著者
米澤 宏一
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

発電用水車の羽根車下流に設置された吸出し管(ドラフトチューブ)に生じる流動不安定現象(サージ)について縮小モデルを用いた実験および数値解析による研究を行った.その結果,設計流量と比べて過大流量および低流量のいずれの運転条件においてもサージの発生が確認され,その周波数は渦芯の振れ回り周波数とは異なることが明らかとなった.また,流れの加振実験を行い,キャビテーションの動特性を調べた.
著者
早島 大祐
出版者
京都女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究でとりあげる守護創建禅院は,従来、せいぜい郷土史研究の一コマをいろどるものに過ぎなかった。しかし、本研究課題を遂行するなかで明らかにした通り、分国内の国菩提寺はまちがいなく、京都と分国をむすぶ、ターミナルの一つであり、室町期の社会を読み解くうえで、重要な検討課題であることが明らかになった。また京都にたてられた京菩提寺には、守護の分国に所領が設定されることに加えて、荘園経営の安定化をもとめる京都の寺社・公家たちが、集い、こちらもやはり都鄙交通の拠点の一つになっていた。以上の点は、従来、禅僧の荘園経営の様子が古記録などから断片的に指摘されてきたが、本研究課題では、西山地蔵院文書をもとに、その具体相を詳細に解明できた点に特色があり、禅僧の活動が、単なる一寺院の動向というにとどまらず守護の創建禅院の禅僧という、この時代の政治史の問題とも密接に関わる動きでもあったことが明瞭になった。
著者
土方 裕子
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

文章を理解するためには,文章内の指示表現が指すものを特定する必要があるが,第二言語 (L2) における照応理解についての研究はあまり行われていない。そこで本研究は,日本人英語学習者の読解中における意味処理の深さと照応理解,動詞特性の関係を調べた。処理時間の測定と文産出課題から,日本人英語学習者は動詞特性を照応理解の際に十分に利用できていない可能性が示唆された。
著者
加藤 省吾 飯塚 悦功 水流 聡子 進藤 晃 杉辺 瑠美子 末政 憲司
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

療法士がリハビリ訓練計画を立案する際の合理的な思考プロセスをモデル化し,プロセスを実行するために必要な知識ベースを設計した.具体的な知識ベースの構築を行い,知識ベースを実装した支援システムを開発した.開発したモデル・支援システムを用いることにより,用いない場合よりも優れた計画を立案できることを検証によって確認した.本モデル・支援システムを用いることにより,医療の質・安全保証への寄与が期待できる.
著者
高橋 徹
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ロボットによる,音源定位,音源追跡,音源分離,分離音声認識の精度を改善した.これらの改善により,ロボットの動作により音源の方向変化に追従した音源分離が可能になった他,ロボット動作に起因するロボット自身の動作音の影響を受けにくくなり,ロボット動作中の分離音声認識が可能になった.つまり複数音源下でのアクティブオーディションのための身体動作制約が,ほとんどなくなった.音源に近づき信号対雑音比を改善し,複数音源間の方向角度差を広げるように移動し,分離音声認識精度を改善可能になった.音源とマイクロホン間に身体が入り込むような特別な場合を除き,動作中の認識精度を低下させることなく,分離音声認識が可能になった.
著者
木村 雄一
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「両大戦間期のLSEにおける経済学の生成と発展」について、(1)LSEにおける大陸経済学の受容と展開-「ロビンズ・サークル」の役割、(2)LSEとケンブリッジ-対立と協調、LSEのケンブリッジ疎開(3)LSEにおける「ケインズ革命」の群像-カルドア、ヒックス、ラーナー、(4)「プラント・グループ」(プラント、コース)による企業組織・企業理論の研究(5)国際的な経済学研究機関-講義科目、LSEの施設拡張、招待講演、特別講義の調査、(6)Academic Assistance Councilの創設-ベヴァリッジ、ロビンズ、ミーゼスによるユダヤ学者救出、(7)LSEの知性史-ドールトン、キャナン、ロビンズ、ラスキ、カルドア、ヒックスらの知的交流、の観点から明らかにした。
著者
平林 晃 PIER-LUIGI Dragotti
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,スパース信号に対する複数チャンネル標本化と,スパースサンプリングに基づく画像特徴量抽出に関する研究に取り組んだ.前者は主に初年度の課題であり,信号の事前分布とl1ノルム最小化原理をそれぞれ利用した2種類の信号再構成アルゴリズムを提案した.また,次年度は主に後者に取り組み,画像に含まれる直線エッジの完全抽出アルゴリズムを開発した.そして,提案手法の雑音耐性が従来手法より約10dB優れていることを計算機実験により示した.
著者
星河 武志
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

