著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河 鈴木 淳 吉田 ますみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.267-277, 2018-02-15

近年,デジタルアーカイブの普及にともない,インターネットを介した歴史資料(以下,史料)へのアクセスが容易となっている.一方,研究者が研究対象とする史料のすべてがインターネット上で公開されているとは限らず,また実証的な歴史研究が現存するすべての関係史料を検討することを基本にするため,実際に文書館や図書館に赴き,史料の収集を行う例も多い.本研究では史料収集や整理に多大な労力を要する歴史研究の支援を目的とし,複数の研究者の共同作業による史料収集・整理プロセスの効率化,および異なる専門知識を有する研究者の協調的な史料分析を支援するシステムを開発する.また,外交文書の送付先の決定過程に関する歴史研究を行い,開発したシステムの有用性を評価する.Digital archive has become popular recently, and this facilitates easy access to historical materials by the Internet. On the other hand, it is still common for researchers to gather materials by going to libraries and archives. This is because empirical historical research requires to examine all materials related to research objectives. In this study, the system is developed in order to gather and manage materials efficiently and support collaborative research with several researchers. This system manages materials on the Internet, and enables several researchers to accumulate and analyze materials collaboratively, which takes a great deal of effort individually. The effectiveness of the proposed system is evaluated by an experiment with several researchers to analyze the process of deciding addresses of diplomatic documents.
著者
山下 大輔 間 博人 山本 泰士 本田 雄亮 三木 光範
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.715-722, 2018-02-15

近年,コンピュータの直感的な操作としてジェスチャ認識に注目が集まっている.専用のジェスチャ認識機器のみでなく,モバイル端末を用いたジェスチャ認識の研究がある.しかし,追加機器が必要であることや,カメラを用いることで消費電力やプライバシの問題が発生するなどの課題がある.本論文では,モバイル端末内蔵の照度センサを用いたハンドジェスチャ認識手法を提案する.端末表面の明暗変化を取得して,ハンドジェスチャ認識を行う.モバイル端末内蔵の照度センサを用いることで,追加の機器を必要とせず,消費電力やプライバシを考慮したハンドジェスチャ認識を実現した.本論文で提案するハンドジェスチャ認識は,訓練データを用いた学習によって行う.提案手法における認識精度の検証を行い,正確なハンドジェスチャ認識を可能であることを確かめた.また,提案手法を用いた具体的なアプリケーション例をあげることで,提案手法の応用可能性を示す.タッチ操作が容易ではない状況や画面の確認が不要な状況において有効に活用可能なハンドジェスチャ操作対応のアプリケーションを実現した.
著者
横田 智大 橋田 朋子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.703-714, 2018-02-15

本研究では,ハンドジェスチャと肌上へのタッチをともに認識することで,ユーザの腕を多様な入力が可能なインタフェースとする.従来研究では,ジェスチャとタッチのいずれか一方のみを認識しているものが多く,2つの動作をともに扱った研究はほとんどない.我々はアクティブ音響センシングの手法を用いることで,シンプルなセンサの構成を持った共通のシステムにより,ハンドジェスチャと肌上へのタッチを実時間でともに認識可能とする.実装したシステムについて,まずハンドジェスチャ,前腕の肌上へのタッチ,手の甲の肌上へのタッチの各認識を個別に評価した予備実験の結果を報告する.次に,ハンドジェスチャと前腕の肌上へのタッチを組み合わせた動作を認識し,その評価を行った実験の結果を報告する.その結果をもとに,ハンドジェスチャと肌上へのタッチ,そしてそれらを組み合わせた動作を1つのシステムで認識する手法として,複数の識別モデルを条件に応じて切り替えながら用いるアルゴリズムを提案する.最後に,そのシステムを利用したアプリケーションの例を紹介する.
著者
原田 篤史 西垣 正勝 曽我 正和 田窪 昭夫 中村 逸一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.8, pp.2093-2105, 2003-08-15
参考文献数
10
被引用文献数
1

