著者
山崎 幸治
出版者
北海道大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、アイヌ木製盆について、そのソースコミュニティの人々とともに調査をおこない、そこに作風と呼べるものが存在することを確認するとともに、制作地や制作者について検討をおこなった。数は多くはないが、制作地や制作者などの背景情報をともなわないアイヌ木製盆が、本研究をつうじてソースコミュニティの人々と再会し、地域の歴史のなかへと帰還したことは一つの成果といえる。また、民族誌資料データベースと先住民族との共同調査のあり方について検討した。
著者
津田 雄一
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究が理論的な基礎としている状態遷移行列の近似法に関する理論(申請者とコロラド大学教授との共同執筆論文)は,摂動の作用する実環境の状態遷移行列を解析関数群で近似する手法である.本研究により,左記の近似を施しても,状態遷移行列がそもそも物理的に本来保存すべき数学構造を保存する定式化が可能であることが示された.ここで本来保存すべき数学構造とは斜交群構造(simplecticity)であり,この構造を保存することで良好なエネルギー保存・運動量保存特性が得られるのが特徴である.また,本理論の具体的応用先として,実摂動環境下での編隊飛行の相対軌道設計に適用する手法について,網羅的に示された.具体的作業としては,前年度に引き続き,理論面では状態遷移行列の特異値構造に基づく最適編隊飛行軌道の設計法を構築した.結果として得られた手法は,地球周回の編隊飛行ミッションにおいて,実際の摂動環境下で制御コストの推算および最適相対軌道設計が容易となるものである.本手法は,摂動源の数学的・物理的構造に着目した手法であるため,場当たり的な数値最適化とは異なり,摂動源ごとの挙動の分離が可能であり,最適設計の指針が得やすい(設計者に自由度が残される)のが特長である.本年度の研究活動により,当該設計法を実現する計算プログラムコードの開発・評価を行い,妥当な結果を得た.研究成果は,年度中盤の3回の国際学会にて発表を行うとともに,理論構築の基礎部分について,学術論文としてまとめた.
著者
高橋 愛
出版者
徳山工業高等専門学校
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、「男らしさ」という観点からハーマン・メルヴィルの中・長編小説の分析を行った。具体的には、身体をめぐる問題に焦点を当てながら『ホワイト・ジャケット』(1850)と『白鯨』(1851)を読み、近代アメリカ社会の規範的な「男らしさ」の観念から逸脱するような「男らしさ」が描き込まれていることを示した。さらに、『ベニト・セレノ』(1855)と『ビリー・バッド』(1924)に関する議論では男同士のケアに注目し、その中で「男らしさ」の規範が攪乱される状況が描かれているということを示した。
著者
花岡 智恵
出版者
京都産業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

選好パラメータは人々の行動を規定する重要な役割を果たしている。本研究では人々の選好パラメータがどのように形成されるのか、という観点から実証研究を行った。具体的には、第一に、若い頃の不況経験が選好パラメータに与える影響、第二に、子どもの頃の家庭での過ごし方や学校生活が選好の形成に与える影響、第三に、自然災害のような負のショックが個人の選好に与える影響を検証した。分析の結果、若い頃の経験が成人以降の選好に影響を与えていること、選好の形成には男女差があることが示唆された。
著者
大屋 雄裕
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

情報化が国家の統治システムと個人の主体性に及ぼす影響について理論的検討を行なった。特に、監視システムの社会への浸透と相互結合が自己決定的な個人のあり方にどう影響するかを分析した。国家による監視の量を個人の自由と直結させる従来の一次元的モデルを批判し、国家・個人と中間団体の相克関係が監視社会論について持つ意義を明らかにするとともに、個人の自律性に対して重要な分析枠組としての事前規制/事後規制という区分を確立した。
著者
鈴木 誠也 吉村 雅満
出版者
国立研究開発法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究では、電子デハイス応用へ向けた界面へのゲルマネン合成を目指した。その結果、Si基板上に積層したグラフェン/Au/Ag/Geを加熱することで、グラフェンとAu-Ag-Geの混晶界面に数原子層のGe薄膜を析出させることに成功した。界面のGeはグラフェンがガスバリア層として機能するために、大気暴露しても酸化されないことを明らかにした。
著者
大野 誠吾
出版者
東北大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究ではメタマテリアルを用いてテラヘルツ帯の光学応答が動的に自在に変えられるデバイス、プログラマブルメタマテリアル回路の実現をめざし開発を行った。半導体基板上に作製したスプリットチューブ配列構造と、CW光源で励起した光励起キャリアを組み合わせることで、その共鳴周波数付近で、透過するテラヘルツ波の振幅、および位相が変調できることが、シミュレーションから予想でき、実験においてもわずかではあるがそれらのパラメータが制御できることが分かった。
著者
松村 功徳
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

