著者
仁平 和博 井上 真吾 沖原 光晴 屋代 智之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.2963-2972, 2005-12-15
被引用文献数
8

著者らは,ソフトウェアと携帯端末のみを用いて歩行者にリアルタイムかつ地域に密着した情報提供を行うためにNomadic Agent(NA)を提案している.NA とは位置情報を認識し,特定の範囲内の情報を保持したまま,その範囲内に存在し続けることが可能な一種のMobile Agent である.本論文では,NA の移動先として選択する領域を情報提供範囲外にまで広げ,最適な移動先端末を選択する移動アルゴリズムと,特定の範囲内につねに2 つのNA を発生させることで,突発的なアクシデントに対応するDNA(Dual-NA)を提案する.We had proposed and implemented Nomadic Agent (NA) for pedestrians to provide locationbased and real-time information only using software and mobile terminals. NA is a kind of Mobile Agent, which migrates between terminals based on its physical location. NA is able to keep its position on a specific area and has a function to maintain information of the area. We propose agent migration algorithms to select the optimal terminal. "DNA (Dual-NA)" which has an ability to cope with unexpected accidents. To realize these functions, NA generates its clone as backup in the specific area.
著者
田中 厚子 広田 光一 金子 豊久
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.2978-2987, 1999-07-15
被引用文献数
9

本研究では 仮想物体の切断操作における反力を実時間で表現するための計算方法について提案する.計算の中では切断操作にともない物体が微小に変形することが仮定され したがって 操作者が持つ刃物の実際の刃先位置に加えて 物体の変形が解除されたときにこれが物体の上でどこに相当するかという非変形時の刃先位置が定義される.両者の相対変位とその点における変形の柔らかさとから 刃先より物体に作用する力を近似的に求め これに基づいて刃先を移動することで切断の進行を表現する.この中では 刃先に作用する力として粘性抵抗 摩擦力 切断抵抗の3種類についてモデル化を行い これらを操作反力として操作者にフィードバックする.刃先を離散点に分割することで分布力を求める.また 変形の柔らかさを定数または計算の容易な関数として与えることで 実時間での力の表現を可能とする.これを仮想空間に実装することで 切りやすさの異なる物体の表現が可能であることを確認した.また この環境を利用した作業実験を行い 切断操作における力覚情報の提示が作業効率に寄与する1つの例を示した.さらに 変形が大きい場合の処理として 非変形時の刃先と実際の刃先を一致するように物体を視覚的に変形する方法を提案し 切断中の変形表現を実現した.In this paper, a method of calculating force during cutting operation is discussed. To calculate the distribution of force on the cutting edge, we defined the cutting edge as a set of discrete points that represent the infinitesimal part of the cutting edge. We proposed a method of representing forces caused by viscosity, friction, and cutting resistance based on this discrete-edge model. We developed a virtual environment with force feedback and implemented the proposed method in the environment. As an example of cutting tasks where the sensation of force is effectively used, we simulated a 'core extracting' operation and confirmed that the task is more efficiently performed with force sensation.
著者
久野 悦章 八木 透 藤井 一幸 古賀 一男 内川 嘉樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.1455-1462, 1998-05-15
参考文献数
23
被引用文献数
65

本論文では,重度肢体不自由者のコミュニケーション支援装置として,眼球運動を利用した視線入力インタフェースを提案する.本インタフェースは,ディスプレイ内のカーソルを視線で動かし,GUI上のメニューを選択するというものである.眼球運動測定法には臨床医学の場で広く用いられているEOG法(Electoro?Oculo?Graph)を用いた.キャリブレーションの工夫と,1次遅れ要素を持つ信号処理アルゴリズムの導入により,「ドリフト現象」と「瞬き」に対応している.This paper describes an eye-gaze input interface using eye movements.This interface enables a user to move a computer cursor with eye-gaze in order to select a GUI menu.It will be useful as a communication aid for severe mobility handicapped people.As an eye movement recording method,we introduce EOG (Electro-Oculo-Graph),which is widely used in clinical medicine.Drifting and blinking are handled with a unique calibration method and a signal processing with a positive feedback loop.
著者
高野 辰之 宮川 治 小濱 隆司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.3065-3078, 2011-11-15

