著者
市田 敏啓
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究は多国籍企業がホスト国の消費者市場に参入を考える場合にいかなる参入形態選択すべきかを理論的に分析することを主眼としている。その際に主に2つの観点からの分析を行った。一つ目はブランドの差別化の度合いに応じて参入形態が変わるという考え方である。また、二つ目は流通チャネルコントロールの問題にマルチタスクのプリンシパル・エージェントモデルなどを応用することでメーカーと小売りの指向の違いが参入形態を変えるという考え方である。
著者
成瀬 九美
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

同じリズムで動くとき、我々は共通の感情を表出し、他者との一体感を味わうことがある。リズム同調性のある活動は社会的統合の現われでありソーシャル・スキルの一つである。本研究では2者のコミュニケーション場面を取り上げ、前腕回転課題、タッピング課題、手合わせ課題を用いた実験や、幼稚園児の積み木遊びの観察事例において,動作速度の変化を分析した。同調過程では他者身体に対する自己身体の調整が行われ、この相補的な関わりの中で二者のリズムが形成された。
著者
東郷 賢 加藤 篤史 蟻川 靖浩 和田 義郎 加藤 篤史 蟻川 靖浩
出版者
武蔵大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

アフリカ(ケニア、ボツワナ、ガーナ、アフリカ開発銀行)を訪問し、それぞれの国の経済成長における援助の果たした役割についてヒアリングを行った。また、援助供与国の中で最も優れていると言われるデンマークの援助庁も訪問し援助方針についてヒアリングを行った。OECD も訪問し、援助データの詳細について議論をおこなった。これらの内容を踏まえて分析を行っている。その結果、経済成長に関し援助の果たす役割は決定的ではないものの、効果的に利用することは可能であることが判明した。
著者
岡林 秀樹
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009-04-01

本研究の目的は,高齢期における人生マネイジメント方略が高齢者夫婦の精神的健康にどのような影響をもたらしているのかを明らかにすることである。2011年に地域に居住する高齢者夫婦1500組に初回調査,2013年に3年後の追跡調査を行った。初回調査に回答した498組の夫婦のデータを解析した結果,「否定的なイベントを受容できる柔軟な態度」が夫と妻それぞれの幸福感にとって重要であることが明らかになった。また,夫の「否定的なイベントを受容したり,老化に伴う喪失を補償しようとする柔軟な態度」が妻の幸福感にとって重要であることが明らかになったが,妻のそのような態度は夫の幸福感に影響を及ぼさなかった。
著者
遠山 晴一 安田 和則 小野寺 伸 近藤 英司
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

マクロファージ遊走阻止因子(MIF)の腱・靱帯損傷の治癒に与える影響は明らかではない。そこでMIF遺伝子の欠損が膝内側側副靱帯(MCL)断裂後の治癒過程に与える影響を検討し、28日におけるMIFknock-outマウスの大腿骨-MCL-脛骨複合体の力学的特性およびMMP-2および-13の遺伝子発現はwildtypeに比し有意に低値であり、組織学的には肥厚しており血管新生に乏しくかつ細胞数の減少の遅延が観察された。以上よりMIF遺伝子欠損はMMPの遺伝子発現抑止を介して、MCL損傷治癒を遅延させることが示唆された。
著者
宇佐見 香代 八木 正一 岩川 直樹 庄司 康生 舩橋 一男 野村 泰朗
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

