著者
関口 恭毅
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

(1)数理モデル作成の前段階である実際問題の整理とその記述を支援するために、汎実体一関連モデル(GERM)なる新しい情報モデルと、これに基づく問題記述法を提案し、かつ、これをデータベース化する方式を確立した。新方式をインプリメントした事例データベースのプロトタイプシステムを開発してその有効性を検証した。また、GERMによる問題記述によれば、最適化問題ばかりでなくシミュレーションの対象となる問題の記述も可能なことを明かにした。(2)教理モデルを純粋に数学的なオブジェクトとして定義し、これと対応する問題定義を「結合条件」と呼ぶ情報によって結びつける、多対多の対応付けを可能にする技術を確立した。これにより数埋モデルの再利用が容易になり、かつ、問題定義に対応する数理モデルの作成を支援する事例データベースの開発が可能になった。これらを検証する事例データベースのプロトタイプシステムを開発した。本方式では、モデル/データ独立が実現している。(3)ユーザが作成する数理モデルである「ユーザ定義モデル」とソルバーが前提とする数埋モデルである「標準モデル」およびソルバーオプションを「結合情報」によって対応づけてソルバーを起動する方式を開発するとともに、問題の数値例を上記のプロトタイプシステムに組み込む方式を開発した。これによってモデル/ソルバー独立が実現され、既存ソルバーの再利用が容易になるので、無駄な開発努力を省くことができる。(4)事例データベースのプロトタイプシステムを開発した経験から、オブジェクト型を記述の基本要素とするGERMは、ユーザにとって、その記述内容を直感的に理解することは必ずしも容易ではないことが分かった。そこで、オブジェクト・インスタンスを記述することでオブジェクト型を定義できるユーザインターフェースを提案し、その実現方法を構成した。
著者
林田 伸一
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、フランス絶対王政の地方行政の末端を担った地方長官補佐(subdelegues des intendants)について検討することによって、近世フランスの権力構造の特質を明らかにすることにあった。フランス西部地方のアンジェの地方長官補佐をケース・スタディとしてとり上げ、従来制度的研究に傾いていたため検討がなされてこなかった地方長官補佐の実際の機能について、主として考察した。国王政府から広範な権限を委ねられながらも任地の事情に不案内であり、きわめて小さな下部組織しか備えていなかった地方長官は、任地の行政において在地の有力者である地方長官補佐の活動に依存するところが大きかった。その地方長官補佐の活動を網羅的に検討してみると、地方長官補佐は、王権の要求の実現のために動くと同時に、地方の必要を王権に伝えていることが明らかになった。すなわち、王権と地方的諸権力の間に立って、両者の利害を媒介する機能を担っていたとみられる。権力というものを近代国家的に、中央政府から発して地方に伝わっていくと考えるならば、地方長官補佐が在地の名望家であることは、マイナス要因として評価される。しかし、王権が地方にかなりの程度浸透して来ているとはいえ、まだ公権力が一元化されていない状況の中では、そして、中世的な代表制度も近代的な代表制度も欠如しているこの時代にあっては、地方長官補佐が名望家として二つの顔を持っていることは、王権の地方行政が動いていくうえで、逆に有効性をもっていたと考えられるのではないだろうか。
著者
藤井 眞理子 大塚 一路 高岡 慎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、短期から長期までを含む金利の期間構造全体の時間変動、すなわち、ある特定の時点における満期方向へのクロスセクションの動きとそれらの時間を通じたダイナミックな変動を3次元空間における一体的変動として把握し、記述するモデルを構築した。特に、近年のマクロ・ファイナンスのアプローチをも参考としてマクロ経済状況と期間構造の3次元的変動の関連を考慮したモデル構築を行った。準備として利付国債のデータからゼロイールドの時系列を求め、はじめにレジームの変化を想定したモデルによる分析を進めた。すなわち、アフィン期間構造モデルにレジームのマルコフスイッチングを考慮したモデルおよびより柔軟なランダム・レベルシフトのモデルを期間構造の時系列に適用した結果、一定の局面転換が統計的に検出され、それらがマクロ経済状況の変化ないし金融政策の転換等に対応していることが観察された。このため、マクロ経済変数との関係を明示的に考慮する期間構造の変動モデルを仮定して実証分析を進めた。まず、イールドカーブをNelson-Siegelモデルと呼ばれる関数で近似し、カーブを特徴付けるレベル、傾き、曲率という3要素の時間変化に影響を与えるマクロ変数について検証した。次に、この分析により適切と考えられるマクロ変数を用いてカーブの3要素と期間構造を状態空間モデルの枠組みを用いて同時にモデル化し、カルマンフィルタによる推定を行ってモデルを特定した。このモデルは、全体としてはイールドの3次元変動をよく近似できるが、過去の個別の局面を分析すると具体的なマクロ変数の選択には改善の余地もあることも分かった。なお、本研究では、仮想ポートフォリオを用いたカリブレーションなどについては十分に研究を進めるに至らず、今後の課題となった。
著者
釜江 廣志 皆木 健男
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年の国債先物の取引市場の効率性については、ボラティリティの非対称性の検証をすることも併せて、頻度の高いデータによって分析を行うと、取引に関する新たな情報として取引量とスプレッドが国債先物価格に影響を与えている。またボラティリティが高い状況や低い状況がそれぞれしばらく持続する。これらのことから市場の非効率性が存在していると判定することができた。
著者
小田垣 孝 松井 淳
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、ガラス形成過程で見られる動的性質を統一的に理解し、ガラス化過程の本質を解明することにある。トラッピング拡散模型を発展させ、動的性質の総合的な理解、またそのモデルの基礎付けを行うこと、分子動力学シミュレーションによって、ガラス化過程における動的性質の変化を調べて、ガラス化過程の物理的理解を行うことを目指した。まずトラップされた運動およびジャンプ運動を考慮したトラッピング拡散模型の解析を行い、動的構造因子、一般化された感受率の温度依存性を求めた。主緩和時間が、Vogel-Fulcher則に従うことを示した。また、ノンガウシアニティーの温度依存性を求め、実験と定性的に一致する結果を得た。また、感受率の実部の対数に対してその虚部の対数をプロットするlog-コール・コールプロット法を開発した。二成分のソフトコア系の分子動力学シミュレーションを行い、動的構造因子、感受率の振動数依存性が、トラッピング拡散模型でよく再現されることを示すとともに、α-緩和の緩和時間がVogel-Fulcher則に従うこと、β-ピークはボソンピークと考えられること、速い過程が存在することを示した。格子点sを中心にした調和振動子を考え、さらに平衡位置sが二種類のストキャスティックな運動を行う理想3モードモデルを提案し、これらの運動が過冷却状態で見られる動的性質の特徴を再現することを示した。トラッピング拡散モデルの基礎付けを行い、活性化エネルギーが分布した活性化過程による緩和が、一般にトラッピングモデルで表されることを示し、持ち時間分布の各モーメントの発散から様々な特異温度を統一的に理解できることを示した。また、温度とエクセスエントロピーの積のガラス転移点における値からのずれが、適切なパラメーターであることを示した。
著者
釜江 廣志 秋森 弘 皆木 健男
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

