著者
中村 修 森田 長吉 岡崎 清
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.1263-1275, 1995-10-25
被引用文献数
7

超音波体外結石破砕裝置における誤照射防止法の一つとして,結石が確実に焦点部に存在することを検知する目的で実際の衝撃波発射前にトリガパルスを発射する方式がある.本研究ではこの方式で用いるトリガパルスの人体内伝搬の問題を時間領域差分法を用いて検討する.本文ではまず超音波伝搬路の焦点部に結石を置いた場合についてパルスの散乱・反射の様子を解析し,次にこの結石が焦点部から少しずつずれていった場合の反射波の量の変化をトリガパルス機構の動作に関連させて検討する.最後に焦点部に結石を置いた状態でパルス伝搬路付近に骨が存在する場合について,パルスの伝搬・散乱・反射の様子を調べ,骨の位置の違いがトリガパルスの動作にどのような影響を及ぼすかを定量的に評価検討する.
著者
澤田 秀之 橋本 周司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.452-459, 1996-02-25
被引用文献数
21

意志や感情の伝達においては, 言語以上に非言語的手段によるところが大きいと言われる. 身振り手振りなどのジェスチャーはその代表的なものである. ジェスチャーにおいて人間の意志や感情は, 手などの位置よりもむしろ身体に加えられる力に顕著に現れると考えられる. ここでは運動中に働く力は加速度によって検出することができることに注目し, 3次元加速度センサによるジェスチャー認識を試みた. 試作システムでの実験では, 一連の3次元加速度データから運動の特徴量として, 加速度の変化, 回転力, 加速方向の分布などを求め, 標準パターンとのマッチングを行うことによって10種類程度のジェスチャーをほぼ100%の識別率で認識できることがわかった. また, 提案手法を適用して試作したジェスチャーによる実時間音楽制御システムについても述べる. 試作システムは, 従来の画像処理やデータグローブを用いた場合に比べて, テンポ検出の遅れも少なく構成も簡単であり, ジェスチャーによる柔軟で感性的なマン・マシンインタフェースの実現への手掛りが得られた.
著者
入江 隆 藤田 尚文 中西 秀男 太田 学
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.162-171, 2008-01-01
被引用文献数
4

軟物体に手で触れるときに感じるやわらかさには,「かたさ-やわらかさ」の次元と「弾力」の次元がある.これまでの研究では,心理的なやわらかさを単にばねの性質として理解することが多く,両者を区別して議論することはなかった.軟物体の力学的特性は,平衡弾性係数と緩和弾性係数を用いたマクスウェルモデルによる表現が可能である.本論文では,感性評価実験による心理量と力学特性計測による軟物体の粘弾性係数との関連について解析を行った.その結果,「かたさ-やわらかさ」と「弾力」ともに平衡弾性係数の寄与が大きいが,「かたさ-やわらかさ」には緩和弾性係数が正の寄与をしており,「弾力」には負の寄与をしていることを明らかにした.また,指で軟物体を押す荷重を制限した実験と指先の機械受容器に与える情報を制限した実験を行うことにより,やわらかさ知覚における深部感覚の重要性と機械受容器の関与について,新たな知見が得られたので報告する.
著者
前田 義信 今井 博英
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.6, pp.722-729, 2005-06-01
被引用文献数
8

学校におけるいじめ問題は, 「キレる」子どもや「ひきこもる」子どもの問題と同様, 解決すべき重要な課題の一つである. しかし, いじめの定義はあいまいであり, 社会心理学でもいじめを明確に決定づけることが困難であるため, 現場教師による早期発見が難しい. いじめの背景には子どもと子どもの相互作用があり, 特に中学生の年代では価値をめぐる相互作用により交友関係が形成される. しかし, 一元的な管理主義が支配する学校の中では自由に価値を見出すことが難しく, また集団が群集化することがあり, 群集化の影響が価値を共有できない少数の子どもをいじめのターゲットにしてしまう. 本論文では, 群集化する交友集団における, 価値をめぐった交友関係の形成過程をエージェントベースでモデル化する. そして, モデルのパラメータ値を変化させることで, 価値を共有できない少数のエージェントが発生する条件を明らかにした. 提案モデルによると, 管理を弱くしてエージェントに多様な価値を見出すことが許されるようにすることは, 逆に価値を共有できないエージェントの数を増加させる可能性がある. 我々は, その原因がエージェントの相互作用にあることを調べた.
著者
田中 剛 中川 匡弘
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1826-1843, 1996-11-25
被引用文献数
9