様々な場面で使用されるようになってきた電子文書には,追記によってのみ更新が許されるライトワンス型の文書が含まれており,電子カルテなどはその好例である.ライトワンス文書では,たとえ文書中に誤りが発見されたとしてもすでに書かれている記述を削除することが許されず,修正内容を追記として付加するしかない.ライトワンス文書を電子文書として扱う際には,データの完全性と追記の順序性の保証が必要となる.本論文は,特別なハードウェアに頼ることなく,電子化されたライトワンス文書の安全な管理を実現する方式を提案する.本方式では,追記データ単位で当該データを作成したユーザのディジタル署名と文書を保存する文書管理システムのディジタル署名を2重に付加することにより,データの完全性を保証している.同時に,文書中の各追記データにおけるユーザとシステムのディジタル署名はそれらすべてをリンキングさせることにより,追記データの順序性を保証するとともに,文書改竄に対する耐性を強化している.タイムスタンプサーバなどに代表される従来のリンキング方式とは異なり,文書ごとに独立した「文書本位」の署名のリンキングをすべてのユーザと文書管理システムが積極的にリンキングに協力する方式によって行うことで,文書の改竄困難性が非常に高く,特にライトワンス文書の管理に優れたシステムを実現している.本方式は既存の標準的な署名アルゴリズムにより実装が可能で,かつ,異なった署名アルゴリズムを用いる複数のユーザが1つの文書に対して追記することもでき,運用上の柔軟性をあわせ持つ.There are documents which require to be stored in a write-once format, e.g., medical records. Such documents can be updated only by adding new records. Even when any erratum is found, a document is not allowed to be written over, instead, new record for errata is added to the document. Moreover, it is also required to keep the order of records in a document. This paper proposes a secure database management system for a ``write-once document''. In this system, two types of digital signatures are added to each record to maintain the integrity of a document. All those signatures are created with a linking scheme; the linkage between records and signatures makes it difficult for a cracker to alter/remove/insert any record or change the order of records. The system proposed here employs a ``document-oriented'' linking scheme with both of users' and system's digital signatures, whereby the system realizes a secure write-once data management system with no special hardware. In addition, this system does not depend on a particular signature algorithms. That is, a variety of users each of who uses different signature algorithms can add new records to any document in the system.
著者
小林 良太郎 小川 行宏 岩田 充晃 安藤 秀樹 島田 俊夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.349-366, 2001-02-15
参考文献数
25
被引用文献数
7

近年のマイクロプロセッサは,スーパスカラ・アーキテクチャにより,より多くの命令レベル並列(ILP: Instruction-Level Parallelism)をプログラムより引き出し高性能化を図ってきた.しかし,この方法は,スーパスカラ・プロセッサが引き出すことのできる命令レベル並列の限界や,ハードウェアの複雑さの増加により,限界が見え始めてきた.これを解決する1つの方法は,ILPに加えスレッド・レベル並列(TLP: Thread-Level Parallelism)を利用することである.本論文では,レジスタ値の同期/通信機能を備え,複数のスレッドを並列に実行するSKYと呼ぶマルチプロセッサ・アーキテクチャを提案する.SKYは,非数値計算応用で高い性能を達成することを目的としている.このためには,細粒度のTLPを低オーバヘッドで利用することが要求され,SKYでは,命令ウィンドウ・ベースの同期/通信機構と呼ぶ機構を新たに導入した.この機構は,従来のレジスタ・ベースの同期/通信機構と異なり,受信待ちの命令に後続する命令の実行を可能にするノンブロッキング同期を実現している.これにより,TLPとILPを同時に最大限利用することを可能とする.SPECint95を用いた評価により,8命令発行の2つのスーパスカラ・プロセッサにより構成したSKYは,16命令発行のスーパスカラ・プロセッサに対して,最大46.1%,平均21.8%の高い性能を達成できることを確認した.Current microprocessors have improved performance by exploiting more amount of instruction-level parallelism (ILP) from a program through superscalar architectures.This approach, however,is reaching its limit because of the limited ILP available to superscalar processors and the growth of their hardware complexity.Another approach that solves those problems is to exploit thread-level parallelism (TLP) in addition to ILP.This paper proposes a multiprocessor architecture, called SKY,which executes multiple threads in parallel with a register-value communication and synchronization mechanism.The objective of SKY is to achieve high performance in non-numerical applications.For this purpose, it is required to exploit fine-grain TLP with low overhead.To meet this requirement,SKY introduces an instruction-window-based communication and synchronization mechanism.This mechanism allows subsequent instructions to waiting instructions for receiving registers to be executed unlike previously proposed register-based mechanisms.This capability enables fully exploiting both TLP and ILP.The evaluation results show that SKY with two eight-issue superscalar processors achieves a speedup of up to 46.1% or an average of 21.8% over a 16-issue superscalar processor.
著者
加藤 修 飯塚 博幸 山本 雅人
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2354-2364, 2016-11-15

