著者
高山 龍太郎
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

シカゴ学派社会学の研究法を範例に、不登校の居場所づくりに関するフィールドワークをおこなった。その目的は、不登校の居場所で繰り広げられる具体的な社会生活を描き、スタッフの役割や居場所を規定する価値観などを明らかにすることである。居場所の活動は、(1)諦めと休息、(2)夢中になる、(3)目標との出会い、(4)仲間との共働、という4つの局面から構成され、子どもは局面(1)から局面(4)へ少しずつ活動の幅を広げていき、居場所の外とつながっていく。居場所のスタッフの役割は、それぞれの局面での活動を活性化させることであり、そのとき生じるトラブルを解決して安心・安全な場を維持することである。居場所を規定する価値観は、子どもの意思やペースの尊重、競争の排除などであり、学校とは対照的である。「学校的価値観と居場所的価値観の行き来」という観点からそれぞれの居場所が想定する子どもの成長の軌跡によって不登校の居場所を類型化すると、(1)補完型(小回り・大回り)、(2)対抗型、(3)代替型という3類型が導き出される。
著者
鈴木 友之
出版者
神奈川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

Navier-Stokes方程式の弱解の正則性を圧力に対するある条件の下で証明した.特に,圧力がLorentz空間に基づくスケール不変な空間において十分小さい場合,換言すれば自己相似的に小さい場合の爆発の可能性を排除した。またこの結果はMHD方程式に対しては,圧力項に加え磁場がスケール不変なLorentz空間に属している場合に同様の結果が成り立つことも示された。
著者
生駒 俊英
出版者
福井大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

我が国では、2007年に「離婚時年金分割制度」が導入され離婚の際に年金を分割する事が可能となった。しかし現在当初予想された程、利用が行われていない。そこで本研究では、我が国が制度導入にあたり参考とした、ドイツにおける「年金権調整制度」が、2009年から新たな制度へ改正された点に焦点を当て、示唆となる点を探ることとした。ドイツの制度を踏まえて、まず我が国の制度を社会保障法上の制度と捉えて、分割割合を一律二分の一にすべきであるとの結論に至った。さらに、本制度により分割は可能になったものの、それより生じる結果に対して制度的な対応が必要不可欠である。
著者
泉水 宏臣
出版者
(財)明治安田厚生事業団体力医学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、精神疾患患者への運動療法の効果を検討した。まず、様々な種類の運動(動的運動、静的運動、競技的要素を含む運動)が精神疾患患者の感情状態に及ぼす効果を検討した結果、いずれの運動も心理教育と比較して感情状態改善効果が高かった。次に、運動(ヒップホップダンス)による感情状態改善効果を気分障害患者と統合失調症患者において検討した結果、どちらも感情状態が改善した。さらに、長期的な運動の効果を検討した結果、デイケア施設にて実施した運動プログラムに定期的に参加した精神疾患患者は、そうでない患者と比較してメンタルヘルスが向上した(精神科症状の軽減、自己効力感の増加)。統合失調症患者に限って同様の検討をした結果でも、定期的な運動参加がメンタルヘルスを改善した(自己効力感の増加)。よって、精神科の治療として運動は有効であることを示すことができた。
著者
ジョンズ アダム・ルカス
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

オーセンティシティーは研究や議論の中でいくつかの使い方があり、幅広く使われているこのコンセプトにこれらの定義を結びつける枠組みを提案した。多くのデザイナーはモノの生産立地より材料の本質を重視する。ただし、デザインプロセスの中の決定的要素の原型や試作品を作るのに製造者が近くにいることが不可欠である。多くのデザイナーは「オーセンティック」なモノを作るのにその国のデザイン本質や文化を保存しすべての作品に適用する必要性は感じない。ブランドを持つ製造者にとってデザイナーの国籍や材料の原産国、そして商品の生産地は商品のオーセンティシティーに関して重要ではないという意見および経験的根拠があった。
著者
宮下 政司
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

研究1より、中年の肥満男性において、身体活動指針が推奨する最低限の運動量での一過性の30分の自転車漕ぎ運動は、食後毛細血管中性脂肪濃度を低減させることを明らかにした。この結果より、運動を定期的に行い習慣となれば、心血管疾患の予防のための運動療法となり得ることを示唆した。研究2より、食後毛細血管中性脂肪濃度は、非活動群と比較し、活動群で低値を示した。この結果より、急性的な身体活動による影響とは区別した習慣的な身体活動による食後中性脂肪の低減効果を明らかにした。
著者
生駒 夏美
出版者
国際基督教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

