著者
豊村 暁
出版者
東京電機大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では発声や歩行などの運動制御に着目して研究を行った.(1)流暢性促進法を吃音(どもること)に用いた場合,運動制御一般にとって重要な部位とされる大脳基底核が,流暢性促進条件では活性が上昇することをfMRI実験により明らかにした.(2)歩行制御に関して,内的なタイミング生成の場合,大脳基底核が重要であることを示した.(3)実際の発声の音圧と,聴覚フィードバックを経由した発声音声知覚のラウドネスの関係を調べたところ,発声の音圧増加に比べて,聴覚フィードバック音声知覚の増加が大きいことが分かった.
著者
加藤 潤三
出版者
琉球大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、移住者の地域コミュニティへの適応とソーシャルキャピタルの関連性を検討することを主目的に、移住者とそれを受け入れる側の地元民の双方の視点から検討を行った。本研究の結果、移住者の適応にはソーシャルキャピタル、その中でも特に地元民との強い紐帯が影響を及ぼすことが示された。ただしソーシャルキャピタルのどの側面が重要になるかはコミュニティの地域特性によって異なっており、特に移住者の多い都市部では、地元民との強い紐帯だけでなく信頼感も重要であった。一方、地元民の側からは、彼らの移住者受容には、実際のネットワーク量ではなく、信頼感やポジティブ評価など心理的態度の方が重要であることが示された。
著者
鈴木 大
出版者
東海大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

ニホンイシガメとクサガメは日本に広く生息する.前者は日本固有種であり,後者は外来種である.マイクロサテライトマーカーを用いて,これらの2種と交雑個体の遺伝的構造を調べた.ニホンイシガメにおいては先行研究により2つの遺伝的に異なる系統が存在するとされていた.本研究の結果,先行研究結果を支持し,両系統が遺伝的交流を生じていることがわかった.クサガメ日本列島集団は同じく先行研究より3系統の存在が知られている.本研究では2系統が存在し,さらに一部の個体においては両系統のDNAを保持していることが示された.交雑個体88個体について同様に調べた結果,30個体が雑種1代目,33個体が戻し交雑個体とみられた.
著者
森本 壮
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

研究代表者は、網膜神経節細胞(RGC)に対して電気刺激が神経保護作用を有することを初めて見出した。以来、RGCが障害される難治性視神経症に対する新しい治療法として電気刺激治療の確立を目指してこれまで研究を継続してきた。難治性視神経症は眼科疾患のうち未だ治療法が確立されていない疾患の一つで中途失明原因の上位を占める。本研究ではこれまでの研究をさらに発展させ電気刺激治療の確立を目指した。 本研究の結果、電気刺激によって網膜の血流に変化が生じた。また実際に多くの患者に対し電気刺激治療を行い、視力や視野が改善することを見出した。この成果は、難治性視神経症に対する電気刺激治療の確立につながると考える。
著者
菅野 太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

危機対応における多組織連携をタスク,ヒューマン,ネットワークの観点からモデル化し,危機対応システムを評価するシステムの開発を目指した.上述の3要素を考慮した計算モデルを作成し,シミュレータの開発を行った.具体的には,1)連携におけるタスクモデル構築,2)ヒューマンモデルの構築,3)ネットワークモデルの構築,4)3要素を考慮した連携モデルを構築した.下層の連結性が上層の実行条件となるように実装した.また,各モデルの設定インタフェースとして拡張PCANSモデルを用いた表現,記述を可能にした.各モデルのパラメータを変化させたシミュレーションを行い,以下のこと等が示された.情況依存ルールの有無によって連携パフォーマンスは大きく影響を受ける.既存の規範ルールをベースとしたコミュニケーションライン被害への対応は最適とはならない場合が多い.既存の災害対応訓練のシナリオはしばしば現実性が低い.本研究の結果,今後,訓練シナリオのみならず災害時の医療ネットワークといったコンテキストを絞った危機対応システムを対象することで,より詳細なシミュレーションモデルの構築と現場との連携への展開を図る目途がたった.
著者
山口 範晃 駿河 和仁
出版者
長崎県立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