二人零和有限確定完全情報ゲームにおいてすでにAIは人間に匹敵する強さとなっており,最近では麻雀や人狼など,多人数ゲーム,不完全情報ゲーム,不確定ゲームが新たな研究対象として注目を集めている.そのような中で不確定ゲームとしてデジタルカーリングがある.デジタルカーリングはカーリングの二人用コンピュータゲームであり,AIどうしを競わせカーリングの戦略を解析することを目的とした不確定ゲームのテストベッドとして開発された.本研究ではデジタルカーリングにボードゲームの探索手法を適用し,投球目標座標と回転方向を候補手,盤面状態を局面としてデジタルカーリングにExpectimaxによるゲーム木探索を適用する手法を提案する.Expectimaxではゲーム木内で確率的に推移するノードを用いており,ゲームの不確定性を考慮した探索が可能となっている.提案手法の有効性を検証するため,不確定性を考慮する場合としない場合それぞれにおいて探索の深さを変化させ既存AIとの対戦実験を行った.その結果,提案手法による不確定性の考慮を行った場合に勝率が上昇し,また不確定性を考慮した場合のみ探索の深さを増やすことで勝率が上昇したことから,デジタルカーリングにおける提案手法による不確定性を考慮した先読みの有効性が明らかとなった.
著者
川口 喜三男 王思鴻
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.521-530, 1983-07-15

漢字四角号碼が中国語漢字入力の有力な手段として利用し得ることに着目し はじめに 四角号碼の数学的構造を明確にするため 四角号碼を伴う漢字の抽象的モデルー字形モデルという-を導入する.この字形モデルは一種の代数系として取り扱うことができ そこでは あらゆる漢字の集合は14の字形類に類別され 2種の並置演算と6種の包摂演算に関して閉じた系をつくる.このため すべてのより複雑な漢字はより単純な字または部首からこれらの演算を施すことによって得られると同時に その四角号碼もこれに伴い代数演算によって機械的に求められる.さらに 四角号碼と耕音を組み合わせた中国語漢字入力法として'声形法'を提案する.この声形法によれば 最大4文字(4打鍵)からなる漠字コードの入力によって目的の漢字は90%以上の確率で正しく選択されることが実際例をもって示される.
著者
宮崎 智己 伊原 彰紀 大平 雅雄 東 裕之輔 山谷 陽亮
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.2-11, 2018-01-15

オープンソースソフトウェア(OSS)開発はオンラインでの非対面コミュニケーションを通じた協調作業を基本とする.OSSコミュニティに参加する開発者が快適に継続的に活動を行うためには,開発者がお互いを配慮するためのコミュニケーション上の工夫(本研究におけるPoliteness)が必要になると考えられる.本研究では,Politenessを定量化するためのツールを用いて,OSS開発における膨大な量のコミュニケーションデータからPolitenessを数値化し,開発者のPolitenessと活動継続性との関係を分析する.Apache HTTP ServerおよびPythonプロジェクトを対象とするケーススタディを行った結果,開発者自身のPolitenessと活動継続性には一定の関係があることを確認した.本研究で得られた知見は,開発者の離脱を予防・阻止するための方策を立案することに役立てることができる.
著者
関 栄二 三輪 誠 鶴岡 慶雅 近山 隆
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2533-2543, 2012-11-15

