著者
岩野 孝之
出版者
国立研究開発法人産業技術総合研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

脳機能計測技術fNIRSが抱える、皮膚血流の変動などによるアーチファクトの混入という大きな問題を解決するため、皮膚血流の影響を受けないfMRIとの同時計測実験を行い、fNIRSデータからの脳賦活データの抽出手法の開発とその実証的検証を行う。従来の皮膚血流除去手法の性能を同時計測MRIデータとの比較により検証すると共に、MRIによる頭部の動きの計測、頭部の各層の形状の計測、心拍計・呼吸計の併用、皮膚血流変化を能動的に引き起こすタスクの実行、Deep Learningを用いた深層学習、などによりfNIRSデータから脳賦活データを正確に抽出する手法の確立を目指した研究を行う。
著者
大谷 泰志
出版者
九州歯科大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

粘膜疾患の診断支援システム構築のため、ディープラーニングのデータセット作成に着手した。また、粘膜疾患のデータ収集は継続して進行中である。並行して臨床経験による専門医と一般開業医の病変認識の差異に関し、基礎データからクラスタリングを行い、違いの傾向を発見しつつある。同時に、これまで開発したソフトコンピューティングベースの診断支援システムのwebアプリケーション化を行い、データ収集をさらに進める予定である。
著者
水沼 友宏
出版者
駿河台大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は,日本の公共図書館でどのようなマイノリティ向けサービスがどのように提供されているのかを明らかにした上で,その提供実態に影響を与える要因を解明することを目的とする。サービスの提供実態を明らかにするに当たっては,文献調査,図書館の公式Webページの調査,所蔵調査等を実施する。提供実態に影響を及ぼす要因の解明に当たっては,自治体や図書館に関する要素を取り上げ,いずれの要素が影響を持つかを調査する。
著者
渡邉 貴昭
出版者
特定非営利活動法人喜界島サンゴ礁科学研究所
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

西アジア地域は、人類史の中でも早くから文明が発展し、交易の中心として文化・経済の重要な地域であり続けていた。しかし、近年の中東地域の社会情勢は不安定である。近年の中東地域の不安定な社会情勢には、干ばつと砂嵐の多発といった気候変動の寄与が指摘されている。過去に発生した気候変動の影響を検証するためには連続した観測記録が必要となる。そこで、過去の干ばつと砂嵐の頻度と強さをペルシャ湾産の造礁サンゴを用いた代替指標で復元することにより、観測記録の不足を補い、近年の西アジアの気候変動を解明する。復元記録をもとに気候変動が中東社会に与えてきた影響を解明する
著者
瀧澤 理穂
出版者
石川県立看護大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

子どもをもつがん患者は、自身の病名を子どもに伝えるか否かに苦悩を抱き、本来治療に向けるべきエネルギーを消耗し、心身の負担が増大することが報告されている。しかし、看護師は十分な患者支援が出来ていない現状にある。患者への寄り添いを看護師の重要な役割を考えるNewmanは、看護師が患者とパートナーとなり対話を行うことで、患者が自分らしい生き方を見出すことが出来ると述べている。そこで本研究は、子どもに自分の病名を伝えることに悩むがん患者と研究者が、Newman理論に基づいたパートナーとなり対話を行ったならば、患者が自分なりにどのような解決の方向性を見出していくか、その体験を明らかとする。
著者
若林 泰央
出版者
東京工業大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

当該年度の研究は主に二種類へ大別される。一つ目は、p進タイヒミュラー理論のシンプレクティック幾何学的観点についての研究である。複素数体上のタイヒミュラー理論において、射影構造のモジュライ空間上に構成される様々なシンプレクティック構造の比較は、基本的な主題の一つである。特に(様々な意味での)一意化により標準的に構成されるシンプレクティック構造とGoldmanによる構成との比較は、S. Kawai、P. Ares-Gastesi、I. Biswas、 B Loustauらによってなされている。当該年度の研究では、通常べき零固有束のp進持ち上げによる一意化において、同様の比較定理が成り立つこと証明した。これにより、p進タイヒミュラー理論の新たな側面を見出し、解析的な一意化の議論をp進版において実現する技術が拡張された。当該成果は論文「Symplectic geometry of p-adic Teichmuller uniformization for ordinary nilpotent indigenous bundles」としてまとめ、プレプリントを近日公開する予定である。二つ目は、正標数におけるベーテ仮説方程式に関する研究を行った。E. Frenkelによって示された「ベーテ仮説方程式の解と然るべきMiura operとの対応」の正標数(およびdormant operにおける)類似を証明した。その応用として、小平消滅定理などの反例を与える正標数の代数多様体の具体例を構成した(これは正標数の代数幾何学において基本的な主題の一つである)。これらの成果は論文「Dormant Miura opers, Tango structures, and the Bethe ansatz equations modulo p」としてまとめ、プレプリントを近日公開する予定である。
著者
元 ナミ
出版者
京都大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2020-04-01