教師は、それぞれの教室で生起する特定的・一回性的な状況と絶えず相互作用しながら、日々授業の創造や学級づくりの問題に取り組んでおり、具体的文脈の中での臨床的実践的な知覚や熟考、判断を基盤にした臨機の活動をその専門性の主軸としている。様々な問題状況のなかで、教師たちがその見識を拡げ葛藤を乗り越えて生き生きとした実践を生み出すためには、この具体的文脈へ教育研究者や将来教師になる学生が共同参加して臨床的研究を進めることが必要とし、その研究成果をまとめた。
著者
湯城 吉信
出版者
大阪府立工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、江戸時代の中井履軒の暦法、時法、解剖学に関する思想を明らかにした。中井履軒は漢学塾懐徳堂出身の儒者であったが、自然科学にも関心を持っていた。本研究では、彼の『華胥国暦書』『華胥国新暦』を中心に彼の暦学に関する考えを、『履軒数聞』を中心に彼の時法に関する考えを、『越俎弄筆』およびその草稿である『越俎載筆』を中心にその人体に関する考えを探った。筆者はすでにその宇宙観については分析を終えている(拙稿「中井履軒の宇宙観-その天文関係図を読む」(『日本中国学会報』57号、2005))。また、本研究と同時に執筆した拙稿「中井履軒の名物学-その『左九羅帖』『画〓』を読む」(『杏雨』11号、武田科学振興財団杏雨書屋、2008)では、彼の動植物の名前に関する考えを明らかにした。以上の一連の研究で中井履軒の科学思想の全貌はほぼ明らかにできたと考える。暦法については、履軒は、月を廃したラジカルな太陽暦を作り、百刻法による定時法を提唱した。それは、古代はシンプルでわかりやすい暦法、時法であったが、後世複雑でわかりにくい制度になっていったという彼の考えに基づく。彼の理論は、中国の古典の歴史研究に基づき、おおむね妥当であるが、斗建についての認識は歴史的根拠に欠ける。解剖学に関しては、『越俎弄筆』の草稿である『越俎載筆』の発見など最新の資料調査の成果に基づき、また、同時代の解剖書や西洋の解剖書と比較することにより、『越俎弄筆』の特徴を探った。当時の大坂ですでに西洋の解剖学書が出回っていたという事実は注目に値する。
著者
伊東 孝郎
出版者
白鴎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、志願学生をピア・サポート・スタッフとして育成することを主眼とし、ビデオを用いたカウンセリング体験学習の方法に基づく新トレーニング方法を開発することが目的である。過去2年間で12名の志願者に対しトレーニングを実施したが、量的評価と自由記述を通しての効果測定の結果も良好であり、また実際に彼らが開始したピア・サポート活動の観察結果から、技能面でも意欲面でも高いレベルを維持し、思いやりの心をもって活動していることが確認できたため、今年度も昨年度までと同様のトレーニングを実施することとした。今年度は2名がトレーニングに参加したが、トレーニング出席率は昨年度までよりも減少した。2名という少人数のグループサイズでは、観察学習の機会が得にくく、モチベーションの維持が難しいこと、人間関係もそれ以上広がりようがなく、仲間意識も芽生えにくいことなどが予想され、昨年度の人数である4名程度は少なくとも必要ではないかと思われた。トレーニングの成果としてのピア・サポート活動は、順調に進んだ。特に平成19年度には、相談件数が前年度の8件から109件へと急増した。その多くは4月に行われ、学業や施設案内などについての情報提供型活動が中心だったが、5月以降になると件数はさほど多くないものの、多岐にわたる内容の直接相談活動が中心となった。なお活動自体もカンファレンスも、貴重なトレーニングの場となっていた。これまで広島大学訪問、名古屋大学との意見交換の結果を、ピア・サポート活動の参考としてきたが、今年度は新たにニューヨーク大学を訪れ、ピア・エデュケーションのスーパーバイザー兼トレーニングプログラム開発者らと意見交換を行ったところ、本研究のトレーニングに対して高い評価を得た。
著者
白木 邦彦 河野 剛也 安宅 伸介 永田 智
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

レーザースペックル眼底血流計はこれまで主に視神経乳頭での血流測定に使用されてきた。視神経乳頭上の太い網膜血管を測定領域から除外すれば、視神経乳頭の組織血流量をレーザースペックル眼底血流計のSBR値が反映する。眼底血流測定に際しては、レーザースペックル眼底血流計は網膜と脈絡膜の両者の組織血流を反映するとされる。そこで、網膜循環に影響を及ぼさない脈絡膜病変では脈絡膜循環の異常を反映すると考えられるが、微小な脈絡膜循環の異常を把握しているかは不明である。今回、網膜血管を有しない家兎眼底において、臨床で日常的に施行されている豆まき状の光凝固を施行し、凝固部位間の非凝固部位領域の脈絡膜血流量の変化を経時的に検討した。さらに、沃素酸ナトリウム投与によって網膜色素上皮を障害し、続発的に生じた脈絡膜毛細血管の変性・萎縮領域に関してレーザースペックル眼底血流計にて経時的にSBR値の変化を検討した。レーザー光凝固部位ではSBR値の顕著な低下が早期よりみられ、経過観察期間中持続していたのに加えて、凝固部位間の非凝固部位でも3ヶ月、6ヶ月後にSBR値の低下、すなわち血流の減少がみられた。また、沃素酸ナトリウム投与例での網膜色素上皮障害部では、投与1ヶ月後には71%にSBR値が低下し、6ヶ月後にはさらに58%にまで低下し、持続的な脈絡膜血流量の低下がみられた。以上より、レーザースペックル眼底血流計を用いて眼底の脈絡膜の微小循環変化の検討が可能であることが明らかとなった。
著者
上田 直子 中村 仁美 大栗 誉敏
出版者
崇城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