明治から昭和戦前期までの国債・地方債・社債の各市場を取り上げ、とりわけ引受シ団(引受シンジケート)との関わりを中心にこれらの市場がどのように変遷してきたか、また、特に国債のうち戦前の甲号 5 分利債などの主要銘柄と戦後の国債の取引において市場の効率性が実現していたかを検証し、効率性が認められないことを示した。併せて、マクロ経済の動向と国債現存額がイールド・カーブの形状に与える影響を分析し、最近のイールド・カーブのスティープ化を引き起こした要因を考察するとともに、東京証券取引所の長期国債先物市場における流動性と取引コスト,取引リスクの関係について分析した。
著者
中山 英美
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染初期過程に関わる宿主因子の解析を行い、TRIM5・に加えてサイクロフィリンAもサル細胞内でHIVの増殖を阻害すること、TRIM5・の抗ウイルス作用にはプロテアソーム依存性経路と非依存性経路とが混在し、サルとウイルスの種の組み合わせによって使用される経路が決まること、広範な抗ウイルス作用を示すアカゲザルTRIM5・はウイルスカプシドの広範な領域を認識していることが明らかになった。
著者
清家 久美 MONTE CASSIM 千賀 裕太郎 嘉田 由紀子
出版者
立命館アジア太平洋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.本研究の目的と計画本研究は、(1)現在までの国内における地域づくり(まちづくり・村づくり)の状況を把握すると共に、(2)いくつかの手法-<地元学>手法とKJ法-による地域づくりによる持続可能な地域環境システム構築の可能性の限界を検討し、(3)どのような方法ないしは視点によって地域を考えていくことが、地域づくりに最有効であるかを検討することを目的としている。をおこなっていく。2.研究計画と到達点上記の目的のためには具体的に、(1)研究的視点による地域づくり、まちづくり、村づくりの背景と先行研究の整理、ならびに事例研究の検討(2)実践的視点による、地域づくり、まちづくり、村づくりの事例整理と検討(3)研究的視点による<地元学>手法の明確化と方法論的検討(4)実践的視点による<地元学>手法の機能と問題点の検討(5)地元学についての追跡調査(6)総括を研究的結論を計画していた。到達点最終到達点として、以下の6つをあげることができる。(1)地元学手法による調査:3年間の調査実績(2)調査法の評価・位置づけ:地元学調査法についての評価と部分的モデル化(3)地元学周辺でおこっている「ばかん巣プロジェクト」について:「ばかん巣プロジェクト」の実態把握とその議事録(4)NPOの活動:本研究の中心的テーマ・いくつかのNPO活動に見られる地域活性化の実態把握とその分析・学会発表(5)観光への展開:由布院と別府の観光についての論文化(6)教育への展開:「地元学」の教育への応用・過去5年間にわたる「学生150人による地元学調査」の実施とその総括
著者
島田 浩章
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

