著者
長谷川 まどか 加藤 茂夫 山田 芳文
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1483-1489, 1997-09-25
被引用文献数
9

シンボル出現確率に偏りのある2値無記憶拡大情報源に対するコンパクト符号の構成法について提案する. 2値無記憶情報源のn次拡大情報源においては, 同一出現確率をもつ通報が多数組発生する. これらの通報をグループ化し取り扱うことにすれば, 優勢シンボル出現確率が1に限りなく近い場合, すなわち, 低エントロピー情報源に対しては, ハフマンのアルゴリズムによって縮退操作を行う際にはグループ間にまたがる通報の並べ替えは発生しない. 本論文では, このことを利用して, 上記の場合におけるコンパクト符号の符号語長と符号語数の組, 平均符号長, 最大符号語長などを符号木を作成することなく簡単な式で容易に求められることを明らかにしたので報告する.
著者
川島 宏文 中里 光弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.1-8, 1993-01-25
被引用文献数
9

本論文の目的はTTカットと命名される,新カットねじり水晶振動子を提案し,その周波数特性,周波数温度特性および電気的諸特性を明らかにすることにある.まず,解析手順として,本論文では運動方程式をエネルギー法を用いて導出する.次に,両端自由,両端固定あるいは,一端固定,他端自由の境界条件で運動方程式を解き,厚みz_0,幅x_0,長さy_0の関数として与えられる周波数方程式を導出する.更に,この式より,辺比Rzx=z_0/x_0に対する周波数定数(f・y_0)との関係ならびに,1次温度係数αがα=0となる辺比Rzxとカット角(φ,θ)との関係が理論的に導出される.そして,α=0となる辺比Rzxとカット角(φ,θ)は無数に存在することが示される.その中で特に量産性に優れるカット角φ=28°,θ=10°で2次温度係数が-1.16X10^<-8>/℃^2とその絶対値は屈曲水晶振動子の場合の約1/3倍とかなり小さい値が得られる.更に,この結果は実験値-1.32X10^<-8>/℃^2と比較され,両結果とも十分によく一致することが示される.最後に,音さ形状での等価直列抵抗R_1とQ値が調査され,その結果,周波数fはf=385〜444kHzで,R_1=2.2〜14.4kΩ,Q=276,000〜378,000とR_1の小さい,高いQ値を有する音さ型ねじり水晶振動子であることが示される.
著者
伊藤 大雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.458-469, 2006-06-01

フランク・ハラリイによって提案された一般化三並べとは,指定されたサイズの正方盤面上に2人で交互に石を置いていき,指定された生物(図形)を自分の石で先に作ることを競い合うゲームである.ゲームの性質上,両者が最適な手を打つ限り,先手が勝つ(勝ち型)か,引き分ける(負け型)かどちらかである.これまで多くの生物について,勝ち型か負け型かが明らかにされてきた.本論文では,これまで得られた主な結果や主要な技法について解説し,未解決問題を紹介し,今後の発展の方向について述べる.
著者
田村 武志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.494-505, 1994-03-25
被引用文献数
25

通常のテレビ会議システムでは,情報提示装置としてモニタテレビが使われる.遠隔講義にこのモニタテレビをそのまま使う場合,受講者は,黒板に比べて狭い視野の画面を長時間見続けることになる.これは疲れや眠気の原因になり,学習意欲にも影響を与える.これを改善する方法として,モニタテレビにカラー電子ボードを併置した新しい統合提示環境を提案する.この提示環境は,視野(画角)を拡大し臨場感を高める,学習情報を動画像提示系(モニタテレビ)と文字・図形提示系(電子ボード)に分離し,かつ両者の同期をとった講義ができる,ボードへの書込みができ,情報共有が可能,電子ファイリング機能により情報の蓄積・提示ができ,質問に対する迅速な回答が可能,などの特徴がある.この提示環境により遠隔講義を実施した結果,従来のテレビ会議システムによる講義に比べて臨場感があり,印象評価が高いことを示す.また,電子ボードに提示する最適な文字の大きさおよび行間隔を測定し,その値を明らかにする.更に,受講者の着座位置と文字認識率および10代から50代までの年齢層と文字認識率との関係を明らかにする.
著者
尾知 博 金城 繁徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.801-809, 1993-06-25

