著者
伊藤 孝恵
出版者
山梨大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国際結婚夫婦のコミュニケーション態度に関する質問紙調査を、国際結婚夫婦並びに日本人同士夫婦に対し実施した。その目的は、日本における国際結婚夫婦のコミュニケーションに対する認識の特徴、特に外国人妻の認識の特徴を明らかにし、これに家族社会学の見地を加え、国際結婚夫婦における「多言語共生」「対等で互いの違いを認め合う夫婦間コミュニケーション」を目指すことにある。具体的には、国際結婚夫婦のコミュニケーション態度に対する認識の特徴を、日本人同士の夫婦と比して明らかにし、コミュニケーション態度とコミュニケーションに対する印象・情動との関連性を探る。質問紙は、日本語版のほか、英語版、中国語版、韓国語版、ポルトガル語版、スペイン語版、タイ語版を作成し、対象者が回答しやすいよう配慮した。質問紙は、山梨県を中心にその周辺の市で配布した。回収されたデータは、入力・集計した。今後、分析を進め、論文としてまとめる予定である。
著者
塩塚 秀一郎
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

『人生 使用法』を特徴づける「空虚」は、作家の生い立ちにその起源を求めることができる。精神科医ポンタリスは、偽名のもとにペレックの症例を報告し、この患者がみせる場所への執拗なこだわりが、幼年期をしるしづける「空虚」を根源にもつことをあざやかにえぐりだしている。「ピエールの母親はガス室で亡くなっていた。ピエールが飽くことなく充たそうとした空っぽの部屋の数々、その背後にはこの部屋が隠されていたのだ。あらゆる名の背後に、名もなきものがあった。あらゆる形見の背後に、痕跡ひとつ遺さず亡くなった母親がいたのだ。」部屋を充たして増殖する「細部」と同じく、『人生 使用法』を充たしている「物語」もまた、そもそもの欠如をうめあわせるものであったようだ。自伝『Wあるいは子供の頃の思い出』の冒頭は次のように始まる。「ぼくには子どもの頃の想い出がない。十二歳ごろまでのぼくの物語は数行に収まってしまう。父を四歳で、母を六歳で亡くした。戦中はヴィラール=ド=ランスの寄宿舎を転々とした。一九四五年に父の姉とその夫がぼくを養子にした、というものだ。」作家の幼年期における物語の欠如が、のちのロマネスクの希求につながっているということは十分に考えられよう。この視点から考え直すと、「制約」は単なる技術的仕掛にはとどまらなくなる。物語を求める無意識の衝動に突き動かされるままになるのでは、同一の物語を繰り返してしまう危険性があるが、「制約」によって、ペレックの紡ぎ出す物語は、そうした生々しい刻印を覆い隠すことに成功しているのである。
著者
武内 博信
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

ジルコニアにおける歯肉上皮細胞の接着はpolish、grindingおよびblasting処理に関わらず差はなく、細菌感染を考慮するとジルコニアアバットメントの表面はよりスムースな方が適していることが示唆された。また、ジルコニアおよびチタンの細菌除染に関しては、クロルヘキシジン、電解中性水およびプラスティックチップ超音波スケーラーは効果的であった。しかしチタンにおいては電解中性水による腐食が懸念された。一方でジルコニアは化学的除染にも安定であることが示された。
著者
藤本 岳洋
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

構造物の破壊事故等では、き裂の進展は工業部材の変形とともに生じる。特に工業部材の顕著な永久変形を伴って生じる破壊を弾塑性破壊とよぶ。弾塑性破壊の様相は複雑なため、従来の破壊力学の知見を用いることができないケースも少なくない。本研究では、この弾塑性破壊の発生条件を評価するための力学的な指標(クライテリオン)の確立を目指し、実験や数値シミュレーションの結果を交えて、破壊発生時にき裂先端近傍に生じる材料の挙動の評価を行っている。
著者
齋藤 慈子 中村 克樹
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、家族で群を形成し、母親だけでなく、父親、兄姉個体も子育てに参加する、小型霊長類のコモンマーモセットを対象に、子の新奇な餌に対する反応が、家族内の個体の存在によりどのように影響を受けるか、内分泌学的側面も同時に調べようと試みた。行動実験から、両親、特に母親は子の新奇餌への接近と摂食を促していることが示唆された。また、オキシトシという神経伝達物質を、マーモセットの尿から測定する方法を確立した。今後この方法を用いて、子が新奇餌に接する場面における家族の影響を、尿中オキシトシンの側面からも検討したい。
