像に対する印象評価に関する研究は多数なされている一方で,音楽と映像が組み合わされた音楽動画に対する印象評価の研究は十分になされていない.我々は,音楽と映像の印象がどのように音楽動画の印象に影響するのかを調べるため,「音楽のみ」「映像のみ」「音楽動画」の3つの関係性に着目し,これらに対する8印象軸の印象評価データセットを構築した.また,それらを分析することで,音楽と映像の印象評価の組合せによる音楽動画の印象推定の可能性について検討を行った.またデータセット内の音楽動画の音楽と映像を任意に合成した音楽動画を生成し,印象評価を行ってもらうことで,音楽印象と映像印象の組合せが音楽動画の印象とどのように関係しているのかの分析を行った.その結果,音楽と映像の印象を組み合わせることによる印象推定の可能性があること,また各印象によって印象の組合せ方が異なることを明らかにした.
著者
棟朝 雅晴 高井 昌彰 佐藤義治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1815-1827, 1994-09-15
参考文献数
19
被引用文献数
4

本論文では集団分割に基づく並列遺伝的アルゴリズムにおいて、効率的な個体交換を行う交換アルゴリズムを提案する。集団分割による並列遺伝的アルゴリズムは、個体からなる集団をいくつかの部分集団に分割し、それぞれを並列計算機のプロセッサに割り当てて遺伝的アルゴリズムを実行することにより、中粒度の並列処理を実現するものである。この手法においては集団の一様化による探索効率の減沙を防ぐために部分集団間で通信ネットワークを介した個体交換を行う必要がある。マルチプロセッサシステムにおいてプロセッサ間通信量を減少させることがその性能を向上させる上で重要であるが、並列遺伝的アルゴリズムに関する従来の研究では、個体の交換がその必要性とは関わりなく一定世代ごとまたは一定確率で行われており、並列処理の効率が悪いと考えられる。本諭文で提案する個体交換アルゴリズムSigma-Exchangeは各部分集団内の適合度分布を観測し、適合度分布の標準偏差の値が一定割合減少した場合にのみ交換の手続きを起動することにより、少ないプロセッサ間通信でより精度の高い解を速く得ることを目的としている。提案する手法の有効性を示すために、非同期のメッセージ受渡しによる中粒度並列計算機であるマルチコンビュータネットワークを前提としたシミュレーション実験を行った。その緒果、代表的な組合せ最適化間題について、提案する手法が有効であることが示された。
著者
大西 亮吉 アルトゥンタシュ オヌル 吉岡 顕
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.184-195, 2016-01-15

非通信車両の混在環境における協調的な隊列走行の実現に向けて,隊列内の通信成否の確認を車間時間内に行うこと,そして通信成否の確認結果に基づき,隊列を適切に編成することの2つの課題の解決方法について述べる.前者の課題に対しては,隊列内の車両間のACKをまとめ送りする車群通信を提案する.一般的な車間時間1秒の場合の隊列の上限台数は単純にACKを送る方法で11台であったが,車群通信によって物理的な限界台数である60台まで拡張できることを示した.また短縮IDを利用することにより,24台まで1回のブロードキャストで隊列内のすべての車両間の通信成否を確認することができ,従来手法に対して効率的であることを示した.後者の課題に対しては,単純な行動指針を与えて,車群通信によって協調するマルチエージェント型のシステムを提案し,通信状況の変化,特に通信障害の発生や非通信車両の割込みに対して適切に隊列を編成できることを示した.Toward the realization of cooperative vehicle platooning in a mixed environment of non-communication vehicle, we focus on two issues: communication failure detection within a vehicle headway time and vehicle platoon organization adaptive to that detection. As a solution for the first issue, we propose a group communication to bundle multiple ACKs among vehicles in the platoon. During the typical headway time of one second, the platoon may only contain 11 vehicles in the naïve ACK fashion. Using the group communication, we show that it can be expanded up to 60 vehicles that is the physical limit number. Moreover up to 24 vehicles, by utilizing the short ID, it is possible to check the communication failure among all vehicles in the platoon in one broadcast time. For the second issue, we propose a multi-agent system to be coordinated based on simple action guidelines, using the group communication. We show that it is possible to adaptively organize vehicle platoon to the communication situation changes, especially of communication failure and of non-communication vehicle interruption.
著者
出口 幸子 白井 克彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.642-649, 2001-03-15

