著者
金子 育世
出版者
順天堂大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

第一言語および第二言語としての英語によるライティングとスピーキングに現れる愛情表現と哀悼表現における類似点と相違点を観測するため、米語母語話者と日本人英語学習者を被験者として生成実験を実施した。ライティング実験においては被験者全員に同じ条件下でラブレターとお悔やみの手紙を書かせ、日本人英語学習者による手紙には英語母語話者による手紙に観察されるパターンとは異なるパターンが観測された。スピーキング実験ではテープレターを作るという設定のもとで手紙を読ませ、日本人英語学習者は愛情表現よりも哀悼表現において習得が進んでいることが示唆された。
著者
堂上 友紀
出版者
明治国際医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

われわれは、酸化ストレスマーカである4 ヒドロキシ2ノネナール(4HNE)に対する抗体を、放射線を発するヨード125で標識し、これをもちいて動脈硬化病変における酸化ストレスの発生状況をイメージングする方法の開発を試みた結果、取り出した大動脈において画像化に成功した。
著者
奥山 智緒
出版者
京都府立医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2006年5月より2009年4月までに施行されたFDG-PET検査あるいはFDG-PET/CT検査5,027例中偶発的に甲状腺への集積を指摘された125症例の中で、組織学的検証がなされたものをretrospectiveに検討しそのFDG集積にと良悪性を検討したところ、FDG-PET検査にてincidentalに甲状腺にhot spotを認めた症例の中で、悪性病変は27例、生検にて良性と判断され経過観察となっている症例は18例あった。これらのFDG-PETの集積を半定量的にSUVにて比較検討したところSUVmax(mean±S.D)は、悪性で3.8±5.4、良性で2.3±3.7で良群間に有意差は認められず、FDG集積にて良悪性を鑑別することは容易ではないと考えられた。FDG-PET/CT症例より、甲状腺にFDG集積を有する症例から、MRSを施行し結節を摘出する症例を抽出。2010年4月~2011年3月に当院にてFDG-PET/CTを施行した1535例の中で、甲状腺に診断が未確定な結節を認めた症例は52例、うち、FDG集積を有する症例は18例で、その中で結節のサイズが1cm以上のものは6例であったが4例においては、原疾患の診療が優先され、甲状腺結節の精査は見合わされた。残る2例は、頸部超音波検査にて腺腫様甲状腺腫と診断され、摘出や生検は施行されなかった。当初、本研究においては、FDG陽性の甲状腺結節に対し、1H-MRSによる甲状腺結節のコリンピークの検出と、良悪性の評価を行う事を目的としていたが、対象症例の登録が困難な状態と判断し、次の検討に移った。甲状腺癌にて甲状腺全摘後の患者において、FDG-PETやI-131にて集積を確認された転移病巣に対して1H-MRS studyの有用性を検討した。甲状腺癌全摘出術後のFDG陽性の頸部病変、上縦隔病変は5mm以上の病変をMRI上確認できるが、MRSの基線の振れが大きく有意なスペクトルを取ることは困難であった。甲状腺術後にみられる頸部小結節について質的診断のために1H-MRSを使用するためには、現時点では課題が多いと考えられた。
著者
木越 俊介
出版者
山口県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本替については、調査の過程で状況証拠となるものしか提示できないことが判明したので、上方読本と江戸読本との内容的な差異や類板の問題について考究した。その中で、従来、文政年間に刊行されたとされてきた武内確斎作『絵本室之八島』について注目し、研究史上初めて「文化五年」の刊記を有する早印本を発見し、作品研究を行った。その結果、上方読本の中でも極めて江戸読本の作法に近い作風であることが分かった。
著者
港 隆史
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

