著者
野中 誠
出版者
東洋大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

信頼性の高いソフトウェアを開発するための技法の一つとして,開発過程で得られた欠陥データにレイリーモデルを適用して総欠陥数を予測する技法がある。本研究では、レイリーモデルを適用した場合に総欠陥数の予測値が実績値を下回る矛盾に対して、条件付き確率の概念を適用する方法を示した。その結果、指標によっては予測誤差も減少することを示した。また、欠陥予測に影響する要因として、欠陥の混入工程に影響する要因と、単体テストの欠陥見逃しに影響する要因について分析した。その結果、方式設計では仕様変更の可能性が、詳細設計では要求性能の難易度が、単体テストの欠陥見逃しにはモジュール規模が影響することを示した。
著者
角森 史昭
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、岩石の一軸圧縮に伴うガス放出の過程を調べた。岩石破壊の直前に大量にガスが放出されることから、地震発生前のガス濃度増加にかなり関与していることが示唆される。地球化学的地震予知研究では、地下水に溶けているガスやイオンの濃度の時間変化が時間に応答するという観測結果に基づいて、そのメカニズムモデルの構築や的確なシグナル観測の技術開発を行ってきている。そこで本研究では、メカニズムモデル構築のための基礎データを得ることを目標とした。使用した試料は、稲田花崗岩でφ50、L100の円柱である。この形状の花崗岩の場合およそ25tの荷重、約2mmの軸方向の変形の後破壊に至る。試料は真空容器内に入れ、4.2kg/sの荷重速度で圧縮した。このときの荷重はロードセルを使用して同時にモニターした。また同時に、破壊に至るまでの亀裂生成率はアコースティックエミッションでモニターした。アコースティックエミッションセンサーは真空容器内で岩石に貼り付けられている。亀裂生成に伴って放出されるガスを精密に分析するために、英国HIDEN社の四重極質量分析計HAL201を使用した。測定をした質量数は、時間分解能を上げるために2,4,5,16,18,28,32,36,40,44とした。これらの質量数をスキャンするのに要した時間は10秒であった。アコースティックエミッションの頻度は、破壊に至る時間の80%程度の時間から指数関数的に増加した。測定されるアコースティックエミッションのシグナルの強さとガスの放出パターンに相関が確実に見られるのは指数関数的な増加が始まってからと判断された。放出されるガスの組成には系統性があるとは言い難く、指標とできるガス種についてはさらに詳細な実験が必要である。一方、当初目標としていた亀裂生成の三次元可視化は、使用したシグナル解析装置の不備により実現できなかったが、解析装置の改良を行うことで可能になると考えられ、ガス発生を引き起こすアコースティックエミッションを特定が可能になることが期待される。
著者
佐藤 岳詩
出版者
熊本大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は、イギリスの哲学者I.マードックの道徳哲学から着想を得て、現代において主流となっているメタ倫理学理論の批判的再検討を行うものであった。規範的であるとはどのようなことか、という問題の検討に注力する現代メタ倫理学の在り方に対し、マードックやC.ダイアモンドらの道徳理論に基づき、道徳的であるとはどのようなことか、という観点から検討を加えることで、もう一度メタ倫理学の可能性を拡張し、様々な実践的問題をメタ倫理学の観点から扱う方途を示した。
著者
坪井 孝太郎
出版者
愛知医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

