著者
彦坂 健児
出版者
千葉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

マラリア原虫のミトコンドリアは、3つのタンパク質遺伝子(cox1, cox3, cob)および高度に断片化された大サブユニット/小サブユニットリボソームRNA(rRNA)のみが存在するミトコンドリア(mt)DNAをもつ。このmtDNAの機能性については未解明な部分が多いが組換え技術が確立されていないため、解析が進んでいない。本研究課題では、1) mtDNAを欠損したマラリア原虫rho0細胞を作出し、2) 人工的に作製したmtDNAを導入する、ことによりマラリア原虫mtDNAの機能性の解明を目指している。本年度は、1)の小課題に対し、初年度の実験結果を踏まえ、組換えの標的遺伝子および原虫種(Plasmodium berghei、Plasmodium yoelii、Plasmodium chabaudi)の検討を行った。その結果、P. bergheiのゲノムのAP2-G領域を標的とした酵母DHODH遺伝子(yDHODH)の導入に成功した。また、yDHODHが機能しているかどうか確認するために、組換え原虫をマウスに感染させ、抗マラリア原虫薬であるアトバコンの投与実験を行った。その結果、野生型のP. bergheiと比較して、アトバコンへの感受性が低いことが示唆された。現在、この組換え原虫株を用いて、アトバコン投与量の検討を行っている。これに加え、ヒト熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)のin vitro培養系を起ちあげ、マウスマラリア原虫と同様のyDHODH組換え方法について検討を行っている。
著者
松浦 昇
出版者
東京藝術大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究「浮世絵における西洋陰影法の消去に関する基礎研究」は、江戸中期~後期を中心にした浮世絵の一次資料調査および文献調査を通じて、絵師による西洋陰影法の利用と、その背景にある日本固有の観察方法や陰影概念を明らかにすることが目的である。調査によって、浮世絵における西洋陰影表現は眼鏡絵や洋風版画の影響を受け、葛飾北斎以降江戸の実景とともに使用されていることが明らかになった。また歌川国芳を中心に、西洋陰影表現は月影と影法師との関係として再解釈されていたことが明らかになった。
著者
高坂 泰弘
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

側鎖に重合可能なビニル基を有するβ-アミノ酸,α-(アミノメチル)アクリル酸のエステル,アミドおよびそれらの類縁体の重合について,立体規則性制御を中心に検討し,炭素-炭素骨格を主鎖に有するポリアミノ酸類を合成した.生成ポリマーが水中において温度/pH応答性を示すことを見出し,それらの機能とモノマー,ポリマーの構造的相関について評価した.また,ジビニルモノマー (= ビスアミノ酸エステル) の立体特異性環化重合に成功した.
著者
佐藤 慎哉
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ホルモン治療に抵抗性の前立腺癌に対する治療法は限られており、新たな治療法が求められている。私達は、DNAの塩基配列を変えずに遺伝子の働きを変えるエピゲノム機構を利用したホルモン治療抵抗性前立腺癌の増殖抑制を目指した。エピゲノム機構を制御するHDAC阻害剤(OBP-801)をホルモン治療抵抗性前立腺癌細胞に投与したところ、増殖抑制が確認された。さらにOBP-801は同じくエピゲノム機構を制御するマイクロRNA(miR-320a)の発現上昇を介して、前立腺癌の増殖に重要なアンドロゲン受容体の発現を抑制した。以上より、HDAC阻害剤はホルモン治療抵抗性前立腺癌に対する有望な治療薬と考える。
著者
高木 麻衣子
出版者
東京福祉大学短期大学部
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

筋電計を用い、初心者と熟練者のピアノ奏法の「見える化」を行った。素材として、シャンドールの5つの基本動作(自由落下・スケール・回転・スタッカート・突き)を使用し、初心者30人、熟練者30人の計測を行い、一定の結果を得ることができた。研究以前の予測とは違った結果も見られ、各々の奏法における筋肉の使い方を可視化することに成功し、次の研究に繋がる成果を得ることができた。
著者
田村 朋美
出版者
独立行政法人国立文化財機構・奈良文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

日本で出土するインド・パシフィックビーズは色調によって出現時期が異なり、弥生時代と古墳時代の両時期に出現するのは、黄緑色、赤褐色、淡紺色など一部の色調に限られる。本研究で、これまで分析事例の少なかった弥生時代のインド・パシフィックビーズの分析を進めた結果、黄緑色と赤褐色のものは、弥生時代と古墳時代で基礎ガラスの化学組成が異なることが明らかとなった。生産地の変化を示唆する重要な知見である。
著者
小島 大英
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