高脂肪食を摂食させたマウスは、標準食を摂食させたマウスよりも脂肪組織重量が増大したが、それと同時にビタミン A (all-trans レチノイン酸: ATRA)を経口投与したマウスは、脂肪組織重量の増加を抑制した。さらに、呼気分析によるエネルギー消費量を測定したところ、ATRA を投与したマウスは、脂質由来のエネルギー消費量が増大した。このことから、ATRA は、高脂肪食の摂食による体脂肪の蓄積を抑制することが示唆された。
著者
松井 誉敏
出版者
財団法人地球環境産業技術研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、種々のポリイミド膜のCO2/CH4およびCO2/N2混合ガス透過において、ブロッキング効果とそれを生じさせる要因となるナノ構造、特に未緩和体積の大きさとの関係を明らかにすることを目的としている。これらの結果をもとに、高いCO2選択性を示す膜選定のための指針を与えることが、この研究の主目的である。今年度は膜素材となる合成したポリイミド(合計9種類)の一部について、ガス透過性能測定および、17年度導入した高圧ガス収着測定装置を用いてCO2収着性能測定を行った。ヘキサフルオロイソプロピリデンテトラカルボン酸二無水物(6FDA)を酸成分に、テトラメチル-p-フェニレンジアミン(TeMPDA)、トリメチル-m-フェニレンジアミン(TrMPDA)あるいはp-フェニレンジアミン(PDA)をジアミン成分に用いたそれぞれのホモポリマー膜の気体透過性を異なる温度で測定した。その結果、6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDA膜についてはCO2の透過の活性化エネルギーが負となったことから、ブロッキング効果を示す膜であることが示唆された。一方で、6FDA-PDA膜は通常の高分子に見られる正の活性化エネルギーを示し、ブロッキング効果を示さないことが示唆された。また、CO2収着量測定結果から求めたガラス状態にある未緩和体積(C'H)は、6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDAで約55cc(STP)/cc(polymer)と、有機蒸気などによるブロッキング効果を示すとされている一部の置換アセチレン系高分子膜に近い値を示した。一方で6FDA-PDA膜では、通常のブロッキング効果を示さないガラス状高分子と同程度であった。これら6FDA-TeMPDA、6FDA-TrMPDAとPDA系の共重合体、ブレンド膜において、CO2に対してブロッキング効果を示す構造の遷移領域が存在するものと考えられる。この遷移領域での膜の状態、CO2に対する収着・透過性能を解析することで、最も適した分子設計指針が得られるものと期待される。
著者
小柳 裕子
出版者
日本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

プロポフォールは今日最もよく用いられている静脈麻酔薬である。近年ヒトにおいて,プロポフォールによる意識消失時に,プロポフォール誘発アルファ波が観察されることが報告されている。しかし、そのアルファ波の発生メカニズムやプロポフォール誘発アルファ波と意識の消失の関連性についてヒトや実験動物における詳細な検証はなされていない。本研究は,ホールセル・パッチクランプ法を用いて,大脳皮質を含む急性脳スライス標本において錐体細胞の発火同期性に対するプロポフォールの影響を詳細に検討し,プロポフォール誘発アルファ波の発生機序をシナプスレベルで解明することにより,プロポフォールを含め種々の麻酔薬の作用機序の核心的な部分を解明することを目的とした。大脳皮質において代表的な抑制性介在ニューロンであるfast-spiking(FS)ニューロンおよびFSニューロンから投射を受ける錐体細胞から同時ホールセル記録を行い,シナプス前細胞に相当するFSニューロンをアルファ周波数帯である10 Hzで発火させている間,シナプス後細胞に相当する2つの錐体細胞の発火タイミングは同期傾向を示した。一方,2つの錐体細胞のうち1つのみFSニューロンからの入力を受ける錐体細胞間では,FSニューロンを先行発火させても発火の同期は見られなかった。また,FSニューロンを1,5,および20 Hzで発火させた場合,シナプス後細胞に相当する2つの錐体細胞の発火同期は10 Hzで発火させた場合と比較して弱かった。以上の結果から大脳皮質は,プロポフォールによりアルファ周波数帯特異的に発火タイミングを調節する局所回路を構成している可能性が示唆された。また,これらの発火タイミング調節に抑制性神経回路が重要な役割を果たしていると考えられた。これらの成果の一部は,北米神経科学会議2015においてポスター発表を行った。
著者
森 類臣 水野 直樹 コルホネン ペッカ 李 貞徹 ジョンチョル パク
出版者
大谷大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、北朝鮮における文化政策のうち、音楽政策を研究対象とし、音楽政策の実態とその意味を明らかにすることに注力した。研究対象を歴史社会学的アプローチによって時代別に大枠を整理し、さらに音楽と政治を扱う社会学理論を援用して分析した。このような分析によって北朝鮮の音楽政策を説明する基本的なモデルを導出し、その後にモデル有効性について金正恩体制まで射程に入れて検証した。その結果、(1)金日成~金正日時代に行われた音楽政策の基礎理論の整理 (2)北朝鮮の音楽政策理論の独自性とモデル化 (3)金正恩体制の音楽政策へのモデル適用の有効性、などを明らかにした。
著者
廣瀬 泰彦
出版者
名古屋市立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