著者
田中 剛
出版者
独立行政法人農業生物資源研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

ゲノム配列情報が明らかになった真核生物種間で代謝経路比較を行い、系統ごとに特徴的な代謝経路進化を明らかにすることを本課題の研究目的とする。本年度は、植物の代謝経路情報の抽出及びデータ解析を中心に解析を行った。イネ・シロイヌナズナの代謝データはKEGGやAraCyc(TAIR),RiceCyc(Gramene)などのデータベース(DB)より公開されているが、必須代謝経路に関連する酵素情報が欠落していることが分かった。そこで、遺伝子機能の記載より遺伝子と酵素反応を対応付ける作業を行い(データマイニング)、新規に代謝経路情報を作成した。まず、データマイニングに必要なプログラムを自作し、KEGGより取得した酵素反応情報に基づき作成した酵素反応名とEC番号の対応リストをリファレンスとして、RAP及びTAIRより二公開されている遺伝子機能情報より網羅的に遺伝子とEC番号の対応付けを行った。その結果、イネではKEGG・RiceCycに登録されていない344のEC番号を新たに遺伝子と対応付けることができた。同様に、シロイヌナズナにおいてもKEGG・AraCycにない448件のEC番号を遺伝子と対応付けた。これらの結果を用いて植物2種におけるEC番号の右無を比較したところ、いずれの植物でめみ見つかったEC番号はイネで85、シロイヌチズナで258ど後者が3倍近く多いことがわかった。これらの結果を公開することで研究者が効率よく代謝経路と遺伝子の対応関係を推測することが可能になることが期待される。また、本プログラムを利用して、ヒト・マウスのデータに関してもデータ作成・解析を実行した。一方、これらのデータの中で、イネに関しては現在GrameneのDB担当者とデータ公開に関して協議をしている。互いのデータを精査した後、最終的には同一データを公開するため、先方と同様のDB構築を行っている。
著者
堤 拓哉
出版者
地方独立行政法人北海道立総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、雪国に建つ建築物を対象に、稀に起きる豪雪による被害と毎年のように繰り返し起きる日常的な雪の問題の二つを合わせて「建築物の雪害によるリスク」と捉え、雪害の発生確率と発生による損失を統計データの分析から定量化することにより、建築物の雪害によるリスクの評価手法を提案し、これまで検討されていない雪害リスクマネジメントを体系化することを目的とする。研究では、アンケート調査により豪雪地帯で起きている雪害内容を把握した。特に北海道では、敷地内の雪の問題、吹雪による問題が大きなリスク要因となっていることが明らかになった。雪害のリスクを評価する手法として、多変量解析に基づく雪害発生の判別、損失期待値に基づくリスク評価法を検討し、雪害リスクマネジメントのフローを提案した。
著者
大谷 直輝
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、前置詞の文法機能と談話機能の体系的な記述を行い、前置詞の意味拡張や機能範疇の変化を動機づける認知的な基盤を考察した。本研究の成果は『A Cognitive Analysis of the Grammaticalized Functions of English Prepositions』(179頁)として開拓社より出版された。また、overとunderの非対称的な機能・意味を『English Linguistics』と『言語研究』に、upの完了用法を『言語の創発と身体性』で発表した。また、定量的な言語分析の研究手法を『認知言語学研究の方法』で提示した。
著者
中村 晃士
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

精神科通院患者73名(F3およびF4圏)の1年後および2年後の追跡調査を行い、64名の基礎データ(職場内での心理的負荷、職場外での心理的負荷、GHQ-30[精神の健康度]、NEO-FFI[人格傾向]、MPS[完全主義傾向]、自尊感情評価尺度など)を収集することが出来た。復職出来るかどうかに対しては、職場以外の心理的負荷、同調性が影響していることが分かり、また家族のサポートが大事であることが分かった。
