著者
鶴川 直樹 縄手 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.75-80, 2011-05-13

我々は小学3年の脳性麻痺児の協力で数の概念が向上するようなツールを作成し検証している.協力者は知的発達に遅れがみられ,足し算が苦手であった.そこで,心的数直線を参考にした「すごろくゲーム」を作成し,協力者に行ってもらった.この「すごろくゲーム」には10や5のまとまりの理解や3つの数の足し算の理解を進めるようなイベント等を用意した.これを行った結果,5や10のまとまりの理解が進んだ.また,3つの数の足し算の能力にも向上がみられた.
著者
森本 聡 田上 弘毅 藤川 浩一 縄手 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.67, pp.67-72, 2008-05-22
被引用文献数
2

地域福祉サービスセンターソレイユで社会参画のためにコンピュータ操作訓練を行っている協力者4名に共通する障碍は注意障碍で,コンピュータ操作では画面を注視して画面の変化に対応して作業することに困難が予想される.そこで,我々は分割的注意に障碍がある人のためのコンピュータ操作訓練ツールを作成し訓練を行った.ポインティングデバイス訓練と注意および記憶力の検証をするため4×4マスに配置された1から16の数字と,画面全体にばらばらに配置された1から24までの数字を昇順にクリックするTrail-Making Test的なツールを作成し各協力者に行ってもらった.訓練を重ねることでタスク完了時間の短縮や操作エラーの減少が見られた.さらに我々は画面左右に2つの黒いボールが打ち出された際に左右にある黒いバーで跳ね返すツールを使用して各協力者に訓練を行った.各協力者はこのツールを使用し訓練を重ねることでボールを跳ね返す成功回数が上昇した.今後,分割的注意の障碍のために操作に困難が見られた階層メニュー操作や文字入力修正など画面の変化に注意を向けることの必要は操作の向上改善具合をみることで,訓練の有効性を検討する必要がある.
著者
中村 圭吾 戸田 智基 猿渡 洋 鹿野 清宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.109, no.260, pp.49-54, 2009-10-22
参考文献数
21

本稿では,喉頭摘出者が外部機器を用いた電気音声に対して,統計的声質変換を適用した実験的評価を報告する.用いる外部機器として,1)周囲の者に聴取されないほど微弱な信号を出力する音源,2)従来のモノトーンピッチを出力する電気式人工喉頭,及び3)ユーザが気管孔から出力する呼気圧でF_0を制御する呼気センサーを用いた電気式人工喉頭の3種類を用いる.発声された電気音声は,ヘッドセットマイクロフォンまたはNon-audible murmurマイクロフォンで収録され,ささやき声または通常音声のいずれかに変換される.実験的評価の結果,1)呼気センサーの使用はF_0推定の精度を改善するのに有効である,2)入力F_0を用いる効果は薄いが,声質変換性能は特に劣化しない,3)全ての変換の枠組みおいて自然性が大きく改善し,変換音声は元の電気音声と比べてより好ましいことを確認する.
著者
織田 修平 水島 昌英 古家 賢一 羽田 陽一 片岡 章俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.388, pp.41-46, 2004-10-21
参考文献数
7
被引用文献数
3

聴覚障害者支援を目的として,日常生活における様々な警告・報知音を,鳴動パターンを保持したまま振動で伝達する方法の検討を進めている.この方法の特徴は従来のように機械が音を識別して文字などでユーザヘ伝達するのではなく,ユーザ自身が音の種類をその鳴動パターンを手がかりにして判別することにある.聴覚障害者が振動の鳴動パターンのみで判別が可能かどうかを検証するため,まず最も鳴動パターンから判別がしやすいと思われる家電製品等で用いられるビープ音による「報知音」を対象に,健聴者,聴覚障害者それぞれを対象とした実験を行った.その結果,聴覚障害者は健聴者が音で報知音を聞く場合と同程度の判別力をもつことがわかった.さらに事前に情報を与えると判別力が向上することを確認した.
著者
板垣 達也 松本 哲也 竹内 義則 工藤 博章 大西 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.472, pp.13-18, 2012-03-02
参考文献数
4

本研究では車外の警告音を認識してドライバーに伝えるシステムを提案する.システムは警告音の倍音構造の存在を示す倍音らしさという特徴量を用いて基本周波数の推定を行う.そして基本周波数の推定値を用いて音を識別(クラクション,救急車,消防車,パトカー)する.クラクションとサイレン音を予め録音し,それらを単独あるいは合成した音を入力して実験した.SNR0dBの環境において,クラクションと救急車(高音),消防車とパトカー(一定)において約80%以上の正解率で基本周波数を推定できることを示した.また,屋外を実際に走行している救急車のサイレン音を録音した信号でも実験を行い,ドップラー効果によって基本周波数が変化しても,推定可能であることを示した.
著者
前田 義信 伊藤 尚 谷 賢太朗 佐藤 輝空 加藤 浩介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.63-68, 2011-05-13
参考文献数
27
被引用文献数
1

