著者
山本 真一郎
出版者
兵庫県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではまず、新たな電磁環境対策材料として、金属線配列材を用いた反射・透過制御材設計法を確立し、反射・透過特性を評価した。具体的には、負の等価比誘電率を持つ金属線配列材と誘電体を組み合わせた構成により、バインドパスフィルター、ハイパスフィルターが設計可能であることを示した。さらに、有限長金属線配列材を制御材の一部に取り入れることにより、全透過・全反射周波数を制御できることを確認した。次に、近年注目されているミリ波帯での遮蔽材を評価するため、ミリ波用透過係数測定装置を新たに作製した。種々のミリ波遮蔽材を評価することにより、妥当な結果を得た。
著者
小林 伸行
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の潜伏感染タンパクSmall protein encoded by the Intermediate stage Transcript of HHV-6(SITH)-1をマウスアストロサイトに発現させることでうつ様行動を引き起こした。その脳で遺伝子発現を調べたところ、炎症性サイトカインの変化はなかった。一方、気分障害患者では血液中炎症性サイトカインmRNA発現とうつ症状は相関を示した。以上より、中枢神経と末梢血での遺伝子発現は必ずしも一致せず、末梢での炎症反応が波及的に中枢神経に影響し、SITH-1発現を誘導することでうつ症状を引き起こす可能性が考えられた。
著者
鈴木 輝彦
出版者
公益財団法人東京都医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、複数の遺伝子導入用ベクターを同一の遺伝子受容部位へ同時に導入する手法Simultaneous/sequential Integration of Multivector system (SIM system)を開発した。本手法により、最大3つのプラスミドベクターを同時にヒト人工染色体(HAC)の遺伝子受容部位へ導入することが可能となった。この方法を用いることにより細胞のリプログラミングや分化段階の解析などに必要な複数の遺伝子を効率的に HACに導入し利用することが可能となった。
著者
田中 佐千恵
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

2014年4月~2019年3月に当院精神科を受診した気分障害・ストレス関連障害の休職者のうち,研究に同意の得られた患者22名(うつ病11名,双極性障害7名,その他4名,男性18名,女性4名,平均39.0歳,平均参加期間137日)がプログラムに参加した.プログラム開始時と終了時の評価尺度の比較では,認知機能を測定するBACSの言語記憶,言語流暢性,注意,社会適応度を測定するSASS-Jの興味や好奇心,職務遂行能力を測定するGATBの知的能力,言語能力,書記的知覚,空間判断力,形態知覚,運動共応,手腕の器用さ,復職準備性を測定するPRRSの基本的な生活状況,症状,職場との関係,作業能力,準備状況,健康管理,PRRSトータルで有意な改善を認めた.うつ病の重症度を測定するHAM-D, 躁症状の重症度を測定するYMRSに有意差は認められなかった.プログラム終了後に復職できたのは16名(72.7%)であり,就労継続率は1年後,2年後ともに93.7%であった.プログラム終了後では,特に作業能力や復職の準備性の改善が大きかった.長期的検討では,復職率は国内での先行研究で示された,63.6~77.2%(秋山2003; 北川2009; 平澤2011; 大木2012)と同程度であり,就労継続率は既報の継続率,1年後86.0%,2年後71.5%(五十嵐2014)と比較しても高く,作業療法を取り入れた多職種で行う地域包括型のリワークプログラムの有効性が示唆された.2018年度は地域のハローワーク,障害者就業・生活支援センターと連携し,離職者のフォローアップ体制を整えることができた.
著者
笹川 幸治
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

湿地性ゴミムシ類の保全に関する基礎研究として、各種の生態の解明に取り組んだ。これまで生活史が未知であった複数の種の飼育に成功し、特殊な産卵生態や幼虫食性を明らかにした。一部の種では、これらの生態特性を通して湿地環境に依存していることが示唆された。また、ゴミムシ類の重要な生活史形質の一つである幼虫食性について、大顎形態から推定する方法についても開発した。これらの成果は、絶滅が危惧される湿地性ゴミムシ類の保全に役立つ有用な基礎データとなりうるだろう。
著者
加藤 貴英
出版者
豊田工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