筆者らは箏曲の楽譜データベースを実現するために,箏曲の旋律分析を行っており,その基礎として必要な音律と音階を規定することができたので報告する.箏曲の音律と音階を規定する文書は存在しないが,中国雅楽,中国俗楽,日本雅楽を経て箏曲に至っている.本研究では,箏曲譜から作成した楽譜情報ファイルの分析から箏曲の音律と音階を規定できることを示し,かつ中国雅楽の理論を適用できることを示した.本研究の目的は情報処理における対象領域の構造の規定であるので,明確に定義されている中国雅楽の理論を用いて検討した.音律については,楽譜情報から連続する2音の音程を抽出し,半音と全音が出現する音高が限定していることから,半音が生じる2音間の音程を $x$,生じない音程を $y$,および全音の音程を $xy$ として1オクターブ中の各音間の音程を決定した.これより,1オクターブ中の12音の具体的な周波数比を求めた.また,このように規定した音律が,中国雅楽の音律である十二律の理論に適合することを確認した.音階については,中国雅楽の音階である七音音階,および十二律と七音音階を対応付ける均の概念を用いて,箏曲の音階と均を理論的に定義した.一方,楽譜情報ファイルを調弦の変化する点で分割し,各音高の出現頻度より,均の存在を確認して,調弦と均との対応を考察し,また,七音音階であることを確認した.
著者
田村 直良 片山 卓也
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.260-267, 1984-03-15

本論文では双方向性階層的関数型プログラミングBi-HFPを提案する.HFPでは 一つの処理単位をモジュールによって表す.各モジュールは値の授受のために入力属性挫出力属性のリストをもつが この属性の値がある条件(結合条件)を満たしたときに 親モジュールをより簡単な処理を行う子モジュールに分割する.分割時には 親 子モジュール間の属性方程式(意味規則)に従ってさらにいくつかの属性値が決定される.Bi-HFPにおいてはHFPと同一な記述を 結合条件が満たされたときに子モジュールが親モジュールに統合されるというようにも拡張解釈する.Bi-HFPの記述例としてパーザについて述べる.われわれの方法では 扱う文脈自由文法の非終端記号をモジュールに 生成規則をモジュールの分割統合に対応させる.処理する入力文字列を親モジュールの入力属性に与え この文字列の先頭が適したものであるかどうかを結合条件に用いるとトップ・ダウン・パーザが記述できる.また 子モジュールに対応する部分文字列が連続であるかどうかを結合条件とするとボトム・アップ・パーザが得られる.両方式とも自然言語の意味についての属性 属性方程式を導入することによって自然言語処理へと拡張することが可能である.われれはまた Bi-HFPの操作的意味を定義する.Bi-HFPの計算の状態は モジュールの階層的分割関係を示す木(計算木)の集合により表されるが この状態に関する2項関係によりBi-HFPの計算過程は定義される.
著者
井上 亮文 平石 絢子 柴 貞行 市村 哲 重野 寛 岡田 謙一 松下 温
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.38-50, 2005-01-15

シナリオの存在するシーンを一般のユーザが撮影する場合,被写体の数が多かったり,撮影環境がそのつど異なったりするため,効果的なカメラワークを事前に計画することは困難である.そこで本論文ではシナリオ情報に基づいてカメラワークを自動的に計画する手法を提案する.撮影対象としてオーケストラ演奏を想定し,シナリオである楽譜から被写体の候補を決定する方法と,各カメラのショットを決定するための優先度の計算方法を定義している.実際にショットを接続して1 本の映像を編集する実験の結果,提案手法はシナリオや優先度を考慮しないショットで編集したものよりも変化に富んだ映像を制作できることが分かった.また,カメラの配置に適応したショットを提示できることが分かった.
著者
中島 秀之 小柴 等 佐野 渉二 落合 純一 白石 陽 平田 圭二 野田 五十樹 松原 仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1290-1302, 2016-04-15

