- 著者
-
山内 靖喜
- 出版者
- 島根大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
2000鳥取県西部地震の震央を中心に東西11km×南北10kmの地域の断裂系を解析した.本地域には花崗岩類が分布し,局部的に鮮新世末〜前期更新世の玄武岩溶岩が不整合に覆う.花崗岩地域では大きな節理,節理密集帯,破砕帯を用いて断裂系を解析した.断裂の「切った切られた」の関係と走行・傾斜から,この地域の主要な断裂はA〜Lの12に区分した.1〜2kmの狭い範囲内では,2〜3の系統のみが発達する.特に,本地域西部においてはA(N70-90E,60N-85S),震央がある中央部から東部ではB系統(N10-40W,60E-85W)とC系統(N40-70W,60W〜85E),西部から北縁部にかけてB系統がそれぞれ卓越する.各系統間の新旧関係から,5系統は複数回活動し,最新に活動したのはA, B, Cの3系統と判断された.玄武岩溶岩分布域内では,その噴出源が示す深部断裂系と溶岩を切る断層を走向・傾斜で区分すると,A〜D系統に属し,前期更新世にはすでに存在していたと判断された.震央から北東約10kmの越敷原玄武岩岩体内で新たにみつかったC系統に属する活断層は,2000鳥取県西部地震の震源断層と平行し、同じ変位様式をしめす.さらに、両者の間には玄武岩類の噴出源の配列によって示される深部断裂が両者に平行に発達する.これらの類似から、この3つの断裂は同じ応力場で、おそらく前期更新世に形成されたと考えられる.2000鳥取県西部地震の震央周辺では,以前から地震活動が活発であるが,これらの余震域の方向はB系統に一致する.しかし、本地震のそれは本地震発生直後にはB系統方向を示したが,すぐにC系統の方向に成長した.このことは発震機構の応力場が変化したためと考えるよりは,既存の2系統の断裂が再活動したと判断される.すなわち,地震発生時に震央付近で優勢なB系統の断裂系が再活動したが、近くに存在したより規模が大きなC系統の断裂が,B系統の活動に誘発されて再活動したと考えられる.