メディアや文学における危機の表象において、ジェンダーの要素が国家共同体の概念と深く結びつき、犯罪者のイメージが性的逸脱や規範的ジェンダー逸脱と関連していることが明らかになった。逸脱者を犯罪者として描き出し、罰することにより、他者として社会から排除し罰する機能を持つ言説は、同時にその社会の脆弱な規範や国民アイデンティティを保持しようとする意図に支えられている。
著者
辻村 清也
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)バイオアノード電極と酵素の直接電子移動反応に基づいたアノード極の作成を目指し,電極表面および構造の改良を行い,電流密度を従来報告されている系の100-1000倍に向上させることに成功した.酵素としては酢酸菌由来のフルクトースデヒドロゲナーゼ,グルコン酸デヒドロゲナーゼに注目した.また,酸化生成した難酸化性有機酸を二酸化炭素まで酸化し,さらに燃料として利用するために,微生物細胞(本研究では大腸菌)の代謝経路の利用を検討し,適切なメディエータを導入することで,例えば酢酸の電気化学的酸化に成功し,そのメカニズム,制御機構について検討した.(2)バイオカソードアノードと同様に,よりシンプルな電池設計を目指したマルチ銅酵素と電極間の直接電子移動に基づくカソード構築に向けて検討した.細孔を制御した多孔性炭素の利用などによる電極構造の改善,大腸菌由来CueO,白色腐朽菌由来ラッカーゼなどの新規酵素の検討により,酸素の拡散律速となるバイオカソードを作成することができた.また,電位をコントロールした変異体酵素を用いその電極反応解析を行い,変異導入が酵素活性に及ぼす影響を考察した.さらに,電気化学測定と水晶振動子マイクロバランス測定とを組み合わせることにより電極上への酵素の吸着および活性挙動の解析・評価を行い,酵素修飾電極の改善に向けた指針を明確にした.(3)バイオ電池フルクトースデヒドロゲナーゼ,ラッカーゼをそれぞれアノード極,カソード極の電極触媒として用い,酵素電極間の直接電子移動反応を利用したシンプルな無隔膜型(一室型)果糖-酸素バイオ電池の作成に成功した.起電力は0.8Vであり,1平方センチメートルあたりおよそ1mWの電力を得ることに成功した.また,果実から直接電力を得ることに成功した.
著者
菊田 弘輝 泉 孝典 吉川 真弓 白石 洋平 畑中 壮大 今井 綾子 伊藤 匡貴
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

水方式による躯体蓄熱暖冷房システムは,高断熱建物における室内負荷の顕熱成分に対応するシステムである.CASBEEの最高ランクS に相当する建物を対象に,本システムのコミッショニング及びシステムチューニングを実施し,快適性・省エネ性・経済性の向上を確認した.また,低温温水による輻射暖房ならびに高温冷水による輻射冷房の可能性を示唆し,本システムと併用する形で,ダブルスキンにおける省エネルギー効果,トップライトボイド空間における各階の日射負荷の分配率を明らかにした.
著者
秋川 卓也
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

これまで返品制はSCMの障害として認識されてきた。しかし、返品は需要と供給の2つが数量と時間の点から整合しないことから発生する。SCMの本質を需給管理と考えるならば 、SCMを返品抑制の機構と捉えることもできる。以上の点を踏まえ、本研究は2つの研究目的を有する。第一に、SCMで製造業者および流通業者が返品を削減・抑制した事例を考察し、返品削減をSCMで実現する方法論についての知見を提示する。第二に、SCMと返品制の関係性についての実証研究を行う。SCMが返品削減の取り組みとして有効であるかを実証する。
著者
井上 大介
出版者
創価大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

メキシコ民衆文化としてのサンタ・ムエルテ信仰の特徴は、負のイメージが付与されたテピート地区という社会空間を含む従来の文化資源を流用しつつ、従属階級の信者に対し、特定のアイデンティティを提供し、既存の文化的カテゴリーを揺り動かすような動向を現出させていた。またその表象に関しては、グローバル、ナショナル、ローカルといった諸次元での語りが存在し、非常に流動的な言説によってカテゴライズされているといった特徴が抽出できた。同時にマイノリティ宗教の中にも正統・異端の区別が認識されており、組織化された動向はより社会的制裁と結びついているといった傾向が看取できた。
著者
金子 知適
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