日本の外貨準備高は巨額であり、約1兆ドルである。膨大な外貨準備高の累積の背後には外国為替市場介入の存在が挙げられる。本研究では、為替政策の影響を分析した。その結果、大規模な円売りドル買い介入によって、為替相場が円安方向に動かされている可能性が示された。また、為替政策が為替相場のボラティリティに影響を与えていること、円売りドル買い介入が日経平均株価に対してプラスの効果を持つことが示された。
著者
日比野 直彦
出版者
東京理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は,鉄道駅整備計画を行なう際には,歩行者行動を分析し,その結果を計画に反映していかなくてはならないという立場から,その方法を議論するものである.まず,駅構内に設置されている保安用監視カメラを模してビデオカメラを設置し,それらから得られたビデオ画像を用い,歩行者データを獲得することを本年度実施した.具体的には,埼玉県春日部市にあり東武伊勢崎線と野田線の乗換え駅である春日部駅を分析対象駅として,駅構内および改札前に20数台ビデオカメラ設置し,ホーム,階段,エスカレータ,改札等の旅客流動を撮影した.撮影時間は,通勤ラッシュ前から夕方の帰宅ラッシュまでの連続した時間である.撮影は,平日1日,休日1日の2日間を行なった.撮影されたビデオ映像を1フレーム毎に画像として分解し,それらの画像に対して,画像処理の技術を援用し,個々の歩行者に着目した軌跡データ,空間利用に着目した密度データ,空間モデュールデータ等を作成すること行なった.本年度の研究成果は,第一に,歩行者行動分析に使用するための乗換え駅におけるビデオ映像を得ることができたこと,第二に,その映像から自動的に歩行者の位置座標,軌跡データ等を得るシステムを開発し,ある程度の精度でデータ取得可能であることを確認したことである.
著者
西村 知紀
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

価電子帯端に強いフェルミレベルピンニング(FLP)を生じる金属/ゲルマニウム(Ge)界面においても、Geの結合する(非金属)元素や界面近傍のGeの構造の変調が大幅にピンニング準位をシフトさせた。このことは界面及び界面近傍のGe原子の結合構造がピンニング準位と相関していることを示している。一方界面への極薄絶縁膜の挿入は膜種によって大幅に異なる緩和の挙動を示しており、金属/Ge界面のFLPの強さの起源は単純な界面準位もしくは金属からの波動関数の染み出しによる描像では難しく、より複合的な効果を考える必要があることを示している。
著者
岸本 章宏
出版者
公立はこだて未来大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

探索アルゴリズムはコンピュータサイエンスにおける基本的な手法であり、重要な応用分野の一つとしてゲームがある。ゲームの利用者の観点からは、探索アルゴリズム(ゲーム木探索アルゴリズム)が高速にかつ正しく問題を解けることが要求される。ところが、これまでのゲーム木探索アルゴリズムは、探索効率を落としたくないために正当性を保証しないアルゴリズムを利用するか、または解の正当性を保証したいために何千倍も遅い非効率なアルゴリズムを用いるかというどちらかの妥協を行ってきた。本研究では、このような探索効率と正当性の問題を解決するのが目標である。平成18年度の研究では、探索アルゴリズムの正当性を理論的に証明でき、効率的であることが分かったので、平成19年度は、研究目標にある通り、探索アルゴリズムのさらなる効率化を行った。囲碁とチェッカーを探索の題材に選び、コンピュータ上に開発したアルゴリズムを実装し、実験的に効率の良いアルゴリズムであることを示した。本研究の大きな成果として、チェッカーが引き分けであることを証明し、Science誌に掲載され、2007年度の科学的進歩の第10位にランクされた。また、最新の関連研究を調査し、本研究との比較を行い、開発した手法が優れていることが分かった。さらに、囲碁を題材にして、ランダム・サンプリングを用いた方法と効率に関する研究を開始した。ランダム・サンプリングを行う対象としては、囲碁を用いた。ランダム・サンプリングと木探索を組み合わせると非常に有効であることが、実験的に分かった。
著者
森 仁志
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