著者
林 智広
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は2000年代前半から注目されてきた"特定の材料に対して特異的に高いアフィニティーを示すペプチド(以後、材料結合ペプチドと示す)"の材料認識能を利用し、従来不可能であった溶液中におけるナノスケールの分解能での表面化学組成分析技術を開発することである。我々は以前の研究でターゲット材料に対する結合メカニズムが明らかにされているTi結合ペプチドを用いて探針の設計、測定条件の最適化を中心に上記技術の開発を行った。
著者
杉山 寿美
出版者
広島文教女子大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

植物プロテアーゼの結合組織蛋白質への作用機序が(1)コラーゲン分子が分散する酸性条件下でのテロペプタイド部位への作用であること(2)ゼラチンに対するゼラチナーゼ活性であること(3)三重らせん部位に対するコラゲナーゼ活性は認められないことを13年度に明らかとした。14年度は調理過程におけるキウイフルーツ果汁の食肉への物理的、嗜好的(官能評価)、栄養的特性への影響について検討した。キウイフルーツ果汁処理を施した牛肉(果汁添加量10-40%、10℃、20-120分)を加熱調理(乾式加熱:焼き)後、レオメーターで剪断力を測定した結果、軟化していることが認められた。また、脂質量をBligh and Dyer法、GCによって検討した結果、脂肪酸・コレステロール溶出量は未処理肉よりもキウイフルーツ果汁処理肉で有意に多くなった。これは脂肪組織が結合組織に沈着しているために、コラーゲンのテロペプタイド部位分解に伴って脂質溶出量が増加したものと考えられた。しかし、キウイフルーツ果汁の蛋白質分解作用は筋原繊維蛋白質にもおよぶために、キウイフルーツ果汁処理肉の食味はレバー様となり嗜好的に有意に好まれなかった。また、加熱調理過程(湿式加熱:ゆで)におけるコラーゲンの可溶化を、ハイドロキシプロリン量の定量(ボスナー法)により検討した結果、未処理肉と比較してキウイフルーツ果汁処理肉では有意に可溶化(溶出)が進行していた。しかし、熱拠理キウイフルーツ果汁処理肉、酸性緩衝液(pH3.0)処理肉でも未処理肉と比較してコラーゲン可溶化量は増し、さらに加熱時間を長くするとキウイフルーツ果汁処理肉との差は小さくなった。すなわち、加熱調理過程におけるキウイフルーツ果汁処理肉のコラーゲン可溶化促進は(1)コラーゲンの限定的な分解によるもの、(2)果汁が低pHであるためのコラーゲンの構造変化によるものであると考えられた。
著者
井上 英俊
出版者
明石工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、リスニングとしての写真描写問題に関して、1)問題項目間における特定の要因に基づく特性と2)各問題項目における特定の要因の操作に基づく特性を、学習者のリスニング能力に照らし合わせて明らかとすることであった。調査結果として、問題項目において使用された総語数と調査対象者の正答者率との間には相関関係があり、より低い聴解能力の学習者は容易な単語が多く含まれている錯乱肢を選ぶことが明らかとなった。また、TOEIC リスニングスコアが235点から360点である学習者には英文の再生スピードを遅すると聴解を促進したが、230点以下の学習者には効果がないことが明らかとなった。
著者
金谷 繁明
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

大脳皮質抑制性神経細胞は主に腹側終脳の基底核原基にて誕生し、接線方向移動(tangential migration)をして大脳皮質に到達する。基底核原基のうち、内側基底核原基(MGE)、尾側基底核原基(CGE)が大脳皮質抑制性神経細胞の主なソースであり、主にMGE細胞はLhx6、CGE細胞はCOUP-TFIIを発現する。近年、マウスモデルを用いた研究により、間脳の一部である視索前野(POa)からも抑制性神経細胞が由来することが報告されている(Gelman et al., 2009)。POaは遺伝子発現様式により背側POaと腹側POaに分けられるが、腹側POaに発現するDbx1転写因子に由来する抑制性神経細胞が、5層に由来する多くの抑制性神経細胞がDbx1由来であることが示され、それらは胎生11日目付近で産生されることが示された(Gelman et al., 2011)。