著者
神長 輝一
出版者
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、電離放射線が誘発するDNA損傷およびミトコンドリア損傷に起因する、ATP加水分解の亢進と、ミトコンドリア脱共役による温度およびpHの経時変化、そしてその生物学的意義の解明を目指すものである。本研究の特色は、細胞内の温度、pHという物理・化学的要因に着目し、その計測のため量子センサーの一種である蛍光ナノダイヤモンドを用いることである。本研究で得られる知見は、放射線を含む外部ストレスに対する温度、pH変化を介した細胞恒常性維持機構の解明に貢献できると期待される。
著者
藤川 直樹
出版者
神戸学院大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

大日本帝国憲法と皇室典範からなる明治期日本の所謂「典憲体制」はその成立においてもその解釈論の展開においても、ドイツ法(学)の強い影響を受けていた。このようなドイツ法の「継受」を分析するに際しては、近代ドイツ法(学)史それ自体の精確な理解が不可欠であることは言を俟たない。この研究は近代ドイツの王位継承法と王室法の制度と学知を明らかにし、明治皇室典範の制定過程および解釈学説に対するドイツ法学の影響を測定し、それを通じて近代日本の皇室制度におけるドイツ法(学)継受の実相と国制的諸条件を明らかにすることを目的とする、王位継承の日独比較国制史の試みである。
著者
遠藤 優
出版者
金沢大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

ホログラフィと画像処理を組み合わせた計測技術(DH: Digital Holography)では,画像処理が複雑化・多様化し,その開発に要するコストの増大が問題となっている.本研究では,DHシステムにおける画像処理を最適化問題として統一的に扱う手法を提案し,スケーラブルかつ高性能なホログラム画像処理フレームワークの構築を目指す.また開発したフレームワークを様々なDHシステムに応用し,その有用性を実証する.
著者
中川 光
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

1) シカの個体数増加による森林生態系への悪影響が日本全国において問題となっている。2) 集水域森林においてシカ害が生じた河川生態系において、なにを、どのように調べれば適切な影響評価が行えるのかという手法は確立されていない。3) 様々な要因が同時に影響しうる河川生態系において、シカ害の影響を検証するため、本研究では多地点比較によるアプローチを行う。4) 生態系モニタリングを多地点で効率よく行うため、環境DNAメタバーコーディングによる生物観測を導入する。5) 本研究により、シカ害の影響について多地点における迅速な河川生態系への環境影響評価の実施が可能となる。
著者
日置 貴之
出版者
白百合女子大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

2019年度は、明治期を中心とした歌舞伎における戦争表象について、主に後発の演劇ジャンルである新派劇や絵画、小説といった隣接領域の諸芸術との比較の観点から研究を行った。その結果、幕末から明治初期にかけての歌舞伎と絵画(錦絵)が、実際の出来事や戦争、それに関わる人物の実名等をどのように朧化するか、といった点で、非常に類似した表現方法を採っていることや、実名による描写へと移行していく時期にも一致が見られることなどがわかった。また、研究の途中経過をいくつかの研究会等で口頭発表することで、近い分野の研究者からの助言等を得た。また、日本近代文学会秋季大会でのパネル発表においてディスカッションに参加し、同時代の文学諸ジャンルとの類似点・相違点についての考察を深めた。また、明治期の複数の歌舞伎・新派の戦争劇台本の翻刻を進めた(2019年度は勝諺蔵作「日本大勝利」、竹柴其水作「会津産明治組重」の翻刻作業を行った)。この作業は、2020年度も川上音二郎一座(藤沢浅二郎作)「日清戦争」等を対象として継続し、『明治期未翻刻戦争劇集成』(仮)として公表する予定である。また、直接に戦争を描くわけではないが、それと深く関わる作品である「島鵆月白浪」作中に描かれる靖国神社(東京招魂社)に注目し、明治期から昭和期に至る諸ジャンルにおける靖国神社の表象についても調査を進めた。その結果、今後さらに軍歌・紙芝居・ラジオといった昭和期のさまざまなメディアのなかで、歌舞伎の戦争劇・戦時劇を捉えていくことが必要であると考えるに至った。
著者
但木 謙一
出版者
国立天文台
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