本論文は,FIR適応フィルタの係数更新ベクトルとして,離散コンサイン変換(DTC)の基底ベクトルを使用した新しい適応アルゴリズムを提案している.NタップFIR適応フィルタの平均2乗誤差曲面は,入力信号系列の自己相関行列と係数誤差ベクトルによる2次形式で表され,N次元超平面におけるだ円を表している.本論文では,まずこのだ円の主軸が,トプリッツ(Toeplitz)行列である自己相関行列Rの固有ベクトル方向と一致することを示す.ところで,トプリッツ行列Rの固有ベクトルはDTCの基底ベクトルで近似できることがよく知られている.そこで本論文では次に,この基底ベクトル方向に沿って係数更新を行う新しい適応アルゴリズムを提案する.提案算法は,原理的にN回の反復で適応フィルタの係数を収束させることができる.最後にシミュレーションにより,従来の学習同定法と比較して本論文で提案するアルゴリズムが高速に収束することを示す.また,付加雑音が存在する場合でも提案法が有効であることを示す.
著者
古家 賢一 片岡 章俊
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.1089-1099, 2005-10-01
被引用文献数
8

マイクロホンから離れた位置の音声を収音する場合, 部屋の残響により収音された音声が劣化する. この問題に対して従来, MINT法では残響抑圧のための逆フィルタ計算に事前のインパルス応答の測定が必要であり, 実用的ではなかった. 本論文では, 事前のインパルス応答測定を必要としないチャネル間相関行列と白色化フィルタを用いて残響抑圧を行うSemi-blind-MINT法を提案する. 提案手法では, 最も音源に近いマイクロホンのみを既知とし, 室内インパルス応答の事前測定の代わりに各マイクロホン入力間の相関行列を用いて逆フィルタ計算を可能とする. また, 音源信号が有色信号である音声のため性能が低下する点を, 収音された音に音声の平均スペクトルの逆特性をもつ白色化フィルタを用いることにより改善を図った. 実際の部屋において実験を行い, その結果, 提案手法では7dBの残響抑圧効果が確認でき, また, 遅延和アレー法による残響抑圧に比べても4dBの改善効果があった.
著者
落合 昇 櫛引 理 松嶋 智子 寺町 康昌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.9, pp.957-968, 2003-09-01
被引用文献数
39

光CDMAシステムの一つとして,EWO信号方式が提案されている.この方式は,1組のユーザに互いに直交する等重みの二つの符号語を割り当て,伝送情報に応じて一方を選択して拡散符号化に用いる方式である.基本的な光CDMA方式であるOOK信号方式と異なり,復号時のしきい値を動的に推定する必要がない点で優れている.EWO信号方式はOOCやPSCをシグネチャ符号とする非同期システムにおいて評価されており,その誤り率特性は適用する符号などによって多少異なるが,OOK信号方式に比べて大きな改善はなく,条件によっては劣ることが報告されている.本論文では,EWO信号方式を同期システムに適用した場合の誤り率特性を評価する.シグネチャ符号としてはMPSCを用い,他チャネル干渉以外の雑音要因を無視できる理想的なリンクを仮定し,解析的な評価及び計算機シミュレーションを行った.その結果,EWO信号方式はOOK信号方式に比べて非常に優れた誤り率特性をもつことが示された.特に,符号語の各ユーザヘの割当てを工夫することにより,EWO信号方式は多重者数にかかわらず誤り率が常に0となるという結果が得られた.
著者
望月 孝志
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.1600-1608, 1996-09-25
被引用文献数
26