家兎に対して、意図的毛様体解離を作成し、眼圧下降効果を評価し、以下の知見が得られた。0.05mlのヒーロンV(眼科手術用ヒアルロン酸ナトリウム)を使用した毛様体解離では、術前と比較し、術後に一定の眼圧下降効果が得られたが、有意な眼圧下降は1~2週間のみで、術後1ヶ月では術眼と非術眼に有意差は認められなかった。また前眼部OCT検査では毛様体解離の形成は認められたが、毛様体解離の範囲と眼圧下降の相関は認められなかった。また家兎における毛様体解離作成時に、ヒアルロン酸による加圧により頻度は多くないが脈絡膜破裂を生じるリスクが、本検討から明らかとなった。以上より、強膜創からヒアルロン酸ナトリウムを注入することで、意図的毛様体解離を作成することが可能であったが、一定範囲の毛様体解離を再現性を持って作成することは、現在行っている手法ではやや困難である可能性が示唆された。そのため、より安全かつ再現性を高める手法の検討を行った。まず術中の毛様体解離作成に使用するヒアルロン酸ナトリウム量に応じた術前低眼圧状態を作成してから、意図的毛様体解離作成を行った。また眼内観察下にて照明付きカテーテルデバイスを用いた毛様体解離作成をすることで、脈絡膜破裂のリスクを低減し、毛様体解離を作成することが可能であった。また眼内観察下での作成により、毛様体解離範囲の再現性も高まると考えており、今後は毛様体解離範囲の定量的評価にて再現性の評価を検討している。
著者
後藤 良彰
出版者
小樽商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

Lauricella の超幾何関数 F_C に関連して, 昨年度行なった研究に引き続き, モノドロミー群が有限既約になる場合について調べた. この問題は20年ほど前に加藤満生氏によって2変数の場合(Appell の F_4 と呼ばれる)について結果が得られていたが, 3変数以上については未解決であった. 本研究により, 2変数の場合の多変数化として, 有限既約性の必要十分条件をパラメータに関する条件として明示的に書くことができた. 2変数の場合と類似した議論も多用しているが, 3変数以上の場合の特殊性が現れ, 2変数の場合の条件を直接一般化するだけでは不十分であることも判明した. この結果は, 既に論文としてまとめたので, 近日中に学術論文誌に投稿する予定である.A-超幾何系の級数解に対応するねじれサイクルについては, 神戸大学の松原宰栄氏の仕事により, 多くの結果が得られており, 特にユニモジュラーな三角形分割を持つAに対しては, 交点理論もかなり整備されている. この理論を土台に, 松原氏と共同で, ユニモジュラーでない場合に交点理論がうまくいくサイクルの構成に関する研究を開始した. 線積分表示を持つ場合については, 典型例についてサイクルを構成することができたため, 具体的なAに対する例の構成に取り組んでいる. サイクルの構成を進め, ねじれ周期関係式などの公式を導出していき, 論文としてまとめていく予定である.
著者
長岡 朋人
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では古代人のライフヒストリーを解明するために、ベイズ推定に基づいて縄文時代人骨の死亡年齢分布を求めた。ベイズ推定による年齢推定は、あらかじめ年齢が分かっている標本に基づいて未知のデータを分析する方法である。観察したのは骨盤の関節の腸骨耳状面である。その結果、15歳以上の個体の中で65歳以上の個体が占める割合が32.5%、15歳時点での平均余命は31.5歳と長生きという結果であった。
著者
岡部 晋典
出版者
愛知淑徳大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,疑似科学と図書館の関係を研究した。(1)米国図書館協会にてヒアリング調査を行った。米国においては学校図書館の蔵書が主として批判や非難にさらされており,大人が利用する図書は問題視されにくい傾向が得られた。(2)各界で活躍している人々に,これまでの情報行動をインタビュー調査し,それを著書としてまとめた。(3)疑似科学図書と図書館の態度についてWeb調査を行った。その結果,概ね疑似科学図書の所蔵は問題視されていないが,学歴によって,疑似科学図書の排架に対する態度が異なること等が得られた。
著者
竹内 康雄 坂本 光央 小柳 達郎
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