イネの種子形成機構の全体像を分子レベルで把握するため、種子形成期に発現する遺伝子を網羅的に解析した。アンチセンスSPK形質転換体は胚乳形成に異常を起こし、水モミを生じるので、この組換え体を利用して登熟初期に働く遺伝子を調べた。マイクロアレイ実験により、125種の遺伝子の発現に変動が認められ、そのうち顕著な変動を示す遺伝子についてRT-PCRによる発現量の確認と、これらの遺伝子に対するアンチセンス形質転換体の作成を試みた。一方、穂の形態形成異常を示す変異体を利用したマイクロアレイ解析およびディファイレンシャル・ディスプレイー解析を行い、多数の遺伝子発現の変動を見いだした。SUMO1遺伝子はこの変異体で発現量の変動が認められたため、このアンチセンス形質転換体を作成し、表現型を調べた。その結果、SUMOの発現抑制をした形質転換体では穎の消失などの穂の形態異常が認められた。このことから正常な穂の形態形成にSUMOが重要な役割を果たしていることが強く示唆された。この他に、CEN-P類似タンパク質、F-boxタンパク質、GASRタンパク質での発現量の変動が認められた。GASR遺伝子の発現について詳細に調べたところ、この遺伝子は幼穂形成の成長点付近での強い発現が観察された。
著者
伊藤 太二 伊庭 英夫
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、AP-1結合配列を持つ標的遺伝子の発現誘導に刺激特異性が見られる現象を支える分子機構を解明すべく、SWI/SNF複合体にsubstoichiometricalに結合する因子の同定と生化学活性の解析を行った。特に、BRG1に結合する因子群の中に見いだされたp54^<nrb>及びPSFに焦点を当て、これとSWI/SNF複合体構成成分との結合に関する生化学的解析とその結合が果たす役割について精査し、以下の成果を得た。1.p54^<nrb>はSWI/SNF複合体構成成分のうち、BRG1、Brm、BAF60aと直接結合する。一方、Ini1との直接結合は見られない。2.p54^<nrb>及びPSFはBRG1型及び、Brm型SWI/SNF(もしくはこれらに類似した)複合体に結合する。3.p54^<nrb>及びPSFは初期転写、splicing、'A to I'にeditingされたRNAの核内保持等に機能する多機能性タンパク質である。したがって、これと結合するBrmがalternative splicing過程に関与しているか精査した。元々BRG1の発現を欠くヒト非小細胞肺癌由来H1299細胞株において、Brmのノックダウンを行い、SWI/SNF複合体の機能を失わせたところ、Brmのノックダウン後二ヶ月以内に、細胞の老化を伴うgrowth arrestが観察された。4.3で観察されたgrowth arrestはテロメアの短小化を伴うものであり、Brmをノックダウンすると、AP-1の標的遺伝子であるtelomerase reverse transcriptase(TERT)遺伝子の初期転写量が減少し、かつその転写産物が受けるaltenative splicingのパターンが変化し、不活性なTERTタンパク質をコードすると考えられるmRNAの割合が増加することが判明した。5.H1299細胞内では、Brm、p54^<nrb>はTERT遺伝子のプロモーター領域及びalternative splicingのacceptorを含む領域に特異的に局在している。本研究から、p54^<nrb>を含むSWI/SNF(もしくはこれに類似した)複合体は、恐らくはAP-1をはじめとする転写制御因子群によってTERT遺伝子のプロモーターに動員され、転写開始を誘導した後、その複合体分子が引き続いてalternative splicing過程にもcisに作用し、活性のあるTERTタンパク質の効率良い発現に多段階で機能すると考えられた。そして、AP-1の標的遺伝子群の中でも、特定の遺伝子群に対してのみ、p54^<nrb>を含むSWI/SNF複合体が多段階で機能し、効率良い遺伝子発現制御を行っている可能性が示唆され、AP-1の持つ多機能性を説明するための端緒が見いだされた。
著者
永井 成美 森谷 敏夫 坂根 直樹 森谷 敏夫 坂根 直樹
出版者
岡山県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