現代社会では、スポーツのナショナル・チームが国際試合で繰り広げるパフォーマンスやプレースタイルは、国民を表象する記号として機能する。本研究の目的は、ラグビーを事例として、代表選手の身体を通じて「日本らしさ」が語られ意味づけられるプロセスを提示・分析することにある。具体的には、日本と英国の国際試合をめぐる言説を両国のメディアから収集することによって、ラグビー「母国」と「後進国」のヘゲモニックな関係性のなかで、記号としての「ジャパン」(日本代表)=国民の表象が、いかに生成・流通・消費されてきたのかを明らかにする。
著者
鶴田 英也
出版者
梅花女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

・日本心理臨床学会の自主シンポジウム(波多江洋介企画)において、これまでの研究の外観を発表した。具体的内容としては、バウムに対する2種のパースペクティブ、すなわち垂直・水平軸のパースペクティブと柄と地のパースペクティブについて、その発想のもととなったいくつかのモチーフとともに紹介し、さらに臨床例を提示した。・昨年度に根っこ描写ありなしの二枚法で収集したバウムについて、根っこ描写あるいは地平線描写と描き手のしっくり感についての連関について統計的検定を行った。結果、根っこなしの方がしっくり感があるものとして選ばれやすいという結果が得られた。地平線描写としっくり感との連関は見られなかった。また根っこを描いたバウムからより病的な様相を強く感じるということが多く、根っこ描写のもつ特性を得られたことは有意義であったが、それだけに根っこ描写をこちらから指示することの責任の重さを痛感させられる結果であった。なお、この内容については日本箱庭療法学会にてポスター形式で発表した。・再度沖縄にてバウムを収集した。根っこ描写、地平線描写について統計的処理を行った後、梅花女子大学大学院心理臨床学専攻の大学院生数名とケースカンファレンス形式で個々のバウムを検討した。その内容については心理臨床関連の学会誌に投稿発表する予定である。・京都の鞍馬寺から貴船神社にいたる山道にある通称"木の根道"を調査した。木の根道とは、根っこが地表に張り巡らされており、その昔源義経が修行の場としたともされている場所であるが、その一種異様な雰囲気は、沖縄の見事な板根をもつサキシマスオウノキを訪れた時に感じた感覚とも似ているようだった。特に根っこに関するバウムイメージを膨らませる貴重な体験だった。
著者
松下 光範
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的はテーブルを囲む少人数参加者の合議に焦点を当て、知識の非対称性を有する参加者間のコミュニケーション様態と議論結果との関連性を明らかにすること、及びその協同を円滑に支援するためのテーブル型システム実現のためのデザイン指針を明らかにすることである。そのために、対面協調作業参加者の間のコミュニケーション行為に着目し、そこで行われるインタラクションの特徴を3つの実験を用いて観察した。実験の結果、(1)反射的応答を必要とする課題では、指を用いた直示行為の利用可否が発話内容と課題達成度に影響する、(2)熟考することが求められる課題では、他の参加者の非言語モダリティの参照可否は課題達成度に大きな影響を及ぼさない、(3)発話長や発話頻度は課題のタイプや非言語モダリティの利用可否に影響を受けない、(4)結合型課題では、グループ全体の効用が参照可能な状況下、かつ全ての参加者の代替案集合に対する評価が静的である場合に、より参加者全体にとって効用の高い案で合意できる可能性がある、ということが観察された。
著者
田中 克明
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