大量の経験的データから学習した知識を利用する効率的な探索技術の研究を行った.探索においては対象の知識を活用することで効率が向上することが知られている.本研究により棋譜に残された人間の判断履歴から,80万次元以上のパラメータを調整し計算機が活用可能な知識とすることが可能となった.研究成果を将棋プログラムへと応用したところ,現時点で最も強いコンピュータプログラムを作成することができた.このことは本研究の有用性を示していると考えられる.
著者
瀧本 裕士
出版者
富山県立大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

富山県諏訪川用排水地区の洪水調整池は地下水涵養にも資する浸透型に計画されている.しかし,浸透型洪水調整池は全国的にも例が無く,その構造や維持管理手法については未解明である.本研究では浸透メカニズムの定量的な解明を目的として,様々な実験を通じて調整池の浸透機能を評価した.本研究で明らかになった知見を以下に示す.1.カラム実験による目詰まりと浸透量の関係濁質と浸透量の関係について,調整池を繰り返し使用する場合には,濁質の累積によって目詰まりが生じ浸透機能が低下する傾向にあった.特に,基礎地盤がむき出しの場合には,累積濁水投入量が約2000g/m2になると浸透機能が60%に低下することがわかった.基礎地盤に侵入した濁質は除去が困難なことからフィルターを設置するなどの対策が必要である.2.フィルター材の性能評価現地砂をフィルター材として設置した実験では,浸透機能が60%に低下するのに要した累積濁水投入量は約4000g/m2であった.また濁質はフィルター材の上部で捉えられるので,表層部の入れ替えで浸透効果を復帰させることも可能である。したがって,フィルター材の採用はメンテナンスを考える上でも効果的であることがわかった.3.現地湛水実証試験の結果処理区として諏訪川水系内の砺波西中(中流部),神島(上流部)および対照区として太郎丸の3調整池において湛水実証試験を行った.その結果,いずれの調整池も気泡の出現による不飽和浸透の現象がみられた。これは飽和に比べ浸透量が低下する要因となる.また,土壌水分計を設置して,深度方向の水分変化を調べ,浸透解析も行った.その結果,砺波西中では,神島,太郎丸と大きく異なる浸透挙動が確認された.土層の差異もあるが,特に調整池底面から地下水面までの距離が浸透挙動に大きく影響していることがわかった.調整池の運用,管理では地下水位の変動を考慮し,設置場所に応じた対策が必要である
著者
丸森 亮太朗
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

最先端成膜プロセス技術の一つ,マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)成膜技術により,白金加金表面へのチタニアコーティングを試みた.その結果,(1)結晶相の主要な生成物としてルチル型チタニアおよびTiOが認められた.(2)測色結果では,白金加金は金属色を十分に遮蔽しているとはいえない結果であった.(3)SEMによる観察では,等方性の結晶組織が観察された.
著者
脇田 祥尚
出版者
広島工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

過去2ヵ年度の研究にひきつづき、カンボジアを主な調査対象地とし、「東南アジアの土着的住居・集落にみられる計画技術の活用に関する研究」を進めた。これまで、都市居住に焦点をあて、街区居住という視点から宅地割りや路地形態の分析を行うとともに外部空問の利用形態について分析を行ってきた。また街路景観の分析も行ってきた。18年度は、フランス統治期の都市計画と現在の都市構成の関係を明らかにするため、施設分布や道路構成などに着目しながら都市構成に関する研究を行った。また、東南アジアの都市部でランドマークあるいは都市資源として位置づけられるコロニアル建築に焦点をあてそのデザインの特徴ならびに空間利用の変化について分析を試みた。また、外部空間の活発な活用について詳細な分析を行うため市場の空問構成・空間利用についての分析も行った。都市居住の根幹をなす都市住居・ショップハウスにっいての分析では、増改築に着目し、多様な増改築の事例を(1)居住面積の確保、(2)独立性の確保、(3)アクセス経路の変更という3点に整理した。今後さらに東南アジアの都市部では開発圧力が高まり、集合住宅の需要が高まっていくと考えられるが、西洋型の集合住宅の型を導入するのではなく、その地域独自の居住様式に適合した集合住宅の型の検討が望まれる。本研究の成果は、その基礎的研究として位置づけられるが、これら3点の特質をべ一スにしながら冗長性の高い建築計画技術の開発が望まれることが明らかとなった。
著者
北中 順惠
出版者
兵庫医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

