著者
稲坂 晃義 八馬 智 石塚 明夫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.1_39-1_48, 2020-07-31 (Released:2020-08-10)
参考文献数
7

デザインの導入基礎教育を対象に,指導者が求める到達目標を明示した「振り返りシート」を用いて,学習者の自己評価により理解・習熟度を自身で把握し,指導者の評価との関係性を明らかにする.またその結果を用いて授業プログラムおよび指導方法等を検討するための示唆を得ることを目的とする.受講者の各課題に対するの理解・習熟度の自己評価,ならびに授業運営側の各課題の設定レベルの適性度の把握と今後の授業進行の調整や課題導出を目的としてICE モデルルーブリックを応用した「振り返り」シートを作成し導入した.因子分析とクラスター分析によって,学習者と指導者の各評価間の差異を明らかにした.学習者本人が自身の理解度を把握することに留まらず,指導者の指導内容の評価にも利用することができる.また多年度にわたりその結果の推移を見ると,各年度の学習者の傾向の違いがあるが,学習者の自己評価と指導者の評価の間の差異が年度を経るごとに小さくなる傾向があり,指導内容の変更や改善が一定の学習効果の向上に寄与することが分かった.
著者
小松 亜紀子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.21-26, 2006-01-31 (Released:2017-07-19)
参考文献数
16
被引用文献数
1

本研究では,大学生へのアンケート調査により観測したデータについて構造方程式モデルによる分析を行った。これにより,身近な工業製品における製品スタイル選択を通じて実現される「成果要因(共通性,不安,評価)」を媒介変数とし,「自分らしさ」に関連する「自己認識要因(相互協調的自己観,自尊感情)」が「流行志向」に及ぼす影響について,因果モデルを構築した。このモデルにより,「相互協調的自己観」の強い傾向と,「自尊感情」が強い傾向は,製品スタイルにおける流行を生じる上で,相補的な関係にあることを明らかにした。また,「相互協調的自己観」の傾向が強い場合は「自分らしさ」の定義を他者動向に依存し,「自尊感情」の傾向が強い場合は他者から選択結果についての評価を得て自己実現を図るため,それぞれ「自分らしさ」が結果的に製品スタイル選択における流行と強く結びついているものと考える。以上をふまえると,工業製品の製品スタイルにおける流行採用というかたちで,「自分らしさ」に関する自己認識が反映されているものと考える。
著者
渡邉 萠 中西 美和
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.5_49-5_58, 2017-01-31 (Released:2017-03-10)
参考文献数
41

「『愛着』がある」と表現されるモノは、そのユーザに長きに渡って高い心理的価値をもたらすとして、近年、プロダクトデザインに携わる従事者に注目されている。しかし、人がどのようにモノに対する「愛着」を形成していくのか、また、それを促す方法としてどのような実際的手段があるかは、明らかになっていない。そこで、本研究では、「愛着」の原義が定義される心理学理論に基づき、「愛着」の観点をプロダクトに埋め込むデザイン戦略を提案し、適用したときユーザの「愛着」形成が促されるかどうかを実験的に検証した。まず、心理学理論に基づき、「愛着」を形成する要件を検討し、これをスマートフォンアプリとして実装した。次に、ユーザを、アプリを使用するグループと、使用しないグループの2つに分け、製品に対する「愛着」の変化を、先行研究で明らかにした「愛着」検出指標(脳血液量変化、指突容積脈波)を用いて計測、分析した。その結果、提案したデザイン戦略が、ユーザのモノに対する「愛着」形成の促進において有効である可能性が示唆された。
著者
範 聖璽 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.61-68, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
8

デザインの創造的思考において,デザイン対象が属するカテゴリー(デザインしようとしているものがどのような名前で呼ばれるのか)を考える場合,いかにそのカテゴリーが示す対象の原型(プロトタイプ)のイメージを残しておくか,あるいはいかに新たなイメージを創出するかという視点の置き方によってデザイン対象のとらえかたと表現内容が大きく変わる。本報では,デザイン目標表現(デザイン対象の言語的表現)の相違から来る視点の相違と,デザイン対象のカテゴリーにおけるプロトタイプ・イメージの影響との関係を2つの実験によって確かめ,独創性の高いデザインを生み出すためのデザイン目標表現のあり方についての手がかりを探った。その結果,デザイン対象が属するカテゴリーの認知意味論的な基本レベルより上位のカテゴリーによるデザイン目標を与え,そこからその下位概念として基本レベルでの対象を考えさせるか,意図的にデザイン対象を含む,より大きな文脈でのデザイン目標を与えることにより,独創性のあるデザインを創出させることができることが分かった。
著者
範 聖璽 野口 尚孝
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.53-60, 2007-01-31 (Released:2017-07-11)
参考文献数
7
被引用文献数
1

