著者
原田 津 範 公可
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.91, no.9, pp.915-918, 2008-09-01

本論文では,フルスイング出力するXNOR回路を用いた10トランジスタ全加算器を提案する. 0.18μm CMOSプロセスを用いて,HSPICEによるプレレイアウト及びポストレイアウトのシミュレーションを行った上性能を評価した.従来全加算器と比較した結果,提案全加算器は遅延及び消費電力がともに大きく改善された.
著者
坂和 正敏 矢内 克裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.674-681, 1998-04-25

本論文では、非凸の多目的非線形計画問題に焦点をあて, 浮動小数点型遺伝的アルゴリズムを用いた対話型ファジー満足化手法を提案する.各目的関数に対する意思決定者のファジー目標をメンバーシップ関数で規定した後, 意思決定者が設定した基準メンバシップ値に拡張ミニマックスの意味で近いパレート最適解を求め, 意思決定者が満足しなければ基準メンバシップ値を対話的に更新することにより, パレート最適解の集合の中から意思決定者の満足解を導出するという対話型ファジー満足化手法を提案する.ここで, 拡張ミニマックス問題に, Michalewiczらによって提案されたGENOCOP IIIを適用してパレート最適解を求める代わりに, GENOCOP IIIの問題点に対処するため, 初期実行可能解の効率的探索と2分法による実行可能解の探索を導入した改良型GENOCOP IIIを適用して, より効率的に求めることを提案する.数値例により提案した手法の妥当性を示す.
著者
野口 健太郎 田所 嘉昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.333-340, 1999-03-25
被引用文献数
23

筆者らは, あらかじめ推定しようとするおおまかな周波数が既知である信号に対し, サンプリング周波数のみを更新する新しい適応周波数推定法を提案した. 本論文では, 前回提案した手法を拡張し, 並列処理による未知周波数に対する適応周波数推定法を検討する. 推定周波数帯域が決められると, その帯域をカバーするいくつかの初期同期信号が設定される. そして, この各同期信号を前回提案したアルゴリズムにより適応的に変化させて, その帯域に存在する周波数を推定する. シミュレーションにより, 従来の周波数推定法と推定精度及び計算量の点で比較し, 本手法の性能を明らかにした. 最後に, 本手法をDTMF信号の検出に適用した.
著者
伊藤 浩 松山 隆司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.7, pp.758-771, 2003-07-01
被引用文献数
3

折返しひずみやブロックひずみなどによって生じる符号化画像のエッジの劣化を,その形状の変化に基づいて定量化する方法を提案する.本来滑らかな部分に変化が発生すると人間は素早くそれを検知することができる.従来の信号差分に基づく手法では,連続性や一様性が変化する幾何学的なひずみを評価することが困難であった.本手法では,原画像と符号化画像に対して互いに対応するエッジセグメントを求め,その曲率に基づいて,形状の劣化を定量化する.得られた尺度が主観と一致するように,定量化の過程で,1)形状変化の空間的な大きさ,2)形状誤差のマスキング効果,3)エッジのこう配(コントラスト)の影響を考慮する.いくつかの標準画像に対して,符号化レートと符号化方式を変えて行ったシミュレーションでは,画像の印象をよく反映した結果が得られた.
著者
佐竹 賢治 笠原 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.702-710, 1996-03-25
被引用文献数
2

RSA 暗号は高いセキュリティレベルを有し, またディジタル署名も可能な優れた暗号方式として, 活発に研究されてきている. しかしこの暗号方式は暗号化, 復号にべき乗および剰余演算を繰返し実行する必要があるため, その処理時間が膨大になるという実用上の欠点を有している. 本論文では, このRSA暗号システムに適用可能な高速化べき乗剰余演算法を提案している. この手法は剰余演算に用いる法 (合成数) を工夫することによって, 剰余演算の処理ステップを大幅に削減し, 高速化を実現するものである. この手法をRSA暗号に適用した場合, 演算処理の高速化に加え, 公開鍵情報の短縮化といった著しい特徴を有する暗号システムの実現が可能となる. 本論文では, この高速べき乗剰余演算手法を適用したRSA暗号を, ユーザインタフェースとしての簡便さと安全性とを, トレードオフの関係のもとに自由に設定し得る実用的な暗号方式として論じ, その安全性等について考察を加えている.
著者
松田 静男
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.663-676, 1997-04-25
被引用文献数
7