日本の南西諸島に棲息する毒蛇ハブの毒成分は、意外にも生物の様々な組織にある脂質やタンパク質を分解する酵素が主成分であり、それらが加速進化して多様性を増すとともに、極めて高い特異性とユニークな性質を獲得してきたことが明らかとなりました。またハブ毒は、貴重な創薬シーズ(種)としても注目されています。本研究は、それらの毒成分が、毒を産生する組織である毒腺で、どのようにつくりだされるのか、その分子機構の解明を目指した研究です。
著者
唐澤 真弓
出版者
東京女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、従来の幸福感尺度が欧米の人間観にもとづく、最大化の幸福であるのに対し、日本での幸福はより関係志向的なミニマリストであると仮定し、ミニマリスト幸福感尺度を作成した。この尺度を用いた日米比較研究により、従来報告されてきた日本人の幸福感の低さは尺度のバイアスによることがわかった。さらに文化内比較を行い、異なる地域、異なる年齢段階においても、この幸福感尺度が妥当であることが確認された。
著者
香西 克俊 境田 太樹 福士 恵一 石田 廣史 東上床 智彦
出版者
神戸商船大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

TOPEX/POSEIDON衛星高度計データをもとに日本海南部におけるナホトカ号船首部漂流期間を含む1993年1月から1997年12月までの海面高度場を推定した.船首部漂流期間中,漂流期間前と比較して,隠岐諸島北部海域の海面高度は能登半島北部海域より海面高度が約80mm上昇し,その結果,プイ南側に位置する沈没地点付近の等高線間隔が密になり,等高線の向きも南北方向に傾く様子が見られる.この海域の海面勾配は等高線に対して直角方向110kmに対して海面高度差が約140mmあり,これは地衡流速に換算して南南東向き約0.24ノットの流速である.船首部漂流期間終了後,隠岐諸島北部海域の海面高度は能登半島北部海域の海面高度に比較して大きく下降し,その結果,沈没地点付近の等高線間隔は漂流期間中に比べて広がり,等高線の向きも東西方向に傾く様子が見られる.TOPEX/POSEIDON衛星高度計データによる時空間平均海面高度場では捉えきれない空間スケール100km以下の小規模低気圧性渦の存在を地衡流向流速場により明らかにした.そして風速が10m/s以下の期間の漂流軌跡はこの低気圧性渦による南東流の影響を強く受けている可能性を示唆した.ERS-2搭載高度計データをもとにナホトカ号沈没船体からの漂流重油を追跡した結果、軌道に沿った推定表層地衡流量は沈没船体からの漂流重油の海面における湧出点位置に大きな影響を与えていることが確認された。特に推定表層流向は沈没位置に関する湧出点位置の方位角とほぼ一致し、また推定表層流量が大きくなればなるほど重油湧出点位置は沈没位置から離れることが明らかになった。
著者
山内 靖喜
出版者
島根大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