プログラミングにおけるインデントとプログラミング能力の関係が従来から研究されてきた.従来研究では,インデントの効果がプログラミング能力の読解において確認されている.また,インデントとプログラミング能力である実装能力の関係について議論されている.そこで,本研究ではプログラミング入門教育科目の定期試験の解答からインデントと実装能力の関係を分析した.その結果,いくつかの項目で低い相関がみられたことから,インデントを正しく行える能力とプログラムを正しく書ける能力には何らかの関係があるのではないか,と考えられる.
著者
大坪 雄平 三村 守 田中 英彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.1530-1540, 2014-05-15

今日,標的型攻撃は増加傾向にあり,多くの組織にとって真の脅威となってきている.標的型攻撃には様々な手法があるが,受信者の興味を引くメールにマルウェアを添付する方式が最も一般的である.攻撃を秘匿するため,実行ファイルが文書ファイルに埋め込まれた場合,一般に,受信者には通常の文書ファイルと区別する手段がない.我々が実行ファイルが埋め込まれた悪性MS文書ファイル(Rich TextまたはCompound File Binary)を分析したところ,多くの悪性MS文書ファイルで通常のMS文書ファイルとファイル構造に違いがあることが分かった.本論文では,悪性MS文書ファイルの検知手法として,幾種かのファイル構造検査をすることを提案する.提案手法の有効性を検証する実験を行った結果,98.5%の悪性MS文書ファイルを検知することができた.ファイル構造は攻撃者の意志で変更させることが困難であることから,提案するRich TextおよびCFB形式の悪性文書ファイルの検知手法は長期にわたり有効である.
著者
岡田 昌也 山田 暁通 吉田 瑞紀 垂水 浩幸 粥川 隆信 守屋 和幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.229-243, 2004-01-15
被引用文献数
20

DigitalEE II(Digitally Enhanced Experience)システムは,環境学習研究の未解決重要課題``現実経験と仮想経験の実時間融合に基づく環境学習''を実現する.本システムで,自然環境の実参加者と遠隔地の仮想参加者は,音声・映像情報を介し実時間で環境学習活動を共有できる.空間的分散状況下の両参加者の存在は,モバイルサイバースペースIIという協調活動の``場''にアバタとして投影される.両参加者の位置情報はこの``場''を介して共有され,現実世界と仮想世界における同一時空間の仮想的共有に基づく相互作用が実現される.DigitalEE IIの評価実験は,現実世界と仮想世界における情報格差が両参加者からその格差補完への欲求を引き出し,両者の相互作用を促進したことを示した.また,本実験は,両参加者の環境への関心・気付きなどを向上させた.これらは仮想世界表現に媒介された協調活動の新たな可能性と,DigitalEE IIによる環境学習効果を示す結果である.The DigitalEE II (Digitally Enhanced Experience) system realizes an important unsolved issue in research on environmental learning, which is ``environmental learning based on realtime mixture of real and virtual experiences''. The system enables real participants in nature and virtual participants at remote locations to share environmental learning activities in real time via voice and visual information. Avatars in mobile cyberspace II, an online space for collaboration, express existence of the distributed participants. Both participants share their positional information via the space, and make interaction while sharing the same time and space between real and virtual worlds. Verification experiments on DigitalEE II showed that information gaps between the two worlds drew out both participants' motivation for complementing the gaps, and encouraged their interaction. The experiments raised participants' environmental interests and awareness, etc. These results showed learning effects of DigitalEE II as well as new possibilities of the collaboration mediated by virtual-world expressions.
著者
梶山 朋子 中丸 幸治 大野 義夫 神門 典子 佐藤真一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.918-928, 2007-02-15
被引用文献数
3