8×8次のアダマール変換を用いた効率的な可逆符号化方式を提案する.アダマール変換の変換行列は正規化係数を除けば要素が±1であることより,変換係数のビットパターンはブロック内で相互に関連する.すなわち,変換係数の下位6ビットのうち適切な半数のビットがわかれば残りのビットを導出できる.本論文では2次元8×8次の変換についての関係式を導出し,それを符号化に利用する.提案方式の圧縮率はJPEG可逆符号化方式と同程度であった.更に提案方式では,低域の変換係数から順次符号化することで,無ひずみに漸近するプログレッシブ符号化を実現できる.これはJPEG可逆符号化方式にはない特性であり,医用画像のデータベースなどに非常に有効である.
著者
河本 満 Barros A.K. Mansour A. 松岡 清利 大西 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.8, pp.1320-1328, 1999-08-25
被引用文献数
21

ブラインド信号分離とは, 信号が複数の信号源から流れていて, それらの混合信号を複数のセンサで観測できるとき, その観測信号のみを用いてもとの信号を分離して取り出す信号処理技術である. 本論文では, 信号源からの信号は, 非定常信号(例えば, 音声, 音楽)であるとし, それらが時空間的に混合している観測信号からもとの非定常信号を分離することができるブラインド信号分離の方法を提案する. 提案する手法は, 観測信号の2次の相互相関値が零になったときのみ最小値(零)をとる非負関数を最小化することによってブラインド信号分離を実現する. 本手法の有効性は, 計算機シミュレーションと普通の部屋で観測される音声の混合信号を用いて行う実 験で確かめられる.
著者
岡本 学 田中 良明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.958-966, 2004-07-01

ネットワーク上での電子投票では,二重投票や票の水増し・改ざん等が憂慮される.また集計局が悪意をもてば,集計中にその結果を漏らして利用する不正なども存在し得る.それらを防ぐ手段が提案されているが,投票者の負担が多くなりがちであったり,集計のための計算量が膨大であったりする.ここでは,投票候補に対応したカードを匿名に配布し,投票者は単に自分が投票したい候補に対応したカードを提出することで投票作業が完了し,得票計算も簡易に第三者が確認可能な方式を提案する.また公開掲示板上の無証拠性の導入も検討する.
著者
竹森 敬祐 三宅 優 中尾 康二 菅谷 史昭 笹瀬 巌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.816-825, 2004-06-01
被引用文献数
11

近年,サイバーテロ対策の一環としてSecurity Operation Center(SOC)の設置が進められているが,広域や個々のネットワークを分析するための効率的な手段がない.本論文では,異なる環境のネットワークを集中監視するSOCのために,様々なIntrusion Detection System(IDS)から出力されるログを統合管理して,時間軸上での異常なイベントを客観的に検出するIDSログ分析支援システムを提案する.分析は,過去の長期間のイベント出力特性(長期プロファイルと呼ぶ)に対する最近の短期間のイベント出力特性(短期プロファイルと呼ぶ)の変化の程度を,異常率として評価する.各地で運用されているIDSから収集したログを用いて評価を行い,従来からの頻度分析結果の中から検証の不要なイベントを特定できること,頻度分析で発見が困難であったかすかな痕跡を抽出できることを確認する.本システムは,広域かつ詳細に監視を行えるシステムとして,SOCにおけるログ分析作業の信頼性の向上と効率化に寄与する.
著者
長谷山 美紀 永井 信夫 三木 信弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1714-1724, 1993-12-25
被引用文献数
23

入力信号が未知のモデルについて,周波数重みを付けたモデル同定を可能とするARMA4線格子形フィルタが既に提案され,その応用が重要であることが述べられているが,乗算器個数が多いことが欠点とされていた.そこで本論文では,このような同定法が可能な乗算器個数の少ないARMA格子形フィルタの実現法を提案する.乗算器個数の削減は,直接計算量の削減につながり,特に適応処理を行う場合には重要である.本論文では,2種類のフィルタの実現法を提案している.提案されている2種類のARMA格子形フィルタは,実現に用いられる予測誤差の違いにより異なった性質をもつ.本論文では,提案する二つのフィルタおよび乗算器個数の多い従来のフィルタについて,各々を用いる場合にどのような点が異なるかを示す.最後に,本論文で提案するフィルタおよび従来のフィルタは,得られたラティス構造を保ったまま,信号合成フィルタとして用いることができることから,そのような応用を行った場合の係数感度についての考察を実験により行う.実験より,乗算器個数の削減による感度特性の劣化が生じていないことを確認する.
著者
星 洋輔 小林 貴訓 久野 義徳 岡田 真依 山崎 敬一 山崎 晶子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.764-772, 2009-11-01
被引用文献数
1

