著者
石 岩 谷村 厚子 品川 俊一郎 繁田 雅弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.82-89, 2013-09-25

本研究の目的は,日本における1995年1月から2010年3月までの文献をレビューし,在宅高齢者の主観的健康感に関連する要因の先行研究を整理・検討することにより,高齢者の主観的健康感の促進施策に資する知見および今後の研究の方向性を探索することである。文献から抽出した主観的健康感の関連要因をKJ法に準じて整理した結果,(1)医学的な心身機能,(2)身体機能の維持・促進習慣,(3)趣味・活動への参加,(4)社会的・人的環境,(5)人生観,(6)基本属性の6つのカテゴリーが生成された。高齢者の主観的健康感を高めるためには,医学的な心身機能を維持・改善するだけではなく,社会性を維持すること,ポジティブな考え方を持つことの重要性が示された。今後は,日本におけるライフスタイルや社会文化的背景を踏まえた研究が必要であると考えられる。
著者
小澤 昭彦 菊池 恵美子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.200-213, 2008-12-25

運輸7業種の事業主478名を対象に,「精神障害者雇用に対する事業主の態度尺度評価・改訂版」(ATEP II)の信頼性と妥当性を検証した。精神障害者雇用に対する運輸業の事業主の態度構造および態度形成要因について因子分析を行った結果,「精神障害者の雇用に対する意欲」「精神障害者の活動制限」「精神障害者に対する信頼」「精神障害者の受け入れ態勢作りの意欲」「精神障害者の注意配分」「精神障害者に対する危険視」「精神障害者の雇用管理に対する自己効力」「精神障害者雇用のメリット」および「能力重視の採用基準」の9因子が抽出されたが,構成概念妥当性の検証には確認的因子分析の実施が課題に残った。また,α係数と再検査信頼性係数の結果から,内的整合性と再検査信頼性が検証された。さらなる統計解析の結果,態度形成要因として,企業の特徴(運輸業以外の業種の有無,常用労働者数,雇用中の障害者数),常用労働者の特徴(雇用継続の期間,学歴に関する必要条件)または回答者の特徴(年齢,管理職か否か,障害者の雇用に関する経験)が示唆された。
著者
栗原 トヨ子 澁井 実 森谷 陽一 長崎 重信 安永 雅美
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.32-42, 2014-06-25

我々は高齢障害者の作業療法(Occupational Therapy:以下OT)活動への参加とストレスとの関連について明らかにする目的で,客観的な指標として「唾液アミラーゼ活性モニター」を用いて,開始時と終了後に測定を試みた。その結果,参加者14人のうち,開始時よりも終了時の活性値が減少した人は10人(71.5%)で7割以上の人が減少していた。アミラーゼ活性値が減少した要因について挙げると,便秘薬服用者および編み物以外の作業種目をしている人が有意に減少していた。作業療法室および居室での主観的満足感を測る調査として用いたフェース・スケール得点は,アミラーゼ活性値の減少と負の相関を示した。編み物活動の人は他の活動の人よりも終了時のストレス値は減少しない傾向にあったが,編み物活動参加者の大半の人がOT室でのフェース・スケール点を「大変満足」と答えていた。したがって編み物をしている人たちにとって,適度な集中・緊張の持続は「難しい作業をこなしている」という満足感(充足感)につながっていると考えられた。
著者
神谷 晃央 竹井 仁 武田 湖太郎 村岡 慶裕 笹崎 義弘
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.219-230, 2013-03-25