本論文において,パラメータ制御を伴う区分線形周期写像を用いた,自己想起モデルが提案される.実際,本モデルの活性化関数は,ネットワークの準安定状態である偽記憶に陥ることなく,高い記憶容量を実現するため,単調周期写像の間を非単調周期写像を経て制御される.また,本モデルは,周期写像に基づくカオスカ学により,カオスを用いた記憶探索モデルを構成でき,更に入力に関する情報を外部刺激として与えることにより自己想起が実現される.計算機シミュレーションの結果から,本モデルは,探索モードにおいてでさえ,記憶率L/N〜0.5までは完全想起が実現されることが見出された.更に,ネットワークを非同期的動作させることにより,想起特性の改善,および,記憶容量が向上(探索モードにおいて記憶率L/N〜0.56)が確認され,ネットワークの非同期動作におけるカオスの有用性が見出された.
著者
寺田 和憲 岩瀬 寛 伊藤 昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.117-127, 2012-01-01
被引用文献数
2

哲学者Dennettは人間が他者の振舞いを理解し予測するために意図,設計,物理の三つのスタンスを使い分けているとし,哲学的論考によってその妥当性を示した.しかし,人間が本当にそのようなスタンスを使い分けているかどうかは定かではなく心理学的研究によってその存在が証明されているわけではない.そこで,本研究では,スタンスを科学的に定義し,実際に振舞い理解において用いられているかどうかを検証するために三つの心理実験を行った.まず,Dennettのスタンスをアニメーション化し,アニメーションに対する被験者の印象記述を分析することで,振舞い理解のための四つの言語的概念カテゴリーを明らかにした.次に,60個の様々な対象の振舞いを参照基準として用いることで,四つのうち三つの言語的概念カテゴリーがDennettのスタンスと近いものであることが分かった.しかし,Dennettの主張のような原理帰属による理解がなされているという直接的証拠は得られなかった.議論から,実際の振舞い理解においては振舞いの性質が注目され,意図,決定,受動,複雑の四つの概念的カテゴリー化が行われていると結論づけた.
著者
劉 紹明 田中 栄一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.10, pp.1358-1371, 1995-10-25
被引用文献数
4

本論文は根があり順序がない木(R木と言う)および根がなく順序がない木(単に木と言う)について,それぞれ,強構造保存写像に基づく距離(SSPD),C写像に基づく距離(CD)および極大C写像に基づく距離(MCD),の3種類の距離の計算法を提案している.R木の場合,いずれも,時間計算量はO_T(m_aN_aN_b),空間計算量はO_s(N_aN_b)である.木の場合,3種類の距離の計算法の時間計算量はO_T(max(m_a,m_b)^2N_aN_b),空間計算量はO_s(N_aN_b)である.ここで,二つのR木,あるいは二つの木をT_a,T_bとするとき,m_a(m_b),N_a(N_b)よそれぞれT_a(T_b)の頂点の最大次数,T_a(T_b)の頂点数である.SSPD,CDの計算法は,R木および木の場合とも,従来の計算法より効率が良く,MCDは本論文で提案した距離である.R木および木の距離は,化学で研究されている構造・活性問題をはじめとして,多くの構造比較問題に応用できる.
著者
黒岩 眞吾 武田 一哉 井ノ上 直己 野垣内 出 山本 誠一 庄境 誠 尾和 邦彦 長濱 克昌
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.223-231, 1994-02-25
被引用文献数
6

内線電話への接続をタスクとする音声対話システムを作成した.同システムは200人規模の組識の電話受付業務を行うもので,電話で所属と名前を言うだけで相手の内線に電話をつなぐシステムである.不特定話者の連続音声認識を実時間で行うために専用のハードウェアを開発した.ハードウェアは浮動小数点DSP9個を疎結合マルチプロセッサ方式で結合し,パイプライン処理により,エコーキャンセル,音響分析,HMMのゆう度計算および単語レベル,文法レベルでのビタビ演算を並列に実行する,並列化にあたっては,最も処理の重くなったプロセッサにプロセッサ間のデータ転送に伴う待ち時間が生じないようなパイプラインスケジューリングを行っている.また,タスクサイズが大きくなッた場合でも音響分析は一定の周期で行えるよう同期処理,非同期処理を混在させた構成とした.電話回線経由で収集した400名の発声による音素バランス4,000文を用いて学習した音素モデルを用い実環境で評価したところ,91%の呼に対して正しい相手の内線番号が案内でき,それに要した平均所要時間は41秒であり,多くのユーザによる利用が期待できる性能であることが確認された.
著者
高橋 祐介 佐藤 貴美 平田 恭二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.110-121, 2005-02-01
参考文献数
13
被引用文献数
1