近年、国の公文書管理の乱れが社会問題として浮上している中、共同体の根幹をなす地方自治体においても行政の公文書及び地域のアーカイブズ資料の管理が諸外国に比べて遅れている。本研究では、主に地方自治体におけるアーカイブズの管理と保存、公開体制の整備を促進するために活用できる国内外の類似な外部資金制度を分析・検討し、アーカイブズの保存と利用事業に適用可能な外部資金制度のモデルを提示する。
著者
滝沢 善洋
出版者
長野工業高等専門学校
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究では電界紡糸を用いて海洋汚染物質の1つである重油を効率よく回収する機能性カーボンナノファイバーマットの開発を目指す。ファイバー自体のみを機能化する既存の典型的な研究とは異なり、電界紡糸で形成するナノファイバーマット内の空間を巧妙にデザイン(制御、機能化)し利用する。ことに当研究はこれまでに無い新規の重油回収材料と回収方法を提供するとともに、水環境、海洋環境の保全(SDGs)に貢献するものである。
著者
多田 祐一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

量子論と重力理論の統合は現代物理学の課題の1つであるが、両方に関係した重要な現象として重力による量子ゆらぎの古典化がある。特に宇宙初期の急激な膨張期 (インフレーション) ではこの古典化により、現在の宇宙における銀河や星などの構造の元となる密度ゆらぎを生み出したと考えられている。このように古典化したゆらぎを扱う方法としてストカスティック形式が知られており、我々はこの形式と純粋な量子論的計算を比較することで古典化の謎に迫る。同時に、ストカスティック形式では量子ゆらぎを古典ゆらぎとして簡略的に扱うことで逆に計算の幅が広がるので、これをインフレーション模型の包括的解析に応用していく。
著者
洞ヶ瀬 真人
出版者
名古屋大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

水俣病報道の始まる1950年代末から、68年の厚生省公害認定を経て、補償訴訟が社会問題化する70年代初頭までの時代に水俣病を記録してきたテレビ番組、映画、写真、文学での映像表現を本論の研究対象とする。様々なメディアが横断的に結びつくような展開を見せた水俣病表象文化の特徴に着目し、ドキュメンタリー映像作品だけでなく、石牟礼道子の文学や桑原史成、ユージン・スミスの写真表現などにも映像との関連から研究する。主な主題として①テレビと映画における水俣病描写の比較、②水俣ドキュメンタリーと石牟礼文学の関係性、③スミス写真集や、『苦海浄土』初版に見られる言葉と写真のモンタージュ表現、の三つに取り組む。
著者
新里 高行
出版者
筑波大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、特に魚や鳥の群れの代表的な振る舞いである形態形成、情報伝達、探索 行動の3つの振る舞いを同時に実現できる包括的アルゴリズムを解明することである。本研究では、申請者の提案する個体間の不完全な指示による相互作用モデルを包括的アルゴリズ ムの候補とし、他の2つの代表的アルゴリズムとの比較と、鮎の群れによる実験的評価を同時に行うことで、これまでのモデルに変わる新しい基盤となる群れのモデルの構築を目指す。
著者
逵本 吉朗
出版者
国立研究開発法人情報通信研究機構
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究では、単一光子間の和周波発生(SFG)を用いた量子もつれ交換高度化の世界初の原理検証実験を目標に研究を行っている。この目標を達成するためには、量子もつれ光子対の高効率な生成・検出システムの確立と、高効率かつ安定なSFGモジュールの作成を含めた量子インターフェースを開発することが必要である。今年度は、周期分極反転ニオブ酸リチウム導波路(PPLN/W)をサニャック干渉計へ組み込み、高輝度量子もつれ光子対源および高効率なSFGモジュールを開発した。まず、中心波長 775nmのモードロックレーザでPPLN/Wを励起し、量子もつれ光子対を生成した。次に、得られた光子対を中心波長1535nm/1565nm・波長幅0.9nmの周波数フィルタで狭窄化し、この帯域内での同時検出レートを超伝導単一光子検出器(SSPD)で検出した。量子もつれ光子対の検出レートは最大で1.4MHzに達し、光子対の高効率な生成・検出システムの確立に成功した。この成果については現在論文を執筆中である。また、SFGモジュールの立ち上げを行った。92%以上という非常に高い効率でレーザ光を結合させることに成功し、第二高調波発生(SHG)の規格化変換効率1129 [%/W]を得た。これにより、SFGモジュール単体で見ても先行研究よりも高いSFG変換効率を有していることを確認した。さらに、PPLN/Wにより生成したSHG光を励起光源として応用し、非常に大きい平均光子数(1程度)を有する量子もつれ光子対の生成に成功した。これまでの研究で、この様な量子もつれ光子対を用いることで、その非局所性を最大限に利用することができるというシミュレーション結果を得ており、その予測を実験的に裏付けることに成功した。この成果については米国物理学会誌Physical Review Aに掲載された。
著者
福本 江利子
出版者
広島大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