20歳代女性の3~4割に、低体重または標準体重でありながら体脂肪率が高い、いわゆる「隠れ(正常体重)肥満」やその予備群である「隠れ(正常体重)肥満傾向」が認められるとの報告がある。若い女性特有の「太りたくない」という強い思いから、食事のカロリーのみを気にして食事の質が良くない場合に、筋肉量、骨量の低下と体脂肪量の増加によって「隠れ肥満」が形成されると考え、食行動パターンやダイエット歴、体組成、代謝・自律神経活動等の生理学的特性や遺伝的特性(肥満関連遺伝子多型)などからその成因を検討した。さらに、カロリーだけでなく食事の「質」を重視した3回の介入試験を「隠れ肥満」若年女性を被験者として実施し、その有効性についても評価した。研究の成果は、10件の論文、17件の学会発表、2冊の著書により公表するとともに、NHK健康番組やその関連雑誌等によって広く紹介された。
著者
富岡 尚敬 安東 淳一
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

高温・高圧・高酸素分圧が惑星物質に与える鉱物学的影響を調べるため,石質隕石の高温酸化実験と衝撃回収実験を行った.この結果,1)鉄に富むカンラン石の酸化による超構造への相転移と赤外スペクトル変化との関連性,2)1万気圧程度の弱い衝撃の加熱においては,含水鉱物の脱水反応は顕著ではないこと,を明らかにした.また,石質隕石の主要鉱物である斜長石の静的圧縮実験を行い,3)斜長石の圧力誘起非晶質化は温度及び時間依存性を持つことを,明らかにした
著者
米田 耕造 窪田 泰夫 荒木 伸一 中井 浩三
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-04-01

アトピー性皮膚炎は、掻痒の強い湿疹病変を主とする難治性皮膚疾患であり、フィラグリンタンパク質の遺伝子異常による。ロリクリンはフィラグリンと同様、表皮角層細胞の辺縁帯の主成分である。ロリクリン遺伝子の変異による疾患(亜型ボーウィンケル症候群)の臨床症状は、掌蹠角化症を合併した魚鱗癬であり、フィラグリン遺伝子機能喪失変異により生じる尋常性魚鱗癬の臨床症状に酷似している。本研究の目的は、アトピー性皮膚炎の動物モデルを作製し、その病態に関与するロリクリンの果たす役割を解析し、創薬に役立てることである。その目的に向けてわれわれはロリクリンノックアウトマウスを作製した。
著者
藤本 利一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