社会問題のひとつである"いじめ"は強者から弱者に対して行われる従来型の一方的な攻撃から,対等な他者との間で加害者と被害者が流動的に入れ替わる双方向の攻撃へとその性質を変容させつつある.当事者はいつ自分が被害者になるか予想することもできない不安を常に持ち,それゆえ対等な他者からの承認を常に必要とする"フラット"な関係が築かれるようになった.また流動性ゆえに,教育者をはじめとする支援者も対策に頭を悩ませている.そこではどのような事態が生じているのか?本稿では,エージェント,価値,エージェントが起こす行動,相互作用で構成される形式的な人工学級モデルを提案し,マルチエージェントシミュレーションによってその現象を調べる.相互作用を繰り返すことによって自分が見出す価値数がゼロになった経験を有するエージェント(いじめ被害者)と,他のエージェントから反感性の行動を連続的に受け続けたエージェント(いじめ被害者の候補=潜在的いじめ被害者)を定義し,その状況を調べた.その結果,交友関係における対立回避i,相補性やべき乗分布に従ういじめの特性が観察され,支援者によるいじめ発見の困難さとの関連性を考察した.
著者
高橋 小百合 木村 勉 神田 和幸 森本 一成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.58, pp.25-28, 2011-05-13

本研究では,携帯情報端末使用して,手軽に情報保障が得られるシステムを構築した.例えば博物館などでは,展示物解説は書記日本語や音声によるものが中心である.聴覚障がい者にとっては,音声による解説は聞くことができない.また,多くの聴覚障がい者は,手話が第一言語であるので,書記日本語による解説も不十分である.これを解決するために,携帯情報端末の動画配信機能を用いた手話による情報保障システムを構築する.GPS機能を用いて携帯情報端末の現在位置情報を取得する.この情報をもとに現在位置周辺の展示物を画面上に表示させ,それらから選択することで展示物に対応する手話動画を再生する仕組みである.さらに本研究では,公共施設を用いて,評価実験を行った.
著者
寺内 美奈 久保 敦 長嶋 祐二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.57, pp.59-64, 2006-05-12
参考文献数
6
被引用文献数
4

聴覚に障害のある人のコミュニケーション手段の一つである手話は,手指信号と非手指信号より構成されている対話型言語である.著者らはネイティブサイナによる手話対話をできるだけ詳細に記録し,対話主導権のあり方,会話進行の特徴を明らかにすることを検討してきた.また,非手指動作(NMS)を抑制した場合や手指動作(MS)を抑制した場合に対話中の発話交替に与える影響について解析を進めている.本報告では,時間遅延が発話交替にどのような影響を及ぼすか調べるため,一組の対話中に伝送遅延を施し,その対話状況を解析した.その結果,遅延環境下では協調戦略的介入が2倍近くになることと,招致介入は遅延の影響が少ないことが判明した.また,通常伝送下での対話は遅延環境下よりも戦略的介入が積極的に行われたことを確認した.
著者
丸岡 稔典 森 浩一 井上 剛伸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.111, no.472, pp.45-50, 2012-03-02
参考文献数
15

本研究では,重度障害者用意思伝達装置の継続的な利用を可能とする支援体制整備のあり方を検討することを目的とし,重度身体障害者へコミュニケーション支援を実施している団体へ調査を実施した.その結果,1)意思伝達装置を継続的に利用するためには,導入前・後に機器の貸出,スイッチの適合・再適合,機器の設定,操作練習等多様な支援が必要とされていること,2)意思伝達装置販売事業者は,上記支援に大きな役割を果たしているものの,これらの支援の実施は現行の補装具費給付制度のもとでは事業者の大きな負担となっていること,3)支援体制の整備を図る上で,公的機関のリハ専門職,販売事業者,パソボラによる支援の役割分担を検討すべきこと,が示唆された.
著者
具 本榮 伊藤 憲三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.493, pp.45-50, 2002-11-30
被引用文献数
6