モンテカルロ木探索(MCTS)の登場により,コンピュータ囲碁プレイヤの棋力は大幅に向上した.こうした成功を受け,静的評価関数とアルファベータ木探索による従来の手法が成功を収めてきた将棋においても,モンテカルロ法の適用が模索されている.MCTSの改良は,モンテカルロ木の扱いに関するものと,プレイアウトの方策に関するものに大別される.本稿では後者に着目し,モンテカルロ将棋の方策の学習に,囲碁で成功を収めているシミュレーション・バランシングを適用することを提案する.実際に,3,000局面でのバランシング方策の学習を行った.対戦実験による評価の結果,提案手法の特に序中盤での有用性を示すことができた.また,バランシングを適用するうえで,詰み付近の局面における将棋特有の課題を解析し,プレイアウトに詰み探索を導入することで一定の改善が行えることを示した.Since the advent of Monte-Carlo tree search (MCTS), strong computer players using Monte-Carlo methods have been built for the game of go. Following these successes, application of the methods has been explored to the game of shogi for which conventional methods have also been successful. Improvement efforts of MCTS can be roughly classified into two: the way to deal with Monte-Carlo tree and the simulation policy. In this paper, we propose to apply simulation balancing that has succeeded in go to learn the policy of Monte-Carlo shogi players. We use this learning method with 3,000 positions and evaluate the performance. The proposed method is found to be effective in opening and middle game. Then, we analyze a problem unique to shogi endgames and alleviate it by performing checkmate search in playout.
著者
石井 晃 志築 文太郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.657-669, 2018-02-15

スマートウォッチのような超小型タッチスクリーン端末(以降,超小型端末)に搭載されるタッチスクリーンは,身に付けるという特性上,小型で軽量であることが要求されるため超小型である.そのため,Fat finger problemやオクルージョンの問題が発生し,ユーザは小さなターゲットを選択しにくい.この問題は,ふきだし表示を用いて操作している指によって遮蔽されている領域を遮蔽されていない領域へ表示することにより解決することができる.しかしながら,超小型端末向けのふきだし表示のデザインについてはこれまで深く調査されてこなかった.本論文では,3つのデザイン要素(それぞれの要素には2つの水準を設けた)を選び,そして超小型端末上の選択タスクにおいて8つのふきだし表示の性能を実験的に調査した.実験の結果,先行研究における結果と一部一致したが,超小型端末ならではの結果も得ることができた.ふきだし表示内の表示はなめらかに変化させたほうが選択速度が速く,エラー率も減少し,また精神的負荷も減少した.また,ふきだし表示内に正確なタッチ位置を示すポインタを表示したほうがエラー率が減少した.デザイン要素としてのふきだし表示の位置は選択タスクにおける性能に影響を与えなかった.
著者
稲村 勝樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2627-2640, 2016-12-15

近年,パスワードリスト攻撃など,ユーザの安易なパスワード設定を原因とする不正アクセスが多発している.そのため,パスワードとあわせて認証を行う方式の提案・実装が急務となっている.一方,CHAPはインターネット上のサービスにおいて認証方式のデファクトスタンダードの1つとなっている.したがって,CHAPから新しい認証方式に変更することは容易なことではない.そこで,本稿ではサーバやユーザ端末での処理方法を改良することで,CHAPの構造をそのまま活用しながらパスワードとそれ以外の認証を同時に行うことができる新しい認証方式を提案する.これにより,既存の認証プロトコルで多要素認証が実現可能となる.また,サービスの継続性を考慮したプロキシサーバ型改良方式も提案する.さらに提案方式のテストシステムを構築し,パフォーマンス測定による実装評価を行う.これにより,提案方式を使用することで低コストでパスワード認証と他の認証の併用が実現できることを示す.Recently, unlawful access often happens caused by users' mistakes of password setting, e.g. password-list-attacks. Therefore, proposing/implementation of other authentication methods, which are used together with password authentication, are urgent. Meanwhile, CHAP is used a lot of services over the Internet as de facto standard. Therefore, it is not easy to change a new authentication protocol into CHAP. I propose a new method which can send many types of authentication codes using intact CHAP with revising calculation on user terminal and servers. As a result, a multi-factor authentication over existing password-authenticaion protocol can be realized. In addition, I propose a revised method of my proposal using a proxy server because of continuity in services. Furthermore, I structure a test system using proposed method and evaluate performances of it. By using my proposal, other authentication method using password authentication together can be realized with a minimum cost burden.
著者
Takeshi Miura Takaaki Kaiga Takeshi Shibata Madoka Uemura Katsubumi Tajima Hideo Tamamoto
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, 2018-02-15