THA術前患者における患側立脚相の骨盤側方傾斜から逆トレンデレンブルク歩行が認められた群(TI群)と見られなかった群(NTI群)に分け,歩行時の前額面における姿勢や運動機能の特徴およびその回復過程における両群間の差を明らかにすることを目的とした。初回の片側THAを受ける女性患者18名(TI群10名,NTI群8名)を対象とし,術前・2週・4週・6か月において,前額面における歩行時の骨盤側方傾斜や股関節可動域および筋力を比較した。術前の患側股関節内転可動域ではNTI群11.9度,TI群4.1度でありTI群が有意に低下していた。NTI群と比較してTI群では2週と4週で患側股関節外転筋力の低下,6か月で患側股関節内転筋力低下を認めた。結果から,逆トレンデレンブルク歩行の原因は,股関節外転筋力の低下を伴った患側股関節内転可動域制限の可能性がある。また,TI群ではNTI群よりも歩行時の姿勢異常や運動機能の低下が顕著であった。
著者
粟津原 昇 池田 誠
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.262-268, 2005-03-25
被引用文献数
1

目的 : 介護保険制度及び東京都A区の高齢者住宅設備改善費助成事業を利用し住宅改修を行った者311人を対象に, 住宅改修計画の立案に関連する要因を明確にすること。方法 : 理学療法士, 作業療法士の訪問記録から調査対象者の属性(基本属性, 移動能力, ADL, IADL, 要介護度等)と住宅改修内容(玄関, 浴室, 便所等について, 手すりの取り付け, 段差の解消, 扉の交換等)を調査し, 関連する要因についてロジスティック回帰分析を行った。結果 : 手すりの取り付けは「要支援」, 「要介護3」と関連し, 階段, ベランダは, 「掃除(介助)」, 「洗濯(介助)」等のIADL項目と関連していた。段差解消として用いられる浴室すのこは, 「同居家族あり」や「住居(賃貸)」との関連が認められた。結論 : 手すりについては, 介護度にかかわらず取り付けの必要性を示した。住宅改修計画は, 移動能力や要介護度のみならずADLやIADLの要因までを含めた総合的な視点で立案する必要がある。
著者
伊東 由賀 山村 礎
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.112-119, 2006-08-25
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症者の自己効力感への働きかけの効果の検討である。対象は授産施設,小規模通所授産施設,共同作業所に通所する統合失調症者34名で,自己効力感尺度(SECL),精神科リハビリテーション行動評価尺度(REHAB),WHO/QOL-26を用いて調査した。SECLの『自分にあった方法でストレスを発散する』とREHABの『(ことばの)明瞭さ』が有意な正の相関(p<0.01),SECLの『病気の状態が悪くなりかけたら,病院にいく』とREHABの『病棟外交流』に有意な正の相関(p<0.05)がみられた。SECLの「治療に関する行動」とWHO/QOL-26の「社会的関係」「全般的QOL」以外は有意な正の相関がみられた。SECL, WHO/QOL-26とREHABは一部負の相関を示した。以上より,自己効力感を高めることで対人交流が改善する効果が示唆された。
著者
國方 弘子 豊田 志保 矢嶋 裕樹 沼本 健二 中嶋 和夫
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.30-37, 2006
参考文献数
17

本研究は,地域で生活する統合失調症患者を対象とし,精神症状が自尊感情を規定するのか,それとも自尊感情が精神症状を規定するのか,それら因果関係モデルのデータへの適合性を明らかにすることを目的とした。分析対象は,横断的研究には109名,縦断的研究には61名のデータを用いた。精神症状の測定には,信頼性と妥当性が支持された9項目版BPRSを用いた。横断的研究の結果,反応が低下した症状である「鈍麻・減退因子」が,自尊感情と有意な負の関連があった。縦断的研究の結果,1年後の追跡調査時点において9項目版で測定した精神症状は自尊感情に有意な負の効果を示し,時間的先行性を検証できたことから,精神症状が自尊感情に影響を及ぼすといった因果関係が示された。以上より,統合失調症患者の鈍麻・減退に伴う感情をサポートすることは,彼らの自尊感情を回復させることに繋がると示唆された。
著者
日下 雄次
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.71-76, 2010-09-25
参考文献数
13
被引用文献数
1