3本の平行電極導体で構成された結合線路形3極真空管[3](以下では真空管と略記)の3電極がプラズマ空間中に置かれた結合線路形3電極プラズマ管(以下ではプラズマ管と略記)はこれを能動的分布結合線路とみなせば二つの伝搬定数をもち, 伝搬定数はプラズマ管の構造寸法のほかにプラズマ条件(プラズマ温度, プラズマ密度, バイアス電圧)に依存し少なくとも一つの伝搬定数は利得伝搬定数(実部と虚部が異符号)となり, プラズマ周波数以下の電磁波でも振幅が指数関数的に増大しながら電極導体に沿ってプラズマ中を伝搬する可能性がある[2]. 本論文では電極導体の具体的構造を設定し, 電極導体の周囲を電子空間電荷と完全電離プラズマの混合体とみなし, その電極間静電容量と相互コンダクタンスの理論計算値[3], 能動的分布結合線路の理論[1]ならびにプラズマの等価誘電体の考え方[4]を適用し, 物理的解釈よりも工学的あるいは等価回路的考察に基づいてプラズマ管の伝搬定数を求め, 更にプラズマ管の電極間に静電容量を付加することにより一方の伝搬定数が無損失伝搬で他方が損失伝搬(安定な無損失伝搬)となるために必要な静電装荷条件, 電極の接地方式, プラズマ条件等の関係を検討する.
著者
スリヨン タンスリヤボン 吉田 富美男 花木 真一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1139-1147, 1999-07-25
被引用文献数
5

人同士が直接会って話す面談や通信手段を介した通話の実現過程では, 相手の居場所情報が必要であり, 都合を判断する「情報」を事前に知ることが望ましい. そのような情報を伝えて面談開始を支援したり, 円滑な通話を支援するために, 本論文では実研究室レイアウトと仮想の部屋を混在させた仮想環境を2次元グラフィックスで表現し, その上にメンバの顔アイコンを表示するようにして仮想研究室VILLAを構築した. VILLAが構築されているサイバースペースを2分して, 顔アイコンが実空間での持ち主の位置をほぼ実時間で反映している部分空間を状況表現空間, それ以外の部分空間をサイバー利用空間とし, 顔アイコンがどちらの部分空間にあるかによってそれぞれバーチャルシャドウ, アバタと呼んで区別し, それらの特性の違いを明確にした. VILLAはJava言語で書かれ双方向ホームページとして実現された. wwwブラウザによって遠隔地から自由にアクセスできるので開かれた研究支援環境として利用することができる.
著者
平野 隆之 佐藤 智喜 野田 淳彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.616-623, 1996-03-25

土曜日と日曜日は商いを行わない株価データなどのように, データ落ちのために不等間隔となっているデータに適用する指数平滑法として, 神経細胞内で行われている情報処理の不応期(refractory)という性質を組み込んだR最適指数平滑法を提案した. これは, データ間隔が2倍, 3倍と開いたとき, その直後のデータを, 平滑化パラメータを増大することで相対的に重視しようという考えである. そして, データ間隔に応じて平滑化パラメータを最適化したR最適平滑化パラメータを, 解析的に導出し, その性質を明らかにした. また, 数値シミュレーションにより, データ間隔が変化しても平滑パラメータを固定した従来の場合と比べ, 本提案は平滑処理の精度が上がることを確かめた.
著者
角 康之 小川 竜太 堀 浩一 大須賀 節雄 間瀬 健二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.251-260, 1996-02-25
被引用文献数
17

現代社会では, 背景知識の異なる専門家同士が共同作業をする場が増えている. 従って, 人間の共同作業におけるコミュニケーションを支援する方法論やコンピュータシステムを開発することが工学的にも重要な課題となっている. 本論文では, ユーザの思考空間を可視化することによるコミュニケーション支援手法を提案し, それに基づいて試作されたツールCSSを紹介する. 提案する手法は, ユーザの心の中にある概念やそれを構成する概念素の関連性を距離空間に可視化し, 個人若しくはグループにおける概念形成を支援するというものである. 本論文では, 言葉の使い方の個人差や, 個人の主観的見解の相違を顕在化するのに本手法が有効であることを示し, 更に, CSS をグループによるフリーディスカッションに適用した例も紹介する.
著者
山口 真美 加藤 隆 赤松 茂
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.279-287, 1996-02-25
被引用文献数
54

本研究は, 顔の2次元的なパーツの配置情報が年令と性という次元に関してどの程度明確な指標となり, ヒ卜の感性的な評価を支持するものなのかを探索的に調べた分析を報告する. 分析の結果から, (1) 本研究で使用した顔の物理的情報から, 年令の分類がうまくなされること, (2) 性による顔の分類が顔の "部分的な特徴" によってなされるのに対し, 年令による顔の分類は顔の "全体的な特徴" によってなされる傾向が見られること, (3) 特に男性の顔に関しては男らしさといった感性的評価が年令の次元でなされること, 等が示唆された. これらの結果をもとに, 生物的な刺激に対する感性情報を "年令" と "性" の次元からとらえることについて議論を進めた.
著者
松元 隆博 棚田 嘉博 佐藤 公則 長澤 庸二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.374-386, 2001-03-01
被引用文献数
18