インプラント周囲炎は歯周炎と類似した臨床症状を呈するが、本研究の結果、その原因となる細菌叢の構成は2つの疾患で異なることが明らかになった。歯周病に関連が深いとされる歯周病原細菌の検出率は、インプラント周囲炎部位では必ずしも高くなく、一方でDialister spp.、Eubacterium spp.、Peptostreptococcusspp.は高い割合で検出された。インプラント周囲炎を治療する上での細菌学的な治療のターゲットは歯周病のそれとは違う可能性がある。
著者
野村 和晴
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究では、ニホンウナギにおいて2世代でクローン系統作出を可能にする雌性発生条件について検討した。ウナギ精子を遺伝的に不活性化する紫外線の照射条件は400 μW cm-2 s-1 の強度で35~75秒間(1,400~2,800 erg/mm2)だった。第二極体放出阻止は、受精後3分に、水温0℃の海水に、5~15分間浸漬という低温処理で可能だった。さらに、第一卵割阻止を可能にする高圧処理条件について検討したところ、受精後40~45分に、9,000~10,000 psiの圧力条件で、4分間という条件によりゲノムを倍加した4倍体の作出が可能であった。
著者
常深 祐一郎 加藤 豊章 森村 壮志
出版者
東京女子医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

表皮で産生されたケモカインCCL17が皮膚での免疫・炎症・再生に及ぼす影響を検討した。創傷治癒においてはCCL17は線維芽細胞の遊走を促進し、CCR4を発現したNGF産生リンパ球や肥満細胞を集めることにより創傷治癒を促進していることが示唆された。腫瘍免疫においてはCCL17が皮膚での腫瘍免疫を抑制している可能性が見いだされた。また抗アレルギー薬は表皮細胞ならびに真皮線維芽細胞からのCCL17産生を抑制した。CCL17は創傷の治療薬の候補となること、抗アレルギー薬を含めCCL17やその受容体であるCCR4の阻害薬は皮膚のリモデリングや皮膚腫瘍の治療薬となりうることが示唆される。
著者
岡本 卓
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本列島には,3種4系統のトカゲ属(Plestiodon,トカゲ科,爬虫綱)が側所的に分布し,4箇所に接触帯を持つ.これらのうち未記載種だったものを新種として記載し,八丈島における外来・在来個体群の分布と交雑の状況を明らかにした.また,分子系統解析により各系統が約600~200万年前に分岐したと推定された.そして,新たに開発したマイクロサテライトマーカーと既知の遺伝子マーカーを使用した集団遺伝学的解析により,交雑帯によって遺伝構造が異なることが示された.これは,交雑帯の形成に関わる歴史の違いを反映した生殖隔離機構・強度の違いによるものと推測される.
著者
甘利 航司
出版者
國學院大學
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

性犯罪者を一定の場所に住まわせないという「居住制限」がある。しかし、対象者は居住場所を追われるだけであり、それが再犯防止効果をもたらすわけではない。そして、日本でも広く知られた、「登録・通知制度」がある。これは、対象者の居場所等を警察が把握し(登録制度)、場合によっては、その情報に一般の人がアクセスできるという制度である(通知制度)。しかし、この制度も同様に再犯防止効果がない。そこで、GPSを対象者に付加するという制度がある。これについては、再犯防止効果があるという実証研究と、そのようなものはないとする実証研究があり、今後の研究が必要な領域である。
著者
有村 誠
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

南コーカサスにおける完新世初頭の遺跡の動態については不明な点が多い。本研究では、完新世初頭から中頃(前10000~5000年)までを対象に、アルメニアにおける先史文化の解明に取り組んだ。アルメニア北東部のイジェヴァンを中心として調査を行った結果、完新世前半の洞窟・岩陰遺跡が数多く存在していることが明らかとなった。また、それらの物質文化はアララト盆地の農耕村落遺跡群のそれと大きく異なることから、文化伝統の異なる集団が残した遺跡であることが推測された。完新世初頭のアルメニアには、生業、文化系統を異にする複数の集団が併存していた可能性が高い。
著者
大沼 正寛
出版者
東北工業大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、天然スレート民家建築の分布状況とその普及プロセスを明らかにすることを目的としたフィールド調査研究である。東日本大震災直後の混乱により調査は難航したが、天然スレート生産の嚆矢となった旧桃生郡十五浜(石巻市雄勝町付近)を中心に、陸前北上地方を捜索して地理情報システムで整理した。また、硯と石盤に始まった地域産業と洋風建築特需の栄枯盛衰、二次良品地消システムともいうべき地元普及プロセスと背景にある復興産業史を描くことができた。さらに民家遺構の具体例を実測調査し、気仙大工系技術者の軸組架構や周辺民俗遺構などにも考察を寄せ、広域文化的景観を形成した歴史地理を把握することができた。
著者
濱田 麻友子 BOSCH C. G. Thomas
出版者
沖縄科学技術大学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