高炭酸ガス吸入は呼吸中枢を刺激し,呼吸・循環機能を賦活させる.本研究では,この特異的生理学的応答をスポーツトレーニングに応用した.1日1時間2週間の間欠的高炭酸ガス吸入を持久性アスリートに行わせた結果,高炭酸ガス換気応答が高まり,運動時の最大換気量が増加した.本研究の結果から,間欠的高炭酸ガス吸入は持久性アスリートの換気能力を高める可能性があることを示した.
著者
亀田 真澄
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、1960年代のソ連における有人宇宙飛行ミッションを「メディア・イベント」と捉え、そのテレビイメージの特性を、アメリカの有人宇宙飛行ミッションと比較しながら、明らかにしようとするものである。ソ連では宇宙船からの国際的なテレビ生中継がかなり早い段階から実施されていたが、それはなぜなのかという問いを出発点に、(1)生中継そのものに価値を置くプロパガンダが実施された背景及び議論過程の分析を通して、(2)ソ連の国家宣伝において宇宙船からの生中継が果たしていた役割を明確化するとともに、(3)それを「ライヴ性の文化史」のなかに位置づけることを目指した。
著者
橋本 英樹
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

申請者は鉄酸化細菌Gallionella ferrugineaが自然界で作るねじれ紐状酸化鉄を“G-バイオジナス酸化鉄(G-biogenous iron oxide: G-BIOX)”と命名し機能探索を行ったところ,リチウム(Li)イオン充放電特性を示すことを発見した.これまでの申請者の研究成果により,G-BIOXの組成・微細組織・結晶構造が明らかとなった.また,最近の予備研究によって,G-BIOXをLiイオン電池の正極材料として用いたところ,現行材料を遥かに凌駕する初期充放電容量が得られることを世界で初めて発見し,鉄酸化細菌由来酸化鉄の機能性材料への可能性を示した.本研究の目的は,予備研究結果を更に発展させて(1)G-BIOXの原子レベルでの構造を明らかにすると共に,(2)G-BIOXをLiイオン電池の電極材料(正極および負極)として応用することである.(1)G-BIOXの構造解析:申請者はG-BIOXと構造の良く似た酸化鉄(Leptothrix ochraceaが作ったBIOX,L-BIOX)の高エネルギーX線回折を行っている.本年度は,G-BIOXの構造を明らかにするための第一段階として,既に得られているL-BIOXのデータを元に逆モンテカルロ法を用いて原子配列を明らかにした.その結果,L-BIOXは酸化鉄のネットワーク中に酸化シリコンが孤立して存在する興味深い構造を有することを明らかとした.(2)G-BIOXをLiイオン電池の電極材料としての応用:平成24年度では正極としての特性を検討した.具体的にはG-BIOXを活物質として電極を作製し,Liを対極としたハーフセルで4.0–1.5 Vの電圧範囲で充放電特性を評価した.その結果,G-BIOX電極はこれまでに報告されている酸化鉄系材料よりも優れた特性(容量,サイクル特性,レート特性)を示すことを見出した.
著者
宮田 純
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

自然免疫による好酸球性気道炎症モデルにおける12/15-リポキシゲナーゼ(以下、12/15-LOX)遺伝子欠損動物を用いた解析によって、12/15-LOXの保護的作用が見出された。12/15-LOX欠損動物では、好酸球を誘導するサイトカインであるIL-5の主要な産生細胞の数の増加が認められた。気道炎症惹起時の肺の網羅的な脂質解析によって、プロテクチンD1に代表されるDHA由来の12/15-LOX代謝物が起炎時に産生され、遺伝子欠損動物では産生量が減少していた。これら代謝物の一部がIL-5産生細胞に対して、抑制的な作用を有することが確認された。
著者
伊藤 亮
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