我々は、様々な音の洪水の中で生活しており、高度情報社会では音の種類も益々多様になって来ている。そのような状況の中で、高齢者や難聴者の人たちが家の中で生活する時に重度と思われる「音」(これをここでは生活音と呼ぶ)を聴取できないという問題がある。これに対処するシステムとしては、いくつか販売されているが、十分な性能を有していない現状にある。本報告では、高齢者や難聴者支援を目的とした生活音識別システムを提案した。提案方式は、識別したい生活音信号の特徴量を事前に登録する「事前登録方式」である。信号の特徴量は、信号パワーとFFTスペクトル特性及びLPC包絡特性とした。実験の結果、13種類の生活音を99%以上で識別できることが分かった。
著者
牛田 啓太 阿佐見 聡士 長谷川 貞夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.418, pp.57-61, 2011-02-11

モバイル環境における,おもに視覚障害者向けの文字入力方法として,「タッチパネルを用いて点字パターンを一筆書きでなぞる」方法を提案する。長方形タッチパネルの頂点および長辺の中ほどにスポットを配置し,タッチパネルに触れる→なぞる→離すの一連の動作の中で通過したスポットの組み合わせに対応する点字に対応する墨字を入力する。本方法に基づく入力アプリケーションをタッチパネル搭載スマートフォンに実装し,視覚障害者・点訳奉仕者等に試用していただいたところ,関心を示す声が聞かれた。
著者
海野 歩未 吉松 靖文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.507, pp.11-14, 2006-01-05

高機能自閉症児は対人関係だけではなく時間を意識した行動や時間管理など社会適応上に様々な困難をもつことが多い。本研究では高機能自閉症児の時間感覚の特性を明らかにするとともに, 時間感覚への効果的な支援についても検討した。その結果, 高機能自閉症児の時間感覚は一様ではなく, 各ケースにおいてもその特性は異なっていることが示唆された。一方, 時間感覚に大きな困難があるケースにおいてはRAINMAN Toolkitを使用した支援が時間感覚の改善に有効であることが示唆された。
著者
前田 英作
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.319, pp.23-28, 2002-09-12

Vapnikによって提案された統計的機械学習手法であるサポートベクトルマシン(SVM)は,様々な問題に適用されてその有効性が検証されつつある.このSVMの大きな特徴の一つは,特徴空間の次元に比べてサンプル数が少ない場合,即ちいわゆるサンプルの分布がスパースな場合にも高い汎化性能を示すことにある.既存の機械学習手法の多くにおいて弱点とされていた高次元特徴空間における汎化性能の問題を克服したことで,パタン認識技術の適用領域は大きく広がった。本稿では,パタン認識技術の新しい応用先としてバイオインフォマティックスと自然言語処理を取りあげ,現在研究を進めている具体的な課題としてDNA発現解析と質問応答システムについて紹介する.また,それらを取り巻く環境,今後の課題についても触れる.
著者
中園 薫 長嶋 祐二 細野 直恒
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.488, pp.85-90, 2009-03-16
被引用文献数
4

著者らは,外国人や聴覚障害者など,音声でのコミュニケーションが不自由な人を対象とした,コミュニケーション補助,システムVUTEを開発している.従来のAACがほとんどが静止画ピクトグラムを用いていたのに対し,VUTEでは動画ピクトグラムを用いることにより理解度の向上を計る.また,動画ピクトグラムのデザインの際に,手話表現を参考としている.現在,消防や怪我,急病などの救急時におけるコミュニケーションに限定して,システムを試作中である.本報告では,手話の表現様式の分析に基づいた,動画ピクトグラムのデザイン指針について述べる.続いて,試作したシステムの構成と機能概要について述べる.
著者
錦戸 信和 党 建武
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.389, pp.13-18, 2004-10-22
参考文献数
9

音声から発話状態の逆推定を行う場合、多意性の問題に直面する。3次元の生理学的発話機構モデルを用いる逆推定の手法は、複数の拘束条件が有機的に結合することにより逆推定における多意性を抑えているが、根本的には問題は解決されていない。この多意性に対してわれわれは、複数の発話状態により構成される調音空間内の全域を探索し、推定された発話状態が調音空間内の不安定な領域となることを回避することにより多意性を抑えることが出来ると考える。しかし、調音空間の全探索を行うためには前もって発話状態の分布、及びその発話状態と音声の音響特性との関連を調べる必要があり、その関連を明らかにするために、本稿では発話機構モデルを用いたシミュレーションを行った。その結果、調音空間における調音パラメータの分布について妥当な結果を得たが、F1とF2からなる音響空間においては、一部の母音に対して十分な分布を得る事ができなかった。また、日本語母音/a/の舌の形状の分布と音響パラメータの関係がQuantal theoryを裏付けている事を示した。
著者
松山 洋一 藤江 真也 齋藤 彰宏 XU Yushi 小林 哲則
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.221, pp.7-12, 2010-10-01