デザイン行為では,通常デザイン要求が言語表現で与えられるが,それを視覚空間的形態イメージに変換する過程がデザイン思考過程であるといえる。デザイン要求を表す目標表現は,デザイン思考における探索空間を限定するといえるが,実際のデザイン行為においては,同じデザイン要求であっても,その解釈の相違によって,結果としての視覚空間的形態表現も異なる。本研究では,「子供用のイスのデザイン」というデザイン要求を学生に課した実験により,その要求を解釈したコンセプトにおける言語表現の概念構造と,それに対応する視覚空間的形態表現との関係を,認知意味論のカテゴリー階層構造という視点からとらえ,デザイン要求の解釈の仕方の違いが形態表現における創造性とどのような関係があるかを確かめた。その結果,与えられたデザイン要求の解釈において,意味空間カテゴリーの中心的な解釈よりも,周縁的解釈の方が,作品の形態表現における新規性が高い傾向があることが分かった。
著者
落合 信寿 佐藤 昌子
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.85-94, 2002-11-30 (Released:2017-07-19)
参考文献数
19

本研究は,赤,橙,黄の安全色3色の探索に及ぼす周辺刺激の色とその配置,ならびに背景輝度の影響について検討した。刺激画像は視角40°の広視野に位置された色指標の配列によって構成され,80インチスクリーン上に提示された。妨害指標の色配置は,目標指標と妨害指標間の類似度,妨害指標間の類似度の関係に応じて4種類を設定した。目標指標色,妨害指標数,妨害指標の色配置の関数として反応時間が測定された。その結果,背景輝度が異なっていても,橙は妨害指標数の増加に伴い探索が著しく困難になるが,赤と黄は妨害指標数の影響をほとんど受けないことが明らかとなった。探索に及ぼす色配置の影響は,目標指標と妨害指標間の類似度に依存しており,また安全色によってその影響が異なっていた。すなわち,橙は色配置の影響を著しく受けるが,赤・黄は比較的影響を受けにくいことが明らかになった。これらの結果は,安全色の橙が,周辺環境の視覚刺激によって影響を受けやすい傾向にあることを示唆している。
著者
中島 瑞季 松永 皐希 横井 聖宏 齊藤 剛
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_51-2_58, 2021-09-30 (Released:2021-11-03)
参考文献数
19

電子書籍での読解における物語世界への没入感に着目し,レイアウトデザインに注意の集中を促すマスクをかけると読解時の注視点と没入感にどのような影響を与えるのか検討した.実験は輝度勾配を用いたマスク 2 種とマスク無しの計 3 種類に対して視線計測を行いながら読書をしてもらったのち,没入感評価とレイアウト評価を行うものである.その結果,マスクをかけると一定の場所に注視点が集まり,没入感の向上に繋がることが明らかとなった.しかし,マスクと文字色が近い場合はスクロール時に文字がちらつくことで気が散るため,読解に集中できず没入感の向上を望めない.そのため,マスク色と文字色の関係がスクロール動作によってどのように変わるのか考慮することがデザインを決定する上で必要となることがわかった.
著者
近藤 菜緒 小宮 加容子 平尾 美唯 畠中 彩
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>本稿では、2018年12月15日(土)に実施した「とどけよう!プレゼント」の活動報告と、その活動結果を通して行った遊びの導入と終わりの効果についての考察を述べる。今回実施した遊びは子どもたちに主体的に遊んでもらうことを目的に、「サンタさんのお手伝いをしてください」という課題を遊びに取り入れた。また、遊びの導入と終わりが遊びにもたらす効果についての考察を行なった。その結果、導入と終わりは子どもを遊びの世界に入り込ませ、気持ちよく終わらせるための重要なプロセスであることがわかった。</p>
著者
伊藤 孝紀 岩崎 翔太 山本 雄一 西田 智裕
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_90-1_93, 2021

<p>本作品は、愛知県岡崎市康生通りにおいて、株式会社まちづくり岡崎が道路空間再編に向けて実施した社会実験である。まず、岡崎のシンボルである岡崎城をモチーフとして白と黒を基調としたストライプのロゴマークを設定するとともに、市民の要望を把握するためのワークショップをおこなった。そこで得られた要望を反映させた社会実験をおこなった。<br>公共空地に白と黒の什器を設置し、キッチンカーを誘致することで、康生通りと一体的な空間を創出した。また、沿道店舗の軒先を活用することで、歩道上に多様な行為を誘発した。加えて、パークレットを設置することで、車道上に憩いのための場を創出した(図1)。<br>通過するだけの人が多かった康生通りに、多様な行為を含む滞留が生じた。康生通りにロゴマークを展開することで、通りのデザインを統一し、市民が誇りを持った街づくりを演出することができた。<br></p>
著者
黄 世輝 田中 みなみ 三橋 俊雄 加藤 純一郎 宮崎 清
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.51-60, 1997-03-31 (Released:2017-07-25)
参考文献数
18