本稿では,マルチメディアデータのような多次元属性情報を対象とし,初心者ユーザでも利用可能なリング状検索インタフェースConcentric Ring View F+を提案する.一般的な検索システムでは,ユーザの操作によりシステムが検索結果を出力するというクエリ中心であるため,ユーザが属性や属性の意味を直感的に把握し,最適値へ調整することは難しい.そこで我々は,ユーザが検索結果を評価することは可能であるということに着目し,検索結果中心という考えで設計した.ユーザは,検索結果から現在の状況を把握して属性や属性値を操作したり,自分の情報要求に適合している候補を選択したりすることにより検索を進める.本手法はリング状構造で,ユーザのリング操作により,リング内部の検索結果が瞬時に表示される仕組みである.有効性の検証では,本手法を用いて画像検索システムを構築し,ユーザビリティテストを行った.This paper proposes a new search interface, named Concentric Ring View F+, applying to multi-faceted information for novice users. Because general retrieval systems are queryoriented they just display retrieved results by users' operation, it is difficult for users to grasp the meaning of attributes or their values intuitively and adjust optimum values. We designed a new search interface based on a result-oriented concept because we recognized that users could evaluate retrieved results. Users can continue to search by seeing retrieved results and grasp the present conditions, operating the attributes and their value, and selecting the relevant information. This proposed interface is ring-structured and retrieved results are displayed by ring operations in real time. We constructed an image retrieval system and performed usability tests to verify its effectiveness.
著者
尾崎 敦夫 古市 昌一 阿部 一裕 中島 克人 田中 秀俊
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.2810-2818, 1999-06-15
被引用文献数
5

渋滞解消のための実時間信号制御や 広域な交通網整備などの用途への活用を目指した大規模交通シミュレータを開発した. 本シミュレータは提案した時空間オブジェクトモデルを基礎にインテル社製のMIMD型高並列計算機Paragon上に開発したものである. 本シミュレータの性能評価の一環として 並列処理の単位となる粒度に関して 高性能を得る最適な粒度を求めるための負荷バランス方式の実験を行った. 負荷バランス方式は 道路網を細かく分割して 各プロセッサヘラウンドロビンに割り振る多重マッピング方式を採用した. 横浜市の中心部4km×2km四方の領域の実データを使用し Paragonの32プロセッサを用いて 多重マッピング方式を適用した場合に 約3 000台の車と約1 400の信号付き交差点を実時間実行できることが分かった. このケースでは 負荷バランスを考慮しない単ーマッピング方式と比べて約2倍の性能向上が達成できている.We developed a large scale car traffic simulator based on a Space-Time Object model. The target application of this simulator is real time traffic lights control, design of road network and so on. In this paper, we discuss issues in implementation and the performance evaluation of the simulator. We also present the results of static load balancing. Two mapping schemes have been applied for estimation of the performance of load balancing. One is a one-to-one mapping scheme, in which one sub-road is mapped onto one processor. Another is multiple mapping scheme, in which more than two sub-roads are mapped onto one processor. The simulator based on multiple mapping can simulate about 3,000 cars and 1,400 traffic lights at real time speed on 32 processors of Intel Paragon using the actual road map of a 4km × 2km area in the heart of Yokohama city. The performance of the simulator based on multiple mapping is about two times faster than that of one-to-one mapping in this case.
著者
合志 和晃 松永 勝也 黒木 大一朗 志堂寺 和則 松木 裕二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.42, no.7, pp.1754-1761, 2001-07-15
被引用文献数
7

自動車の運転事故による交通事故死者の数は,世界で年間50万人以上といわれている.これらによる損失は非常に深刻な問題となっている.そのため,近年,ITS(高度道路交通システム)をはじめとする自動車運転事故防止のための技術開発,研究が進められている.我々は,新しい交通事故防止の理論に基づく自動車運転事故防止のためのITSとして安全運転管理教育システム(ASSIST)を設計し開発を行っている.事故類型別の交通事故件数では,追突と交差点での出合頭の衝突の事故が多い.追突事故防止には,進行方向空間距離(当該車両からその進行方向にある最も近い障害物までの距離)を停止距離よりも大きくとることが必要である.また交差点での運転挙動の改善は,本人の運転挙動の問題点を客観的に分からせることが効果的であった.ところが,これまで,自動車は,閉じられた空間であり,運転者の運転挙動を知るには同乗するほかに方法がなかった.しかし,近年の情報通信技術の発達にともない自動車に搭載した装置によって運転者の運転挙動を取得し通信で外部に知らせることが可能になってきた.運転者の運転挙動を把握し,危険な運転をした場合に,その場で随時教育すれば教育効果も高いため,交通事故を大幅に減少できると予測できる.そこで,交差点での一時停止に関する管理・教育の実験によってASSISTの有用性を確認した.It is reported that more than half a million souls are lost per year by traffic accidents in the world.These losses are a very serious topic today.Our research team is therefore developing and designing an Assistant System for Safe driving by Informative Supervision and Training (ASSIST),a system created to prevent accidents based on our safe driving theory.One important element for safe driving is that drivers should leave more headway distance than stopping distance.The results of our research revealed that understanding the efficiency of adequate speed and recognizing their own driving behavior are very effective for drivers to create sufficient headway distance.Until now, with a driver in a closed space inside the car,no one could understand and supervise his driving behavior unless a supervisor is with him in the same car.However, recent computer and communication technologies have made it possible to obtain the driving behavior and send it to the supervisor outside of the car.It is believed to be efficient to teach safe driving whenever a driver has driven dangerously.We therefore conducted experiments regarding temporary stops at intersections as well as understanding driving behavior through communication,and then confirmed the effectiveness of ASSIST.
著者
矢田 晋 大野 将樹 森田 和宏 泓田 正雄 吉成 友子 青江 順一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1894-1902, 2006-06-15
被引用文献数
3