通所介護施設において,人同士の会話に介在させ,コミュニケーションを活性化するロボットについて報告する.本研究では,具体的なタスクとして高齢者通所施設で行われている難読ゲームを取り上げる.難読ゲームは,司会者の存在する複数人対話の一形態だと考えることができる.ここでロボットは,複数人会話における制約を満たしながら,会話を活性化させるための行動選択を行う必要がある.本論文では,既に人同士で行われているコミュニケーションを妨害せずに活性化を実現するため,会話における参加者の役割や,参加者間が共有する話題を推定しながら,様々な場面において適した行動を取るフレームワークを提案する.
著者
柴田 勝征
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.436, pp.55-59, 2008-01-17

1980年代頃から、日本の青少年たちの間に、さまざまな異常な現象が報告されるようになった。先行研究事例を振り返ってみると、「分数ができない大学生」という形で学力低下問題が問題とされ、次に「オレ様化する子供たち」と言われる、目の前の事実を認めない中・高生の大量出現、ニート・引きこもり・パラサイト・「自分探し」などの深刻化、そして最近では「希望格差社会」「下流志向」など、「格差社会」との関連が強く意識されるようになってきた。発表者(柴田)は、福岡大学理学部での10年間の数学教育体験から、これらの現象に通底している根本原因が、「因果律が認知機能から欠損している」ことだという結論を得た。先行研究で報告された事例の本当の原因を再解釈し、社会的な理解と解決策を提案する。
著者
金堀 利洋 橘 美紗 鈴木 昌和
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.612, pp.61-66, 2007-03-16
被引用文献数
2

点字文書は点字のみから構成されたデータで配布されることがほとんどである.その際,点字はかな文字のみで表記されるために,漢字はその読みに直され表記される.これでは,同音異義語や,特に専門書などで未知の用語が出てきた場合,判断・理解することが困難となる.現在,我々は数式文書の点訳システムを開発し,実際に数学書等の点訳を行なっており,その報告を[4-6]にわたって行なってきた.今日は,画面読み上げシステム(スクリーンリーダ)の漢字の詳細読みデータを用いて,点訳時に漢字の詳細読みを点訳結果に持たせる点訳システムと,点字結果にその詳細読み情報を持たせるためのデータ形式の提案を行ない,さらにその詳細読みを提示できる点字ビューワのプロトタイプを示す.
著者
森本 聡 縄手 雅彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.488, pp.49-54, 2009-03-16

我々は複数の高次脳機能障碍をもつ4名(以下A,B,C,Dとする)の協力でPCの操作訓練を行っている.その中でも失読症を患うCは特定の平仮名や数字などを読み取るのが困難であった.そこで平仮名の読み取りのための訓練ツールを作成し,これらのツールを行ってもらうことで失読症改善を試みた.その結果Cが読み取ることを苦手とする平仮名に特徴があることを確認した.そこでCの苦手とする平仮名を中心とした訓練ツールを作成することで読み取りの改善が可能であるか検証した.しかし,訓練ツールの正解率の向上につながることができても,平仮名の一文字に対して読み取ることの向上にはならなかった.今後,Cのさらなる苦手字読み取りの改善と訓練手法を検討する必要がある.
著者
小西 孝史 前田 義信 田野 英一 牧野 秀夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.170, pp.25-30, 2008-07-20

我々は視覚障害者の歩行を補助する目的で,適応ファジィ推論ニューラルネットワーク(AFINN)を用いて現在位置を音声案内する「GPS-GIS位置案内システム」を開発した.開発した案内システムでは,地理情報システム(Geographic Information System:GIS)はユーザの周囲に存在するランドマークの知名度,正面方向,面積,重心(経度・緯度),ユーザの現在位置(GPSからの経度・緯度)と進行方向を取得する.これらは知名度,相対正面方向,ユークリッド距離,面積,相対進行方向,基準データの6つの要素に変換される,AFINNは以上の6つの要素より,認知距離に対応させるランドマーク重要度を算出する.このランドマーク重要度を用いることにより,現在位置案内を実現する.AHPを用いてユーザの嗜好を反映させた学習データをAFINNに導入することにより,汎用性の高い案内を得ることが可能となった.シミュレーションを用いてAFINNがユーザにとって有効な案内を出力することを統計的に示唆した.また実際に視覚障害者に案内システムを適用し,ユーザの観点から,システムの評価を得るとともに,意見を聴取した.