音声を用いた種内コミュニケーションを行わない動物が、音声コミュニケーションを用いる動物と同じような音声学習を行っている可能性を示すという観点から、鳴かないトカゲ類であるキュビエブキオトカゲによる他種警戒声盗聴行動の発達的変化と、その盗聴能力について調査した。その結果、キュビエブキオトカゲの盗聴行動には明確な発達的変化があることが示された。この盗聴行動の発達的変化は音声学習によるものであることが示唆される。そのため、キュビエブキオトカゲにおいて音声と嫌悪刺激との間に連合学習が成立するか否かを検証した。しかし、音声と嫌悪刺激との連合学習を示す結果は得られなかった。
著者
鈴木 康夫
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

川崎病 は年々増加傾向にあり合併症に冠動脈障害がある. ビタミンDの生理機能は, 腸管からのカルシウム吸収と骨へのカルシウム取り込みであるが, 免疫抑制作用を有することが報告されている. 川崎病児における血清ビタミンD濃度と治療反応性について検討した. 川崎病100例にガンマグロブリン療法初回奏功群と不応群における症状, 血液検査結果, 血清25 (OH) D濃度を検討した. 奏功群71例, 不応群29例であった. 解析では, 不応群は奏功群に比し, 血清25 (OH) D濃度は低かった. 川崎病患児において血清ビタミンD濃度は, 初回ガンマグロブリン反応性へ関与している可能性がある.
著者
小川 智一郎 常岡 寛 柴 琢也 堀口 浩史
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

チン小帯脆弱を客観的に定量化するために、ビームスプリッター付きの細隙灯顕微鏡のCマウントに1000fps以上で撮影できる高速度カメラMEMRECAM Q1m白黒を接続し、白内障患者および白内障術後患者に眼球運動を指示して、その際の虹彩と水晶体および眼内レンズの挙動を撮影した映像の解析を行った。虹彩と水晶体および眼内レンズが異なる挙動が撮影でき、この虹彩と水晶体および眼内レンズの2次元画像における重心をそれぞれ画像処理で求めようと試みた。その映像にノイズが含まれていたため、ノイズの処理をし、重心の挙動の違いを解析しようとしたが、ノイズなどの影響で解析に至っていない。
著者
岩壷 健太郎
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

外国為替市場における流動性と価格の情報効率性の関係を分析した。情報投資家は電子ブローキング市場において成行注文よりも指値注文をする傾向がみられ、情報投資家が多く取引を行う日中の取引が盛んで流動性が高い時間帯では情報投資家と流動性投資家の間の情報の非対称性が低下し、価格の情報効率性が改善することが明らかになった。また、他の研究では在英大手銀行の対顧客取引データを使い、市場参加者のオーダーフローが将来発表されるマクロニュースを反映しているかを分析した。ニュース発表時の価格へのインパクトがそれほど大きくないのは、それらの情報が発表される以前に価格に反映されていることが大きな原因であることを示した。この発見は、為替相場に関する重要なパズルの一つであるファンダメンタル・ディスコネクト・パズル(為替モデルにおけるマクロ変数の低い説明力)の解明の一助となろう。
著者
外岡 秀行
出版者
茨城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

湖沼に生息する生物にとって水温は重要な環境因子であるが、大規模な湖沼を除けば定常測定されていない。そこで、NASAの地球観測衛星Tera搭載のセンサASTER(開発:経産省)の時系列熱赤外画像を使って衛星湖沼水温データベース日本版(SatLARTD-J)を構築した。本データベースには2000~2008年における934湖沼のASTER推定水温(平均で約3回/年、精度約1℃)、ならびにASTER推定水温とAMeDAS地上気温との回帰に基づく推定水温(5日間隔、精度約2℃)が含まれている。
著者
伊藤 和憲
出版者
明治国際医療大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