2000鳥取県西部地震の震央を中心に東西11km×南北10kmの地域の断裂系を解析した.本地域には花崗岩類が分布し,局部的に鮮新世末〜前期更新世の玄武岩溶岩が不整合に覆う.花崗岩地域では大きな節理,節理密集帯,破砕帯を用いて断裂系を解析した.断裂の「切った切られた」の関係と走行・傾斜から,この地域の主要な断裂はA〜Lの12に区分した.1〜2kmの狭い範囲内では,2〜3の系統のみが発達する.特に,本地域西部においてはA(N70-90E,60N-85S),震央がある中央部から東部ではB系統(N10-40W,60E-85W)とC系統(N40-70W,60W〜85E),西部から北縁部にかけてB系統がそれぞれ卓越する.各系統間の新旧関係から,5系統は複数回活動し,最新に活動したのはA, B, Cの3系統と判断された.玄武岩溶岩分布域内では,その噴出源が示す深部断裂系と溶岩を切る断層を走向・傾斜で区分すると,A〜D系統に属し,前期更新世にはすでに存在していたと判断された.震央から北東約10kmの越敷原玄武岩岩体内で新たにみつかったC系統に属する活断層は,2000鳥取県西部地震の震源断層と平行し、同じ変位様式をしめす.さらに、両者の間には玄武岩類の噴出源の配列によって示される深部断裂が両者に平行に発達する.これらの類似から、この3つの断裂は同じ応力場で、おそらく前期更新世に形成されたと考えられる.2000鳥取県西部地震の震央周辺では,以前から地震活動が活発であるが,これらの余震域の方向はB系統に一致する.しかし、本地震のそれは本地震発生直後にはB系統方向を示したが,すぐにC系統の方向に成長した.このことは発震機構の応力場が変化したためと考えるよりは,既存の2系統の断裂が再活動したと判断される.すなわち,地震発生時に震央付近で優勢なB系統の断裂系が再活動したが、近くに存在したより規模が大きなC系統の断裂が,B系統の活動に誘発されて再活動したと考えられる.
著者
湯川 夏子
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

料理活動は、人をいきいきさせ、豊かな人間関係を構築し、自立支援や認知症周辺症状緩和等、高齢者の生活の質(QOL)の向上を期待できる。認知症高齢者でも適切な支援があれば料理活動の継続が可能である。本研究では、このような料理活動を支援する方法論を確立するため、高齢者施設における介入調査およびグループホームにおける料理活動の実態調査を行い、認知症高齢者に適切な支援方法や料理活動の内容を明らかにした。
著者
阿部 泰記
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

2年間にわたって継続的に行ってきた漢川善書に関する調査をまとめ、漢川善書が地方の演芸として無形文化財に指定されるまでに成長した要件を分析するとともに、国内外の図書館において文献を収集して聖諭宣講の歴史的発展を明らかにした。この過程で歌唱による教化が現代に至るまで各地で行われてきたこと、台湾においても現在無形文化財として唸歌による民衆教育が行われていることも明らかにした。
著者
黒川 勲
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては,スピノザの自然哲学の全体像に注目し,西洋哲学・科学の歴史的な背景を視野に入れて,スピノザのコナトゥス論の意義の解明を目指す。研究成果として,スピノザの哲学はコナトゥスの現象,力の現象の哲学であり,認識論的・倫理学的にコナトゥスは「現実性」の基盤であることが明らかとなった。また,スピノザの哲学体系・自然哲学おいて,スピノザの方法論の内的・反省的特徴を示しえた。
著者
筏津 安恕
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

プーフェンドルフの自然法論をヨーロッパ精神史のなかに位置づけるために資する可能性のある文献を収集・検討した。また、今年度も八日間チューリッヒ大学に滞在して、後期スコラ学派に関する文献調査を実施した。本研究は、自然法の学問としての自立化と、その枠内でのローマ法の訴権のシステムから独立私法のした一般理論の誕生の秘密を解明するという二つの柱からなる。ヨーロッパ私法の一般理論は、ローマ法の近代化のプロセスにおいて誕生するが、ローマ法の内在的な発展の力によっては、私法の一般理論を形成することは不可能であったという想定のもとで、私法の一般理論の誕生を促進した神学と哲学の影響を解明することに留意した。今年度は、神学の影響をみるために、後期スコラ学派のスアレスとレッシウスの研究を行った。ヨーロッパ大陸法系の制定法文化の成立のためには、私法の一般理論が必要不可欠であるが、これを構築するために、意思概念が重要な役割を果たす。意思概念が神学の影響によることは比較的よく知られているが、それがどのようなルートで法学に影響を及ぼすことになったのかということは、未解明の問題である。今年度の研究で、スアレス、デカルト、プーフェンドルフのラインをたどることができることが判明した。私法の一般理論の誕生のためには、もう一つ体系の配列の仕方についての考え方が問題であり、これについては、後期スコラ学派に属するレッシウスを中心に検討している。後期スコラ学派の道徳神学としての自然法論の内部で、restitutioを中心とした私法学が形成されており、ローマ法の現状回復を意味するrestitutio論を、損害賠償の意味でのrestitutio論に拡大し、これを中心とした私法の一般理論が模索されていたことが解ってきた。最終年度においては、restitutio論を中心とした一般理論の構築の試みから、グロチウス、プーフェンドルフの契約理論を中心とした一般理論への転換の理由を解明することが課題となる。
著者
平田 憲 福島 美紀子 木村 章 松本 光希
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