台湾の寺廟文化は、中国大陸から渡来した漢民族による移民社会の成立とともに、地域生活と密接な関係を保ちながら発達してきた。本研究では、台湾・鹿港の文化的、社会的象徴といえる龍山寺を対象に、地域づくりにかかわる龍山寺の役割とその可能性について検討した。その結果、鹿港の地域づくりにかかわる龍山寺のあり方について、以下に示す五つの方向性について提示した。1)宗教活動の場として清浄な環境を保ちながら仏教教義の広がりに努める。2)教育の場として歴史的資産を保護、伝承しながら郷土教育を推進する。3)文化活動の場として住民参加型の文芸活動を展開する。4)観光活動の場として龍山寺の文化的価値を内外に発信する。5)憩い・交流の場として寺廟文化の情報センターの役割を担う。総じて、龍山寺は地域づくりの拠点として多くの住民が参加できる活動を展開することができる。
著者
高村 是州 木村 知世 笛木 愛美
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1_2-1_7, 2021

<p>衣服は2Dのファッション画をもとに製作するが、3Dとの次元の矛盾を補正する必要があるため絵の通りに仕上げるのは難しい。そこで本研究では、3Dソフトを用いてファッションデザインを行い、発想した通りに衣服を製作する手法を開拓することを目的とする。まず3Dソフト「ZBrush」でモデリングすることでデザインを発想し、そのデータを出力して立体的にデザイン検証を行なった。続いてアパレル3D着装シミュレーションソフト「CLO」を使いモデリングデータからパターンを展開することで、発想したデザインと近似性の高い衣服を製作するという手法を開拓した。これにより衣服製作において新たな可能性を示した。<br></p>
著者
森 絵美 松本 正富
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.2_35-2_42, 2021-09-30 (Released:2021-11-03)
参考文献数
17

本研究は,病院で広報や行事の企画運営に従事するデザイン技能を有した事務職員である院内デザイナーの配置に対する経営者評価について,利用者サービス向上に向けた業務支援の視点からみた有用性と課題を明らかにすることを目的とした.医療機関経営者を対象とした半構造化インタビューを実施し,M-GTA(修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ)を用いて分析した結果,1)広報が充実し医療機関の特色が明確化すること,2)情報共有と業務の効率化につながること,3)内製物の質向上と継続的な維持管理に貢献すること,4)利用者に寄り添ったサービス提供ができることが,有用性として認められた.これに対し,1)人材育成の環境が整っていないこと,2)人材配置に関わる費用対効果の検証が難しいこと,3)その職域自体が未だ確立されていないことが課題として指摘された.
著者
金 尚泰
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究作品集 (ISSN:13418475)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1_32-1_37, 2016-02-01 (Released:2016-04-19)
参考文献数
4

近年ハードウェアやネットワーク技術は飛躍的な発展を遂げているが、WEB環境の中リアルタイムで自由自在に閲覧できる3DCGコンテンツは数少ない。3DCGリアルタイムコンテンツは、レンダリング手法とデータ最適化の組み合わせをバランスよく考えなければならない。その中でも自然物表現は、リアルタイム3DCGコンテンツ制作に対して最も難しい素材である。3Dポリゴンデータは、直線しか存在しないため曲面を三次元空間に表現するためには、無数の短い直線をつなぎ合わせる必要がある。したがって外形に影響しないポリゴン削減アルゴリズムの開発は大きな課題になる。本研究では、3DCGのポリゴンデータ削減に重点を置き、様々なリアルタイム3DCGコンテンツ制作環境を構築する支援ソフトウェアMDD Creatorを開発した。3DCGソフトウェアに詳しくない人でも、リアルタイムにスライダーバーを調整するだけで対象ポリゴン形状の削減率を決める事ができる。さらに、最適化された3DCGモデルをHTML形式で保存し、様々なWEB用リアルタイム3DCGコンテンツ制作に応用できるようなソフトウェアに仕上げた。
著者
岩崎 敏之 稲山 正弘 小野 泰 中里 想
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.66, 2019