接頭辞ダブル配列はトライを高速かつコンパクトに実現するデータ構造である.しかし,キーの削除によって配列中に未使用の要素が蓄積し,空間効率が低下するという欠点がある.また,更新時間が未使用要素の数に依存するため,削除による空間効率の低下は更新時間の悪化にもつながる.本稿では,未使用要素を増加させることなく接頭辞ダブル配列からキーを削除する手法を提案する.EDR電子化辞書の日英単語各10 万件に対する実験により,提案法は従来法と比べて約17?460 倍高速であり,高い空間効率を維持することが実証された.Minimal Prefix (MP) double-array represents a trie with two advantages 窶髏 a fast retrieval and a compact dictionary. However, a key deletion produces empty elements and degrades the space efficiency of MP double-array. In addition, the deletion speed of MP double-array is degraded by the key deletion because the deletion time depends on the number of empty elements. This paper presents an efficient deletion method for MP double-array. The method dynamically removes keys from MP double-array without increasing empty elements. From experimental results for the key set which consists of 100,000 keys, it turned out that the presented method is about 17窶骭460 times faster than the conventional method and maintains high space efficiency.
著者
吉野 孝 井上 穣 由井薗 隆也 宗森 純 伊藤士郎 長澤 庸二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.10, pp.2788-2801, 1998-10-15
被引用文献数
16

インターネットに接続されたパーソナルコンピュータと比較的安価な入力機器を利用した,40台の計算機が利用可能な遠隔授業支援システムを開発した.本システムは,遠隔地にいる教官が,計算機演習室に集まった学生に対して講義を行う形の遠隔授業を支援する.教官側には,リモコンカメラによる教室の映像が常時表示されており,学生のいる教室には教官の上半身の映像が常時スクリーンに表示されている.学生との質疑応答時には,教官と学生は映像と音声を用いて直接接続され,1対1のコミュニケーションを行うことができる.さらに,教官用および学生用共有カーソル,板書システム,ノートシステムなどを備えている.本システムを,大阪大学と鹿児島大学,鹿児島大学内の異なる建物,計算機演習室内での授業の3つの授業に適用した.その結果,今回適用を行った授業において,授業の理解は,本システムを用いても十分得られた.We have developed a supporting system for destance learning classrooms via Internet,which can consist of 40 personal computers and inxpensive input equipment.This system may support a classroom,in which a teacher lectures for students in a remote computer practicing room.In the teacher side,a picture of the classroom es always displayed by a remote control camera,and the upper half of the teacher's body is always seen on a screen in the classroom.For questions and answers a direct connection between the teacher and any student in the classroom can be set up for video and audio signals.Additionally,this system is equipped with shared cursors between a teacher and students,a blackboard systemand a note system.Three kinds of distance learning classrooms have been tried;(1)between Osaka University and Kagoshima University,(2)between two buildings in Kagoshima University,and(3)within a computer practicing room.In these applications,it has been found that better understanding may be perfomed for students by this system.
著者
池松 香 椎尾 一郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.1344-1352, 2014-04-15