This study proposes a method to systematically visualize the motion-characteristic distribution of Japanese folk dances passed down in a certain area. This is accomplished by adopting an approach that involves analyzing motion-capture data collected from the dances. The visualization process in the proposed method consists of three stages. The first stage is the modeling of the relationship among motion-capture data, folk dances, and the settlements in which folk dances have been passed down. This relationship is modeled as a hierarchical-structure model. The second stage is the extraction of motion characteristics from motion-capture data streams. The motion characteristics of each data stream are summarized as a fourteen-dimensional feature vector. The third stage is the visualization of the motion-characteristic distribution of the dances investigated. Each of the dances is mapped on a two-dimensional scatter plot in accordance with the feature quantities obtained in the second stage. Information on the hierarchical-structure model constructed in the first stage is also displayed. The analysis results for the distribution of Bon Odori dances showed that the proposed method could have almost completely visualized the motion-characteristic distribution of sample folk dances, while also demonstrating consistency with the knowledge of the dances acquired in the previous studies.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.26(2018) (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.26.74------------------------------
著者
加藤 常員
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.341-350, 2018-02-15

地理情報システム(GIS:Geographic Information System)は歴史研究の場で有効な研究ツールとして認識されつつある.歴史研究分野でのGISの利活用では旧国境,旧郡境,旧村境などの歴史的境界の空間データが不可欠である.歴史的境界は,時期や研究者の見解により異なる箇所やもともと判然としない箇所も多い.そのため近世以前の歴史的境界の空間データ化は進んでいない.歴史的境界線は地方史誌などに掲載されているが,それら地図の作成にあたっては現行の境界線や地形が参照されたと考えられ,現行の地勢図などが下図に使用されたと推定できる.本稿では,判然としない箇所を含む歴史的境界の空間データ化の手法を提案する.提案する手法は,求める境界にかかわる複数の領域(たとえば村)のおおよその形状データを与え,面を核とするボロノイ分割を活用して分割線を求める.求めた分割線に地勢図を参照して緯度・経度情報を付与し,空間データに仕立てる.提案手法は細密な境界線空間データの生成をめざすものではない.歴史的境界の特性をふまえた,大まかな境界線のデータ化をめざすものである.提案手法に従った歴史的境界線生成システムを試作し,境界線データの生成実験を行った結果を示す.
著者
堤 智昭 田島 孝治 小助川 貞次 高田 智和
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.278-287, 2018-02-15

本研究では,訓点の一種であるヲコト点を対象とし,計算機を用いて解析することを目的としたヲコト点の構造化記述方式を提案する.提案方式に基づいてヲコト点図の電子化を支援する入力支援ツールを開発し,主要ヲコト点26種を電子化する.さらにそれを用いてヲコト点の基礎計量を行う.基礎計量では,ヲコト点を構成する要素である「読み」・「位置」・「形状」を対象とした.その結果,最も多く登場する「読み」は「ス」「ナル」「ナリ」「タリ」であり,形状は「・」であることや,漢字の四隅に多くのヲコト点が付与されることなどを定量的に示した.また,主要ヲコト点26種の電子化処理と基礎計量の結果を受けて,提案する構造化記述方式の有効性を確認した.
著者
田中 勝 村川 猛彦 宇都宮 啓吾
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.288-298, 2018-02-15