シフト直交実数有限長系列は, シフトの両端を除いてサイドローブが0になる鋭い非周期自己相関関数を有する.この系列は, 長さが短い系列から作った要素系列の畳込みにより合成される.この系列に対するマッチトフィルタは, 要素系列に対するマッチトフィルタを縦続接続して構成することにより, 乗算数がO(log_2M)となって高速処理に適する.この原理に基づき, 高速なディジタルマッチトフィルタをフィールドプログラマブルゲートアレー(FPGA)上に試作した.各要素系列値は乗算を簡単にするために整数で近似する.Wallaceトリーのアルゴリズムとパイプライン処理を併用して, 試作器は1万ゲートのFPGAを用い, 長さ33の系列から作った8ビット量子化の符号に対しチップ速度16Mcpsで動作する.
著者
江木 鶴子 前田 直樹 長田 一興
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.10, pp.1742-1753, 1996-10-25
被引用文献数
1

本論文は,学生プログラマのプログラム生成過程の認知科学的な分析に基づいて構築されたプログラム生成過程モデルを提案する.学生プログラマは,保持しているプログラミングプランを与えられた課題を実現するためだけでなく,プログラム生成を合理的に進める目的にも用いる.本論文では,前者の目的を課題ゴール,後者を戦術ゴールと称する.本モデルは,基本的にはPROUST[12]のゴール/プランモデルを踏襲したゴール主導のモデルであるが, PROUSTでは課題ゴールだけを前提にしているのに対して,本モデルではこれら2種類のゴールの使用を考慮している点が異なる.これにより学生プログラマのプログラム生成過程時の思考錯誤的な振舞いをより正確に表現することができる.本論文では,学生プログラマが用いた戦術をプログラム生成計画,仮プラン策,後回し策,ゴール変更策,調査確認策,奇襲策,安全無策,復帰策に分類し分析した.その結果として戦術プランを使用する意図が,(1)プログラム生成過程で使用したプランを確認し定着させる,それにより(2)プログラム生成過程を促進させる,更に(3)プログラム生成過程を後退させない,などであることを述べる.
著者
雛元 孝夫 狩野 修治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.1214-1222, 1994-09-25
被引用文献数
19

高次誤差フィードバックを用いた状態空間ディジタルフィルタの出力雑音分散の最小化問題が取り上げられている.ここで,誤差フィードバックは任意の次数のFIRフィルタによって実現される.これにより,有限語長状態空間ディジタルフィルタの量子化誤差に起因するフィルタ特性の劣化を抑えることができる.本論文では,まず出力雑音分散を最小にする誤差フィードバック係数の最適解が導出される.次に,誤差フィードバックにおけるパラメータ数を減少させ,これに要する計算量の軽減を図るために,対称または奇対称の誤差フィードバック係数によって出力雑音分散を最小化する準最適解が導かれる.数値列では,最適係数または準最適係数の場合はもちろんのこと,それらを2のべき乗で丸めた場合においても良好な特性の得られることが示される.
著者
山口 静馬 佐伯 徹郎 老松 建成
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.9, pp.1421-1427, 1999-09-25
被引用文献数
7

音声聴取時の外来雑音に対する心理的応答を,音声信号と外来雑音の各音圧レベルやパワースペクトル特性の相対的関連性の下に把握することは快適な音場の設計に重要である.本論文は音声聴取時の外来雑音に対する心理的応答を推定・予測するための手法をファジィ集合を用いて提案したものである.具体的には,音声を聴取している人間が外来雑音にさらされた場合に着目し,音声信号と雑音の音圧レベルやパワースペクトル特性に関するファジィ関係を,SN比とオクターブ数を台とする近似的な2次元メンバシップ関数を用いて求めている.次いで,心理的応答の評価手法をファジィ確率の概念を導入して提案している.最後に,本手法の妥当性と適用可能性を心理実験による実測データに適用して実験的に確認している.理論と実験との間にほぼ良い一致が認められる.
著者
金澤 靖 金谷 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.85, no.2, pp.231-239, 2002-02-01
被引用文献数
19

画像の濃淡値から共分散行列を計算する方法を統一的に定式化し,それが特徴点の位置の精度を反映しているのかどうかを可変テンプレートマッチングによるサブ画素補正により,実験的に検証する.そして,このような共分散行列を用いて最適計算の精度が向上するかどうかを射影変換行列と基礎行列について調べる.
著者
中川 雅通 宗績 敏彦 角 義恭 前原 文雄 千原 國宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1312-1315, 1997-08-25
被引用文献数
21