パーソナルコンピュータ(PC),スマートフォン,タブレットPCなど,複数のコンピュータを利用する状況では,表示されている情報をコンピュータ間で転送する必要がしばしば発生する.単一コンピュータ内でならば,ドラッグ・アンド・ドロップなどの直接操作により情報の移動が容易に可能であるが,複数台のコンピュータによる環境では,転送先機器の探索や指定などのために煩雑な操作が必要になることが多い.そこで本論文では,急速に普及しつつあるマルチタッチ可能なトラックパッドやタッチディスプレイを利用して,複数コンピュータ間での情報移動操作を直感的に実現する操作技法:記憶の石(Memory Stones)を提案する.本方式はコンピュータ上に表示されている情報を,ユーザが複数の指を使ってつまみ上げ,これを別のコンピュータに運び・置く動作により,情報移動を実現する.
著者
三浦 元喜 國藤 進 志築 文太郎 田中 二郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.2300-2310, 2005-09-15
被引用文献数
19

我々は教室内のコミュニケーションを促進するため,デジタルペンとPDAを利用した実世界指向インタラクティブ授業支援システムAirTransNoteを開発した.AirTransNoteは生徒の筆記情報を教師の計算機にリアルタイムに送信し,閲覧や解析を行うシステムである.デジタルペンを利用することにより,通常の紙に書く情報が送信できるため,生徒が情報機器の操作を覚える必要がない.また,無線LAN付きPDAを使用することにより配線の手間を軽減することができ,インタラクティブ性の高い授業を一般教室で行うことが容易となる.高校1年生の数学の授業で運用実験を行い,運用にあたっての問題点を明確にするとともに,運用の可能性について考察を行った.We developed AirTransNote, an interactive learning system based on digital pen devices and PDAs. The system realizes computer-mediated collaboration for a conventional classroom by real-time note-sharing. AirTransNote digitizes notes written by students on a regular paper and enables the teacher to browse through the notes or show them to the students. Air-TransNote can analyze students' answers, helping the teacher better understand their problems. We conducted a preliminary study using questionnaires and found that this system can be feasible to apply for classroom environment.
著者
森川 治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.815-822, 2000-03-15
被引用文献数
11

我々は,ビデオ映像にふさわしい新しい対話方式を創作することをめざす.超鏡システムは,対面対話を模倣する代わりに,分かりやすく,魅力ある対話環境をめざして設計した.この超鏡システムは,すべての対話者が同一の仮想空間内に居るような映像により,同一の空間を分け合うという新たな魅力を演出する.さらにWISIWYS(What I See Is What You See:自分の見ている映像を相手も見ている)を満たす映像で対話するため,対話者全員が対等となる.その結果,通常では触れられない遠くにある事物も含め,画像上のすべての事物に映像上で触れることができ,対話に利用できる.また,同一画面を対話者が共有することから,対話者間に,同室に居るのと同等の社会的な行為も観測された.We designed HyperMirror to provide a new video image thatpresents an attractive,highly understandable communication environment,rather than imitating face-to-face communication.The HyperMirror environment enables all participants tofeel they are sharing the same virtual space.Participants communicate using images meeting the condition``What I See Is What You See'' (WISIWYS).Both local and remote participants appear together on ashared video wall,and all things on the wall---even those out of reach---becomeappear to come within reach.Participants sharing the screen tend to act as if they arein the same room.
著者
山之上 卓
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.392-402, 2005-02-15
被引用文献数
8

P2P技術を利用して,多数の端末コンピュータのアプリケーション操作を,その利用者間で,実時間で共有するシステムについて述べる.P2P技術とネットワークスイッチを利用することによって,端末数がN の場合,O(logN) の遅延時間で,1つの端末で行われる操作をすべての端末で表示することができる.端末間で操作を共有するためには,同時に複数の端末で異なる操作が行われることがないようにしなければならない.これを実現するために,最大でO(logN) の時間でcritical sectionに入ることができる排他制御アルゴリズムを組み込んでいる.40台の端末を使って,本システムと同じアプリケーションを使用するクライアント?サーバ型のシステムと性能を比較したところ,マウス操作を行った場合はP2P技術を利用したほうが遅延が短かった.遠隔地間で操作を共有し,ゲームを行うこともできた.A sytem, which shares the common operation of applications on many terminals of a distributed system in realtime using P2P technology, is shown. This system can show an operation on a terminal to every terminal in the latency of at most O(logN) time complexity, where N is the number of terminals, using a P2P technology and a switching network. In order to share a common operation on computer terminals, at most one operation must be executed on the terminals at a time. In order to realize this, a mutual exclusion algorithm is embedded in this system. The time complexity of entering the critical section is O(logN). We have compared the performance of this system with the performance of a client-server system which has the same applications using 40 terminals. The latency of our system was shorter than the client-server system when a mouse was moving. A game could be played by remote users using this system.
著者
近山 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.599-604, 1983-09-15
被引用文献数
4