我々は,美術館での学芸員と観客の相互行為を,言葉と身体の動きの連動に焦点を当て,エスノメソドロジーの観点から調査・分析してきた.その結果,ロボットが作品の説明を行う場合でも,文の切れ目などの適切なタイミング(TRP)で,観客の方向へ正しく振り向くことが,観客の反応を増加させることが分かった.このような観客の反応の増加は,観客をロボットの説明に引き付けることができたためと考えられるが,これまでの知見は実験室での実験によるものであるため,実際の美術館においても同様の結果が得られるかどうかは確認できていない.そこで,本論文では,実際の美術館において実施した実験とその結果について述べる.まず,実際の美術館では観客に対して立ち位置の指定などはできないため,説明対象者の頭部を検出・追跡して正しくその方向へ振り向くことができるロボットを新たに開発した.そして,実際の美術館において,実験目的やロボットの動作に関する知識を一切もたない一般の観客に対して,ロボットによる作品の説明実験を行った.その結果,これまでの実験室での実験結果と同様に,高い割合で観客の同期的な反応を促すことができた.
著者
谷本 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.89, no.11, pp.866-872, 2006-11-01
被引用文献数
12

20世紀にテレビは遠隔地の情景を居ながらにして見たいという人類の夢を実現したが,これは1視点の映像の伝達であり,しかもユーザはその視点位置を変えることができない.自由視点テレビ(Free Viewpoint TV, FTV)はこの制約を打ち破り,ユーザが自ら視点を移動して遠隔地の情景を見ることができる究極の三次元テレビである.私たちはFTVを構築するための技術開発を進め,撮影から表示までのすべてをリアルタイムで行うFTVシステムを世界で初めて構築した.また,PC1台での自由視点画像生成にも成功している.FTVは動画像の国際標準化会議であるMPEGに提案され,最も挑戦的な三次元映像メディアとして高い評価を得た.現在, MPEGにおいてFTVの入力信号である多視点映像の圧縮符号化の標準化が進められている.FTVは画像情報の根元である光線を取得,処理,再生するシステムである.私たちは光線再現型FTVの開発を通して,画素ではなく光線をベースとする新しい光線画像工学を創成している.無限個の眼をもつ時空間映像システムであるFTVは,写真,映画,テレビと発展してきた映像技術の頂点に立つ.FTVによって実世界の完全な記録や時空間での自由な表現が可能となり,新しい文化や芸術が創造される.
著者
仲井 弘治 牛田 明夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.8, pp.1137-1145, 1994-08-25
被引用文献数
14

区分線形非線形素子と従属電流源だけから構成されたセルが平面状に配置したセルラニューラルネットワーク(Cellular Neural Networks:CNN)は構成が単純で網膜に似ていることからパターン認識,画像処理などへの応用が期待されている.この場合,各セルは近傍のセルとのみ同一のパターンで接続されており,この接続パターンを変更することによって各種の機能をもったCNNを設計することができる.この結合パターンはクローニングテンプレート(Cloning Template)と呼ばれ,この設計手法を確立することは,新しいCNNを開発する上で極めて重要である.本論文では,規範入力に対する出力が所定の性質を満足するような動作特性を仮定し,これを用いて拘束条件を求め,対応するコスト関数が最小になるようにテンプレートを設計しようというものである.最適化手法としてはアルゴリズムが単純なシンプレックス(Simplex)法を採用した.応用例として,ノイズ除去CNN,迷路探索CNNを設計したところ,満足する結果を得ることができたので,その設計手法について報告する.
著者
佐藤 清 豊嶋 久道 有山 一弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.1226-1230, 1995-09-25
参考文献数
4
被引用文献数
2

中国人の剰余定理を実現する高速ハードウェアアルゴリズムを提案したものである.剰余生成部においてけた上げ保存加算器を利用することにより,ビット幅の大きいけた上げ伝搬加算器の使用を1段ですませることができる.
著者
向田 茂 蒲池 みゆき 尾田 政臣 加藤 隆 吉川 左紀子 赤松 茂 千原 國宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1126-1137, 2002-10-01
参考文献数
12
被引用文献数
34