過去数十年の間に,知的財産権は,世界経済において大きな役割を果たすようになった。今日においては,世界の名だたるトップメーカーの有する企業価値の多くが,それらの無形財産にあるといわれる。あるデータによれば,世界の主要企業に関して,その資産価値における知的財産権の占める割合は,1992年においては,6対4であったが,その10年後には,4対6の割合に変化したとされる。間違いなく,今日,ますます増大する世界的な企業間競争において,知的財産権は最も重要な資産である。このような状況のなかで、知的財産権およびそのライセンスに関して、重要な問題として認識されだしたものがある。すなわち、倒産処理手続における知的財産権の処遇である。たとえば、アメリカ法においても、各種知的財産権の処遇を規律するものとして、連邦レヴェルの法規制とともに、当該知的財産権を有する企業が、倒産した場合には、連邦倒産法の規律によることとなり、両者の相克が問題とされていた。すなわち、知的財産法においては、企業家および発明者の支配可能性を高めるため、知的財産権の譲渡可能性を制限しているのに対し、倒産法では、債権者にとって利用可能な資産価値を最大にするために、譲渡可能性を柔軟にしているという対立図式が明らかとなった。過去数十年にわたり、これらの対立をどのように処理するかが、企業再建という困難な局面で問われてきた。翻って、わが国の対応を見るならば、倒産法制はここ数年で大きく変革されたが、知的財産権への対応が必ずしも十分であるとはいいにくいようにも思われる。とくに,企業が倒産した際に,その知的財産権の価値をどのように評価し,またどのように売却等の処理をするかについては,まだ決め手がないということが明らかとなった。
著者
柴山 啓子 野渡 正彦 田久保 憲行 松浦 信夫
出版者
北里大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

妊娠中の母体の低栄養によって、新生児の子宮内発育不全と出生後の遷延性低血糖症が惹起されることが示唆された。
著者
浮田 正夫
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

本年度は大型貨物自動車の燃料消費について調査し、長距離輸送にかかるエネルギー消費について主として検討を行った。運送業者に往復の燃料消費の違いについて聞き取りを行ったが、往路、復路別々の燃料消費の情報を得ることは容易ではなかった。わずかに収集できた16台のデータより、エネルギー消費の式を求めたところ、y:燃費係数kcal/km、x:車重量(=自動車自体の重量+積荷等の重量)kgとして、y=36.2x^<0.419>、R^2=0.80なる式が得られた。また燃費基準から整理すると、ジーゼル貨物車のエネルギー消費についても同様に、オートギアの場合y=49.0x^<0.383>、R^2=0.94、手動ギアの場合はy=51.2x^<0.354>、R^2=0.99なる式が得られた。手動ギアのガソリン貨物の場合、y=4.8x^<0.697>、R^2=0.96、ガソリン乗用車の場合、y=1.44x^<0.856>、R^2=0.97であった。確認の意味で、燃費計を装着した6台のバンタイプを含む乗用車を用いて、乗客数を変化させて、燃費実験を行ったところ、低燃費車でy=113x^<0.197>、R^2=0.96、あるいはy=100x^<0.214>、R^2=0.95、バンタイプ車でy=158x^<0.234>、R^2=0.79なる式が得られた。停車時においてもエネルギーを消費することから、見かけ上指数部が1より小さくなる傾向がある。いずれにしても、実際上は指数部を1にとることには問題があるようであった。ケーススタディとして山口県における木質バイオマスを全て宇部市に集める場合の集積費用及びエネルギー消費の試算に当たっては、上記の16台のデータを用いて、エネルギー消費は車重量の0.5乗に比例するとした式、y=16.2x^<0.5> R^2=0.74を用いて解析を行った。その結果、中間処理施設を19ケ所、13ケ所、6ケ所と集約すると、費用的にもエネルギー消費的にもかえって不利になることが分かった。また集積に要するエネルギー消費はバイオマスの持っているエネルギーの0.51%〜0.67%であった。
著者
高井 潔司 諏訪 一幸 遊川 和郎 渡邉 浩平
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