【目的】エストロゲンが筋肉の痛みや慢性化にどのように影響しているか検討を行った。【方法】実験1:無処置のラット24匹を性周期ごとに4群(各6匹)にわけ、皮膚表面の閾値をvon Frey test [VFT]で、また筋肉の閾値をRandall-Selitto test [RST]で測定した。なお、各ラットは閾値測定終了後に血液を採取し、血中エストロゲン量も調べた。実験2:ラット12匹を卵巣摘出群(n=6)、卵巣摘出+エストロゲン(20%)補充群(n=6)に分け、運動負荷を行った時の変化を観察した。実験3:ラット12匹を卵巣摘出群(n=6)、卵巣摘出+エストロゲン補充群(n=6)に分け、運動負荷を行う腓腹筋の大腿動・静脈の血流を遮断した上で運動負荷を行った時の閾値変化を調べた。実験2・3ともに、経時的な閾値測定と、負荷を行った筋肉に鍼電極を刺入して電気刺激したときの筋電図変化を観察した。なお、運動負荷・卵巣摘出・閾値測定は昨年と同様である。【結果】実験1では性ホルモンと各閾値の関係は明確ではなかったが、血中のエストロゲン量が多いとRSTの閾値のみ低下する傾向にあった。実験2では卵巣摘出後にエストロゲンを補充した群で特にRCTの閾値が低下し、実験3ではエストロゲンを補充した群のみ他の群に比べて長く(2-3週間程度)RST閾値の低下が継続したが、卵巣摘出したのみ群は、雄ラットと同様な経時的変化を示した。一方、筋電図学的な変化に関しては、卵巣摘出群・エストロゲン補充群で違いは見られなかった。【考察】エストロゲンが血中に高濃度に存在するとき筋肉の閾値が低下する傾向があり、また筋肉痛が出現する期間が延長する傾向にあった。このことから、筋肉痛の慢性化には性ホルモン特にエストロゲンの関与が強く、線維筋痛症などの筋肉疾患の予防や治療にエストロゲンを考慮する必要があることが示唆された。
著者
山根 承子 林 良平
出版者
近畿大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究課題では、チーム全体の生産性を高めるにはどのようにすればよいかを、個人が他者から受ける影響(ピア効果)から明らかにすることを目的としていた。新しくスイミングチームに加わった人の属性によって、そのチームに元々いた選手の成長がどのように変化するのかを明らかにした。優れた選手が来た場合と、平均以下の選手が来た場合で、受けるピア効果が異なっていることがわかった。新しい選手がチームに加わることで、元々いた選手のパフォーマンスが向上していた。特に、新しく来た人が優れていると、この効果がより大きくなることがわかった。
著者
瀬谷 貴之
出版者
神奈川県立金沢文庫
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、運慶やその関連作品が、霊験仏信仰と密接に関わっていたことを指摘した。霊験仏信仰とは特別の由緒を持ち、利益をもたらすと考えられた仏像への信仰である。運慶による造仏は単に芸術的に優れていただけではなく、霊験仏信仰と結びつくことにより、多大な影響を与えたことを明らかにした。具体的には、運慶による建久八年(1197)の京都・東寺講堂諸尊像の修理時の「仏舎利発見」について検討した。そしてこの修理で、運慶や運慶作品へ霊験性が付与されたことを指摘した。また建保七年(1216)の鎌倉・大倉薬師堂の運慶による造仏が、霊験説話と結び付き、後の鎌倉における造仏に多大な影響を与えたことなども解明した。
著者
和田 哲
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