人間に酷似したアンドロイドの人間らしい動作を実現するために,まず前年度はモーションキャプチャシステムを用いて人間の姿勢を計測し,その姿勢をアンドロイドに写像する手法を開発した.本年度は連続的に与えられた姿勢から求められる関節角目標軌道に追従するための制御器の学習手法を開発した.アンドロイドの空気アクチュエータは強い非線形性を有するため,高精度の軌道追従制御を実現するための制御器の設計は困難である.そこで制御対象の逆モデルをニューラルネットワーク(NN)で学習し,フィードフォワード制御により軌道追従を実現する.この際,制御対象のアンドロイドのアクチュエータは従来研究で使用されているアクチュエータと比較して,むだ時間を含む大きな応答の遅れを有する.このため,既存のフィードバック誤差学習などでは,学習が不安定になる結果が得られた.これは逆モデルの誤差評価に応答の遅れを考慮していないためである.そこで本研究では,応答の遅れに対応するために未来の誤差の時系列平均を導入した学習手法を開発した.開発した手法により,腕の2自由度の目標軌道追従を行うための制御器を学習することに成功した.上記の手法で学習される制御器は,与えた目標軌道専用の学習器である.アンドロイドの動作をあらかじめ全て用意すること現実的ではないため,種々の動作を実現する制御器を学習するためには,逐次的に学習可能な手法が必要である.従来のNNでは逐次的に教師データを与えると以前の学習結果が破壊されることが知られている.そこで本研究では人間の記憶に関わる脳内プロセスであるConsolidationをモデル化した,オンライン運動学習とオフライン長期記憶学習の2つのNNを用いた学習システムを開発した.アンドロイドの腕の1自由度を用いて,4つの目標軌道を逐次的に学習させたところ,最終的に4つの目標軌道追従を実現する1つの制御器を学習することに成功した.次に人間の動作モデルとして,人間のある動作がその動作の意図を示す大きな動きとその動作の意図を示さない小さな動きの組み合わせからなる階層的モデルを考えた.動作の人間らしさは大きな動きの多様性のみならず,小さな動きの多様性にもあるという仮説を立て,それを検証する実験を行った.例としてリーチング動作では,人に触れる場合と物に触れる場合では手先の軌道がわずかに変化すると考えられる.この対象との社会的関係により変化する腕の小さな動きモデルを,実際の人間の動きをモーションキャプチャで計測することにより作成した.具体的にはリーチング動作において,腕を戻す時に対象の近身体空間で手先の軌道が異なるモデルを作成した.アンドロイドのリーチング動作において,このモデルの有無による動作の人間らしさを被験者に評価させる実験を行い,人間らしさに関わる評価項目で統計的有意差を確認した.小さな動作の多様性がロボットの動作の人間らしさに関わるという結果は,ロボットの人間らしい動作生成に役立つと考えられる.
著者
佐野 訓明
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

トポIIを標的とする複数の阻害剤がトポIIβの選択的な分解を引き起こす。トポIIβは分解に先立って1259番目のリジン残基がSUMO-2/3により修飾され、その修飾が起きない変異体(K1259R)では分解も起きなかった。一方、トポIIαは同様に阻害されるにも関わらず分解されない。強制発現実験やSUMO修飾部位の解析から、両者の阻害後の処理のされ方の違いは発現時期・局在の違いに依るのではなく、SUMO修飾部位の有無によると考えられる。
著者
石川 恵生
出版者
山形大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

[背景・目的]遺伝毒性影響とは、微細な染色体の障害を検出し、変異原性、がん原性を示す生物学的影響指標であり、簡便かつ鋭敏な試験として「小核試験」が広く使用される。口腔粘膜の小核試験を実施し、また口腔内金属や歯周疾患の状態などを詳細に把握し、歯科領域の要因が口腔粘膜の小核試験にどのような影響を与えるかを明確にし、精度の高い口腔粘膜を用いた小核試験を確立することを目的とした。[対象]仕事や趣味で化学物質に曝露していない男性の健常者97名。[解析方法]小核試験を従属変数、また歯科的要因(口腔内歯科用金属の数、アマルガムの数、レジンの数、ブラッシングの回数、4mm以上のポケットの数、歯科医院通院回数)、年齢、アルコール摂取量、喫煙の有無を独立変数として重回帰分析ステップワイズ法を行った。[結果]重回帰分析ステップワイズ法による多変量解析の結果、小核試験に有意に影響を及ぼす要因としては、年齢のみが採択された(標準回帰係数β=0.45自由度調整R^2=0.20)。歯科的要因についてはいずれも統計学的に有意でなかった。[考察]年齢は過去の報告でも有意な要因として報告されており、本研究でも同様の結果となった。またアルコールや喫煙、そして歯科的要因については、いずれも統計学的に有意な項目とはならなかった。今後は、視診による口腔内充填物・補綴物の把握にとどまらず、血中や毛髪中の金属濃度などを曝露指標にすることでより精度の高い調査を行い、口腔粘膜の遺伝毒性試験と歯科的要因との関連性を調査する必要があると考える。
著者
椎屋 智美
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