数10nm オーダーの金属粒子相と粒子表面の数nm の酸化物誘電体層を基本構造として持つ材料を作製した。この材料の電波透過特性と材料構造の関係を調べ、電波透過のメカニズムが金属粒子相間の電気的なパーコレーション現象に起因することを明らかにした。また、金属相粒子相直径と金属相体積率の関係を制御することにより、数10GHz の周波数帯域におい60%以上の電波透過率を持つ材料を実現した。特に、金属相の体積率が20%以上、試料暑さ1mm 以上の材料において、電波透過性を持つ誘電体と同等の電波透過率である透過率80%を実現できた。
著者
渡辺 佑基
出版者
国立極地研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

マグロ類と一部のサメ(ホホジロザメ等)は、筋肉の収縮によって生じた熱を体内にため込むことにより、体温をまわりの水温よりも高く保つことが知られている。しかし、高い体温を保つことにどのような生態的意義があるのかは、ほとんどわかっていなかった。本研究では、様々な種のサメに記録計を取り付け、自然のままの行動を記録した。体温を高く保つ種は、そうでない種に比べて、遊泳スピードが速く、また一年間の回遊の範囲が広いことが明らかになった。
著者
竹田 正秀
出版者
秋田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

今回我々は、細胞膜エストロゲン受容体であるGPR30の喘息病態への関与を検討した。喘息マウスを用いた研究では、GRP30アゴニストであるG-1投与によって、アレルギー性の気道炎症や気道抵抗の抑制が認められた。この現象は、IL-10ノックアウトマウスでみられず、GPR30がIL-10を介して喘息病態に関与することが示唆された。一方でヒト好酸球を用いた研究においては、G-1投与によって、IL-5非存在下では、好酸球の生存延長、IL-5存在下では、生存抑制的に作用した。今後さらなる検討の余地を残してはいるが、GPR30が喘息病態において機能的な役割を果たす可能性が本研究によって示唆された。
著者
河原 梓水
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究はこれまで研究対象とされてこなかったアブノーマル性風俗雑誌『奇譚クラブ』の1950年代のテクスト群を主たる分析対象とし、サドマゾヒズムを媒介とすることで行われた近代化論・反近代化論の展開を明らかにすることを目的とする。本年度は、研究実施計画に基づき、第2の課題に関する検討を進めた。年度前半は前年度に収集した『あまとりあ』、『生心リポート』、『夫婦生活』、「キンゼイ報告」に言及する雑誌記事等と、ヨーロッパ精神医学の動向を照らし合わせ分析を行なった。来年度は本成果を論文として取りまとめる予定である。次に、これまでに明らかにした村上信彦によるサディズム論が、1980年代以降米国で展開したフェミニスト・セックス戦争におけるいくつかの論点を大幅に先取りしていることを踏まえ、米国で最も大きな争点の1つであった女性のマゾヒズムについて、村上がいかに論じているのかを検討し、その議論に対するマゾヒストからの批判を分析した。論文としてとりまとめ、現在査読の過程上にある。上記の検討から、村上は愛好当事者でありながら、サディズムを野蛮な原始本能、女性のマゾヒズムを抑圧によって生じた病とみており、サディズム・女性のマゾヒズムがいずれも前近代性と結びついていたことが明らかになった。サディズムとマゾヒズムはフロイト学説以降しばしば一対の概念とみなされてきたが、戦後日本においては全く起源の異なるものと理解されていた。とするならば、加害行為ではなく、封建制の残滓でもない男性のマゾヒズムは、これらとは根本的に異なる概念であったと考えられる。そこで次に、戦後の男性にとって、マゾヒズム概念とはいかなる役割を果たしていたのかという点について、沼正三「家畜人ヤプー」の分析を通じて検討した。本成果は論文集の1章として執筆し、現在印刷中である。
著者
高山 慶子
出版者
宇都宮大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は、譜代大名である宇都宮藩戸田家と江戸の名主である馬込家が、幕末維新期という激動の時代をいかに生きたのかを、金銭貸借関係をはじめとする両家の社会的・経済的関係に着目して明らかにしたものである。研究成果は以下の通りである。(1)戸田家と馬込家は、藩としての金銭貸借関係の解消後もつながりを維持した。(2)馬込家は現在の栃木県で養蚕製糸業などさまざまな新規事業に着手した。(3)戸田家のもう一人の江戸の金主である豪商川村家の特徴には、馬込家との共通点と相違点がみられた。(4)大名家と特殊な関係を形成した馬込家は、特有の歴史的背景や家の特徴を有した。
著者
尾関 伸明
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