現在,古写経を中心とした文書の電子化が進められている.しかしながら漢文に送り仮名やヲコト点が付与された,訓点資料においては,文書の翻刻(テキスト化)やそれを管理するシステムの提供が十分ではなかった.本研究では,訓点資料における解読支援環境の確立を目指し,訓点資料を対象とした翻刻支援システムの構築を行ってきた.システム構築にあたり,訓点資料が手書き文書であることや,訓点資料に含まれる多様な記述情報に対応することを考慮して,訓点資料の記述情報を文字領域や点座標としてデータベースに格納し,情報間の関連付けを行うことで解決を図った.また,HTML5 Canvasを用いた画像ベースのインタフェースにより,直感的な操作で資料画像上に入力する仕組みを実現し,行・列番号や読みの自動推定機能をサーバ側で実装することで,ユーザによる入力の手間を省く試みを行った.評価実験により,システムの操作性に問題がないこと,1件ごとの平均入力時間は約3秒で十分に実用的であること,および自動取得したデータの誤り数は少なく手動修正が可能な範囲であることを確認した.
著者
床井浩平 森木 大樹
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.1558-1565, 2006-05-15

コンピュータグラフィックスにおいて自然現象や自然物体を表現することは,シーンの現実感を向上させるのに有効な手段である.なかでも積雪の表現は,季節感を表すのに重要な役割を果たす.しかし,任意のシーンを覆う雪の形状(積雪形状)の人手によるモデリングは非常に手間のかかる作業となる.このためシミュレーションなどによって,自動的に積雪形状を求められることが望ましい.本論文では,降雪を妨げる遮蔽物の有無や降下する雪の不規則な動き,および積雪後の雪の移動を考慮した,積雪形状の高速なモデリング手法を提案する.この手法は遮蔽物の検出と雪の不規則な動きの影響の算出にシャドウマップ法を用い,着地した雪を安定な位置へ移動させることによって最終的な積雪形状を決定する.本手法は降雪により刻々と変化する積雪形状を,リアルタイムに再現可能である.
著者
町田 樹 望月 大輔 安孫子 悠 大岸 智彦 峰野 博史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.168-178, 2018-01-15

今日のモバイルデータ通信は時間帯や地域によって通信インフラの負荷が偏り,モバイルデータトラフィックの収容効率が低下するという課題がある.そこで遅延耐性のあるモバイルデータトラフィックを適切に遅延させ,通信インフラの負荷を分散してモバイルデータ通信の空間利用効率を高めるモバイルデータオフローディングプロトコル(MDOP)を提案してきた.このMDOPは,eNBの負荷状態,モバイル端末の移動,データの遅延耐性を考慮し,トラフィックの送信レートを制御することで,時間的,空間的,通信路的の3つの次元でモバイルデータ通信の負荷を分散させる通信プロトコルである.本稿では特に,MDOPの空間的オフローディングを実現する具体的な処理を検討し,ネットワークシミュレーションによって評価した.実際の人の移動を再現したシナリオで詳細評価した結果,高負荷な基地局では滞在中のユーザが多くのデータを送信できること,移動ユーザは低負荷なeNBで多くのデータを送信できることで,遅延耐性のあるモバイルデータトラフィックのピークシフト可能なことを確認した.The demand for mobile data communication is increasing rapidly. Furthermore, as a feature of the traffic, there are two localities "temporal locality" and "regional locality". In order to solve these localities of the traffic, we have proposed Mobile Data Offloading Protocol (MDOP). MDOP controls the delay tolerant data such as the data of cloud sync storage and uploading the data of drive recorder and so on. Furthermore, MDOP balances the load of eNBs using three offloading methods of time-wise offloading, place-wise offloading and link-wise offloading. MDOP has not yet solved regional locality problems; hence we propose the place-wise offloading in MDOP. We evaluated the performance through network simulation with mobility scenario based on real world user's mobility. From these results, it was confirmed that the place-wise offloading was able to send more data by staying user in high load eNBs, send more data at low load eNBs and peak shift of mobile traffic localities by using delay tolerant data.
著者
秋山 豊和 寺西 裕一 岡村 真吾 坂根 栄作 長谷川 剛 馬場 健一 中野 博隆 下條 真司 長岡 亨
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.1249-1264, 2008-03-15