ヤドカリには交尾・産卵直前に雌が(1)常に脱皮する種、(2)脱皮しない種、(3)脱皮したりしなかったりする種がいる。(2)や(3)に属する種の存在は、脱皮がヤドカリの配偶行動に不可欠ではないことを示唆する。しかし多くの種で雌は交尾直前に脱皮する。本研究は交尾直前脱皮の適応的意義の解明を目的としておこなった。上記(3)に属する種では、同一個体群の雌が連続産卵雌(過去に産卵した卵を孵化した雌がすぐに雄と交尾し産卵する)と不連続産卵雌(過去の卵を持たない雌が産卵する)に区分できる。本研究はこの点に着目して以下の仮説を検証した。成長仮説:雌は脱皮のコストで不連続産卵となっても、成長するために脱皮する繁殖仮説:脱皮が抱卵場所の更新に役立つならば、雌は連続産卵時に脱皮する上記(3)に属し高知県で普通に見られるホンヤドカリ属3種(ホンヤドカリ、クロシマホンヤドカリ、ユビナガホンヤドカリ)を対象種として、野外で雄に交尾前ガードされている雌をペアとして採集し、研究室で産卵まで飼育して、連続/不連続産卵の識別と脱皮の有無等を比較した。その結果、全ての種で成長仮説が支持された。さらにユビナガホンヤドカリを用いて、脱卵数、抱卵数、オスとメスの体サイズ、メスが背負っている貝殻サイズが脱皮頻度に与える影響を訥べた結果、脱皮によって脱卵数が増加し抱卵数が減少する傾向を認められた。また、脱皮あたり成長率は有意に0よりも大きく、脱皮によって体サイズが増大することが明らかとなった。以上の結果でも成長仮説が支持された。ホンヤドカリ属の他種を含めた種間比較の結果、成長仮説はホンヤドカリ属における(1)-(3)の種間変異もよく説明することが示唆された。
著者
高橋 博之
出版者
中部大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

X線で非常に明るく輝く超高光度X線源はコンパクトな天体を起源とし、ガス降着によって重力エネルギーを解放することで明るく輝いていると考えられる。特筆すべきはその光度で、太陽質量程度の天体におけるエディントン光度を超えて明るく輝くいている。このコンパクトな天体の正体は太陽質量程度の恒星質量ブラックホールか、もしくは太陽質量の1000倍程度の質量を持つ中間質量ブラックホールであると考えられてきた。しかし近年になって明るく輝く超高光度X線源の一部は中性子星を起源に持つことが明らかになってきた。ブラックホールと異なり中性子星は強い磁場を持つために中性子星の磁場に沿ってガス降着が起こり、磁軸付近に堆積したガスが光る。さらに磁軸と回転軸が非平行なために周期的なX線光度変動を示す。観測によって中性子星を起源に持つことが明らかになった超高光度X線源はこのような特性を持つが、磁場が弱い場合や見込み角の違いにより、X線パルスが観測されていない超高光度X線源のリストの中にも中性子星を起源とするものが埋もれていると考えられる。従ってX線パルス以外の方法で超高光度X線源がブラックホールを起源とするか中性子星を起源とするかを判別する手法を構築することは急務である。そこで本研究では光度だけでなくX線スペクトルによる中心天体の同定方法を構築すべく、これまでにない新しい数値計算コード(振動数依存型一般相対論的輻射磁気流体コード)を構築した。この方法は一般相対性理論の枠組みで流体や電磁場を扱うのみならず、光も同時に扱う。そしてこの光は振動数の情報を持つため、光度だけでなくX線スペクトル、さらにそれらの時間変動についても情報を得ることができる。このコードは超高光度X線源のみならず、一般の高エネルギー天体現象に適用できる汎用的なコードである。
著者
大江 悠樹 佐々木 洋平 菊池 志乃
出版者
杏林大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

過敏性腸症候群(IBS)に対する内部感覚曝露を用いた認知行動療法の集団版(集団版CBT-IE)を作成し、治療用の各種マテリアルを整備した。京都大学および高槻赤十字病院と共同でオープンラベルのパイロット試験を実施した。紹介された12名の患者のうち7名が組み入れとなり、介入を終了した。その結果、IBSに特異的な性格の質を測定するIBS-QOLは平均24ポイント、IBS症状の重症度を測定するIBSSIは平均101ポイントの改善を認め、それぞれの効果量はIBS-QOL=3.2、IBSSI=-3.1であった。現在、京都大学および高槻赤十字病院と共同で集団版CBT-IEのランダム化比較試験を実施中である。