しかしPOaに由来する大脳皮質抑制性神経細胞が移動中にどのような分子を発現し、どのような移動様式や移動メカニズムを取るかはほとんど知られていない。我々はMGEとCGEの両方のマーカーである(Lhx6、COUP-TFII)を発現する細胞群(M-CGE細胞)がPOaに由来していることを突き止めたことから、POa内でのM-CGE細胞の由来を詳細に解析した。局所遺伝子導入法にて腹側POaにのみ遺伝子導入をして腹側POa由来細胞を解析したところ、この領域から由来する細胞のほとんどがLhx6/COUP-TFII二重陽性であることを突き止めた。さらに背側POa由来の細胞ではLhx6/COUP-TFII二重陽性の割合が少ないことから、腹側POaがM-CGE細胞の主なソースと考えられた。
著者
加藤 玄
出版者
日本女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、13世紀後半のイングランド王エドワード1世の家政組織の具体相を分析することを通じて、空間とコミュニケイションという観点からプランタジネット朝宮廷の性格を解明した。エドワード1世の家中と移動宮廷を分析し、家中で活躍したサヴォワ人の経歴を当時の政治状況の中に位置づけ、移動宮廷における会計記録の作成を検討した。また、アキテーヌ公とその統治下のガスコーニュ地方の家臣との関係を分析し、中世における家臣のアイデンティティが主君とのコミュニケーションによって多面的に形成されることを指摘した。以上の研究を遂行する中から、アキテーヌ公領を当時の社会的諸関係や諸制度の投影=領域として捉える視点を得た。
著者
佐久間 路子
出版者
白梅学園短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は幼稚園5歳児,小学校1年生,2年生の3学年を対象に,2年間にわたり縦断追跡的に自己理解インタビューを行い,小学校への移行期における自己概念に関して(1)子どもの自己描出の量的・質的分析に基づき横断的に把捉された平均的な発達パターンと,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性と変化のパターンの差異を明らかにすること,(2)年齢要因と小学校へ移行という環境要因が自己発達の連続性に及ぼす影響を検討することが目的である。2005年度の第1回目調査(2006年1月〜3月実施)に引き続き,第2回調査を2006年8〜9月に都内の公立小学校2校で行った。対象児は,小学校1年生60(22)名,2年生56(54)名,3年生65(42)名,計181(118)名である(括弧内は縦断調査人数)。質問内容は,(1)現在の自分(いいところ等),(2)1学年前の自分(どんなところが変化したか等),(3)1学年後の自分(どんなところが変化するか等)についてである。さらに前回調査を行った子どもには,前回の調査を振り返る質問(前回次の学年になって変化すると思ったところは変化したか等)を行った。その結果,(1)横断的に把捉された平均的な発達パターンは,これまでの自己概念に関する知見とほぼ同様であり,縦断追跡的に捉えられた個人内の連続性は,3年生でより明確に見られた。(2)第1回目調査と比較した結果,5歳児から1年生への変化では,小学校への移行という大きな環境面での変化があったため,幼・保との違いや,勉強面に関する回答が多く見られたが,1年生から2年生の変化では,環境面の変化に関する回答は減り,性格・態度や能力の変化に関する回答が多く見られたこと,3年生では勉強に関する具体的能力と性格に関する回答が多く見られ,学校生活において勉強での能力の重要性が増加していることがうかがわれた。以上より,子どもの自己概念は,環境変化の多大な影響を受け,学校生活と密接な関連があることが明らかになった。
著者
鈴木 孝明
出版者
香川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、MEMS製造システム技術のフレキシブル化・ハイスループット化を目的として、駆動機構を有する複数の機能を集積化したマイクロシステムを単一マスクパターンからアセンブリフリーで作製する方法を開発した。本技術の特徴は、複雑に流路が入り組んだマイクロ流体システムの作製と、さらにその内部に磁気駆動素子を組み込むことをアセンブリフリーでできる点にある。作製方法として、独自の加工技術である単一マスク回転傾斜リソグラフィにより、(1)フォトレジストを塗布して流路構造を作製し、(2)さらに(1)とは逆型のフォトレジストに磁気微粒子を懸濁し、流路内に導入して同じマスクを用いて露光することによって、磁気駆動素子をマイクロ流路内に作製・同時設置する方法を提案した。