重症複合免疫不全症(Severe combined immunodeficiency; SCID)は、生後数か月内に肺炎・敗血症などの重篤な感染症を契機に発見されることが多い、最も重症な原発性免疫不全症である。根治療法は同種造血幹細胞移植であるが、重篤な感染症を起こしたあとの移植成績は不良である一方、家族歴に基づいて生後すぐに診断・移植を受けた症例の成績は極めて良好であることが知られている。すでにTREC測定による新生児マススクリーニングが複数の国と地域で導入されており、SCID患者を発症前に診断し治療を行う体制が整いつつあるが、日本ではまだ実現していなかった。SCID 患者はおよそ5 万に1人出生するとされ、日本では年間20 人程度出生すると推定される。本研究はこれを最初に導入する試みである。我々は、愛知県健康づくり振興事業団の協力を得て、2017年4月から愛知県で出生した新生児のうち、保護者の同意を得た新生児を対象に、全国初のSCIDマススクリーニングを開始した。2018年3月までの1年間で約2万人の新生児のスクリーニング検査を実施することができた。43人の新生児はTRECの値が基準値よりも低く、精査の対象となった。リンパ球サブセット解析、IgG、網羅的遺伝子解析による精密検査を実施した。典型的なSCID症例は期間内に発見することは出来なかったが、Digeorge症候群1例、ウィスコット・アルドリッチ症候群1例を含む、数例のSCID以外の原発性免疫不全症が発見され、早期に感染予防策を開始することができた。発生頻度から推測して、今後数年内には典型的なSCID症例も発見・診断できることが予想される。
著者
小西 守周
出版者
神戸薬科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

高脂肪低炭水化物食(ケトン食)により、肝臓でのケトン体産生が誘導され、前進に置けるエンルギー代謝が影響を受けることが知られている。このケトン食飼育時の肝臓においてFgf21の発現が誘導されることから、ケトン食飼育時に置けるFgf21の役割についてノックアウトマウスを用いて検討した。今回の結果より、ケトン食は白色脂肪組織を通じて全身のインスリン抵抗性を惹起することが明らかとなった。さらに、Fgf21がこの白色脂肪組織におけるインスリン感受性の減弱を誘導することを明らかにした。
著者
庄司 拓也
出版者
専修大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

初期感化院の一つである東京感化院の運営及び感化教育の実態を明らかにした。具体的には、東京感化院は私立の施設であるため、比較的高額な入所費用を徴収しており、収容児に階層的な偏りのあることを確認できた。また、明治期の日本における感化教育の整備と展開の過程を明らかにした。具体的には、明治期から大正期にかけて、感化院の職員の不良少年観は変化していっており、精神医学を感化教育に導入していこうとする動きなどを確認できた。
著者
戸木田 雅利
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

主鎖型高分子をベースとしたスメクチック液晶エラストマーおよびネマチック液晶エラストマーを調製し、その昇降温に伴う伸縮挙動を調査した。スメクチック液晶エラストマーはスメクチック層構造が存在する限り層方線方向の主鎖の並進運動が規制されるため、エラストマーが等方液体へと転移する過程で急速に収縮する。示差走査熱量測定で決定した相転移温度以下まで昇温した後に降温すると伸張する。ネマチック液晶エラストマーは昇温に伴い、ネマチック液晶温度領域で連続的に収縮する。この実験結果は液晶状態にある高分子鎖の形態を議論したド・ジャン-ワーナー理論で説明できた。実験結果から得られる鎖の曲げの弾性定数は、中性子散乱から得られたネマチック液晶ポリエステルのデータから算出されるものとほぼ一致するものであった。主鎖型液晶高分子を架橋すると等方液体-液晶相転移エンタルピーが著しく低下することが問題となる。その問題を解決するために新規架橋剤を設計、合成して架橋に用いた。その結果、従来用いてきた芳香族系架橋剤よりも脂肪族架橋剤を用いたほうが液晶化度の低下は小さくなった。また、配向した後に架橋する方法として、本研究で用いている液晶性ポリエステルと類似の構造を有するポリエチレンテレフタレートの架橋に用いられていたベンゾフェノン化合物を主鎖中に導入し架橋を試みた。しかし、ベンゾフェノン骨格の反応性が低く、有効な架橋構造を得ることができなかった。
著者
直原 一徳 野口 悟 (徳富 哲) 桂 ひとみ 藤堂 剛 石川 智子
出版者
大阪府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、光依存の磁気センサータンパク質として仮説が立てられている青色光受容体「クリプトクロム」を用いて、青色光照射に伴う磁気の発生について磁気特性測定装置(MPMS3)を用いて測定することを試みた。2018年度に入って、ゼブラフィッシュ由来のクリプトクロムの一種「Zf_Cry-DASH」のタンパク質溶液を用いて青色光照射を行い、光反応に伴って形成されるラジカル状態の磁化発生をMPMS3により検出する測定を遂行した。結果としては、現在のところまだ磁気特性を示すMPMS3シグナルの検出には至っておらず、さらなる測定条件の検討が必要であると考えている。
著者
大庭 重信
出版者
(財)大阪市文化財協会
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