ロドプシンやIRBP、アレスチンといった網膜特異的蛋白の遺伝子のプロモーター部位にはPCE-1領域(CAATTAA/G)とOTX領域(TGATTAA)というシスエレメントが存在しており、OTX領域にはCRXとよばれるホメオボックス型転写因子が結合することが知られていた。我々の一連の研究は、PCE-1領域に結合する転写因子を同定し、網膜特異的遺伝子の発現にそれらがいかに関わりあっているかを検討することにあった。我々はまずPCE-1領域をプローブにしてサウスウェスタン法にて、RXと呼ばれるホメオボックス遺伝子を同定した。次に抗RX抗体を用いて、ウェスタンブロット法と免疫染色法を行い、RXが網膜特異的に存在し、網膜視細胞層以外にも内顆粒層や神経節細胞層など網膜全体に存在することを示した。さらにEMSA法にてRXがPCE-1領域に結合するのを確認した。また変異をつけたプローブによるEMSA法にて、RXとCRXという似通った転写因子が結合領域のコア(ATTAA)の前の2塩基対(CAかTG)によって結合特異性が違ってくることを明らかにした。次いで我々はCATアッセイにてRX, CRXによる綱膜特異的遺伝子のプロモーターの転写調節活性を調べた。RXもCRXもアレスチンやIRBPプロモーター活性を量依存的に増加させた。それに対しアレスチンプロモーターのPCE-1領域のみに変異をつけるとRXによる活性のみが低下した。さらにRX, CRXの領域特異的なプロモーター活性をみるため、PCE-1とOTXをつないだCAT遺伝子を作成し、RX, CRXを導入して実験を行ったところ、PCE-1ではRXのみが、OTXではCRXのみが活性を増加させた。これらのことから、網膜特異的遺伝子の発現にはPCE-1とOTX領域が必要であり、それぞれRX、CRXという転写因子が領域特異的に結合し、活性化していることが明らかにされた。
著者
斎藤 祐見子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

脳に高発現するMCHR1は摂食・うつ不安に関与するGタンパク質共役型受容体(GPCR)である。分子薬理学的手法により以下のことを明らかにした。I. MCHR1の新しい調節部位の同定(1)MCHR1の細胞内第2ループに存在する高度保存領域DRYはGタンパク質活性化に直接関わる。(2)MCHR1のHelix8領域はGq共役性が鋭敏となる機能亢進型表出に関与する。II. MCHR1結合因子の同定:GαのGDP-GTP交換反応を促進することによりMCHR1のシグナルを抑制するRGSタンパク質を3種類同定し、それぞれMCHR1における相互作用部位が異なる可能性を見出した。
著者
浜下 昌宏
出版者
神戸女学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

1.本研究の主目標はシャフツベリが近代美学の生成・展開において果たした役割を明確にすることにある。重点的にヨーロッパ各国との関係から、平成7年度はスコットランド、平成8年度はドイツ(語圏)、そして平成9年度はフランス(語圏)について研究し、関連資料・文献の収集と読査を進めつつ、研究成果は順次論文として発表することをめざした。2.平成9年度の研究課題である、シャフツベリとフランス(語圏)思想との影響関係についての研究により、さしあたり次の点を確認することができた。(1)シャフツベリとフランス思想との関係についての従来の研究には、ドイツ思想との関係についてのヴァルツェル、ヴァイザー、カッシーラーといった、要点を押さえたすぐれた概説的研究がないこと。(2)フランス本国との関係よりは、フランスよりオランダに亡命したプロテスタント系の思想家との交流が際立っていること。(例えば、ピエール・ベイル、ジャック・バアスナシュ、ジャン・ル・クレール、ピエール・コスト、ピエール・デ・メゾ、など。)(3)美学よりも宗教・道徳理論において両者の関係は強いこと。(4)美学のみならず総合的にみて、フランス思想家の中ではディドロが最もよくシャフツベリに関心を示していたこと。3.公表可能な研究成果は、近日中に公刊される新たなターンブル論であり、また、ディドロとシャフツベリとの関係を扱った小論も準備中である。また、文献資料の収集においては、平成9年夏に米国スタンフォード大学、UCLAを訪問した際に、当地の専門研究者より小論の構想についてreviewを受け、さらに推薦された論文集のコピーを収集した。