- 著者
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松原 宏
- 出版者
- 公益社団法人 日本地理学会
- 雑誌
- 地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
- 巻号頁・発行日
- vol.57, no.7, pp.455-476, 1984-07-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 47
- 被引用文献数
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本稿では,大手不動産資本によるオフィス形成の特徴や役割を明らかにするため,オフィスビルの配置,テナントの特徴,都市形成への影響の3点について検討を行なった. 先発で東京都心部に大量の土地を所有する三菱地所は,丸の内に一点集中的にビルを配置させ,オフィス街を形成してきた.これに対し,三井不動産は所有地の少なさを超高層ビルによる点的開発で補い,オフィス空間の拡大を図った.そして両社とも,おのおののグループ企業の本社・支所の拠点を形成してきた.一方,後発の日本生命は,地方中核都市などに分散的にビルを配置させ,急成長で多事業所を必要とする企業に空間を提供した.また,森ビルは港区虎ノ門周辺で,戦前からの所有地を基盤に,住宅・商店と混在するかたちでビルを建設し,対事業所サービス関連企業を主なテナントとしてきた. このように,系列,参入時期,土地所有によりオフィス空間の形成はさまざまであるが,大手不動産資本は,オフィスのより一層の集積を可能にし,あわせて都心形成を特徴的におしすすめてきたのである.