全身麻酔下にラットの側坐核にマイクロダイアライシス用ガイドカニューレを留置し、反対側の側坐核に貼り合わせ脳波電極を留置して覚醒させた。意識下動物において経時的に同部位の脳内局所麻酔薬濃度を定量し、なおかつ局在的な脳波を記録するモデルを確立した。ヒトにおいては、局所麻酔薬を硬膜外カテーテルより持続投与し、静脈内投与された麻薬性鎮痛薬が脳波(Bispectral Index : BIS)に与える影響を検討した。局所麻酔薬投与1時間後には安定した脳波が得られ、局所麻酔薬と麻薬の効果部位濃度が定常状態に達したことを反映する知見が得られた。
著者
日渡 良爾
出版者
一般財団法人電力中央研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

核融合エネルギーでは水素の同位体である重水素とトリチウムを燃料に利用する.自然界に存在しない燃料(トリチウム)を利用するため,核融合エネルギー開発の課題の一つに初期装荷用トリチウム燃料の入手が挙げられている.ここでは,重水素による僅かな核融合反応を利用しトリチウムを徐々に増殖し,定格運転までの出力に到達するという初期装荷用のトリチウム燃料を必要としない炉心プラズマ運転方法について詳細化し,プラズマの立ち上げ期間をできるだけ短くするといった観点から炉概念の最適化に向けた検討を行うことにより,初期装荷用トリチウム燃料の入手課題解決に貢献する.
著者
成廣 隆
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、白川郷合掌造り家屋の床下で営まれていた「焔硝生産」の土壌遺構に生息する未知硝化微生物を分子生態解析による解明を目指した。16S rRNA及びアンモニア酸化酵素遺伝子を標的とし、最新の高速シークエンサーを利用した分子生態解析を実施した結果、Nitrosospira属やNitrososphaera属に近縁のアンモニア酸化微生物が検出された。得られた群集構造データと、土壌試料の物理化学的パラメータとの関連性を調べた結果、土壌のpHや有機炭素濃度がアンモニア酸化微生物の多様性に影響を及すことが示された。これらの結果から、床下土壌遺構に生息する硝化微生物の多様性を解明することができた。
著者
木村 雄一
出版者
埼玉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究の成果は、ポスト・ケインジアンの一人として、現代経済学の形成、イギリス労働党の政策実施、開発経済学等に多大な影響を与えたニコラス・カルドア(1908-1986)の経済思想を、以下の諸点から明らかにしたことである。(1)LSEにおける理論形成、(2)第二次世界大戦後の福祉国家構想、(3)発展途上国の開発経済理論・政策、(4)EC加盟論争とポンド切り下げ、(5)支出税構想や選択的雇用税に関する政策、(6)ケンブリッジ学派の経済成長・所得分配に関する理論的貢献と政策、(7)成熟化したイギリス経済への処方箋、(8)フリードマンのマネタリズムや均衡経済学批判、(9)社会民主主義のヴィジョン。
著者
姚 陳娟
出版者
徳島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アクアポリン5(AQP5)の発現は内毒素(LPS)によりダウンレギュレーションされ、これにNF-κB及びMAPKの2つの経路が関係していることを見出した。更に、AQP5遺伝子のプロモーターに2つのNF-κB応答配列は重要なことが明らかになった。免疫系細胞、RAW264.7細胞でも免疫沈降による解析からNF-κB(P65)とAPI(P-c-Junとc-Fos)がLPSによるcross-couplingにされることも証明された。今後、c-Fosの高発現細胞を用い、LPSによるAQP5のダウンレギュレーションのメカニズムを追究する。
著者
原口 弥生
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

東日本大震災・原発事故の影響により、茨城県に避難してきた広域避難者を対象として、2回のアンケート調査を実施し、茨城県内の広域避難者の実態把握、必要とされる政策的ニーズについて分析を行った。茨城県内の放射能汚染については「低認知被災地」という視点から、激甚災害の発生のなかで、被害の実態が埋もれがちな地域に於いて、各地域の市民グループがどのように展開・ネットワーク化され、専門家が市民グループとの協働でどのような役割を果たしたのかについて分析を行った。上記の研究と従来からの自然災害研究の成果を統合し、自然災害・原子力災害を考慮した「レジリエンス」概念の再定義の必要性を提言した。