<p>建築構造デザインの捉え方を示す図として、荷重と力学の関係性を「体」、材料&#8722;構法の関係性を「相」、建築そのものを「用」とし、それら3つのレベルの関係性を表した体・相・用&#8722;建築構造デザインモデルを提示している。筆者らは20年間に渡って実施された木造耐力壁ジャパンカップというイベントの運営に関わってきた。本稿では、このイベントが体・相・用&#8722;建築構造デザインモデルに示される構造の工学的原理を学ぶ機会を提供できていたことについて参加者へのアンケート調査の結果などを元に考察して示す。</p>
著者
村本 政忠 有賀 義之 古屋 繁 工藤 芳彰
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第55回研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.96, 2008 (Released:2008-06-16)

PC周辺機器には,使用にあたり特別な設定が必要ないものと初期設定や環境設定が必要で,設定の際にPCに関する特別な知識が求められるものもある。メーカは,初期設定や環境設定に関する方法をマニュアルやWEBを通して提供しているが,カスタマサポートセンタへと助言を求めてくるということは,それがうまく機能していないことを示唆している。本研究は,サポートセンタの回答データから,設定そのものやその伝え方の特性を抽出することによって,簡単な設定や情報の伝え方をデザインする方向性を抽出しようとするものである。製品の対象は,「無線LANルータ」「ネットワークメディアプレーヤ」である。 回答データから,オペレータが行った,操作手順の誘導の中から,重複する項目を除いた単文をキーセンテンスとして抽出し,それ同士がどのような順で説明されているかを,有向性をもつ関係を示すものと考え,Dematel法で分析した。問い合せ内容と,その問い合せ内容の際に出現するキーセンテンスとの対応関係にその出現頻度を加えたデータをもとに,コレスポンデンス分析を行った。この結果,一般的な知識で行える設定グループと専門的な知識が必要になる設定グループがあることがわかった。一般的な知識が必要な操作に関しては行えるが,ユーザの知識の欠落から専門的な知識が必要になる操作については行うことができない。このため専門的な知識が必要な操作に関してはサポートが必要である。
著者
植松 陽一 大月 優里
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.67, 2020

<p>デザイン専攻の学生が4年間の学びを社会に発表する卒業研究・制作には、造形と伴ったものからそうでないものまで、幅広い作品が存在する。近年は医療福祉や時事問題などのテーマが作品に反映されることも多くなってきた。本発表では、医療福祉とデザインの両面を学べる特色をもつ学科での卒業研究・制作指導において、「ものづくりを手法としたワークショップ」を用いた事例について報告する。それを通して、ものづくりを手法としたワークショップが医療福祉分野のイベントにどのような効果と意義を持つかについて検討したい。</p>
著者
陳 郁佳 野口 薫
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.71-80, 1998-09-30 (Released:2017-07-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

知覚・認知心理学的視点から, 道路環境におけるサインの視覚的伝達効果を検討した。まず, サイン認知の前提条件として, 人間の視知覚特性を示した。次いで, 台北のサイン環境について基礎調査を行い, サインの効果は, そのデザインのみならず, 環境的・文化的要因によって規定されることを明らかにした。さらに, 台北と千葉における道路標識の現状について比較し, それぞれの道路標識に対するドライバーの意見を認知的基準にしたがって分類した。最後に, 台湾留学生と日本人学生を被験者として, 二地域の道路標識に対する認知実験を行った。その結果, 標識に含まれる情報数が増えると, 標識の検出率と正答率は低下して, また情報数が同じであっても, 情報の種類や視覚ノイズによって影響されることを示した。さらに, 道路標識の表現形式が異なる地域からの被験者群の比較から, 文化的要因がサイン情報の認知に影響することを確認した。
著者
飯島 百香 佐藤 浩一郎 寺内 文雄
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集 日本デザイン学会 第67回春季研究発表大会
巻号頁・発行日
pp.386, 2020 (Released:2020-08-27)

現在、暖炉や焚き火といった木材を燃やして楽しむ設備や行為がある。それらにおいて、目的に合わせて細かくそれらを選出することはほとんど行われていない。本研究では、燃やす木材の配置や樹種の違いによって火の特性を変化させることにより、特定の目的に合わせて楽しむことができる焚き火セットを提案する。;; 調査や予備実験から、木が燃える様子から音や匂いといった特徴的な特性や印象を被験者が感じることや、炎の規模や燃え尽きるまでの速さなどの特性の変化が配置や樹種の違いにより発生することが観察された。;; 被験者に自由に焚き火を行なってもらう実験では、木材を選出する際や火をつけている最中、そして火が消えた後を通し被験者の感想を記録した。;; 最終提案物として、目的に合わせた焚き火セットを3種類制作した。実験において多数の被験者が目的とした3つの目的に沿ったものを用意した。それぞれ焚き火で用いる木材と木材を乗せる石製の土台、どのように木材を配置するかなどの方法が記載された説明書から構成されている。説明書を読んで木材を土台に配置し火をつけることにより、誰でも選択した目的に合わせた焚き火を楽しむことができる。