中国のマスメディアは90年代、市場経済の導入、進展に伴って大きく変容した。主流メディアは、従来の党の宣伝機関から大衆の求める情報や娯楽を提供する商業メディアへと変わりつつある。他方、メディアが市場経済の推進を支え、政治や社会の変容をももたらそうとしている。本研究では新聞業界の変容を中心に調査、分析を行った。高井論文は中国マスメディアの構造変動の総論にあたり、マスメディアの変容を総括するとともに、それによって引き起こされた社会の変動、政治との緊張関係を分析した。遊川論文は、経済専門紙に焦点を当て、市場経済の進展に経済専門紙の成長が不可欠であったことを裏付け、経済紙の発展状況について、詳しいデータを挙げて、議論を展開している。しかし、中国のメディア改革の一定の制約の下で、経済紙は様々な課題に直面しており、現状分析を基に今後の課題を列挙した。一方、諏訪論文は党機関紙を中心とする新聞発行集団に焦点を当て、新聞改革の深層に迫るとともに、集団内の機関紙(大報)と都市報など(小報)との相互依存関係だけでなく、その緊張関係にも着目し、新聞発行集団の問題点を分析した。渡辺論文は新聞経営とりわけその収入源の大半を占める広告を分析し、その変遷から中国の新聞の今後の展開についても論及している。
著者
菅野 裕臣 菅原 睦 柳田 賢二 池田 寿美子 ムハメ フセーゾヴィチイマーゾフ ラシド ウマーロヴィチユスーポフ アリ アリーイェヴィチジョン マネ ダヴーロヴィチサヴーロフ マハンベト ジュスーポフ アジズ ジュラーイェフ ブルット インノケンチイェヴィチキム 劉 勲寧
出版者
東京外国語大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

クルグズスタンとウズベキスタンのドゥンガン人計4名を日本に招聘してドゥンガン人に関する国際集会を持ったが,これはドゥンガン人研究者の初めての日本訪問であり,これを基礎に日本ドゥンガン研究会が発足することになり,その論集を作成することが出来た.さらに研究組織は上記2国を訪れ,またウズベキスタンのウズベク人,カザク人,高麗人研究者を招聘して,中央アジアの多言語状況についての研究・報告を行った.
著者
樫村 志郎 山崎 敬一 南方 暁 棚瀬 孝雄 米田 憲市
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

紛争処理は広く合意型と裁定型に分けることができる.合意型の紛争処理においては,紛争処理過程の開始,進行とその結果が紛争当事者による承認ないし規範受容に結合されている(ただし,裁定型の紛争処理でも,紛争解決の最終結果の規範的妥当性が,制度的規範により構築されるにとどまり,その過程や結果の解釈等は,かなり紛争当事者の規範受容によって構築されたり影響されたりする).本研究では,合意型の処理において当事者の間のどのようなコミュニケーションがなりたっているのかを知ることを主眼として,エスノメソドロジーの知見を参考にしながら,複数の研究を行った.(1)まず,法社会学の研究と理論における,非公式紛争紛争研究のレビューを行った.(2)その上で,理論的分析としては,法的コミュニケーションを単なる相互了解としてではなく,法的場面を存立させるための根源的かつ基盤的作用をもつものとしてとらえる社会学的視角の総合と洗練を行った.(3)以上の理論的分析の上にたつ,経験的分析としては,まず,紛争当事者と法的専門家が公式・非公式の紛争処理の準備のために事件の分析を行う法律相談場面.紛争当事者と紛争解決者が合意にもとづく紛争解決を達成するために事件の分析を行う調停場面(シミュレーション)をとりあげて,詳しい分析を行った.(4)この経験的知見を確かめるために,人が日常的場面を理解しようとする際に規範へと言及する場面を半実験的に構成し,法制度的場面と比較した.これらの結果として,本研究は,理論的ならびに経験的分析を組み合わせて,合意型の紛争処理過程が,独特の制度的規範構造のもとで起こるコミュニケーションとして,日常的なコミュニケーションと区別されることを示すことに成功した.
著者
寺嵜 弘康 丹治 雄一
出版者
神奈川県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

横浜正金銀行リヨン出張所初代主任の川島忠之助資料(書簡、書類、写真など)を調査し、目録の作成と撮影作業、書簡619通の翻刻作業をおこない、川島忠之助資料の全容を明らかにすると同時に、横浜正金銀行の欧米支店における活動実態について新資料を提示した。