覚せい剤メタンフェタミンによる薬物依存状態に、豊かな環境(回転皿)がどのように影響するか、マウスを用いて検討を行った。三日間ICRマウスに回転皿使用を試みたところ、マウスは日に日に回転皿を回しており、一方で食餌、飲水等に変化はなく、豊かな環境を提供していると判断した。メタンフェタミン投与によりマウスは自発運動量が増加し、依存性が確認されるが、そこに回転皿の直接的影響は確認できなかったが、依存性を消去するためのメタンフェタミン投与休止期間中に回転皿が存在すると依存性の消去促進が確認できた。
著者
関野 恭弘
出版者
岡山光量子科学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

我々の宇宙は、より大きい宇宙項を持った(より膨張率の高い)宇宙からの量子的トンネル効果によって生成された事が、超弦理論によって示唆されている。そのような宇宙を記述する厳密な(非摂動的)定式化を2次元共形場理論によって構成して観測への予言を与える事を目指し、宇宙のトポロジー、宇宙における揺らぎと共形場理論の演算子の間の対応などを詳しく調べた。また、トンネル効果によって生成された宇宙における宇宙背景輻射スペクトラムの解析を進めた。
著者
池田 寛子
出版者
広島市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究の最大の成果は『ヌーラ・ニゴーノル詩集』と『イェイツとアイリッシュ・フォークロア』の出版である。アイルランドで入手した資料を活用し、アイルランド語文学に焦点を当てつつ、英語文学との相関関係の解明に力を入れた。この研究が一貫して明らかにしてきたのは、アイルランド語は少数民族言語ではあるが、英語というグローバル言語による文学と密接にかかわりつつ独自性を持った文学で世界に貢献していることである。
著者
中谷 智恵
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

f MRI研究:BOLD指標を用い、シーンの認識にかかわる脳部位の特定を、正常視力の成人被験者を対象に行った。測定中被験者は経時的にCRTディスプレイに提示された2枚のシーン内の物体の位置の異動判断を行った。2枚のシーンは同一視点から見た場合と、異なる視点から見た場合があり、後者ではシーンの周りを歩いたように視点の角度を変えた刺激が用いられた。この課題に関与した脳皮質部位のは活動パターンによって3つに分類された。第1は、課題変数(視点の角度の変化量)に伴い賦活エリアの大きさが変わる部位、第2は課題変数に伴い賦活エリアおよび賦活レベルの変わる部位、第3は課題変数に左右されず一定の賦活レベルを保つ部位であった。第1の部位には、V1/V2、右半球後頭から頭頂にかけての諸回、右側頭葉下面の紡錘状回、両側下前頭回が相当し、視点の変化に伴う刺激の変形を処理していると考えられる。第2の部位は左半球後頭から頭頂にかけての諸回と帯状回前部が含まれ、第1の部位での処理結果の評価を行っていると考えられる。第3の部位は島で、賦活は基線レベル(注視点凝視)より低かった。この負の賦活はおそらく課題遂行全般にかかわる活動のダイナミクスを反映していると推測される。従って、これらの3つのシステムがシーン認識の基本ネットワークを形成していると考えられる。結果の一部は国際学会等で発表した。また現在論文を投稿準備中である。脳波研究:物体を認識中の脳波を眼球運動と同時に計測した。このデータは現在解析中である。
著者
アムール=マヤール オリビエ
出版者
立教大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

この3年間では私は特に、次の3つの主たる目的を設定した。まず第一には国際シンポジウム「ミシェル・ビュトール-境界にて、あるいは移動の芸術」を開催することである。シンポジウムの目的は、ビュトール作品にみられる日本文化の影響を明らかにすることであった。研究の2つ目の目的は、フランス現代作家の作品にみられるアジア文化の影響、特に日本文化の影響について、書物を準備・刊行することであった(『ノマドのエクリチュール-フランス作家と極東』)。研究の3つ目の目的は、上記シンポジウムの成果に基づく、共著を出版することであった(『ミシェル・ビュトール-境界にて、あるいは移動の芸術』、ディジョン大学出版局)。