尿路結石は、疫学、形成機序など、動脈硬化と類似点が多い。近年、酸素を直径100nm以下のガス核として、Salting-out現象により安定化させた機能水、酸素ナノバブル(Oxygen nano-bubbles: ONB)水の抗炎症効果が報告された。炎症や組織改変をともなう動脈硬化などの疾病の治療薬となる可能性をもつ。そこで、私たちは、結石形成モデル動物を用いて、酸素ナノバブル水の、尿路結石形成抑制効果を調べた。酸素ナノバブル水は、尿細管細胞障害を低下させ、シュウ酸カルシウム結晶の接着因子であるオステオポンチンとヒアルロン酸の腎での発現を抑制し、腎結石形成を抑制することが示唆された。
著者
松本 啓
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

発達過程にある胎仔の後腎を移植するラット・マウス小動物モデルを用いて、①異種動物間移植を行った後腎でもエリスロポエチン(EPO)産生能を維持しており、そのEPO産生細胞の起源はレシピエント動物種が起源である事を示した。②血管内皮にEGFPを発現するマウスを作成し、その骨髄を移植したマウスをレシピエントとして正常マウスの後腎を移植、発達継続させてEPO産生細胞が骨髄を起源としている事を示した。③自殺誘導遺伝子搭載マウスの後腎を足場として用いることにより、EPO産生細胞が発達継続する過程において不必要となる異種部分を排除し、目的とする動物種のEPO産生組織を発生させる事が可能であることを報告した。
著者
岩井 俊平
出版者
独立行政法人文化財研究所東京文化財研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、中央アジアにおける仏教文化の時期と伝播経路を明らかにすることである。平成17年度の研究において、すでに出土遺物や遺構のデータを集成し、遺跡の時期を特定するデータをそろえることができた。今年度は、これらのデータを総括し、これまで研究代表者が行ってきた土器の編年について、新たなデータを加えることができた。それは、創価大学のダルヴェルジン・テパ(ウズベキスタン)出土資料の放射性炭素年代測定であり、これによって、一部クシャーン朝期とされてきた土器の年代が4世紀後半にまで下がることが確認され、研究代表者の年代観を証明することができた。それに従えば、一部の仏教遺跡は、5世紀まで継続せず、4世紀後半で廃絶することとなる。さらに、バーミヤーン遺跡の壁画に見られる諸要素を検討して東トルキスタンのキジル石窟壁画や敦煌壁画と比較し、バーミヤーン壁画の古い要素は、すでに東トルキスタン地域に存在していたものであり、アフガニスタンの7世紀以降の仏教に、中国の要素が非常に多く含まれていることも明らかにした。また、現地タジキスタンに赴き、ワフシュ川、カフィルニガン川流域の遺跡および6〜8世紀に発展し、世界史上重要な役割を果たしたソグド地域の諸遺跡を見学して、その出土遺物を調査した。これらの調査から、西トルキスタンの仏教遺跡は1〜4世紀に属するものと、6〜8世紀に属するものとに二分されることが明らかとなり、さらに後半の時期に属する仏教遺跡については、中国西域からの文化的影響を無視することができないということが判明した。これは、6〜8世紀の中央アジア(特に西トルキスタン)仏教のあり方に関するこれまでの観念に変更を迫るものであると考えられる。
著者
高畑 圭輔
出版者
国立研究開発法人放射線医学総合研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

sense of agencyを定量評価する心理課題をうつ病患者17名に施行し、健常者(21名)と同様の修飾作用がうつ病患者では認められないことを明らかにした。次に共感性を定量評価するための課題を確立し、健常者12名を対象にfMRI実験を行ったところ、主観的共感性が他者よりも自らが行った行為に伴う結果に対して増強することが確認された。さらに[11C]FLB457を用いたPETによって測定したドーパミンD2受容体と前頭葉機能の関連を検討したところ、右前頭前野におけるD2受容体密度と前頭葉機能との間に負の相関が認められた。以上よりドーパミン神経伝達による主観的体験の制御機構の一端が明らかにされた。
著者
吉岡 伸也
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