本論文では, 車載カメラ映像において部分的な隠れに頑強なランドマーク認識方法を提案する.視覚的特徴量空間において, あらかじめ登録したランドマークに対する辞書データと最も類似する映像中の分割領域の組合せを求めて評価することにより, 部分隠れに頑強な認識及びその領域の高精度な抽出を実現する.撮影情報(撮影カメラの位置及び向き)を利用した抽出領域の検定により精度向上を図るとともに, 対象ランドマークの候補数及び組合せに用いる分割領域の絞り込みにより処理コストを削減する.実写映像を用いて部分隠れがあるランドマークに対する認識精度及び領域抽出精度, 計算コスト削減の有効性を検証する.応用として, ランドマーク認識結果と車の走行情報を組み合わせた重要度判定に基づくドライブ映像の自動要約について報告する.
著者
飯島 泰蔵 岩城 護
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.11, pp.1575-1582, 1998-11-25
被引用文献数
9

本論文では, 正規型自然観測変換による波形観測における, 被観測波形と正規型基本観測値系列との間の瞬時的な関係について論じる.これはフーリエ変換の場合で言うところの不確定性関係に類似している.正規型自然観測変換の大域的な不確定性関係は既に明らかにされていたが, 波形の瞬時的な取扱いを定式化しようとする自然観測法理論にとって十分な結果ではなかった.それに対して本論文では示された関数は, 自然観測法理論による波形の瞬時的な取扱いに関する基本的な性質として重要な意味がある.
著者
陳 国躍 安倍 正人 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.851-859, 1999-06-25
参考文献数
23
被引用文献数
10

騒音の能動制御 (Active Noise Control : ANC) を広い空間で実現するためには, 複数の打消しスピーカ及びエラーセンサが必要となり, また, 騒音源が複数存在する場合には, 複数の参照センサを必要とする. そのため, 音響伝達系は複雑になり, 能動制御の性能が劣化する. 本論文では, このような多入力多制御点のANCシステムの複雑な音響伝達系における性能劣化の原因を, 周波数領域での評価法を用いて検討する. その結果, 入力多制御点のANCシステムにおいては, 複数のスピーカから放射された打消し音が, 空間で混じり合うこと(カプリング)と, 参照信号間に相関があることにより, 適応アルゴ.リズムの収束速度が遅くなり, また, 計算誤差が大きく, 打消し量が小さくなることを明らかにする. 更に, 検討結果をもとに, 適応アルゴリズムの収束速度についていくつかの改善法を提案する.
著者
浜本 義彦 金岡 泰保 富田 真吾
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.76-83, 1994-01-25
参考文献数
21
被引用文献数
5

パターン認識における特徴抽出系の代表的な設計法の一つに判別分析がある.これは,フィッシャー評価関数を最大にする特徴軸を抽出するものである.しかし,判別分析は,mクラス問題ではm-1個の特徴軸しか得られない,という問題を含んでいる.パターン分布によっては,認識性能向上のために,追加特徴軸を必要とする場合があるが,判別分析ではこれに対処することができない.この特徴軸数の制約問題を解決する一手法として,正規直交判別ベクトル法が提案された.正規直交判別ベクトル法は判別分析より識別能力の高い特徴軸を抽出することが,計算機シミュレーションを通して実験的に示されている.しかしながら,これまで理論的な立場から正規直交判別ベクトル法と判別分析との比較は十分になされていない.本論文では,特徴軸の直交性という観点から判別分析との比較を通して,正規直交判別ベクトル法について理論的に検討する.
著者
市瀬 夏洋 合原 一幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.3, pp.373-380, 1995-03-25
参考文献数
4
被引用文献数
35

本論文では,パルス頻度というニューラルネットワークモデルで一般に用いられている情報コードに対して,単一のパルスに対する情報を重要視したモデルである非同期カオスニューラルネットワーク(Asynchronous Chaotic Neural Networks)を用いて,ニューロン間のパルス伝搬ディレーおよび連続時間中に非同期に入力されるパルスを考慮したネットワークの機能について検討する.はじめにモデルの構造を説明し,単一ニューロンの周期的パルス入力に対する応答特性を解析する.次に本ネットワークモデルによってループ構造を構成した場合に,ランダムノイズの存在下でもネットワーク固有のパルス間隔構造に対して応答するような機能を実現できることを示す.
著者
長岡 浩司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.874-885, 2005-08-01

情報幾何では, 確率分布を要素とする多様体上にフィッシャー計量及びα-接続という微分幾何学的構造を導入する. これは相対エントロピー(Kullback-Leiblerダイバージェンス)の幾何ともみなせ, 統計学や情報理論をはじめとする広範な確率論的世界にかかわっている. 本論文では, 量子状態(密度作用素)を要素とする多様体上にフィッシャー計量とα-接続(特にα=±1の場合)の類似物を導入するいくつかの試みについて紹介する. 単なる数学的事実の解説にとどまらず, それらの背景や動機, 今後の展望についても言及する.
著者
荒川 薫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.123-131, 1995-02-25
被引用文献数
43