研究者をとりまく環境変化の中で、研究評価において研究生産性の尺度として普及している論文数や引用数等の量的指標は、必ずしも研究の創造性や革新性を加味していない。本研究では、量的研究評価指標のみに拠らず、研究や科学の営為の根幹である研究生産性の意味そのものに立ち返り探究を進める。本研究では、①研究者にとっての研究生産性の内実、②パブリケーション戦略、そして③研究評価や大学組織を含む研究者をとりまく環境・制度・文化の①②への影響、に着目し、大学の研究者対象のサーベイ調査及び事例研究を実施する。研究を通じて、研究政策や大学経営、科学技術論等への学術的貢献に加え、大学や政策の現場への示唆を示す。
著者
茂木 快治
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究の目的は、因果推論、欠損データ分析、コピュラモデルの三者を結びつけることである。これら3つの研究分野を融合させるのは、本研究独自の取り組みである。まず、本研究は一般性の高いモデルの下で因果推論の精度向上を達成する。さらに、提案した因果推論の手法を応用し、欠損データに対するコピュラモデルの推定を可能にする。因果推論と欠損データ分析の間の理論的な類似性を利用すれば、両者を自然な形で結びつけることができる。欠損データに対するコピュラモデルの推定を実現させることにより、経済予測の精度が高まる。
著者
可知 悠子
出版者
北里大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

H30年度は、マタニティハラスメントのその母子の健康や退職への影響について、文献調査や関係者へのヒヤリングを行い、その結果に基づいて研究計画書ならびにアンケート調査票を作成し、倫理審査への申請を行った。また、調査対象となる産婦人科にて、調査フローについての相談も行った。文献調査では、国内外においてマタニティハラスメントの母子の健康への影響についての研究は見当たらなかった。職場における心理社会的・物理的・化学的曝露については、数は少ないものの知見があったため、結果を整理した。ヒヤリングでは、NPO法人マタニティネットのメンバーに被害の状況と、マタニティハラスメントの要因と考えられる職場環境について、聞き取りを行った。以前よりも、退職勧奨や配置転換などのわかりやすいマタニティハラスメントは減少し、「もっぱら雑用をさせる」や「情報を共有しない」といった嫌がらせのような立証しにくいケースが増えているとのことであった。また、長時間労働や職場における男女差別が依然としてマタニティハラスメントの要因として存在すること、母性保護に関する法整備が整ってきているにも関わらず、現場の理解が浸透しておらず、裁判に持ちこんだとしても罰則がないため、声を上げる女性が減っているなどの声も挙げられた。なお、倫理審査については、現在結果待ちである。
著者
中村 乙水
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2018-04-01

外温性魚類は外界の水温を使って体温を調節しているが、冷水中で失った体温を回復する際には熱の交換が活発になるなど、なんらかの生理的な調節によって外界との熱の交換を調節していることが示唆されている。仮説としては、「鰓が熱交換器として働いており、血流や海水の流量を変化させることで熱の交換を調節している」ことが考えられる。そこで、生きた魚に体温調節が必要な温度環境を経験させ、動物搭載型記録計を用いて魚の体温、心拍といった生理情報を計測する飼育実験を行った。今年度は、コバンザメ類の一種であるナガコバンを用いて飼育実験を行った。コバンザメ類は宿主である大型魚類によって低水温の深海まで連れて行かれると考えられるため、低水温化で熱を失わないような調節を行っている可能性を考慮して実験対象とした。ナガコバンに体温と心拍数を記録するデータロガーを装着し、飼育水温(25℃)と低水温環境(15℃、10℃、5℃)を交互に経験させ、体温と心拍数および鰓蓋の運動を観察によって記録した。ナガコバンの心拍数は定常状態で60bpmだったが、低水温環境では5bpm以下、その後の体温回復期には100bpm以上まで上昇した。低水温環境下では鰓蓋の運動も停止することがあった。体温変化と水温から熱収支モデルを用いて熱交換係数の変動を推定したところ、熱交換係数と心拍数には相関が見られたが、冷える時と温まる時で1.3倍程度の違いしか見られなかった。大型のマンボウやジンベエザメでは3~7倍の違いが見られたことから、小型の魚では熱の損失を防ぐ能力が高くないことが示唆された。来年度以降は他の魚種でも同様の実験を行うとともに、野外での心拍数の計測も試みる予定である。
著者
池田 登顕
出版者
山形大学
雑誌
若手研究
巻号頁・発行日
2019-04-01

筋骨格系疼痛(以下、疼痛)は最も有訴者率が高く、健康寿命の短縮に大きく寄与している症状の一つであり、疼痛有訴者率にも都道府県や市町村間の格差があると予想される。しかし、それを明らかにする研究はなされていない。また、疼痛の発症には、健康格差と密接に関わっている社会経済状況やうつ症状といった心理社会的要因が寄与している可能性が指摘されているが、メカニズムの解明には至っていない。本研究の目的は①疼痛の発症メカニズムを明らかにすること、②都道府県・市町村間における疼痛有訴者率の格差の有無およびその要因を明らかにすることである。