剽窃が明らかになったため、本文を削除。
著者
齋藤 友介 矢嶋 裕樹
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.89-97, 2005-09-25

本研究の目的は, 難聴高齢者を対象として, 聴力低下に対する対処方略と精神的健康の関連性を明らかにすることであった。調査対象は, 日本赤十字社和歌山医療センターを利用し, かつ感音性難聴と診断された者193名とした。調査実施に先だち, 対象者に口頭にて調査の趣旨ならびに結果の利用方法について説明し患者の同意を得た。調査は言語聴覚士による質問紙を用いた半構造化面接法により実施した。統計解析にあたって, まず, 15項目3下位尺度(問題解決型対処, 情動調整型対処, 回避型対処)からなる対処方略尺度を開発し, その構成概念妥当性を確認的因子分析により検討した。結果は, 対処方略尺度の構成概念妥当性を支持するものであった。次いで, 各種対処方略と精神的健康の関連性を検討したところ, 問題解決型対処と回避型対処はいずれも精神的健康と有意な関連性を示さなかったが, 情動調整型対処は精神的健康の悪化と有意な関連性を示していた。以上の結果を踏まえ, 難聴高齢者における今後の対処方略研究の課題について考察した。
著者
宇佐 英幸 竹井 仁 畠 昌史 小川 大輔 市川 和奈 松村 将司 妹尾 淳史 渡邉 修
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.155-164, 2011-12-25

健常者24名(男女各12名)を対象に(平均年齢:男性21.3歳,女性20.6歳),大腿・骨盤の動きと仙腸関節・腰仙関節・腰椎椎間関節の動きを,腹臥位と腹臥位・膝関節伸展位での股関節5・10・15°伸展位,15°伸展位から10・20N・mの伸展方向への加重を大腿遠位部に加えた肢位の6肢位で撮像したMRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)を用いて解析した。結果,男女とも,股関節伸展角度の増加に伴って,大腿は骨盤に対して伸展し,骨盤は前傾した。股関節非伸展側の仙腸関節では前屈,第3/4・4/5腰椎椎間関節と腰仙関節では伸展の動きが生じた。しかし,第3/4腰椎椎間関節を除く各部位の動きは,10N・m加重時と20N・m加重時の間では女性だけにみられた。これらの結果から,他動的一側股関節伸展時の腰椎骨盤-股関節複合体を構成する関節の正常な動きが明らかになった。
著者
谷村 厚子 山田 孝 京極 真
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.89-100, 2007
参考文献数
15
被引用文献数
2

我が国の精神障害をもつ当事者の精神保健福祉および生活上の主観的なニーズに関する研究について1994〜2005年の専門誌をレビューし,そこに示されたニーズを,KJ法に準じた手法を用いて分類した。各文献から抽出された当事者のニーズは819枚のラベルに転記され,コアカテゴリ『自分が望む生活を営める』,『精神医療保健福祉システムが充実している』,『生活する環境が整っている』,『人的環境が充実している』,および,より下位のカテゴリに分類された。これらのカテゴリに分類された当事者のニーズは,具体性に富み,専門家が支援していく上で大いに参考になると考えられる。また,これらは,精神-脳-身体の遂行サブシステム,意志のサブシステム,習慣化のサブシステム,物理的環境,社会的環境,作業行動場面といった人間作業モデルの概念にも対応したため,作業療法の実践モデルによる支援が可能であると考えられる。
著者
伊藤 祐子 井上 薫 三浦 香織 山田 孝 品川 俊人 米田 隆志
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.164-169, 2006-12-25
参考文献数
5
被引用文献数
1