顔の表面と骨格の二つの形状モデルを用い, 年齢変化した顔画像の合成を行った, 骨格の形状モデルは表面の形状モデルから生成する. 幼年から成年への変化では, 骨格モデルを頭蓋骨の成長に基づいて変形し, 老年への変化では, 表面モデルと骨格モデルの差である肉厚の変化による皮膚のたるみを付加することにより, 年齢変化した顔画像の合成を行った.
著者
中津川 雅史 大内 東
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.519-527, 2001-04-01
被引用文献数
3

Mahalanobis Taguchi System(MTS)は, 基準事象群より算出されるマハラノビス距離に基づき, 検査事象を基準事象群に属する事象(正例)と属さない事象(負例)に大別する多変量解析手法である.MTSを用いた正例/負例判別では, 技術者の経験的判断に基づきマハラノビス距離上にしきい値が設定される.本論文では, 基準事象群を構成する事象のハマラノビス距離にガンマ分布を仮定することで, 正例の累積確率に基づくしきい値の設定を行う手法を提案する.しきい値設定法を導入したMTSアルゴリズムを用いることでしきい値設定上の指針を獲得し, 正例/負例判別におけるMTSの判別精度及び簡便性を向上させる.設定されたしきい値に対しては, コルモゴロフ・スミルノフ検定により信頼帯域の提示を行う.項目の最適化においても, しきい値により修正された望大特性のSN比を用いることで, 基準事象群からの効果的な負例の排除を実現する.
著者
趙 晋輝 宇野 晋平 久保田 智規 猪股 篤
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.83, no.4, pp.370-378, 2000-04-25
被引用文献数
5

Volterra形非線形適応フィルタは, 一般的な非線形系に適用できる汎用性と, こう配形適応算法の保証される大域収束性などの優れた特徴で知られている.しかしながら, Volterra核が密である場合, 収束が遅く不安定になりやすい, そこで筆者らは, 2次のVolterra形非線形適応フィルタにおいて, Gaussian信号入力に対する誤差曲面形状の重要な性質を理論的に導き出している.本論文では, それらの解析結果を基にして, 白色信号入力と, 有色信号入力に対して, 最適な重み係数ベクトルの修正方向と更新幅を用いた高速収束アルゴリズムを提案し, 計算機シミュレーションによりその効果を実証する.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.1-10, 1999-01-25
被引用文献数
5

本論文では非線形システムの線形ひずみ及び非線形ひずみを同時に除去する非線形逆システムのオンライン設計法を提案する. ここでは, 適応Volterraフィルタを用いて非線形逆システムをオンライン設計する方法を議論する. これまで, 我々は非線形逆システムをオフラインで設計する方法を提案してきたが, これらの 手法では対象としている非線形システムの特性が変化した場合, 非線形ひずみ除去効果が低減するという問題点を有していた. 本論文ではまず, 非線形システムの特性変化が非線形ひずみ除去効果にどのような影響を与えるかについて検討する. 続いて, 提案するオンライン設計システムを示し, その設計原理を3段階に分けて説明する. すなわち, オンライン設計の第1段階として未知非線形システムの線形項(1次Volterra核)を, 第2段階として線形逆フィルタを, 第3段階として未知非線形システムの2次非線形項(2次Volterra核)をそれぞれオンラインで同定及び設計する方法について説明する, 最後にコンピュータシミュレーションにより提案法の有効性を示す.
著者
天田 皇 赤嶺 政巳 三関 公生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.1092-1099, 1996-05-25
被引用文献数
1

CELP音声符号化方式の励振符号帳の探索は方式全体の計算量の大半を占め, 音質に与える影響も大きいため, 少ない計算量で精度良く探索を行う必要がある. 直交化探索法は励振符号帳の探索方法として現在広く用いられている方法であり, 多段符号帳を逐次探索する場合, 目標ベクトルとのひずみを最小にする符号ベクトルを探索することができる. しかし, 探索ループ内で符号ベクトルを直交化する必要があり計算量が増加する問題がある. 本論文では符号帳探索を幾何学的に考察し, 従来の直交化探索法と異なる視点から多段符号帳における目標ベクトルとの誤差最小化の問題を定式化する. 提案法は直文化探索法と同じ探索結果を与えることを示す. また, 提案法は探索ループ内で符号ベクトルの直交化が不要なため評価式の分子で予備選択を行う場合は直交化探索法に比べ計算量を削減できることを示す. 符号帳探索の計算量を予備選択を行う条件の下で比較し, 提案法は直文化探索法に比べ符号帳の段数が増加するほど計算量削減の効果が大きくなることを示す. 最後に, 計算機シミュレーションによって予備選択が音質に与える影響を調べた結果を示す. 実験に用いたCELP方式では予備選択候補数4〜8でSNRsegの劣化は0.ldB以下であり, このとき, 計算量は直交化探索法に比べ約2MOPS削減できることが確認された.