近年 プログラム言語Lispは その提供する高い会話的プログラム生産性のため 記号処理用言語としてのみならず 汎用のシステム記述言語として注目されている.筆者はシステム記述言語としての利用を目的として Lisp の方言Utilisp の処理系をHitac M シリーズVOS3上に開発した.Utilispはシステム記述用に必要な文字列や二進データの効率のよい処理機能や 操作系など外部との通信を行う機能をもつ.一方 Lisp本来の特質を生かし 多様な利用形態に対応するため 高い柔軟性と拡張性を有している.本論文では Utilisp システムの機能面での特徴を述べ その必然性と 実現に用いた手法を解説する.
著者
横田 治夫 北上 始 服部 彰
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.1-9, 1990-10-15

本稿では 知識ベース処理の1つとして 項関係上での単一化検索(RBU : Retrieval by Unincation)演算の繰り返しによりホーン節推論を行うアルゴリズムを示し その理論的な定式化を行う.項関係とは 関係データベースにおける関係(テーブル)の格納対象を 述語論理で用いられる項に拡張したものである.またRBU演算とは 項を取り扱うために関係代数演算の比較処理に単一化を導入し 条件と単一化可能な要素を項関係から検索する演算である.ホーン節を二進木表現にして項関係に格納し RBU演算を繰り返すことにより 後ろ向きおよび前向きの推論が可能であることを示す.ホーン節に対する後ろ向き推論の演繹方法としては Prolog等で採用されている節中の最左端負リテラルを選択するSLD演繹を対象とし RBU演算を使ってSLD演繹を実現するアルゴリズムを示す.一方 前向き推論としては SLD演繹と同様の選択関数を用いるようにした単位演繹であるSUD演繹を提案し RBU演繹による実現アルゴリズムを提案する.最左端の負リテラルを選択するSLD演繹およびSUD演繹は 探索規則が均等であれば 健全であり完全である.対象とするホーン節の集合が充足不能の場合には 提案したアルゴリズムは それぞれ反駁を求めて停止する.
著者
海谷 治彦 原 賢一郎 小林 亮太郎 長田 晃 海尻 賢二
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.653-661, 2012-02-15

ソフトウェアを含め,ほとんどの工業製品は以前の製品を改訂し開発されている.よって,既存ソフトウェアの改訂を支援することも重要である.革新的なソフトウェア改訂技法や枠組みが提案はされているが,それらを現実の開発に導入することは現状の開発体制の観点から容易でない場合が多い.特にソフトウェアが中心でない製品の場合,その傾向は顕著である.本稿では,ソフトウェアが中心でない製品におけるソフトウェア改訂において,どのように技術導入をすべきかについての調査および試行結果を報告する.初めに我々はソフトウェアが中心でない製品を開発する産業界の協力者の支援をうけ,どのような作業をどのような技術で支援すべきかを調査した.結果,インパクト分析作業が技術的に支援可能であり,情報検索技術(IR)を用いたトレーサビリティ技術で支援することが適切であると判断した.次に協力者から提供があった実開発のデータに対して,当該技術を適用し,協力者とともに問題点や改善点を模索した.結果として,要求変更の特徴づけを支援するための技術文書の索引付け,IRの入力データの改善を支援する機械学習,間接的なインパクトを知るためのソースコード上の静的解析の3つが,IRに基づくトレーサビリティを改善する追加技術として適切であると判断した.我々はこれら3つの技術を追加したインパクト分析支援ツールを試作し,産業界の協力者に評価を依頼し,期待どおりの改善が見込まれることを確認した.Most industrial products are developed based on their former products including software. Revising existing software according to new requirements is thus an important issue. However, innovative techniques for software revision cannot be easily introduced to projects where software is not a central part. In this paper, we report how to explore and apply software engineering techniques to such non-ideal projects to encourage technology transfer to industry. We first show our experiences with industrial partners to explore which tasks could be supported in such projects and which techniques could be applied to such tasks. As a result, we found change impact analysis could be technically supported, and traceability techniques using information retrieval seemed to be suitable for it. We second had preliminary experiences of a method using such techniques with data in industry and evaluated them with our industrial partners. Based on the evaluation, we third improved such a method by using following techniques; indexing of technical documents for characterizing requirements changes, machine learning on source codes for validating predicted traceability and static source code analysis for finding indirect impacts. Our industrial partners finally evaluated the improved method, and they confirmed the improved method worked better than ever.
著者
中澤 篤志 加藤 博一 井口 征士
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.2895-2906, 2000-10-15
被引用文献数
5