筆者らは,デマンド応答型公共交通の一種であるSmart Access Vehicle System(SAVS)の社会実装を目指して,これまでにシミュレーション実験による利便性評価を行う中でその効率性を確認してきた.本論文では,SAVSの実装,実証実験,およびシミュレーション評価実験について述べる.2回にわたる実証実験において,SAVSが実際に稼働することを確認した.フルデマンド型乗合車輛複数台のリアルタイム自動配車は筆者らの知る限り世界初であり,このシステムを全自動で稼働できたことは,Smart Access Vehicleサービスの社会実装を行ううえで有用な成果であると考えている.
著者
中島 秀之 小柴 等 佐野 渉二 落合 純一 白石 陽 平田 圭二 野田 五十樹 松原 仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.1290-1302, 2016-04-15

筆者らは,デマンド応答型公共交通の一種であるSmart Access Vehicle System(SAVS)の社会実装を目指して,これまでにシミュレーション実験による利便性評価を行う中でその効率性を確認してきた.本論文では,SAVSの実装,実証実験,およびシミュレーション評価実験について述べる.2回にわたる実証実験において,SAVSが実際に稼働することを確認した.フルデマンド型乗合車輛複数台のリアルタイム自動配車は筆者らの知る限り世界初であり,このシステムを全自動で稼働できたことは,Smart Access Vehicleサービスの社会実装を行ううえで有用な成果であると考えている.
著者
横山 昌平 石川 博
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.56-67, 2011-01-15

近年,人類の創出する情報量は急速に増大しており,さらにセンサネットワーク等,莫大な情報を創出する新技術の普及が迫っている.そのような増大し続ける情報の「見える化」には,情報を閲覧するデバイスの高解像度・高精細化が重要である.本論文では複数のモニタを並べて仮想的な高解像度表示領域を得るTiled Display Wallという手法による,高精細な「見える化」基盤技術を提案する.Tiled Display Wallの従来手法ではOSレベルでの簡易な仮想デスクトップか,あるいは高度な分散レンダリングをともなう実装が必要であり,実際的なアプリケーションにおける開発・運用が容易ではなかった.その問題に対し,我々は,Tiled Display Wallのアプリケーションを軽量なWeb技術に基づいて容易に開発する基盤技術を提案する.Web技術は開発者人口も多く,またすでに多数のサービスが提供されている.本論文では提案手法を用いた応用の例示として,Google Maps API等既存のWeb APIを利用したマッシュアップによる超高解像度Webアプリケーションの実例を紹介する.
著者
角田 啓介 小柳 隆人 坂井 俊之 宮下 直也 箕浦 大祐
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1413-1425, 2019-08-15

本稿では,企業や公共機関に代表される階層型組織における業務効率化を目的とし,複数チャットボットを連携させた報告業務支援システムを提案する.多くの場合,組織は階層構造をなし,報告業務は多数の担当者から彼らを束ねる少数の管理者へとなされる.この場合,以下2点の課題がある.(1)担当者は漏れ抜けなく迅速に報告業務を実施することが困難な点(2)管理者は多くの担当者からの報告を迅速かつ的確にとりまとめ,状況の把握したうえで意思決定を行い,担当者へ指示することが困難な点.本稿では上記課題を解決するため,複数チャットボットを連携させた報告業務支援システムを提案する.提案するシステムでは,担当者は報告ボットと呼ばれるチャットボットとの対話を通じて場所を問わず必要な情報を漏れ抜けなく入力でき,迅速かつ正確な報告を実施できるようになる.また管理者は複数の報告ボットより報告された内容をまとめる管理ボットにより,自動的に報告結果のまとめや進捗状況の管理ができるようになり,迅速かつ正確な現状把握と意思決定が可能になる.そして提案システムではこれらのチャットボットが連携することで,担当者・管理者双方の業務効率化が実現される.最後に,提案システムを6,000名規模の大企業での災害対策訓練における安否確認報告に適用した結果,提案システムを用いない場合と比較して迅速に安否情報を集計できたことを確認でき,提案手法の有効性を確認した.
著者
長 健太 大須賀 昭彦 本位田真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.12, pp.3165-3178, 2006-12-15
参考文献数
31
被引用文献数
1