本研究ではクロレラを体内に共生させているグリーンヒドラをモデルとして、動物―藻類共生システムにおける相互作用の実態とその共生ゲノム進化を明らかにした。共生クロレラが光合成によって糖を分泌すると、ヒドラでは窒素代謝やリン酸輸送に関わる遺伝子が発現上昇することから、ヒドラ―クロレラ間の協調的な相互作用によって、栄養供給が遺伝子レベルで調節されていることが示唆された。また、共生クロレラのゲノム解読を行ったところ、硝酸同化遺伝子群の一部とそのクラスター構造がゲノムから失われていた。このことから、共生クロレラは窒素源をヒドラに依存した結果、ゲノムからは硝酸同化システムが失われたと考えられる。
著者
小川 彩子
出版者
学習院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

musicの語源であるラテン語のmusicaおよび、さらにその語源である古典ラテン語のムーシケーの語義的変遷を調べることによって、いかにして古典ラテン語のムーシケーという語が音楽の意味に収斂していくのかを調べることが、本研究の趣旨である。まず、古典ギリシア語のムーシケーには、原義的に「神の言葉を伝えるもの」という意味があることをプラトンの読解から明らかにした。そのうえで、アウグスティヌス『音楽論』においてmusicaの意味がかなり限定されることを捉え、後期アウグスティヌスにおいて「神の言葉を伝えるもの」が音楽に他ならなかったことを明らかにした。
著者
宮崎 剛司
出版者
旭川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

本研究目的は、仮想現実を用いてヘッドマウントディスプレイを装着し臨地に近い看護体験を提案する新しい教育方法を開発して、この教材の安全性と学習効果を自律神経測定器と脳波測定器で分析することである。また、視聴後には、質問紙にて新しい教材の有用性を検証した。分析方法は、学習者をこれまでの視聴覚教材と本研究で開発した教材との2群に分けて比較した。この結果、これまでの学習方法より、本研究による教材では容易に多重課題を繰り返し学習できることを可能としながら安全性と学習効果があると示唆された。この成果は、今後さらにこのような教材の発展や応用の教育効果を確かめるひとつの指標となるだろう。
著者
佐藤 和道
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

早稲田大学演劇博物館・法政大学能楽研究所・盛岡中央公民館・東京藝術大学附属図書館・土佐山内家宝物資料館・金沢市立玉川図書館等に所蔵される大鼓葛野流・小鼓幸流に関する資料を網羅的に収集し、近世から近代にかけての能楽囃子の一端を明らかにした。またその過程で、大鼓役者川崎九淵の旧蔵資料のうち従来未公開の資料を発掘することができた。これは近代における能楽囃子の様相を知る上で第一級の資料である。
著者
三枝 暁子
出版者
立命館大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2006

室町期京都の権力構造を明らかにするため、比叡山延暦寺(山門)と、その末社である祇園社(八坂神社)・北野社(北野天満宮)の京都支配の構造、および三寺社と室町幕府との関係、について解明した。その際、寺社と幕府との関係を探る重要な素材として祭礼に注目し、室町期の北野社(北野天満宮)の祭礼について取り上げ、考察をすすめた。具体的には南北朝期における幕府の北野祭の再編と北野社西京神人の存在形態、あるいは神社において「神人」を統率する位置にある、「公人」について検討した。さらに中世の「北野祭」の名残りをとどめる、現在の「瑞饋祭(ずいきまつり)」について調査を行い、成果をまとめた。