骨格筋幹細胞,ES細胞とiPS細胞を用いた象牙芽細胞分化誘導メカニズムについて基礎的検討を行った.レチノイン酸とBMP-4の添加による象牙芽細胞分化誘導により,長楕円型への明瞭な形態学的変化と象牙質分化マーカーが観察された.さらに,細胞表層タンパクintegrinα2β1とαVβ3の発現が観察され,ラミニン-1とコラーゲンタイプIといった細胞外マトリックスに対して強い接着能と運動能を有する象牙芽細胞様細胞に分化することが明らかとなった.
著者
尾関 伸明
出版者
愛知学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

マウスES細胞(mouse embryonic stem cells)を用いた象牙質再生を目的に、象牙芽細胞分化誘導メカニズムについて基礎的検討を行った。その結果、RA (レチノイン酸)とBMP (bone morphogenetic protein) -4の添加による象牙芽細胞分化誘導により、長楕円型への明瞭な形態学的変化と象牙質分化マーカー(DSPPとDSP)が観察された。さらに、細胞表層タンパクintegrin α2β1、α6β1とαVβ1の発現が観察され、ラミニン-1とコラーゲンタイプIといった歯髄創傷治癒過程に関与する細胞外マトリックスに対して強い接着能と運動能を有する象牙芽細胞様細胞に分化することが明らかとなった。
著者
好川 聡
出版者
岐阜大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、これまでの研究成果―中唐の異文化認識―を発展させて、唐代の異文化認識の全容を解明することを目指した。まず、初唐の詩人が、南方独特の風土に関心を示した詩を作りはじめ、盛唐になると杜甫によって、南方異民族の風俗にも着目した詩が数多く作られるようになり、それが中唐へと受け継がれていく流れを明らかにした。また、中唐の韓愈は、最初の左遷で異文化認識が変化したことが、二度目の左遷に際して、左遷の悲哀を克服するのに大きな役割を果たしたことを考察した。
著者
江波戸 宗大
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.目的本研究では、畜種別にふん尿中に含まれる抗生物質の種類や量を把握し、堆肥化過程での抗生物質の消長、また抗生物質を含む堆肥が土壌に施用された場合の土壌への抗生物質残留性について明らかにする。今年度は、(1)畜種別の堆肥に含まれる抗生物質含量を測定した。また、(2)堆肥化過程での抗生物質の消長を調査するために、小型堆肥化装置で牛ふん尿を堆肥化し、抗生物質検定キットを用いて抗生物質含量を測定した。2.方法(1)牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、鶏ふん堆肥について抗生物質検定キットを用いて、抗生物質含量を測定した。(2)抗生物質の使用履歴がない肉牛より採取した牛ふん尿に麦藁を粉砕したものを水分調整の副資材として水分含量が70%程度になるように加え、市販されている小型堆肥化装置((株)富士平工業かぐやひめ)を用いて堆肥化した。この間、微生物による抗生物質生産の有無を調査するために、経時的にサンプルを採取し、抗生物質検定キットで抗生物質含量を測定した。3.結果(1)牛ふん堆肥からは抗生物質は検出されなかったが、同じ豚ふん堆肥および鶏ふん堆肥でも抗生物質が検出された場合と検出されなかった場合があり、定量的に抗生物質を測定するためには抽出方法を検討する必要があることが明らかになった。また、牛ふん堆肥で抗生物質が検出されなかったが、検出限界以下で含まれていることも想定できるため、抽出液の濃縮についても検討する必要があると考えられた。(2)小型堆肥化装置での発酵温度は外気温に大きく左右され、通常の堆肥化ほど温度が上昇せず、堆肥化条件としては検討の余地があったが、経時的にサンプルを採取し、抗生物質検定キットで抗生物質含量を測定した結果、抗生物質は検出されなかった。(1)の結果と同様に、この場合も検出限界以下である場合が想定されるため、抽出液の濃縮について検討する必要があると考えられた。
著者
辻岡 和代
出版者
桜花学園大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