画像などの信号をほとんど変形させることなくインパルス性雑音を効果的に除去するフィルタとしてファジールールに基づくメジアンフィルタを提案する.インパルス性雑音を除去するには従来メジアンフィルタが効果的であることが知られているが,このフィルタは信号波形自身の変形をも引き起こす.そこで,インパルス雑音が存在する場合のみメジアンフィルタとして動作し,それ以外の場合は入力をそのまま出力すればよいが,インパルス雑音の有無を判定するルールが一般にあいまいである.本論文では,ファジールールによりこの判定ルールを表し,それに基づき出力を制御する新しいタイプのメジアンフィルタを提案する.このフィルタはトレーニングによって最適設計されるものである.実際の画像の雑音除去においてその有効性を示す.
著者
吉尾 重治 趙 奇方 島村 徹也 鈴木 誠史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.436-440, 2001-03-01
被引用文献数
4

本論文では, 音声信号のピッチ周期/基本周波数の新しい推定法を提案する.スペクトルを波形とみなし, その周期を求めることにより基本周波数を算出する立場をとる.ケプストラム法及びその拡張法であるACLOS法がパワースペクトルの対数値を基本とするのに対し, 提案法はパワースペクトルの平方根及び4乗根を基本とする.実験結果は, 提案する方法が優れた耐雑音性を有することを示す.
著者
金谷 文夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.691-697, 2001-06-01
被引用文献数
1

本論文では, 最初にひずみを許すユニバーサル符号化の基礎となるレートひずみ理論の中心概念であるひずみを許す符号化定理について概説する.次いでひずみを許すユニバーサル符号の存在定理について概説し, 最後に最近のひずみを許すユニバーサル符号化アルゴリズムの研究状況の一端を紹介する.
著者
西尾 修一 小山 謙二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.1316-1318, 1997-08-25
被引用文献数
31

笑いの表情の動画像を顔の3次元モデルを用いて合成して被験者に呈示し, 笑いの種別を分類させる実験を行った. この結果, 目と口の動きの開始時点の違いから笑いの種類を分類する規準を見出すことができた.
著者
寺田 裕樹 水戸部 一孝 吉村 昇
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.296-302, 2004-02-01
参考文献数
14
被引用文献数
6

本研究は,高齢者が歩行時に自主的に事故を防止できる交通環境の設計指針を構築することを最終的な目的としている.高齢歩行者は,接近車両の間隔と接近速度の目測の誤りによる交通事故,つまり視界にあるはずの車両による被害も多い.この現象は加齢による感覚機能の低下により接近車両の速度を誤って認知して起こる可能性がある.そこで,本論文ではその基礎研究として,接近速度感覚に着目し,車両に見立てた光点(以下ターゲット)を実空間に呈示させ,接近速度弁別能力を検査するシステムを間発した.このシステムを用いて接近してくるターゲットの弁別を行わせることでその能力を成人健常者(以下成人)と高齢健常者(以下高齢者)で調べ,性と加齢による比較を行った.その結果,成人は女性よりも男性の方が空間内の位置,奥行情報から接近速度を弁別する能力が優れていた.また,成人に比べ高齢者はその能力の低下が見られたが,統計的な差は認められなかった.これは,高齢者の中には成人やそれ以上に接近速度を弁別できる高齢者もいたことから,個人差が顕著ですべての高齢者に先の知見を当てはめることはできない.
著者
滝沢 由実 坪香 英一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.173-181, 1994-02-25
被引用文献数
4

HMMを用いた音声認識システムにおいて,状態または単語ごとに継続時間を制御する方法が提案されており,その有効性も確認されている.しかし,従来提案されている方法は,状態または単語ごとの継続時間を単独に制御する方法であり,一つの文章内の単語間,あるいは一つの単語,音節,音韻内の状態間の継続時間の相互関係を考慮した制御法ではない.本論文では,日本語音節を認識単位とした音声認識システムにおいて,音節継続時間を制御する方法を提案する.本提案は,一つの文章内の音節継続時間の相互関係を用いて,音節継続時間を制御する方法であり,従来法にない次の2点の効果が期待できる.(1)一つの文章内の音節マッチング区間長が不自然にばらつかない.(2)発声速度に無関係に,継続時間を制御できる.本方法は,まず,既にスポッティングされた音節マッチング区間長と音節継続時間を左右する要因とを用いて,次にスポッティングする音節の継続時間を予測し,次に,予測された継続時間を用いて,マッチング区間の範囲を制御するものである.50文章,10話者を用いた認識実験の結果,本継続時間制御法を用いることで文認識率が約67.2%から71.1%に向上した.