著者
城山 陽宣
出版者
関西大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、東アジアにおける儒教を考える際に、その原点と末端、中心と周縁の双方に注意を払うことによって、中国・日本における儒教の展開と伝播を考察し、その本質を究明することを目指したものである。まず、東アジア儒教の原点・中心研究では、日本中国学会大会の発表等において、董仲舒の対策文書に関する福井重雅氏の考証の方法に対する疑義を提起した。また、董仲舒対策第三策の「六藝之科・孔子之術」に対する新たな解釈を提示し、対策が当時の朝野にいかなる影響を与え、またこれがいかに漢代思想史に位置づけられるのかについても卑見を提示した。次に「周縁的研究」では、清朝文化の日本への東伝という文化交渉の現象の中でも、とりわけ特徴的な一例である清朝の木活字出版「聚珍版」の東伝が日本の近世木活字の盛行をもたらした可能性について考え、清朝で生み出された木活字による出版を「雅馴」と見なす観念が、近世日本にも受容されていたことを確認し、中国を源流とする儒教思想が日本の社会へ受容されていったことと密接な関連があることが確かめられた。また2010年からは、大阪を代表する漢学塾であった泊園書院に関する研究も行ってきた。その第一弾として、藤澤南岳の蒐書思想を自筆稿本『名士九命草』の「藏書」を中心に解き明かすことを通じて、近代日本における民間の儒学・儒者の実態を明らかにすることを試みた。次に、これまで全く手付かずであった藤澤東〓・南岳・黄鵲・黄坡先生の自筆稿本の目録の整理を行い、「関西大学泊園文庫蔵自筆稿本目録稿-その(1)-」を提出した。以後自筆稿本目録完成まで順次発表していく予定である。
著者
吉田 茂孝
出版者
高松大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、発達障害などの「特別な教育的ニーズ」のある子どもを含む学習集団を指導するための枠組みを理論と実践から明らかにした。「特別な教育的ニーズ」のある子どもへの指導は、個別支援が重視され、集団への指導が注目されていない。そのため、わが国とドイツの教育学の理論研究とともに小学校の実践分析から、(1)集団・グループへの指導の意義と指導方法、(2)学級指導と授業指導の両方の視点の重要性、(3)「学習形態の交互転換のある授業」モデルの構造を検討した。
著者
大野 誠寛 村田 匡輝
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、講演や解説などに対して読みやすい字幕をリアルタイムに生成するため、その要素技術として、次の3つの話し言葉処理手法、(1)節の始境界検出に基づいて高精度化した、話し言葉の漸進的係り受け解析手法、(2)話し言葉を読みやすいテキストにするための構文構造に基づく話し言葉の整形手法(主に、読点挿入手法)、(3)字幕テキストを読みやすく表示するための構文構造に基づく改行挿入手法、をそれぞれ開発した。
著者
渡辺 義浩
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題の目的は、運動・変形中の物体形状をリアルタイムに取得し得るセンシング技術の確立とその応用展開である。特に、高精度形状復元のためのセンシング情報処理やインターフェースへの応用展開に重点を置いた。まず、3次元センシングの高解像度化技術を開発した。これは、時系列に取得される運動物体の低解像度形状データから、高解像度の形状を復元するものである。次に、非剛体変形の推定を高精度に行う手法を開発した。これは、対象物体の変形に関する物理的特性の数理モデルを推定問題に取り込むことで、計測ノイズや低解像度による取得データの劣化を解消するものである。また、高速3次元センシングを基盤として、インタラクティブなディスプレイシステムを開発した。これは、変形可能なスクリーンを介在物として、仮想空間の3次元物体を操作する機能を提供するものである。さらに、高速な3次元センシングによって、ユーザのめくり動作中に紙面情報をスキャンする技術を開発した。各ページの紙面の変形を連続的に捉え、書籍情報の歪みを3次元の非剛体モデルによって自動補正することが可能であることを実証した。