2型糖尿病(DM)患者と健常人にグレリン(Ghr) 0.5 μg/kgを静注で単回投与し、食事負荷で糖代謝等に与える影響を検討した。経時的に血糖、インスリン(IRI)、成長ホルモン(GH)、Ghr、デスアシルGhr、食欲を評価した。健常人、2型DM患者いずれもGhr投与時と生食投与時で血糖、IRI、食欲に差はなかった。GH、Ghr、デスアシルGhrはGhr投与時、一過性に有意に高値を示し、投与後90分で前値に復した。DM性神経障害(DN)合併患者6名を対象にGhr 1.0μg/kgを1日1回、2週間連日投与した。DNの自覚症状と後脛骨神経伝導速度はほぼ全例で改善した。投与前に比し投与終了後の食事負荷試験ではIRIと血糖は改善傾向であった。Ghr 1.0μg/kg連日投与は重篤な有害事象なく、糖代謝に悪影響も与えずにDNを改善する可能性がある。
著者
大隈 智尚 濱本 晋一 影山 健 山本 晃 松岡 利幸
出版者
大阪市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

家兎VX2肺腫瘍に対し経皮的ラジオ波凝固と免疫賦活因子のGM-CSF(granulocyte-macrophage colony-stimulating factor)の局所注入併用による生存と遠隔転移耳腫瘍モデルへの効果を検討した。
著者
大塚 智子
出版者
高知大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

コミュニケーション能力など態度・習慣における高い能力は、良好な医師-患者および他の医療スタッフ関係の構築に重要だと考えられているが、現在の医学生においてはこうした能力の低下が危ぶまれている。高知大学医学部医学科では、態度・習慣領域を評価指標とした入試選抜(AO入試)を行っている。入学後の追跡調査により、同選抜で入学した学生の態度・習慣における高い能力が評価され、同選抜の有効性が示唆された。
著者
伊藤 昭彦
出版者
北里大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

最近、酵素処理によりIgA腎症の糖鎖不全IgA1を検出する方法が開発され用いられている。そこで、我々は血清タンパクからシアル酸を取り除くために酸処理を行った。これを用いると、血清での異常IgA1の感度がおよそ100倍に上昇した。扁桃では異常IgA1の割合が多く、血清中のaIgAの供給源になっている可能性があると考えられる。シアル酸の除去が反応性を上げるのではなく、異常IgAの複合体が異常IgAの感度上昇に最も関わっていると考えられる。
著者
塗木 淳夫
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

視覚的運動予測と触覚的運動予測に基づく運動予測の特徴を明らかにするために、脳活動を混乱させる非侵襲性手技である経頭蓋磁気刺激法(TMS)、触覚提示ロボット(把持力計測:GF)、バーチャル3次元空間を用いて研究を行った。その結果、視覚情報と運動学習・機能を研究するために有用で斬新な3Dバーチャル触力覚提示システムを開発することに成功した。さらに、開発したシステムを用いて、視覚的運動予測に基づく運動学習における運動皮質の興奮活動と運動力学的な把持運動の特性に関する基礎的な知見を得ることができた。
著者
加藤 太一
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

難治性疾患である肺高血圧発症に対する分子状水素の抑制効果を評価するために、ラットモノクロタリン肺高血圧モデルを作成した。飽和水素水投与により、右室圧の低下、肺血管の筋性化の軽快を認めた。肺高血圧に対し脱水素水投与した群で増加していた肺血管周囲マクロファージ、線維芽細胞、酸化ストレスマーカー陽性細胞、細胞増殖マーカー陽性細胞は飽和水素水により減少した。これらの結果より分子状水素は肺高血圧症の改善に炎症の抑制、酸化ストレスの抑制、細胞増殖抑制を介して寄与する可能性が示された。
著者
山口 佳樹
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