本論文は,複数のカメラエージェントの協調によって広域環境中の人物位置検出を行う「分散カメラシステム」について述べたものである.カメラエージェントは各々1台の固定カメラを持つ画像処理コンピュータで,リアルタイムで複数の人物を追跡できる.またそれらはネットワークを通じて他のエージェントと通信を行うことができる.カメラエージェントは環境中のさまざまな位置に設置されており,互いの観察領域は重なっていたり離れていたりすることがある.さらに一部のエージェントの動作停止や新たなエージェントの追加といったイベントに対処する必要がある.このような問題に対し本論文では,各エージェントが与えられた環境マップと互いの観察領域から人物の追跡プランを動的に生成することで,複数のエージェント間で連続的に人物を追跡・位置検出する手法を提案する.実験では,追跡軌跡の評価実験およびエージェントの追加や動作停止実験を行い本手法の有効性を確認した.This paper proposes the ``Distributed Camera System''that can detect human position in a wide area.This system is constructed of many ``camera agents'' and achieves a task due to cooperation.Camera agents consist of a camera and an image processor and a computer network connects them.They are placed in a real environment and their viewing areas are either overlapping or separated.Each camera agent makes plans using an environmental map and the viewing information of the agent.Using these plans,the system can continuously track a person across all the viewing areas of camera agents.In addition, this system is robust with respect to agent's failure.We tested this system in two aspects: the detected trajectories and the system's robustness.In this paper,we present the results of these evaluations, confirming the efficiency of our system.
著者
後藤 真孝 根山亮 村岡 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.1335-1345, 1999-03-15
被引用文献数
22

本論文では シンボル化された音楽情報をネットワークを介して共有するための通信プロトコルRMCPについて述べる. 本研究は 音楽情報処理システムを分散実装したり ネットワークを利用したアプリケーションを実現する際に有効な 音楽情報処理のためのネットワークプロトコルを設計することを目的とする. そのような目的では 音楽情報の効率の良い共有が望ましいが 従来の音楽情報用の関連プロトコルの多くは1対1通信を基本としたコネクション型であり 複数プロセス間での効率的な情報共有は十分考慮されていなかった. RMCPはコネクションレス型であり 全通信をブロードキャストで行うため 各プロセスへ個別に送信するオーバヘッドがなく情報共有の効率が良い. さらにRMCPは リアルタイム音楽情報処理のために タイムスタンプを用いた時間管理の機能を提供し 遠隔地間の合奏のために 信頼性を確保しながら遠隔地間で双方向にパケットを中継する機能も提供している. 本論文では これらの機能を活用することで実現できる 遅延を考慮した新たな形態の遠隔地間の合奏も提案する. RMCPはすでに様々な音楽情報処理システムを実現するために運用されてきた. その経験から RMCPの通信遅延時間が十分小さいことが確認されただけでなく RMCPを用いることで必要な機能が再利用できて実装が容易になり 拡張性が高くなることも確認された.This paper describes a communication protocol, called RMCP (Remote Music Control Protocol), which is designed for sharing symbolic musical information through computer networks. The purpose of this research is to design a network protocol which is suitable for musical information processing and facilitates distributed implementation of music-related applications. Although efficient musical information sharing is desirable for such a purpose, most previous music-related protocols were connection-oriented and did not emphasize efficient information sharing among multiple processes. Since the RMCP is a connection-less protocol, it supports broadcast-based efficient information sharing without the overhead of multiple transmission. It also supports time scheduling using time stamps for real-time musical information processing and reliable bidirectional packet relay for remote sessions. This paper also proposes an innovative remote session over the Internet that has a long delay. RMCP has been utilized in various applications and we found that the communication delay of RMCP was enough small and RMCP facilitated system implementation and expansion because of good reusability.