近年,顔の認知に関する心理学的研究が盛んに行われている.心理実験を行うには実験デザインに応じた実験刺激の作成が必要となるが,これまで実験刺激の生成を目的とした統合的な顔画像合成システムは見当たらなかった.我々は,先行研究で用いられてきた合成顔を容易に作成できるとともに,今後検討されるであろう様々な実験刺激の作成にも柔軟に対応できるよう,心理学研究からの要求を考察し,実験デザインの段階から実験刺激の作成までの一連の作業をサポートする顔画像合成システムの開発を行った.特に,一連の作業の中で,操作者への負担が大きくなる,特徴点の取得作業の負荷を軽減できるよう,採用した操作者補助の機能の有効性を実験により確認した
著者
清田 公保 江崎 修央 柳井 貴志 山本 眞司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.310-317, 1996-02-25
被引用文献数
17

本論文では, 視覚障害者, 特に中途失明者を対象としたオンライン日本語入力インタフェースを新たに提案する. 本方式は, キーボードや点字キーの位置を黙視確認できない中途失明者にとって修練なしに利用可能な情報入力手段を提供するものである. 最初に, 視覚障害者に適した操作性の良い入力手段に関する基本的考え方を整理し, 次いでそれに基づく基本設計の概要を述べた. 次に, これらの設計思想に基づいたプロトタイプの試作を行い, 最後に被験者評価実験を通して従来の仮名漢字変換による入力方式との比較を行った. 実験の結果, 情報機器の操作経験のない視覚障害者でも本方式は容易に利用できることを確認し, また入力時間についても, 認識精度の向上による候補文字の読み上げ回数の削減により, 従来の仮名漢字方式に習熟した人の2倍まではかからない見通しが得られた.
著者
金西 計英 矢野 米雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.227-240, 1996-02-25
被引用文献数
10 3

我々は, 説明のもつ学習効果, 第三者に説明することにより説明の当事者が多くのことに気づく現象に着目し, 学習者が自分自身の問題解決について述べる自己説明の働きを利用した教育システムを開発した. 我々が開発した教育システムは, 計算機上で学習者が他の学習者に説明を行う擬似環境を与える. 学習者は自己説明環境の下で, 説明を繰り返し行う. 自己説明の繰返しは, 内省を活性化することになり学習効果が上がる. システムは,学習者の説明を評価し, 学習者にアドバイスを与える. 学習者の説明は, アドバイスを受けることにより, 変化する. 我々は, この変化を説明の洗練と呼び,システムによる学習者の説明の洗練方法について示す. 最後に, 自己説明について行った実験について述べ, 我々の提案したモデルについて考察する.
著者
デルゲルマー モンフバータル 岩橋 政宏 石井 俊平 神林 紀嘉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.470-482, 2004-04-01

リフティング構成されたウェーブレット変換に基づく画像符号化は,フィルタ処理後にラウンディング処理を行うことで効率的な可逆符号化が可能となるため,可逆・非可逆統合符号化の一手法として近年注目されている.しかし,ラウンディング処理が非可逆符号化時にも行われる場合,量子化誤差に加えてラウンディング誤差が再生画像に重畳されるため,これにより更なるSNRの低下を招いてしまう.そこで本論文では,一般的なNステージに拡張可能な,新しい非分離型2次元ウェーブレットの変換モジュールを提案する.これにより,従来の分離型ウェーブレットと互換性があり,なおかつ,ラウンディング誤差の低減された可逆・非可逆統合符号化が可能となる.更に,ラウンディング誤差のフィルタバンク内の伝搬メカニズムを解析し,再生画像に重畳するラウンディング誤差の分数値を理論的に導出することで,Nステージにおけるラウンディング誤差の低減効果を理論的に裏づける.結果,ラウンディング誤差の分散値が分離型に比べて50%程度低減できること,及び,高ビットレート非可逆符号化時において平均1.30[dB]程度のSNR改善が確認された.