発達障害児に対する作業療法では,対象児の障害に合わせ様々なアプローチ方法が提唱されている。その一つに感覚統合療法がある。感覚統合療法は,主に学習障害児や自閉症児,自閉傾向児に施行されており,障害の特性に合わせて前庭覚,固有覚,触覚などの感覚刺激を入力できる様々な遊具を使用する。ホーススイングは天井から吊られた遊具で,重力を利用して自在に揺らすことができる。前庭刺激を与えやすく使用頻度の高いもので,平衡反応に問題を持つ児のセラピーに利用することが多い。しかし,平衡反応の改善等の効果は観察による評価が主体であり,定量的評価が難しいのが現状である。そこで,本研究ではホーススイングの揺れをモータで制御し,セラピストの力加減に依存しない一定の刺激を与えられるシステムの開発および,3次元動作解析を用いた平衡反応の定量的評価手法の検討を行ったので報告する。
著者
園部 真美 恵美須 文枝 高橋 弘子 鈴木 享子 谷口 千絵 水野 千奈津 岡田 由香
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.233-240, 2008-03-25

本研究は,地域住民のボランティア活動に関する意識の実態を把握することを目的とし,大学主催のボランティア講演会参加者を中心とする計94名を対象として,質問紙調査を実施した。対象者の性別は女性が88.3%平均年齢は44.8歳であった。過去のボランティア活動経験者は40.9%,現在の活動者は16.7%,その内容は,過去現在ともに「障害児(者)」「子ども」の割合が多かった。ボランティア活動をしていない理由の「機会がない・きっかけがない」という者の中に,潜在的ボランティア活動希望者がいることが示唆された。ボランティア活動の魅力は,他者の利益のためと自分のためにする場合の二つがあることが明らかとなった。自分にできる子育てボランティアとして「赤ちゃんの面倒をみる」「上の子の遊び相手をする」が多かった。ボランティア希望者と利用者とをつなぐコーデュネーターの役割をとる人材育成や組織作りが今後の課題である。
著者
藪 謙一郎 伊福部 達 青村 茂
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.117-124, 2009-09-25
参考文献数
12
被引用文献数
1

我々は先に発話障害者のために,ユーザ自身の手指の動きからリアルタイムに音声を生成する発話支援方式を提案し,ペンタブレットと小型パソコン(PC)を用いた音声生成器を試作した。その評価実験から,子音を含むような連続音声やリズムをつけた音声を生成できることを示した。本論文ではさらに,表現を豊かにするために抑揚やメロディを付加する方法を提案した。具体的には,(1)押圧センサを持つタッチパネルを利用して押圧力で抑揚を制御する方法,および(2)本音声合成器と音楽用MIDIキーボードとを接続してメロディを表出させる方法を考案し,有用性を評価した。方法(1)では,笑い声や動揺を表わすような感情表現を作り出せること,方法(2)では,短時間の練習で童謡などの簡単な歌を歌わせることができた。以上から,これらの方式は,家族間の会話あるいは音声リハビリテーション時において,リアルタイムに感情を表現する補助手段として効果的であることが示唆された。
著者
石田 千絵 河原 加代子 高石 純子 入江 慎治 杉本 正子
出版者
日本保健科学学会
雑誌
日本保健科学学会誌 (ISSN:18800211)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.139-147, 2004-12-25

〔目的〕統合カリキュラム後の本学3年次生で実施されている地域看護実習(保健所・保健センター実習)の4年間の実態を検討し, 今後の教育活動に生かすことを目的とした。〔方法〕平成12年度から15年度の3年次生314名の実習記録物と平成14年度の3年次生75名の実習後レポートを分析対象とした。調査内容は, 1)実習経験の有無とその内容2)実習の学びについては, 実習目標の項目から質的に分析した。〔結果〕1) 4年間の実習形態の実態は, (1)教育的な働きかけをとり入れた「実施」経験の増加(2)「実施」できる事業内容の変化(3)家庭訪問の継続訪問の経験の減少2)実習内容では, (1)実習地域の健康問題と看護活動を関連付けて学べていること(2)継続看護・関係機関や他職種との連携は, 精神保健事業を通して多くの学生が学べていたことがわかった。今後さらに, 実習前の演習の工夫や実習施設との連携が重要である。