鳥の羽根の構造性発色の物理機構を調べるため、ドバトやクジャクなどの数種類の鳥を対象にして、羽根内部の微細構造の観察と光学特性の評価を行った。特にドバトの首の羽根においては、羽根の構成要素である羽枝や小羽枝の構造とその光学的な特徴を明らかにし、異なるサイズの構造が総合的に生み出す発色機構を解明した。また、反射スペクトルの形状と色覚とが対応することで、独特な視覚効果が得られていることが分った。
著者
今村 幸太郎
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では日本労働者を対象にインターネット認知行動療法(iCBT)の閾値下抑うつ症状改善効果を12ヵ月間の無作為化比較試験で検討した。国内の電気通信企業の全社員(20,000人)を対象に参加を呼び掛け、835人(4.2%)が初回調査に参加した。適格基準を満たした706人を介入群と対照群に無作為に割付け(各群353人)、介入群に対してiCBTを提供した。両群ともに3、6、12ヵ月後に追跡調査を行い、抑うつ症状(BDI-II)および心理的ストレス反応(K6)について質問した。結果として、iCBTはBDI-IIおよびK6を有意に改善した。本iCBTは職場のストレスマネジメントに有用と考えられる。
著者
矢野 卓也 宇佐美 真一 西尾 信哉
出版者
信州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

ミトコンドリア遺伝子変異による難聴は、両側性感音難聴の2~3%に及ぶとされており、聴覚機能の維持にミトコンドリアが深く関与することは明らかになっているが、ミトコンドリア遺伝子変異により難聴を発症する詳細なメカニズムは未だ不明である。本研究では、難聴患者400名のミトコンドリア遺伝子解析を行うとともに、その臨床的特徴に関する詳細な分析を行った。その結果、日本人難聴患者における変異の種類と、頻度、また臨床的特徴を明らかにすることができた。また、ミトコンドリア遺伝子変異を持つ難聴患者由来の培養細胞を用いて、難聴発症のメカニズムを明らかにすることができた。
著者
佐々木 修平
出版者
八戸工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

超電導バルク体を用いた磁気浮上型免震装置の実用化に向けて,免震対象物の許容重量となる磁気浮上力,鉛直振動伝達の抑制が重要な課題となる。本課題研究期間において,永久磁石の配列方法や,磁性体を用いた磁束密度操作によって磁気浮上力の向上を図り,一般家屋を磁気支持できるレベルに到達することができた。さらに,モデル装置を用いて鉛直振動伝達特性について検討を行い,超電導バルク体に超電導線材コイルを取り付けることで鉛直振動伝達を抑えることに成功した。
著者
青木 宏之
出版者
高知短期大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、日本鉄鋼業における1960年代前後の生産現場の管理諸制度の変化を、大手高炉メーカーの事例分析を通じて明らかにした。第一に、職務の設計においては、下級管理職までが機能的な観点が導入され、原価や品質に関わる管理職能が付与された。さらに、第二に、そうした柔軟な働き方を評価する職能ランク制度が導入された。第三に、目標管理制度による部門業績の管理が導入され、各級管理者はより主体的な努力を求められるようになった。こうした相互補完性を持つ諸制度の構築が、現代日本鉄鋼業の現場管理システムへの直接的な契機となっていると考えられる。
著者
五味 郁子
出版者
神奈川県立保健福祉大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

地域で暮らす生活保護受給者や高齢者は、食生活や身体状況、生活状況の変化による低栄養の予防が必要である。一方、地域には、住民の食生活をサポートする地域資源が多様に存在している。そこで本研究は、個別の食生活状況に応じて、必要な食生活サポート地域資源(サービス)をコーディネートするインターネット活用型システム「食生活サポートナビ http://shoku-support.com」を構築した。
著者
松田 法子
出版者
京都府立大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、日本の歴史的集住体が津波や洪水、氾濫などの水害に見舞われながらも、水の把握と制御によってその恵みを享受してきた居住史を振り返り直し、その具体相を明らかにすることを目的とする。そこでは、技術-空間-社会が統合された「社会的技術」とでもいうべき日常的な治水・防水システムが造りあげられてきた。本研究では、氾濫原-沼-潟に形成された集住体である新潟県の近世都市・集落である蒲原・沼垂・新潟の事例研究から、〈水際〉の居住史の具体相を探る。本研究が定義する〈水際〉とは、土地と居住との間に常に存在する一定の緊張関係と受給関係という両義性と相互の応答性を考察するためのキー概念である。