大阪大学では,高いセキュリティレベルと標準的なインタフェースを兼ね備えた認証技術として注目されている公開鍵基盤(PKI: Public Key Infrastructure)に基づく全学IT 認証基盤を導入した.本学で導入した全学IT 認証基盤システムでは,署名・暗号化,学内認証,グリッドシステム認証,という異なるポリシに対応する複数のCA を導入・共存させている.これら複数のCA 向けの証明書発行を自動化することにより,安全性と利便性を両立した証明書発行サービスを実現している.また,PKI に対応したシングルサインオン(SSO)機能を導入し,学内ユーザが各システム間で統一的なインタフェースにより認証を行えるようにした.アプリケーションWeb サーバに認証機能を組み込むエージェント型のSSO 機能の導入により,1 度アプリケーションをSSO 対応させてしまえば,アプリケーションを変更することなくシームレスにパスワード認証からPKI 認証へ移行・共存することが可能となった.さらに,ユーザID 体系として,公開用に変更を許容するユーザID と,システム間連携用に1 人に1 つ決まる不変のユーザID とを設け,それらの対応付けを内部的に行うことにより,安全性・柔軟性ある運用を可能とした.本稿では,本認証基盤の設計と実装について述べるとともに,システムの導入により得られた技術的ノウハウや今後の展開についても述べる.
著者
渋沢 潮 林 貴宏 尾内 理紀夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.1512-1523, 2007-03-15
参考文献数
15
被引用文献数
5

本論文では,Why 型質問に対する回答をWEB から自動で抽出するシステムの実現を目的として,(1) Why 型質問に対する回答文が出現する位置をWeb ページから特定する回答位置特定アルゴリズム,(2) 得られた回答文の回答らしさを測る回答度スコアを提案する.そして,提案手法を用いた試作システムRE:Why の実装について述べる.10 問の質問を用いて回答位置特定アルゴリズムの評価実験を行った結果,適合率31.3%,再現率50.4%で回答を正しく抽出することを示す.また,20 問の質問を用いて本システムの評価実験を行った結果,本システムは20 問中16 問の質問に対して,正解を抽出することを示す.This paper reports on a prototype system RE:Why for extracting answers of "Why" type questions from WEB. We have proposed an algorithm for finding an answer in a page and a scoring method for extracted answers, and have implemented a prototype system using these ideas. We have evaluated the effectiveness of our algorithm using 10 questions and have confirmed that the algorithm has 31.3% precision and 50.4% recall. We have conducted experiments using 20 questions and have shown that our system output the correct answer to 16 questions of 20 questions.
著者
長 篤志 原田 哲也 木下 武志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.255-266, 2005-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論文では,3 次元コンピュータ・グラフィックスにおける逆遠近法を提案する.逆遠近法とは絵画における描画法の1 つであり,通常の透視投影法とは逆に遠くよりも近くの物体の方が画面上で小さく描かれることをいう.提案手法では,移動する視点から見た投影像をまとめることによって3 次元コンピュータ・グラフィックスにおける逆遠近法を実現している.また,逆遠近法で描かれた絵画によく見られるように,画面内に異なる投影法によって描かれた物体が混在する場合を想定している.そのため通常の透視投影法によって描画された画面内において,一部の物体のみを逆遠近法によって投影できる.しかも,対象物体に反射,透過・屈折による質感表現と影付けが可能であるという特徴を持つ.また,逆遠近法によって線遠近法による奥行き手がかりが崩れたとしても,投影像において有効な奥行き手がかりである物体の重なり,位置関係,大きさに関して,透視投影時の投影像の状態をほぼ保持することが可能である.We propose an algorithm of inverted perspective for 3-dimensional computer graphics. The inverted perspective is a technique for drawings and pictures. Objects near a viewpoint are drawn smaller than far objects. This characteristic is opposite to the ordinary perspective. The proposed algorithm draws 3-dimensional computer graphics using the inverted perspective by patching projected images from multi-viewpoints. The algorithm considers mixture of projective methods in an image plane. The mixture of projective methods is a popular usage of the inverted perspective on ordinary drawings and pictures. Therefore, the algorithm can draw only part of objects by the inverted perspective in an image projected by the ordinary perspective. Moreover, reflection, refraction for material representation, and shadowing can be used. In the inveted perspective, the liner perspective is broken, but the proposed algorithm can maintain three depth cues that are oclusions, positions, and size of objects in an image plane.