最終年度となる平成15年度は、韓国西部地域を中心に遺跡踏査を行ったほか、これまで収集した資料の解析を行った。その結果、以下のような知見を得るに至った。日本列島と比較した場合、朝鮮半島での初期農耕の多様性の要因は、畠作の比重の高さにある。このような見通しのもと、これまで調査された耕作遺構、出土穀物種子遺体や遺跡の立地条件を分析した結果、朝鮮半島南部地域における青銅器時代の畠作農耕を、1)河辺沖積地などの畠作適地でアワやコムギなどを主用作物としつつ多品目の作物を栽培する規模の大きな畠作、2)丘陵末端で水田稲作を主体としながら、これに付随して小規模かつ少数品目の作物を栽培する畠作に大別した。南部ほどイネ栽培の比重が高く、北部にいくほど畠作物の比重が高くなるという地域差は、具体的には気候や立地などの自然環境に応じて、水田稲作と2つの畠作の形態が複合的に展開した結果ととらえられる。また、生育不適な北部地域や内陸部で出土するイネ資料は1)での陸稲栽培、中世の農書を通じて朝鮮農業の大きな特徴とされる乾燥地農業と湿潤地農業の融合は、2)で歴史的に進行した可能性が指摘できる。さらに、弥生時代になって北部九州を中心に出土する畠作物種子遺体は、2)の畠作が朝鮮半島南部から伝播した可能性がある。一方、青銅器時代前期には、高地に立地する集落で焼畑農耕が行われたという説がある。現地踏査を行った結果、これらの遺跡は総じて四周を低地に囲まれた独立丘陵に立地し、眼下の平地には水田・畠作適地が存在し、必ずしも丘陵での焼畑に限定する必然性はない。逆に、狩猟・漁労などの生業活動とともに農耕は平地側で行われた可能性が高く、初期の畠作農耕は総じて低地部を中心に展開したと考えられる。以上の本研究で得られた成果は、学術雑誌に投稿する予定である。
著者
小塩 達也
出版者
名城大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

大型車両の荷重データを分析し,過積載車両の実態とその影響を把握する方法について検討した.車両の積載状態をパターンマッチングおよび各種制限値を判断して空車・積載・過積載に分類する方法を提案した.また,積載状態を判定した自動車荷重データを軸重の3乗和が損傷に比例するとした疲労損傷モデルに適用し,車両群全体がもたらす疲労損傷全体に対して,空車・積載・過積載の車両群のそれぞれの影響度を試算した.
著者
松田 優二
出版者
東北文化学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

国内の精神科病院の災害対策の現状と課題を明らかにするため、大震災があった地域の精神科病院の看護管理職者を対象に調査を行った。その結果、被災後に追加した災害対策の現状として、主に災害マニュアル関連(初動対策など)、避難経路・誘導方法、通信・情報伝達・職員召集の手段、備蓄品等の管理、BCP(事業継続計画)作成について改善を行っていた。また、課題としている災害対策は、災害対策マニュアルの見直し、BCP作成、災害トリアージの基準検討、各災害に応じた避難誘導方法、連絡手段、備蓄品等の備え、災害訓練、職員教育であることがわかった。
著者
中本 敦
出版者
岡山理科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は機能的絶滅の閾値を明らかにすることを目的としている。琉球列島の58島について、種子散布者としてのオオコウモリと餌植物の密度推定を行った。また植物に関しては文献調査も行った。クビワオオコウモリの分布は基本的にはオオコウモリ類の本来の分布域である熱帯から離れるにしたがって、分布が飛び石状になる傾向が見られた。オオコウモリと強い共生関係にあることが予想される大型のFicus属の種やイルカンダとの分布の一致度は低く、明確な関係は見いだせなかった。モモタマナとリュウキュウガキでは、オオコウモリの分布との一致度が高く、種子散布をオオコウモリに強く依存している可能性が示唆された。
著者
小原 優貴
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