我々はこれまでに加齢によりタンパク質合成は低下するが食事の栄養価を改善することによってタンパク質合成が促進することを明らかにしてきた。またγ-アミノ酪酸(GABA)を添加することによって脳機能が改善することを報告した。しかしこれまで行ってきたGABAを用いた研究は幼若雄ラットを実験動物として用いており我々の研究を還元できる範囲としては若年層の男性に限られてしまう。ところが加齢に伴う機能の低下は男性特有のものでない。特に閉経を迎えた女性の体機能の調節は大きな社会的関心事のひとつであるにもかかわらず閉経後の女性を視野に入れた脳機能の調節において機能性食品成分の1つであるGABAがどのように関わっているのか詳細に検討した報告は国内外にも認められない。そこで本研究では,閉経後の女性の脳機能維持・改善を目的とし,機能性食品成分であるGABA摂取時の,脳タンパク質合成の解明や,女性ホルモンの変化,さらに,学習記憶活動の指標となる成分の測定を行うことによって,高齢女性の脳機能を維持する上での健全な栄養摂取について考察した。動物は,24週齢雌ラットを用い,Sham-operatedラット群,卵巣摘出ラット群,卵巣摘出+GABA摂取群の3群で試験食を10日間与えた。試験食としてSham-operatedラット群と卵巣摘出ラット群には20%カゼイン食を,GABA摂取群には20%カゼイン+0.5%GABAを用いた。血中成長ホルモンの測定においては,1日3時間のみ摂取させるmeal-feedingに慣れさせたラットに試験食を1回3時間のみ投与した。実験は,大脳,小脳,海馬,脳幹のタンパク質合成速度をGarlickら(2)の^3H-Phe大量投与法により決定し,あわせて血中成長ホルモン濃度,RNA/Protein,RNAactivityを決定した。(H20年度)また,学習,記憶の神経活動において重要なコリン作動性ニューロンの調節因子として知られている神経成長因子(NGF)について,大脳,海馬で検討した。(H21年度)その結果,大脳,小脳におけるタンパク質合成速度,血中成長ホルモン濃度,およびRNA activityは,20%カゼイン食摂取群に比べGABA添加食摂取で有意に増加した。RNA量は,各群において有意な差はみられなかった。このことから,GABA投与における脳タンパク質合成の促進は,RNA量ではなく,RNA activiyに依存していることが考えられた。またこれらの結果は,GABAによる脳タンパク質合成の調節メカニズムの一つとして,体内成長ホルモン濃度の関与を示しているものと考えられた。らに,大脳,海馬のNGF量は,20%カゼイン食摂取群に比べGABA添加食摂取で有意に増加した。従来からも,コリン作動性ニューロンの神経伝達物質であるアセチルコリンの合成や,ニューロンそのものの維持にNGFが寄与することが報告されており,閉経女性における脳機能の維持においてGABA摂取の重要性が示唆された。
著者
大日向 耕作
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