モジュール毎に分割した回路を動的かつ部分的に書き換えることで、回路量の削減および耐故障性が実現できることを確認した。対象アプリケーションにもよるが、時間方向にモジュールを分割実装することで最大40%程度の回路の削減が可能であった。また、これを利用して回路冗長性を高効率に実現することも可能となった。アプリケーションに特化した構成だけでなく、組込み用マイコンなどの一般的な回路についてもFPGAを使用して検証を行いその有効性について実証した。
著者
山崎 友也
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来,憲法学の研究が手薄だった「人身の自由」を原理的観点から再構成することを目指し,(1)憲法18条論,(2)憲法31条論,(3)裁判員制度の合憲性の再検証をそれぞれ行った。その結果,(1)については,「意に反する苦役」(憲法18条後段)は社会通念上耐えがたい苦痛を伴う労役であること,(2)については,憲法31条を憲法32条とともに,民刑事手続の総則的規定であること,(3)については,共和主義に基づく同制度の正当化は現憲法上不可能であることをそれぞれ明らかにした。
著者
北根 安雄
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,鋼板添接補修およびCFRP接着補修による腐食した鋼管杭の性能回復に与える腐食粗さの影響を明らかにするため,腐食粗さを有する減肉鋼管杭と補修後の鋼管杭について有限要素法により検討した.減肉鋼管の静的曲げ耐荷力は,平均板厚が同じでも腐食粗さによりばらつきが生じるが,補修後耐荷力のばらつきは,補修前に比較して小さくなる.また,CFRP接着補修において,断面欠損部に表面粗さが存在する場合,粗さの振幅が大きくなるにつれ鋼板最小板厚部分の応力が大きくなり,欠損部の最小板厚を基準として補修に必要なCFRP板の板厚を設計しても,粗さのない場合の応力まで回復できないことが明らかとなった.
著者
目黒 誠
出版者
札幌医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

我々は新規の保存法である過冷却グラフト保存法の開発のため、基礎的実験を行った。グラフト肝の一部(1cm角ほどの肝臓組織片)をUW液に入れ、過冷却状態を検証してみたが、-5℃以下になるとUW液が凝固してしまい臓器保存不可能であった。そこで、-4℃で15時間保存した群と従来法である4℃で保存した群とで比較検討した。-4℃で保存した群で有意にUW液中のAST/ALT値が低値であったことから、-4℃での臓器保存が有用である可能性が示唆された。
著者
大西 達也
出版者
慶應義塾大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

実験では鉄磁性体に、外部より交流磁場を印加することで得られる熱させ、医学的な応用を検討した。はじめに様々な鉄磁性体に交流磁場を印可し、発熱を確認した。続いて鉄磁性体に腫瘍細胞に特異的に集積させる機能を持たせることが可能であることを確認した。最後にマウスの背部に生着させた腫瘍に鉄磁性体を注入し交流磁場を励起させることで、腫瘍の縮小効果を確認することに成功した。生体内で鉄磁性体と交流磁場を用いた温熱療法の抗腫瘍効果を確認出来たことは、医学的応用に向けて大きな前進であると考えている。
著者
佐藤 暢哉
出版者
関西学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

ニホンザル1頭を対象にエピソード記憶を要する課題を学習させた。3面モニター内にバーチャル迷路を作り出し,その迷路内を,ジョイスティックを用いて自由に移動し,目標物体を見つけ出す課題の訓練をおこなった。サルはそのエピソードを覚え,続く試行ではより早く目標に到達することができるようになった。また,ラットを対象に,8方向の放射状迷路を用いた「いつ」「どこ」「なに」というエピソード記憶を必要とする課題を学習させた。今後,損傷実験やニューロン活動の記録実験を通して,エピソード記憶の神経機構について検討する予定である。
著者
樋口 貴広
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究では,視覚情報が利用できない条件でも,より正確に空間を移動できる歩行方略を検討するため,視覚情報を一時的に遮断した状況下での歩行中の空間認識,および歩行動作特性について検討した.歩行中に視覚情報が利用できず,記憶を頼りに障害物をまたぐ課題(回避課題),および障害物があると思う位置で立ち止まる課題(到達課題)の2つの課題において,障害物位置の認識の正確性を比較検討した.その結果,その結果,課題間で僅かな違いが見られたものの,いずれの課題においても実際よりも手前の位置に障害物があると認識していることがわかった.