多数の小型センサから構成されるワイヤレスセンサネットワーク(WSN)を用いたビルオートメーションシステム,環境モニタリングシステム,サプライチェーンモニタリングシステムなどが実現されつつある.WSN 内の大量のセンサ群は環境に広範に分散配置され,かつそれらに搭載されているバッテリはきわめて限られているため,WSN アプリケーションにおいては電力消費量を抑えることが重要になる.WSN アプリケーションを実現するためのフレームワークは,消費電力と応答性能の間で発生するトレードオフを正しく扱える必要がある.我々は,複数の知的移動エージェントを用いてマルチパーパスなWSN アプリケーションを構築するというアプローチをとった.我々のフレームワークはエージェント群の動作方式を変化させることで,アプリケーションごとに異なる応答性能の要求に適応することができる.また,ビルディングオートメーションにおける移動エージェント群の動作をシミュレートすることで,消費電力と応答性能に関する評価を行った.A wireless sensor network (WSN) that is a network of many small sensors is being used for many applications such as structure and equipment monitoring, environmental monitoring and supply chain monitoring. Since these many sensors are widely spread in the environment and a battery of sensors is very limited, main concern for WSN applications is reducing battery consumption. Framework for these WSN applications should handle the trade-o. between battery consumption and response time. Our approach for this problem is using a multi intelligent mobile agent framework to implement multi-purpose WSN applications. By changing the movement pattern of agents, our framework can adapt to the requirements of response time that di.er from each application. We evaluate battery consumption and response time with simulating mobile agents for the building automation WSN application.
著者
山下 直美 葛岡 英明 平田 圭二 工藤 喬 荒牧 英治 服部 一樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.981-993, 2017-05-15

本論文では,2つの調査に基づいて,うつ病患者の家族介護者を支援するための知見を述べる.1つ目の調査では,患者の気分の上下や予期せぬ振舞いなどに対処する家族介護者の介護活動の現状とニーズを把握する.その調査結果をふまえて介護記録Webアプリケーション「みまもメイト」を開発する.2つ目の調査では,家族介護者がみまもメイトを6週間にわたって利用することによって,家族介護者のうつ病患者に対する関わり方や患者との人間関係がどのような影響を受けたかを調べる.利用後のインタビュー調査から,家族介護者がみまもメイトを利用することによって,自身の介護活動を客観的に見つめ直す効果がある(第三者視点の導入)ことが分かった.さらに興味深いことに,みまもメイトは患者,病気,家族介護者の間の関係を変化させ,これによって,家族介護者とうつ病患者間のコミュニケーションを改善する効果があることも分かった.具体的には,みまもメイトを用いることによって,家族介護者単独で病気をかかえる患者に対処するという構図(家族介護者vs.患者+病気)から,患者と家族介護者が協調しながら病気に立ち向かうという構図(家族介護者+患者vs.病気)へと変化した.
著者
本田 新九郎 富岡 展也 木村 尚亮 岡田 謙一 松下 温
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.1454-1464, 1997-07-15
被引用文献数
8

本稿では,在宅勤務の問題点である,コミュニケーションの機会の減少からくる個人の心理負担,社会からの疎外感を解消した仮想オフィスシステムについて述べる.システムでは,オフィス内での自然なインフォーマルコミュニケーションの実現のために,コミュニケーションの支援技術であるアウェアネスの概念を発展させた「位置アウェアネス」を考慮した.位置アウェアネスの実現に際しては,3次元仮想空間内に社員の座席を設けた「大部屋メタファ」に基づく仮想オフィスを構築した.このことにより,これまで考えられていなかったコミュニケーションの空間依存性を考慮したより自然なインフォーマルコミュニケーションが実現された.また「アウェアネススペース」という新たな概念の導入により,コミュニケーション空間とパーソナルスペースの確保の両立をはかった.個室ベースのシステムとの比較による評価から,在宅勤務における問題点解消について良好な結果を得た.In this paper,we describe a virtual office system that dissolves the estrangement feeling of home-office workers,which comes from less opportunity of communication.In order to realize a natural informal communication in the virtual office,the system has considered the new awareness concept "Position Awareness".We have realized the "Position Awareness" by building a virtual office based on the "Shared-Room-Metaphor" on a 3D graphics workstation.By doing this,the system enabled more natural informal communication that depends on the positional relationship.And also by introducing the new concept of "Awareness Space",both the facility of communication and personal space was made compatible.By comparing with the result of the system based on the private room,we have gained a better result on solving the problem of home-office.