食欲調節におけるプロスタグランジン(PG)類の役割を明らかにするため、飢餓状態における視床下部PG合成酵素の発現量の変化を測定し、リポカリン型PGD2合成酵素の発現量が上昇することを見出した。PGD2がDP1受容体を介して摂食促進作用を示すとともに、DP1受容体を阻害することにより摂食量、体重、脂肪量が著しく低下することから、PGD2はエネルギー不足状態で活性化される新しい摂食促進因子であり、食欲調節に重要な役割を演じていることがわかった。一方、PGD2の構造異性体であるPGE2はEP4受容体を介して摂食抑制作用を示すが、angiotensin AT2アゴニストのnovokininが、本経路を活性化する経口投与で有効な摂食抑制ペプチドであることを明らかにした。また、中枢神経系にも存在するangiotensin IIがAT2受容体の下流でPGE2-EP4経路を活性化し、摂食抑制作用を示すことも明らかにした。菜種タンパク質由来の摂食抑制ペプチドArg-Ile-TyrがCCK分泌能を有することをSTC-1細胞を用いて明らかにした。また、本ペプチドは動脈弛緩作用ならびに血圧降下作用を有するが、動脈弛緩作用がコレシストキニン(CCK)放出を介することを明らかにした。これはCCK自身が動脈弛緩・血圧降下作用を有することを示唆する重要な実験結果である。なお、大豆タンパク質由来のグレリンアゴニストペプチドを探索したが、新規ペプチドの同定には至っていない。現在検討中である。
著者
鶴永 陽子
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

タンパク質素材と渋柿の搾汁液を混合して柿タンニン-タンパク質複合体を形成させ,その脱渋効果および胃中での渋戻り効果を検討した.その結果,実験に使用したタンパク質素材のうち,高い脱渋効果が認められ,人工胃液により柿タンニン-タンパク質複合体からタンニンが遊離しやすいタンパク質素材は,エバミルク,ゼラチン,コラーゲン,豆乳であった.さらに,複合体形成を利用した柿ゼリーを製造した.
著者
佐川 英治
出版者
岡山大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

北魏の正史『魏書』は孝文帝の時代を北魏史の頂点とする歴史観で書かれている。しかし、本研究ではこの歴史像がある目的をもった一面的な歴史像であることを明らかにしてきた。本年度はこれを受けて北魏の建国から洛陽遷都までの百年間をその都であった平城に焦点を当て見直す研究をおこなった。すなわち、平城の北には、平城の規模をはるかに上回る広大な禁苑「鹿苑」が広がっていた。実はこの鹿苑は広大な放牧地であって、そこには無数の牛羊馬が放牧され、毎年春に陰山方面へ放牧に出かけ、秋に返る習慣があった。皇帝もしばしばこのルートにしたがって行幸し、春と秋には遊牧の祭祀をおこなった。当時、陰山は自然が豊かで多くの動物が暮らす場所であった。北魏は征服戦争で得た人民を平城周辺に移住させ、彼らに土地と耕牛を給する「計口受田」といわれる方法で国力を充実させていくが、それを可能としたのは陰山から毎年大量に供給される豊かな動物資源であった。ここに平城の地政学上の利点とそれまでの五胡十六国が持ち得なかった北魏の国力の源泉がある。しかし、やがて動物は減少し、皇帝は行幸や狩りをしなくなり、平城周辺では牛不足が深刻となる。これにしたがって鹿苑も放牧地から宴遊をおこなう中国的な禁苑へと姿を変えていった。『水経注』には孝文帝の時代、陰山から樹木が消えていたことが記されており、過放牧や森林の伐採がその原因と考えられる。この結果、孝文帝は平城を放棄し洛陽へ遷都するとともに、漢化政策をおこなって新しい権力基盤を求めざるを得なくなった。本研究では以上のことを明らかにすることで、孝文帝の漢化政策や洛陽遷都を北魏の発展の上に位置づける従来の見方に対して、環境の危機の上に位置づける新しい歴史像を提起した。また、洛陽遷都後の北魏史については造像銘を用いた研究の可能性に注目し、その成果を書評の形で示した。