H30年度は高等教育(とりわけインドの高等教育)の国際化や質保証(教員の専門的能力の開発や教授学習)およびインドに留学生を送り出している南アジア諸国や中東諸国(ネパール、アフガニスタン、イラン等)とインドとの関係を考察した文献の収集・分析を行った。その中で、近年インドでは、アフガニスタンの復興支援の一環として、奨学金政策を通じた同国への高等教育協力を進め、留学生の受け入れを積極的に行っていることを確認した。H30年度は、育休による年度途中までの研究中断と育児等のため、予定していた研究が実施できず、補助事業期間の延長を行った。2019年度は、高等教育の国際化を積極的に進めるインドの大学(South Asian University、Symbiosis University等)およびこれらの大学に教員・学生を派遣する高等教育機関の国際化事業担当者・教員・学生等を対象に、オンラインでの聞き取り調査やアンケートを実施し、インドの高等教育の国際化(とりわけ外国人の教員・学生の受け入れ・送り出し)に関する情報収集と分析を進め、成果発表につなげる。インドの高等教育の国際化と質保証の現状と課題を、国際化を進める先駆的な事例の分析を通じて解明する本研究は、南アジアを中心に展開される高等教育の国際化の現状理解と、世界第二位の留学生送り出し大国であるインドが直面する「頭脳流出」問題の将来展望に役立つ研究であると言える。
著者
浅野 憲一
出版者
目白大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

平成30年度においては、治療抵抗性うつ病の患者群を対象とした集団コンパッション・フォーカスト・セラピープログラムのランダム化比較試験を継続した。加えて、Compassion Engagement and Action Scaleの日本語版についての論文化が進行中である。集団コンパッション・フォーカスト・セラピーは全12回で構成されており、コンパッション・フォーカスト・セラピー開発者であるPaul Gilbert博士からスーパービジョンを受けながら進行した。これまでに予定されている被験者数の3分の2がエントリーし、治療を受けている。また、研究成果の報告にあたっては、コンパッション・フォーカスト・セラピーに関する事例研究として、Emotion Processing and the Role of Compassion in Psychotherapy from the Perspective of Multiple Selves and the Compassionate SelfとA Case Report of Compassion Focused Therapy (CFT) for a Japanese Patient with Recurrent Depressive Disorderを公表した。さらに日本認知療法・認知行動療法学会のシンポジウムにおいてコンパッション・フォーカスト・セラピーについての発表をした。また、認知療法研究において、コンパッション・フォーカスト・セラピーに関する総説論文を掲載した。その他、マインドフルネスを医学的にゼロから解説する本においてコンパッション・フォーカスト・セラピーに関する章を執筆し、認知行動療法事典においてもコンパッション・フォーカスト・セラピーについて執筆されたものが公開予定である。
著者
蒔苗 直道
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,数学教育における「数学的な考え方」に焦点をあてて,戦前から戦後への数学教育の連続性について考察を行っている。乗法の意味の拡張は,数学教育の指導の進展としてとらえられ,戦後の「数学的な考え方」をとらえる上での一つの視点とされている。この点について,戦前から戦後へと一貫する指導の改善を論点にまとめている。また,特徴的な教材を昭和22年の国定教科書『算数』から取り上げ,現在の数学教育への示唆として「算数的活動」の意義をまとめている。
著者
吉岡 伸輔
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

慣性センサ(加速度・角速度・地磁気センサを組み合わせたセンサ)を用いた新たな動作計測システムが近年開発され、普及してきている。本システムは広範囲動作計測を可能にする一方、遠心力環境下や地磁気が乱れている環境下では使用できない短所をもつ。スキーは、この様な環境におかれるため、計測できない。そこで、スキーの動作計測が可能な広範囲動作計測システムを構築することを目的として研究を実施した。本研究ではジャイロセンサのみの計測システムを開発し、遠心力や磁場の乱れに影響されないシステムを構築した。本手法はスキーのみならず動作計測の幅を拡げるものであり、スポーツ研究の発展に寄与するものである。
著者
吉久 陽子
出版者
富山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

メラノーマは色素細胞由来の悪性腫瘍で最も予後の悪い腫瘍のひとつである.我々はマクロファージ遊走阻止因子(MIF)の機能に関する研究の過程でMIFがメラノーマの増殖に関与することを見出した.一方で近年,MIFと類似性の高い立体構造を有するD-dopachrome tautomerase(D-DT)が同定されたが,生体内での詳細な生理活性や機能は明らかではない.本研究ではメラノーマの増殖におけるD-DTの関与について検討した.D-DTはメラノーマ細胞において恒常的に発現しており炎症性サイトカインやアポトーシス関連因子との関連性も明らかであることからメラノーマの増殖に関与している可能性が示唆された.