楕円銀河の形成過程の解明は現代銀河天文学における究極的な目標の1つである。現在の我々の理解は、『およそ100億年前にあるコンパクトな大質量銀河がガスの枯渇した小質量銀河との衝突合体を経て、巨大な楕円銀河へと進化した』というところまでであり、さらに遡った歴史についてはほとんどわかっていない。本研究では、コンパクトな大質量銀河の直近の祖先だと考えられるサブミリ波銀河に着目し、世界最高性能のアルマ望遠鏡を用いて分子輝線の観測を行い、ガスの運動学的・物理的性質を明らかにする。
著者
北川 裕子
出版者
帝京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、自殺リスクの高い若者を特定するための実用的なリスク予測アルゴリズムを構築し、高リスクの対象への早期の適切な支援促進に貢献することである。具体的には、学校・医療機関の両面の多施設共同での研究遂行により次の2点を実現することである。1)自殺企図および自殺に関連するリスクを予測するアルゴリズムの構築:学校・医療現場から収集される多様な情報を活用し機械学習を用いて自殺リスクを有する若者の特徴・パターンを解明する。2)潜在的に自殺リスクの高い若者と接する学校教員(養護教諭)や医療従事者のリスク発見促進とケアの意思決定を補助するツールの開発:データの収集システムは携帯端末およびクラウドを活用する。システムには国際的に評価されている自殺リスクに関する質問項目に加え日常的な事象に関する項目を搭載し、入力後に個人のリスクの程度が可視化されるシステムを構築する。また若者が精神不調を回答しやすい構造の工夫も進める。以上を達成するために、2019年度中に実施したことは次の通りである。・新潟県教育庁からの要請で、県立高校22校に代表者が開発した「精神不調アセスメントツール(RAMPS)」を導入し、保健室での自殺リスクを含む精神不調スクリーニングを実施。学校でのリスク評価と事後対応(保護者・医療機関等との連携)に寄与した事例が複数件報告された。この実施実績が新潟県に認められ、全県へのRAMPS導入が決定しており、2020年度は33校で実施、段階的に実施校を拡大していく。また、東京都内の高校2校、茨城県内の高校1校での導入要請があり実施準備を進めている。得られたデータをもとに予測指標の妥当性・信頼性を確認し、より予測精度の高いリスク評価指標の構築を目指し、データ解析を進めている。
著者
福光 正幸
出版者
北海道情報大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年, 「ブロックチェーン」や「IoT機器」の活用に期待が高まっている. しかし, 内在する次の2つの問題により, これらはいずれ破綻する恐れがある. 1つ目は, 生成される署名データ量の肥大化問題であり, 2つ目は, 量子コンピュータが実用化された場合の安全性の破綻問題である. これらは共に, 使用される署名技術の性能に起因しており, 前述の問題を同時に解決できる署名技術は未だ存在していない. そこで本研究では, 前述の問題を同時に解決できる「圧縮可能性」(膨大な署名データ量を縮小できること)と「耐量子性」(量子コンピュータからの攻撃に耐えうること)を共に備えた署名技術を新たに開発する.
著者
臼井 翔平
出版者
東京大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

情報過多社会である現在、玉石混交の情報が溢れている。人が閲覧する情報量は膨大で、処理できる情報量を明らかに超えている.そこで本研究では、質の高い情報を系から抽出する事により、誰でも容易に質の高い情報にアクセスできる整理された情報化社会の構築を目指している。情報の質は自然言語における情報量とは大きく異なり、その情報によって呼び起こされる背景知識に基づいている。そのため、自然言語と機械学習のアプローチから情報の質を測定することは困難であった。そこで、本研究では、情報を「拡散しているユーザの集合」として捉える事で、ユーザに蓄積された知識を活用することを提案する。そのためには、ユーザがRTをする確率を推定する必要がある。本研究では、各ユーザがあるtweetにどの程度興味を持っているのかを推定した。本研究においては2017年衆議院総選挙時のtweetを用いた。しかし、ユーザがtweetをRTするかどうかを推定することは本質的に推定することは難しいと言われている。そこで、本研究ではユーザがあるtweetにどの程度の興味を持っているのかを推定した。まず、tweetのクラスタリングを行い、ユーザがどのようなtweetに興味を持っているのかを分析した。tweetのクラスタリングは、自然言語ベースの分類は困難であると言われている。そこで、本研究では、ユーザのRT情報を用いたtweetの分散表現を用いたクラスタリングを行った。その結果、twitter上のユーザは興味のある情報しか見ないということがわかった。この分析結果を用いることによって、多くのユーザから関心を得ているtweet情報を抽出することが可能であると考えられる。